ISG~インフィニット・ストラトス・ガンダム~ 作:レイブラスト
俺達が誘拐未遂→保護されてから色々なことが立て続けに起こった。長々と説明するのも面倒なので、簡潔に纏めよう。
まず俺を誘拐しようとした組織はかなり下っ端の奴らしか捕まえられず、逃げた女性2人(確かスコールとオータムと言った)は省吾兄ちゃんが駆けつけたが一足先に逃げたそうだ。ブラントって人から聞いたと言っていたが、いつの間にアメリカの議員と知り合いになったんだ?
まあそれは置いといて。千冬さんは翌日、俺達の救助に向かったことで大会を棄権し不戦敗となってしまったので、その責任として引退を宣言した。更にドイツに対して諸々の礼をしたいと、ラウラ・ボーデヴィッヒの所属する『シュヴァルツェ・ハーゼ』、通称『黒兎隊』に期間限定で教官として出向したいと言い、ドイツ軍は2つ返事で承認した。
俺や一夏としては千冬さんがいなくなるのは寂しいが、事情が事情だけに仕方ないと納得させた。後、俺達が日本に帰るのは手続きに時間がかかるので、少し遅れるとのことだ。なので真っ先に鈴ちゃんや弾達に電話してその旨を伝えた(誘拐事件は話さず、事故に巻き込まれかけたと言っておいた)。
で、帰るまでの間、俺と一夏はラウラ・ボーデヴィッヒの警護を受けることになった。……こんな形で、彼女との出会いが前倒しされるとは夢にも思わなかったけど。
そして現在―――
「なるほど……日本にはそのような文化が」
「無論、これだけじゃないぞ。日本には世界があっと驚くようなものがたくさんあるんだからな」
「まあ逆に言えば、世界にも日本が驚くものはたくさんあるけど」
俺達とボーデヴィッヒ……ラウラちゃんは意気投合、すっかり友人になっていた。だって、相手は軍人とは言っても同い年だよ? それに彼女も日本に興味があったようで、色々語り合ったらいつの間にか打ち解けていたんだ。しかも原作とは違って和気藹々だし。もう俺も一夏もびっくりした。
「しかし、それほどまでに面白いのか? その『かめんらいだー』というのは」
「当然! 人によって好みが分かれるけど、俺達は大好きだ!」
「何なら変身ポーズ見せてあげようか?」
「ふむ、是非見てみたいな」
「「よし!」」
ラウラちゃんの言葉を受け、俺達は立ち上がる(今さっきまでテーブル越しに座っていた)と距離を少し空ける。
「じゃあ、俺が仮面ライダービーストやるから、一夏は仮面ライダーオーズで」
「わかった」
何をやるのかを決めると、一度目を閉じて変身する場面を思い浮かべる。勿論音声つきでだ。ちょいと恥ずいが…………別にいいか。
「変~、身!」
「変身!」
ほとんど同時に叫ぶと、勢いよく派手な変身ポーズを取る。
「『セット、オープン! L・I・O・N! ライオン!!』」
「『タカ! トラ! バッタ! タ・ト・バ! タトバ タ・ト・バ!!』」
「おお……!」
ビーストとオーズの変身ポーズ&音声をやっている俺達を、ラウラちゃんは感心した様子で見ていた。
「こんな感じだが、どうだろう?」
「実際にどのような姿になるかは想像もつかないが、凄く面白そうだと思ったぞ」
「「おっしゃあ!!」」
2人揃ってガッツポーズをする。俺達に新たな理解者(しかも女の子)ができたからだ。鈴ちゃんや弾、蘭ちゃんに数馬以外はどん引きされたからな……。
「ところでラウラちゃん。さっきからたまーに沈んだ顔してるけど……何で?」
「ん? ああ……羨ましいと思ってな。私は、『青春』とは無縁の日々を送っているからな」
「そう言えば、ラウラは同い年なのに軍の大尉だもんな。……何で軍に所属したんだ?」
「それは……」
一夏が何となく聞くと、ラウラは表情をあからさまに曇らせる。どうしよう、地雷踏んじゃった……。
「ごめん、言いにくいなら言わなくていいんだ。何か辛そうだし」
「……いや、やはり話そう」
「無理しなくてもいいぞ?」
「無理ではない。彰人と一夏は、私にとって信頼できる友人だ。……だからこそ話しておきたい。友に隠し事をするなど、失礼だからな」
そう述べるとラウラちゃんは少しずつ説明していった。自分が最強の兵士を生み出す為の計画で、軍に誕生させられた強化人間であること。ヴォーダン・オージェと言う疑似ハイパーセンサーを移植した結果、適合できず左目が変色しそれ以降の訓練では成績が伸び悩み、失敗作、出来損ないの烙印を押されたということ……等を。
正直、前世で原作小説を読んでた時は「そんなことがあったのか……」というぐらいにしか捉えてなかったが、実際聞いてみると……生々しく感じる。
「えと……何て言うか……まんま、ガンダムに出てくる強化人間やコーディネイターみたいだな……」
一夏が自分の感じたらしいことをそのまま言う。まあそう思うだろうな。俺だって最初はそう思ったし。
「それを本当に行うのが、人の恐ろしさだということか……」
「……? そんなに驚いてないのか? 私は人造人間で…出来損ない、だというのに……」
そう言うラウラちゃんからは、一抹の不安が感じられた。なるほど、全部話したことで友達に嫌われるかもと思っているんだろう。
「別にさ、生まれがどうとか俺は特に気にしないぞ。一夏も気にしないだろうし」
「そう、なのか?」
「ああ。後、出来損ないって言ってたけど……それは間違ってる。この世界に生まれた命に、失敗も成功もない。ある訳がないんだ」
「俺も彰人と同意見だ。命に優劣をつけようだなんて、バカげてる」
俺は前世から思っていたことをそのままズバッと言った。この言葉自体はスパ○ボWでキラが言った言葉なんだけどね、実際その通りだと思ったんだよ。自分達の手で命を作りだしといて、役に立たないと見たら即出来損ない扱い。どうやっても倫理観が狂ってるとしか言い様がない。
ラウラちゃんは何か衝撃を受けたのか、ポカンとしていたがすぐに我に返った。
「そ、そうか……。そう言ってくれたのは、2人が初めてだ……だから、その……ありがとう」
そして若干赤い顔で礼を述べられた。
「…………可愛いなおい」
「っ!?」
「おい彰人、口に出てる」
え、嘘……恥ずっ!? 心の中に留めておくつもりだったのに、ラウラちゃんの貴重(?)なデレ(?)場面を見て気が緩んでしまったのか!
俺が不用意なことを言ってしまったせいで、しばらくの間気まずい空気となってしまった。
翌日。全ての手続きが終わり、俺達は荷物を持って空港に来ていた。千冬さんも一旦帰って荷物を纏めて、再びドイツに行くとのことで俺達と一緒の便に乗るようだ。兄ちゃん達は俺達とは別の便に乗るので、ラウラちゃんと空港までの見送りに来てくれた。
「短い間だけど世話になったよ、ラウラちゃん」
「またいつか会おうな」
「ああ。勿論、友達として…だよな?」
俺達と握手をしながら言うラウラちゃんに、俺と一夏は一緒に頷いた。
「へー、仲良しになってるじゃん。よかったな、新しいガールフレンドができて」
「あんまりからかったらダメよ、省吾」
どこか微笑ましそうに見ている省吾兄ちゃんと由唯さんに、ちょっとだけ照れた。
「一夏と彰人が世話になったな。ドイツに戻ってきたら、今度は生徒としてお前を強くしてやろう。ただし、私の特訓はかなり厳しいから、しっかり着いて来いよ?」
「はっ! 何卒、よろしくお願いします!!」
ビシッと敬礼をするラウラちゃん。さすがに軍人だけあって、凄く綺麗な敬礼だ。
「さて……それじゃあ、そろそろ行くよ」
「気をつけてな」
「ケガすんなよ~!」
ラウラちゃんの微笑みと省吾兄ちゃん達の声を背中に受け、俺達は飛行機へと搭乗した。