ISG~インフィニット・ストラトス・ガンダム~ 作:レイブラスト
俺達が日本に帰国し、千冬さんが簡単な荷造りをして再びドイツへ戻るまで2日を要した。
放置していた家の掃除も終わったので、今日は鈴ちゃんの家に遊びに行こうかな。と思っていたら……。
ピンポーン
「? はーい」
一夏の家に居たらインターホンが鳴ったので、一緒に玄関まで行ってドアを開ける。すると、そこには鈴ちゃんがいた。
「あ、鈴。久しぶり」
「久しぶりね、一夏。それに彰人も。事故に巻き込まれた時はどうなったかと思ったけど、元気そうじゃん」
「鍛えてますからっ」
シュッ、とヒビキさんのポーズを真似しながら言う。……実際は事故どころじゃなかったと言えないのが辛い。
「まあこんなところでも何だし、上がって」
一夏が鈴ちゃんを促し、家のリビングに上げた。
「でもびっくりしたわ。千冬さんは突然引退しちゃうし、省吾さんはプロトガーランドを動かしたみたいだし……本当に普通の事故なの?」
確かに鈴ちゃんが疑問に思うのも当然だが、これに関しては堅く口止めするように言われているので、いくら鈴ちゃんの頼みでも言えない。
「省吾兄ちゃんがガーランドを使ったのは災害救助の為だよ」
「千冬姉さんは元々、第二回大会が終わったら引退するつもりだったんだ」
それぞれで最もらしい理由(一夏は真実だが)を言う。これなら怪しまれずに済むだろう。
「うーん、どうも釈然としないけど……まあいいか。2人とも何ともなかったのは幸いだったし」
どうにか通せたみたいだ。
「あ、そうだ。久しぶりに鈴の家に行ってもいいか? あそこの料理、また食べたくなってさ」
「おっ、いいな! 最近中華料理食べてないから、恋しかったんだよなぁ」
「……え、えっと…………」
何故か鈴ちゃんは苦笑いし、言葉を詰まらせた。
「どうした? 今行ったらまずい?」
「う、うん……今日はちょっと、食材が……」
「そっか。なら仕方ないか……」
少し残念そうに言う一夏に「ごめんね」と言う鈴ちゃんだったが、俺は気づいていた。
鈴ちゃんは何か悩み事を抱えている。きっと、あのことなんだろうけど……。
その後、俺達は弾の家に遊びに行った。
「よお彰人! 一夏! ケガしてないみたいで、何よりだ!」
「当ったり前だろ。俺達を誰だと思ってるんだ?」
「ちょっとやそっとじゃ、傷つかないぜ」
「へへ。そうだったな」
「とりあえず、上がってください。お茶も出しますので」
蘭ちゃんのお言葉に甘え、俺達は弾の家に上がった。
その後は食堂で厳さんが振る舞ってくれた料理を食べたり、ドイツでどんな生活してたかを話したりした。途中で弾がラウラちゃんに関して「その歳で大尉!? あり得ねーだろ!!」と至極真っ当なツッコミを入れていたがはぐらかしておいた。ごめんな……。
鈴SIDE
一夏と彰人が事故に巻き込まれかけたと聞いた時、正直気が気じゃなかった。心配で夜も眠れなかった程だ。だから、2人が無事なのを見て安心した。けど、2人ともどんな事故に遭ったのか、話してはくれない。こればかりは仕方ない。誰にだって嫌なことは思い出したくないし、あんまり根掘り葉掘り聞くのも失礼になる。
こうやって引き際がわかるようになったのも、一夏達と一緒に居るお蔭だ。でも一緒に居る内に、私は一夏を好きになった。一夏は箒のことが好きだけど、この想いを捨て去ることはできない。
でも……だからこそ、別れるのが……辛い。
一夏達がドイツに居る間に、両親の仲が悪くなってきた。きっかけは些細な言い争いだったんだけど、それがエスカレートして私の力じゃ修復できそうにもなかった。そして、両親の会話を偶然聞いて知ってしまった。
私は、日本を去らなければならない。一夏と彰人に、また辛い思いをさせてしまう。そう考えると、胸が張り裂けそうなくらい辛い。……彼女も、箒もこんな気持ちだったんだろうか。同じ状況になってわかるなんて、皮肉ね……。
これからどうしようと悩んでいた時、ふと私は彰人が言っていたことを思い出した。箒が引っ越す時に、彰人は一夏の告白のサポートをした。それって、私がサポートしてもらってもいいのよね?
(考えてる暇はない、か)
一緒に居られる時間ももうすぐ終わる。私は―――彰人に相談することにした。
彰人SIDE
「……なるほど。要するに一夏と離れる前にどうやって踏ん切りをつけるか、ということだな」
ある日、鈴ちゃんは俺に「相談がある」と言うと、訥々と話し出した。焚蓮さんと花琳さんの仲が修復不可能なまでに陥っていること、中国に帰らなければならないこと、そして……一夏に恋していることを。
全ての話を聞いた俺は、まず何よりも鈴ちゃんと離れ離れになるという事実にショックを受けていた。こうなることはわかっていたけど、辛いものは辛い。だが2人を仲直りさせることは俺には無理だ。下手なことをしても、逆に悪化するだろう。
だから鈴ちゃんが俺に相談してきたのも、一夏への想いをどうするかだった。
「とりあえず故郷に帰ることはみんなに話すとして、そうだな…………別れる前に、一夏に告白してみたらどうだ?」
「なっ!? な、何言ってるのよ! そんな……だって一夏は―――」
「確かに一夏は、箒のことが好きだ。でも、抱え込んだままでいるよりは、言ってスッキリした方がいいと俺は思う。一夏がどう答えるかは問題じゃない。一夏のことを好きな女の子がここにも居るってことを、アイツに覚えてもらうんだ」
「覚えてもらう……」
鈴ちゃんはしばらく黙ったまま考えていたが、やがて何かを決心した顔つきになった。
「そうね……。叶わない恋なら、せめて想いだけでも伝えておかないとね」
「決まったな」
「……ありがと、彰人。アンタのアドバイスのお蔭で、吹っ切れたわ」
「俺は何もしてないんだが」
ただ単に自分の思ったことを鈴ちゃんに言っただけで、賛成するか反対されるかは不透明だったんだ。
「してるわよ。彰人って、自分が思ってるよりかなりアドバイス上手なんだから」
「そうか?」
そんなに自覚はないんだが。……そういえば、今までにも何人か俺のとこに相談に来たことがあったっけ。アレが何か関係あったのか?
「……まあいいや。とにかく、頑張ってな」
「……うん!」
力強く頷く鈴ちゃんの瞳には、もう迷いはなかった。
そして、鈴は自分が日本から離れることを一夏や弾達に伝えた。