ISG~インフィニット・ストラトス・ガンダム~ 作:レイブラスト
「彰人……思ってた以上にキツいんだが……」
「奇遇だな。俺もそう思っていた。クソッ、案外楽しめるかと思った自分がバカだったぜ」
1時間目が終わって休み時間になり、一夏が俺に話しかけてくる。こうしないと雰囲気に耐えられそうにないからだ。……まあこうしていても、全然休めてないんだが。動物園に居る動物達の気持ちが今なら物凄くわかるよ。
「「どうしたもんかな……」」
揃ってため息をついた俺達を誰が責められようか。
「2人共、随分久しぶりだが……大丈夫か?」
そんな時、ポニーテールの女子が心配そうに話しかけてきた。さっきも言ってた箒ちゃんだ。
「物凄いきつい……」
「正直、1時間目だけで疲れた……」
一夏と一緒に苦笑する。
「なら、外の空気でも吸いに行くか。気晴らしにはなるだろう」
「それもそうだな。よし、行こう。彰人もさ」
「あー、俺はパスな」
「え、何で?」
「だってさ、久しぶりに再会したんだろ? 色々と積もる話があるんじゃないのか?」
「「……!」」
俺の言ったことに驚いたのか、一夏と箒ちゃんは目を丸くした。……一夏の場合は、別の驚きがあるんだろうけど。
「……わかった。少し心配だけど、行こうか。箒」
「ああ。済まないな、彰人」
「気にすんなって」
一夏は箒ちゃんと共に廊下に行った。
教室に居る男子は俺だけになってしまったが、どうしようか。
「トイレにでも行くか……」
呟いて席を立ち、廊下に出ようとする……が、あることに気づいて立ち止まる。IS学園は実質女子校だ。基本女子を優先とした造りになってる筈。てことは……。
「……男子トイレって、どこにあるんだ?」
俺は、新たな問題に直面することとなってしまった。
屋上にて
一夏SIDE
「……久しぶりだな、箒」
一息ついた後、俺は箒にそう切り出した。
「ああ…本当にな。しばらく会わない内に、随分と男らしくなった。それに、私のことも呼び捨てで呼んでるし。あ、別に嫌という訳ではないが」
「そう言う箒こそ……可愛くなった。本当に……」
「そ、そうか? ふふ、嬉しいことを言ってくれる」
顔を赤らめながら、嬉しそうに微笑む箒。幸せだという気持ちが、伝わってきた。
「ところで一夏。あの時交わした言葉だが……覚えているか?」
箒は少し不安そうに問いかけてきた。あの時というのは、別れの前の告白だと思う。いや、間違いなくそれだ。
「ああ、覚えてるよ。言葉の後に、したこともさ……」
「っ!! そうか。となると少し恥ずかしいが……嬉しいな、うん。覚えててくれて、ありがとう」
恥ずかしがりながらも更に幸せそうに笑みを浮かべる箒に、俺は物凄い罪悪感を感じていた。あの時俺は、箒と想いを通わせ、キスまでしたと言うのに鈴にも気持ちが向いてしまっている。……そのことを、謝らないと。
「箒、ちょっといいか?」
「ん?」
「俺さ、お前に謝らなきゃいけないことがあるんだ」
箒SIDE
「俺さ、お前に謝らなきゃいけないことがあるんだ」
そう前置きして一夏が話し始めた内容は、私に大きな衝撃を与えた。
私が引っ越した後、一夏の心はぽっかりと空いてしまい、たまに無気力になってしまうこともあったと言う。そんな時、中国からの転校生である凰鈴音と出会い、彼女に支えてもらったそうだ。自分の心の隙間を埋めてくれた鈴音に一夏は恩義を感じ、そして……彼女が告白してきた時、彼女に好意を抱いていることに自覚したそうだ。
「ごめん、箒……本当に、ごめん………!」
話し終えた後、一夏は泣きそうな声で私に謝ってきた。普通は怒るところなんだろうが……私は怒る気にはなれなかった。一夏の気持ちが、私にはよくわかったからだ。
政府の要人保護プログラムによって私は一夏達と離れ、家族も離散してしまった。こうなった原因であるISを作った姉さんを恨もうとしたこともあったが、できなかった。姉さんと一緒に過ごした時間は、本当に楽しかったから。嘘偽りのない時間を共に過ごせたから、恨むことなんて……できない。
姉さんとはあれから電話でしかやりとりしてないが、時々姉さんが近くに居るように思うことがある(あの姉のことだから、おそらく本当に居たんだろう)。姉さんは私を見守ってくれている。そう思えたから、一夏や彰人が居ない日々をどうにか耐えることができた。でも、中学校を卒業する頃には限界だった。あの時、一夏と彰人がISを使え、IS学園に入学すると聞かなければ、とっくに壊れていたかもしれない。
私ですらそうなっていたんだ。もし一夏が鈴音と出会っていなければ、彰人の励ましも虚しく壊れていただろう。だから怒るなんて、できる訳がなかった。
「一夏、謝らないでくれ。私は別に、一夏やその鈴音という子に対して怒っている訳じゃない」
「……え? えっと、何で……?」
「彼女は、空いてしまった一夏の心を埋めて支えてくれたんだろ? そのお蔭で一夏がここに居るなら、感謝しなければな。……それに、自分を支えてくれた者に心惹かれるのは、仕方がないさ」
現に私だって、子供の頃一夏に助けて支えてもらったから、一夏を好きになったんだ。
「ほ、箒……そう言ってくれるのは安心するけど、俺はどうしたら……」
「ふむ…とりあえず、鈴音に出会うまでは私と……こ、恋人にならないか?」
「うぇっ!?」
「だって、子供の頃に想いは伝え合っているんだし。…………さすがに、まずかったか?」
申し訳なさそうに尋ねると、一夏は首を横に振った。
「……いいや。こんな俺の恋人になってくれるなんて、凄く嬉しいよ。俺が懸念しているのは鈴のことで……」
「心配するな。その時になってもいいように、私が良い考えを用意しておこう。何、案ずることはない。喧嘩する訳じゃないからな」
「そうか……ありがとう、箒。何から何まで、本当にありがとう」
目に涙を浮かべながら言う一夏を、私はそっと抱き寄せた。一夏は不安だったんだ。私に嫌われると思ったから……。だが心配は要らないぞ。お前にどんなことがあっても、お前のことが大好きなのは揺るがないからな。
彰人SIDE
「このように、ISの基本的な運用に関しては現時点で国家の認証が必要となり、協定内のIS運用から逸脱した場合は、刑法によって罰せられるので注意しなければなりません」
スラスラと教科書を読んでいく山田先生。入学前にしっかり予習しておいた甲斐があったぜ。一夏もどこかスッキリした顔で授業を受けていた。……やっぱ、屋上で不安を払拭したんだろう。でなきゃ俺に小声で「俺達恋人になった」発言しないもん。