ISG~インフィニット・ストラトス・ガンダム~ 作:レイブラスト
「ちょっとよろしくて?」
「「ん?」」
2時間目の休み時間に一夏と話していると、誰かに声を掛けられた。振り返って姿を見てみると……1人の白人女子、セシリア・オルコットが居た。
原作知識(最近うろ覚えになってきた)で知っているが、彼女はイギリスの名門貴族のお嬢様で、代表候補生だ。プライドが高く、高圧的な態度が目につくが、実は努力家で今の地位も様々な努力の積み重ねによるものである。故にIS操縦者としての実力は確かなものだ。決してバカにしてはいけないと俺は思う。
「聞いてます? お返事は?」
さて、ここからが問題だ。下手なことを言って怒らせないようにしないと。
「ああ、聞いてるよ。セシリア・オルコットさん?」
「どういったご用件で?」
上から順に俺、一夏だ。返事の出来は良かったようで、オルコットさんは笑みを浮かべながら言った。
「どうやら自己紹介はちゃんと聞いていらっしゃったようですわね。その通り、私はイギリスの代表候補生にして入試主席のセシリア・オルコットですわ。以後、お見知り置きを」
用件は挨拶か。でも口では何とでも言えるけど、敵意と侮蔑の感情を持っているのは目を見ればわかる。一夏も気づいているのか、顔には出さないが不快そうにしている。
しかし、そんなことは別にどうでもいい。俺が感じているのは、純粋に『凄い』という気持ちだ。
「おい彰人」
「ん? 何?」
「さっきからオルコットさんを見る目が少しおかしいが、どうしかしたのか?」
俺の様子に気づいたようで、一夏が尋ねてきた。
「いや、凄いなと思って」
「……え?」
何かオルコットさんがポカンとした顔をしているが、とりあえずは放っておこう。
「ふうん。…ちなみに聞くが、どの辺?」
「そりゃお前、代表候補生な上に主席だぞ。普通なれると思うか?」
「……無理だな、うん」
「だろ? それをオルコットさんは成し得た。きっと、これまでにしてきた努力の数は並大抵のものじゃあない筈だ。だから凄いと思ったんだ」
「言われてみれば、そうだな。そうか、彼女も苦労してきたのか……」
腕を組みながら感心する様に頷く一夏。……まあ、俺がオルコットさんを見ていたのはそれだけじゃないけど。
「え…えと……あの…………っ! ま、また後で来ますわ! 決して逃げないでくださいまし! いいですね!?」
予鈴が鳴ると同時に、オルコットさんは顔を真っ赤にして向こうに行ってしまった。一体どうしたんだ? 体の具合でも悪くなったんだろうか。
「それでは、この時間は実践で使用する各種装備の特性について説明する。大事なところなので、ノートを取っておくように」
教壇に立った千冬さんが説明しようとするが、何かを思い出したような顔をした。
「おっと、その前に再来週行われるクラス対抗戦に出る代表者を決めないといけなかったな」
だろうとは思っていたけどね。原作序盤でのイベントだもの。
「クラス代表者とはそのままの意味だ。代表になった者は、対抗戦だけではなく生徒会の開く会議、委員会への出席等をする……簡単に言えばクラス長だな。ちなみにクラス対抗戦は、入学時点での各クラスの実力推移を測るものだ。今の時点で大した差は無いが、競争は向上心を生む。一度決まると1年間変更は無いからそのつもりで。自薦他薦は問わないので、何か意見があるものは挙手するように」
こうは言うものの、この後の流れは大体わかっている。
「はい! 織斑君を推薦します!」
「私もそれが良いと思います!」
「私は…うーん……矢作君かな?」
「私も矢作君を推薦します」
ほらね? 俺が推薦されるのはちょっと予想外だったけど、重ね重ね順調だ。ただこうも俺や一夏を推してくるのもどうかとは思うが。当の一夏も困り気味だし。
「候補者は織斑一夏に矢作彰人と。……他にはいないか?」
見事に誰も挙手しない。この調子だと俺と一夏のどちらかに決まるんだろうけど……。
バンッ!
「待ってください! 納得がいきませんわ!」
その時、オルコットさんが机を叩いて立ち上がった。
「そのような選出は認められません! 大体、男がクラス代表だなんて恥晒しも良いところですわ! 私に、このセシリア・オルコットにそのような屈辱を一年間味わえとおっしゃるのですか!?」
おいおい……代表候補生がそんな発言をしたら、まずいんじゃないの? それもこんな所でさ。
「実力から行けば私がクラス代表になるのは必然ですわ。それを、物珍しいからという理由で極東の猿にされては困ります! 私はこのような島国まで来ているのはIS技術の修練の為であって、サーカスをする気は毛頭ございませんわ!!」
あの、その辺にしてもらえないと、そろそろまずいことに……っ!? 千冬さんが静かに怒りを燃やしている!? 箒ちゃんはとっくに鬼の形相だ!?
「いいですか!? クラス代表は実力トップがなるべき、そしてそれは私ですわ!」
その言葉には一理あるが、今は気にしていられん! 限界だ、言うぞ!!
「大体、文化としても後進的「「いい加減にしろ」」っ!?」
オルコットさんの発言の途中で、奇跡的に一夏とダブりながら割り込んだ。
瞬間、クラス全体が静まりかえった。俺と一夏は席を立ち、オルコットさんをじっと見つめる。
「今…何とおっしゃいました?」
途中で邪魔されたのに腹を立てたのか、それとも俺達の言葉が気に食わなかったのか、とにかくオルコットさんは怒っているようだった。
「いい加減にしろと言ったんだ。…………さっきの言葉が恥ずかしくはないのか?」
「…?」
訳がわからないという表情をする。本当にわからないのか……ならば―――
「君は国の代表候補生なんだろ? それでありながら他国を侮辱し、見下している自分が恥ずかしくないのか?」
「代表候補生ってさ、将来自分の国を背負い立つかもしれない名誉かつ責任重大な立場なんだろ? そんな人がさっきみたいなことを言ったら、国際問題に発展する可能性があるぞ」
「っ!!」
一夏の言葉に、オルコットさんはようやく気づいたのか目を見開いた。今更すぎる気がするが、気づかないよりはマシだ。
「彼が言うように、代表候補生は重要な役割だ。君はそれを自覚せずに、先ほど喚き散らしていたことになる。もう一度言うぞ……そんな自分が恥ずかしくないのか?」
「……!!」
ふむ。どうやらオルコットさんは自分のした過ちについては理解しているようだ。が、納得がいかない表情をしている。無理もないか。俺達は完全な素人だ。突然エリートに説教して、通る筈がない。
「け、決闘ですわ!」
再び机を叩いて言うオルコットさん。こういう結果になるわな。
「決闘か。俺はいいぞ」
「俺も構わないけど、織斑先生、どうしましょうか?」
俺達だけで決めるのは無理なので、一夏は決定権のある先生に指示を仰いだ。
「……こうなってしまっては仕方がない。勝負は一週間後の月曜日、放課後の第3アリーナで行う。両名はそれぞれ出来うる限りの準備をしなさい」
「「わかりました」」
原作通り一週間後か。やれるだけのことはやっておこう。