ISG~インフィニット・ストラトス・ガンダム~ 作:レイブラスト
「ふぅ、終わった~!」
「やっとか。1日を長く感じたのは久しぶりだ」
放課後、背筋を伸ばす一夏に対し俺は椅子に深く腰掛けながらため息をついた。今日の授業で出てきたことは、専門用語の羅列と言っても過言ではない程多かった。事前に予習してなければ、ちんぷんかんぷんだっただろう。事実、原作一夏はそうだったんだし。
「初日からこんなんじゃ、これからが心配だな……」
「慣れが必要、ってことか……」
今度は一夏と揃ってため息をつく。そうしていると……
「あ、織斑君、矢作君。まだ教室に居たんですね。よかったです」
山田先生と千冬さんが教室に入ってきた。山田先生は、手に書類を持っている。
「どうしたんですか、山田先生?」
「何かありました?」
「えっとですね、寮の部屋が決まりました。これが鍵です」
そう言って俺と一夏に部屋の番号が書かれた紙とキーを渡す山田先生。このことは千冬さんを通じて省吾兄ちゃんから連絡が来ていた。
「……あの、何で鍵が2つ何ですか? 俺と一夏で相部屋なら、1つで十分なのでは……」
俺が質問すると、山田先生と千冬さんが申し訳なさそうな顔になった。もしかして……。
「2人とも、ごめんなさい……調整がどうしても間に合わなくて……」
「少しの間だが、2人は別々の部屋で過ごすことになったんだ。ルームメイトは…織斑が篠ノ之と、矢作が更識とになっている」
更識……はて、誰だっけな? 頭の片隅に引っかかっているんだが……思い出せない。
「箒か。ま、知らない子と相部屋になるよりはいいか」
「おい。それは俺に喧嘩を売ってると認識していいのか?」
「……悪かった、彰人」
なんて冗談を言うが、更識さんが誰なのかが本当に気になる。もう少しで思い出せそうなんだが……あーダメだ! 出てこん!!
「じゃあ、時間を見て部屋に行ってくださいね。夕食は6時から7時、寮の1年生用食堂で取ってください。ちなみに各部屋にはシャワーがありますけど、大浴場もあります。学年ごとに使える時間が違いますけど……えっと、その……お2人は今のところ使えません」
「ですよね……」
「俺、大浴場好きなんだけどなぁ……仕方ないか」
わかって居たようにため息をつく俺と、残念そうな様子の一夏。早く入れるようにしてほしいものだ。
「すまないが、しばらくの辛抱だ。それと、2人にこれを渡しておこう」
そう言うと、千冬さんは俺と一夏にそれぞれ書類を渡した。一番上には…『IS貸出申請書』と書いてある。
「明日までに提出すれば、2日程ならどうにかなる」
……これも千冬さんなりの優しさだな。物凄くありがたい。
「ありがとうございます、織斑先生」
「お心遣い、感謝します」
感謝を込めて、揃って一礼した。
「礼を言われる程ではない。では私達は会議があるのでな。山田先生、行こうか」
「あ…は、はい!」
山田先生と一緒に教室を出る千冬さん。
「……一夏」
「ん?」
「千冬さんにここまでされたんだ。絶対、勝とうぜ」
「……ああ!」
互いに笑みを浮かべると、俺達は教室の外へと歩を進めた。
「1025室、1025室……ここか」
「俺は1030室だから、案外近いな。んじゃ一夏、また明日」
「おう」
一夏から離れ、1030室の前まで移動する。部屋同士が近いので、何かあったら互いに駆け込めるのが便利だ。
俺はドアに鍵を入れようとし……
「っと、その前にノックだな」
寸前で止めた。危ない危ない、下手すれば着替え中のところに突入してしまうこともあるから、ノックは必ずしないと。
コンコン
「……はい。同室の方ですか?」
部屋の中から大人しそうな声が聞こえてきた。
「ええ、矢作彰人と言います。入ってもよろしいでしょうか?」
確認を求めると、何かを片付ける音が聞こえ、少ししてから声がした。
「……どうぞ」
ガチャッとドアを開けて入ると、そこには眼鏡を掛けた水色の髪の女子が居た。……この水色って、光の反射とかじゃなくて地毛だな。何か感動するな……。
「……どうしたんですか? こっちをじっと見て」
「え? ああ。髪の毛、綺麗だな…って思いまして」
「……ありがとう」
照れたように彼女は言うと、手前のベッドに移動した。そこが彼女の場所らしいので、俺は必然的に奥側に移動して地面に置かれている荷物等を一瞥する。
「(どれから開けようかな)ところで、名前は何て言うんですか?」
「……更識簪」
更識簪………………そうか、思い出した! 確か生徒会長の妹で、一夏の専用機にスタッフを持っていかれたせいで自分の専用機がほったらかしにされたという経緯がある子だ。
「なるほど、いい名前ですね。では、少しの間ですがよろしくお願いします、更識さん」
「……簪」
「え?」
「……私のことは簪と呼んで。それから、喋り方もタメ口でいいから」
どこかムッとした様子で、更識さんは言った。やっぱり名字で呼ばれるのは嫌か。姉にコンプレックスを持っているのは原作通りだな。
「わかり……わかったよ、簪さん。これでいいか?」
「……ええ」
とりあえず言いたい。……俺、この子と仲良くできるかな? そこが心配。
一夏SIDE
コンコン
1025室のドアをノックする。いきなり入るのは、いくら親しい相手でも失礼だからだ。
「む、同室の者か? すまんが、少し待っていてくれ」
言われた通り部屋の外で待つ。多分着替えでもしているんだろうな。
「待たせたな。さ、入ってくれ」
声に従いドアを開ける。部屋の中には、寝間着姿の箒がベッドに座っており、俺と目が合った。
「やあ、箒」
「い、いいい、一夏ぁ!? な、なな、何で!?」
見事な狼狽えっぷりに驚く俺。何故そこまで驚くんだ?
「部屋の用意ができるまで相部屋になったんだ。聞いてないのか?」
「は、初耳だ」
てことは連絡が届いてなかったのか。……多分山田先生だろう。ちゃんと言っといてくださいよぉ。お蔭で何か気まずくなったじゃないですか。
「えと、何かごめん……迷惑だったか?」
「い、いや……これで良い。それより、部屋は一夏が頼んだのか? 私と一緒がいいと……」
「いや。多分千冬姉さんが決めたと思う。親しい人同士なら逆に安心できると思ったんじゃない?」
「千冬さんが? そうか……確かにな」
そう言えば彰人のルームメイトはどんな人なんだろう? 明日聞いてみよう。
「……まあ何はともあれ、こうして同室になったんだ。改めてよろしくな、一夏」
「こちらこそよろしく、箒。俺と一緒に居て、何か不便だったら言ってくれ」
「大丈夫だ。不便の1つや2つ、こ…恋人と一緒に居られるなら、安いものだっ」
箒は顔を真っ赤にしながら、声を絞り出すようにして言った。……何この可愛いの。某フラッグファイターみたく抱き締めたいんだけど。
その後、俺はどうにか自分の衝動を抑え込み、箒と様々なルールを決めてそれぞれのベッドで寝た。