ISG~インフィニット・ストラトス・ガンダム~ 作:レイブラスト
試合当日の第三アリーナのピット。今までにオルコットさんのIS情報を頭に叩き込み、様々な戦闘パターンを想定してイメージトレーニング等を俺達は行ってきた。後は専用機が到着するのを待つだけ何だが……。
「……なあ彰人」
「……一夏」
「「俺等のIS、来るの遅くね?」」
そう、俺と一夏の専用機がまだ来てないのだ。いくら原作通りとは言え、試合直前に到着するのは色々とまずいんじゃないか? 訓練機を借りてなかったら、ISを練習で動かすことすらできないし。
「心配するな、試合前には到着するさ……多分」
「……余計に不安を煽ってどうするの?」
傍に立っている箒ちゃんと簪さんも心配そうに到着を待っている。ここに居るのは俺達の試合を近くで見てみたいかららしい。
ちなみに試合は俺か一夏のどちらかが先にオルコットさんと対決した後、残ったもう片方がオルコットさんと対決。最後は俺と一夏の直接対決になると千冬さんが言ってた。オルコットさんが連戦するのは、ハンデだとか。
そう考えていると、こちらに近づく足音が聞こえた。
「お、織斑君矢作君織斑君矢作君っ!」
器用に俺と一夏の名字を交互に呼びながら全力疾走してきたのは、山田先生だった。いつも慌てている様子だが、今は更に慌てふためいていた。そのせいか、まともに会話できる状況でもなくなっている。
「山田先生、まずは落ち着いて下さい」
「深呼吸でもしたらどうですか?」
「そ、そうですね。す~~は~~、す~~は~~」
一夏の言葉に従い、山田先生は深呼吸をして呼吸を整える。原作では一夏が悪ふざけ(何かは忘れた)をしたみたいだけど、ここでの一夏はそんなことはしない。
「落ち着きましたか?」
「は、はい。どうにか……」
((((本当に大丈夫か? この人))))
俺を含めた4人の心が偶然にも1つになった瞬間であった(知る由もなかったが)。
「……それで、やっと説明できる訳か?」
「はい……って! 織斑先生!? 何でここに!?」
背後に居る千冬さんに驚いて山田先生が飛び上がる。そこまで驚きますか?
「山田先生だけでは心配と思って後を追ったのだが……案の定だったな」
全く持って否定できません。
「そ、そ、それよりも2人とも! 来ました! 織斑君と矢作君の専用ISが!」
誤魔化すように山田先生が言ったことに、俺達は「やっとか……」とため息をついた。
「矢作、まずはお前から準備しろ。アリーナを使用できる時間は限られてるからな……ぶっつけ本番だが、できるか?」
「……できなくても、やります」
一夏より先に出撃するという状況に驚きつつ、俺はガゴンッ、と音を立てて開くピット搬入口を見つめた。防護扉はゆっくりと動いていき、やがて向こう側が見えてきた。
俺の目の前には、羽根を生やしたトリコロールカラーの機体があった。その後ろには、別のトリコロールカラーの機体が見える。
「これが矢作君の専用機、『ウイングガンダム』です」
「これが……」
操縦者が乗っていないので佇んでいるだけにも見えるが、俺にはコイツが待っているかのように思えた。そして直に触れた時、俺はコイツの計り知れない生命力を感じた。
「矢作、すぐに装着しろ。時間がないからフォーマットとフィッティングは実戦でやってもらうぞ」
「わかりました」
「背中を預けるように、そうだ。座る感じでいい。後はシステムが最適化をする」
言われた通りにウイングガンダムに体を任せると、装甲が閉じていき全身が覆われた。M1アストレイやGN-XⅣとは違う、まるで自分の体であるかのようにコイツを感じた。
「ISのハイパーセンサーは問題なく動いているな。気分はどうだ?」
「大丈夫です。行けます」
おっとそうだ。出撃前に武装のチェックをしておこう。どれどれ……頭部バルカンに肩部マシンキャノン、ビームサーベルにバスターライフルか。TVで見たウイングガンダムの設定そのままだな。……だからって、最大出力時のバスターライフルの弾数が3発なのはいかがだろうか? 今更気にしても居られないけど。
「……一夏、箒ちゃん、簪さん。この試合、必ず勝ってくる!」
バスターライフルを右手に持ちながら、力強く宣言する。
「ああ、信じてるぜ。お前の勝利を!」
「自分の力を信じて、全力でな」
「……私達は、ここで見ているから。思いっきり戦ってきて」
一夏達の激励を受けた俺は機体をバード形態に変形(俺の体は
「矢作彰人、ウイングガンダム。出る!!」
スラスターを全開にし、発進した。
「あら、やっと来ましたのね。逃げたかと思いましたわ」
自分のIS―――『ストライクフリーダムガンダム』を身に纏ったオルコットさんが待っていた。
「逃げるだと? まさか!」
「ふんっ……まぁ、いいですわ。矢作彰人、貴方に最後のチャンスをあげますわ」
「チャンス?」
「私が一方的な勝利を得るのは自明の理。ですから、ボロボロの惨めな姿を晒したくないのなら、今この場で謝るというのなら、許してあげますわよ」
オルコットさんが挑発をするのと同時にウイングガンダムから警告が入る。
『警告。敵IS操縦者、射撃モードに移行。セーフティロックの解除を確認』
やる気は十分ということか。……それにしても言ってくれるじゃあないか。俺に逃げろだと? 面白い……!
「ソレが戦いのゴングと言うのなら、こちらも全力で当たらせて貰う!!」
「……そうですか。では残念ですけど、お別れですわ!!」
オルコットさんはビームライフル二丁を素早く連結させてロングライフルモードにすると、引き金を引いた。
「っ!!」
考えるより体が先に動いた……映画みたいな例えだが実際にそのようなことが起き、スラスターを稼働させ弾丸を右に移動して避けた。
弾速はGNロングライフルとほぼ同じか。練習しといてよかったぜ。
「なっ…!?」
避けられたのに相当驚いたのか、装甲越しでも目を丸くしているのが読み取れた。
「くっ……! さあ、踊りなさい! 私、セシリア・オルコットとストライクフリーダムが奏でる
自らを鼓舞するかのように力強く叫ぶオルコットさん。しかし、
「だったら終わらせてやる。君の
俺が叫んだ瞬間、ビームライフルから次々と弾丸が放たれる。どれも狙いは正確だ。代表候補生は伊達ではないということか。
だが俺は、スラスターの向きを調整して右に左にと避けていく。避けきれないと判断したものは左腕のシールドで防御し、機体そのもののシールドエネルギーは減らさない。
……さて、観客が何だかヒートアップしているが、オルコットさんは目に見えて焦りが生じているようだった。狙いが明らかに荒くなっている。
(これは攻撃のチャンスと見ていいな……!)
スラスターを噴かしてオルコットさんの真下に移動し、ビームサーベルを引き抜くと更にスラスターを利用して大きくジャンプ。ストライクフリーダムに接近して一閃し、落下しつつ武器をバスターライフルに持ち替えると最大出力で放った。……さすがにこれは回避されて掠めただけだった。
「きゃっ!? この……生意気な!!」
オルコットさんは今度は背部に装備されている8つの無線式兵器、『スーパードラグーン』を全機展開し、死角を含んだオールレンジ攻撃を開始した。どうやら本気になったようだ。
俺もスピードを上げ、攻撃を回避したりシールドで防いだりした。
「ぐあっ!?」
死角から放たれたレーザーが直撃する。しかし動きを止めるわけにはいかない。一斉攻撃を受ける可能性が大だからだ。
しかし、ただ避けているだけでは終わらない。動き続けるドラグーンも攻撃の際には一瞬だが停止する。そこを狙い、マシンキャノンでドラグーンを一機破壊する。直後にレーザーを食らうが、構わずオルコットさんに向けてバスターライフルを通常モードで放つ。
「っ!?」
オルコットさんは咄嗟に左腕でビームシールドを展開して防いだ。その隙にマシンキャノンでもう一機を破壊する。
(やはり他の武器との連携はできないか……)
残り6機になったが、まだ向こうに分がある状況だ。このままではいずれジリ貧になるだろう。……さて、まだいけるか?
同時刻、アリーナ制御室にて
千冬SIDE
ここでは私や山田先生、箒、簪、そして一夏が彰人とオルコットの試合を大画面モニターで見ていた。
「や…矢作君、凄いですね……」
「うん……!」
「あれで本当に初心者なのか……!?」
興奮気味に言う3人。その気持ちは私にもよくわかる。
「確かに、いくら鍛えたと言っても素人の動きとは思えないな。しかも、初期形態の状態でだ……全く、恐ろしさすら感じる」
「……………………」
「一夏、どうしたんだ?」
聞こえてきた箒の言葉にふと一夏を向くと、一夏は画面を……正確には彰人の動きをじっと見ていた。
「どうした織斑? 何か気になることでも?」
「あ、いえ。ただ………彰人の奴、どうも機会を伺ってるように見えて……」
「何? どういう…………! まさか?」
私は再び画面を見た。一夏と私の感じたことが正しければ、彰人は―――敢えて初期形態で戦っていることになる。
そしてそれが正しいかのように、ウイングガンダムは観念したようにその姿を光り輝かせた。
彰人SIDE
「……ふぅ」
『フォーマット及びフィッティングが完了しました。確認ボタンを押してください』……この表示を無視し続けるのは中々にきつかったが、そろそろやめにするか。いい加減拘ってもいられないみたいだし。
俺は一旦機体を停止させる。
「ふ、ふふ……よ、ようやく諦める気になりましたのね。ですが、もう容赦は「1つ、君に謝らなければいけないことがある」え…?」
「俺は試していたんだ。代表候補生である君相手に、この姿でどこまでやれるかを」
「? どういうことですの?」
まるで意味がわからないと言ったように首を傾げるオルコットさん。やっぱそうなるよな。
「けど、そんな拘りはもう捨てる。形振り構ってはいられないからね…………」
そう言うと、俺は表示されたボタンを押しながら叫んだ。
「変身!」
その直後だった。ウイングガンダムが光に包まれたのは。光の中で俺は、ウイングガンダムが形を変えていくのを感じた。背部の翼やシールドの形状にバスターライフルの本数、その他細かい部分の造形が変わっていく。
そして光が収まった時、俺の機体は―――ウイングガンダムゼロになっていた。