ISG~インフィニット・ストラトス・ガンダム~   作:レイブラスト

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31th Episode

「今という~、風は~……ん?」

 

鎧武のopを歌いながら部屋に戻っていた時、視界の端に見知った人物が走って来るのが見えた。

 

「簪さん? どうしたの、そんなに慌てて」

 

「……あの、彰人……前に言ってたことの返事なんだけど……」

 

返事? ああ、ISを作る云々のアレか。やべぇ、俺忘れかけてた。自分で言ったことなのに。

 

「……その……手伝ってほしい。ISを作るのを」

 

「……いいの?」

 

「……うん。彰人は優しくて、強くて、カッコよくて……そんな彰人が、手伝ってくれると……嬉しい」

 

おおう……中々に破壊力のある言葉&表情(多分照れてる)ではありませんか。思わず勘違いするところだったよ。何にだって? 全部言わせんな。

 

「わかった。どこまでできるかわからないけど、やれるだけのことはやってみるよ」

 

「……うん……あ、ありがとう……」

 

そこで照れに限界が来たのか、簪さんは踵を返して去ってしまった。……部屋、目の前なんだけど……。

 

「気にしたら負けか……」

 

結論づけ、部屋に入る。ベッドに腰掛けて待機状態のウイングゼロを外して隣に置く。

 

「これから長い付き合いになるけど、よろしく……相棒」

 

ウイングゼロを撫でながら言う。気のせいかもしれないが、まるで俺に応えてくれたかのように輝いて見えた。

 

 

コンコン

 

 

「はーい!」

 

突然聞こえてきたドアをノックする音に返事をして、俺はドアを開ける。簪さんかな?

 

「あ、あの……ごきげんよう……」

 

「あ、どうも……」

 

違った、オルコットさんだった。

 

「ちょっと……よろしいでしょうか?」

 

随分しおらしくなってるけど、どうしたんだ? 俺に言われて深く傷ついたとか? ……あり得るな。

 

「いいよ。まあ立ち話も何だから……中へどうぞ」

 

「お、お邪魔します……」

 

オルコットさんを部屋に招き入れると、少し小さめの椅子へと案内して俺もやや小さめのテーブルを挟んで椅子に座った。

 

「さて……今日はどういったご用件で?」

 

麦茶を入れた湯飲みを差し出しながら、問いかける。オルコットさんは湯飲みを口に運んで飲むと、真剣な眼差しで見つめてきた。

 

「その、今日は彰人さんに謝りに来ました」

 

「……ん?」

 

俺は驚いた。彼女がその場で立ち上がったのもだけど、俺を名前で呼んでいたことにだ。

 

「この度は男性を軽視し、彰人さんや一夏さんを侮辱するような発言をしてしまい、申し訳ありませんでした。後日、クラスの皆様にも改めて謝罪いたします」

 

そう言った彼女からは、心からの気持ちであるということが強く伝わってきた。……まあ、俺はもう怒ってないけど。逆に俺の方が謝らんといけないことがあるし。

 

「……確かに、謝罪を受け取った。今度は、俺が君に謝罪する番だな」

 

オルコットさん同様に立ち上がると、頭を下げた。

 

「教室での失礼な発言、申し訳なかった。どうか、許してください」

 

「そ、そんな……あれは私を戒める為に……」

 

「そうだとしても、だ。君と戦って、俺は君の強さを実感した。対抗策を講じていなければ、あの場で負けていたのは俺達だった………だから、俺は君に勝てたことを誇りに思っている」

 

「……!!」

 

続けてそう言うと、オルコットさんは目を見開き……瞳から涙を零し出した。

 

「っ!? ど、どうした!? 何か、気に障るようなことでも―――」

 

「い、いえ……ただ、嬉しくて……チェルシー以外に、私と向き合ってくれる人は、いなかったから……」

 

「え……」

 

「お父様と、お母様が……急死してから、知らない人達が家に来て……」

 

「…………」

 

「その日から、必死に頑張っても、日本に来ても……ずっと、怖くて……もしばれたらと思うと、それも怖くて……彰人さんにも、一夏さんにも、皆さんにも……あ、あんな酷いことを……!」

 

……これが、オルコットさんが抱え込んでいたことか……彼女は押し潰されそうな重圧の中を、生きてきたんだな…………なら、俺にできることは1つだ。

 

「大丈夫」

 

彼女の手を優しく握りながら、目を合わせる。

 

「その気持ちを、想いを、みんなに伝えよう。俺も一緒に謝るからさ。……だからもう泣かないで。君は―――独りじゃないから」

 

「!! あ……あぁぁぁぁぁ!!」

 

オルコットさんの涙腺は完全に決壊したらしく、俺の胸に飛び込んで泣きじゃくってしまった。俺は彼女の背中を、優しく撫でてあげた。

 

 

 

 

 

 

 

「ええと……今日はその、ありがとうございました」

 

ドアの前に立ち、ぺこりとお辞儀をするオルコットさん。目元は腫れぼったくなっていて、少し恥ずかしげだが、晴れ晴れとした表情を浮かべていた。

 

「もう、大丈夫なんだな?」

 

「はい」

 

俺が尋ねたことに、少し顔を赤らめながら答えてくれた。……彼女は、運命に屈せず必死で戦っている。紛れもない強者だ、そう感じた。

 

「それと、何ですが……その……私のことは『セシリア』と名前で呼んで下さい。私も、これからは『彰人さん』とお呼びしますわ」

 

これは……俗に言う、デレたという奴か? ともかく、彼女が言うんなら、本当に呼んでいいんだろう。…向こうから先に許可してくれるとは思ってなかったが。というか、凄い可愛いんだが。

 

「ああ、改めてよろしくな。セシリア」

 

「こちらこそ、宜しくお願いしますわ」

 

そう言って、俺達は握手を交わした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌朝のSHR。

 

「それでは、一年一組のクラス代表は織斑君に決定です。一繋がりでいいですね」

 

山田先生の発言に、クラスの女子達も大いに盛り上がっている。ちなみに当の本人は、別段嫌な顔はしていない。というのも、事前に俺と一夏で話し合い、了承を得た上で俺が辞退したからだ。一夏は最初難色を示したものの、「お前が代表になった方が、クラスのイメージが上がる」、「代表戦で多くの実戦経験を得られる」と言ったら納得してくれた。一夏自身興味を持ってたようだし、後腐れなく決まった。

 

「あの、織斑先生。少しよろしいでしょうか?」

 

その時、セシリアがおずおずと挙手をした。

 

「オルコットか。どうかしたのか?」

 

千冬さんが問うと彼女は立ち上がって教卓まで進み、頭を下げた。

 

「この度はクラスの皆さんだけではなく、日本の方までも侮辱する発言をしてしまい、大変申し訳ありませんでした。深く謝罪いたしますわ」

 

いきなり謝ったことに周りが騒然となる。俺は一夏とアイコンタクトを取ると、一緒にセシリアの隣に移動する。あの後彼女は一夏にも謝りに行ったようで、今回のことで一夏と俺は打ち合わせをしていたのだ。

 

「戸惑うのは最もだと思う。けど、俺からもお願いする。どうか、セシリアを許してくれ」

 

「頼む、この通りだ」

 

俺と一夏も揃って頭を下げた。これで許してくれるだろうか……?

 

パチパチ……

 

そう思っていた時、拍手が鳴った。思わず顔を上げると、一番ご立腹だった箒ちゃんだった。次にのほほんさん、相川さん、谷本さんが。そして全員が拍手をして、受け入れてくれた。

 

「オルコット」

 

「は、はい」

 

「今回のことで懲りたようだから、私から言うことはない。これからは代表候補生としての肩書きを理解し、精進していくように。わかったな?」

 

「はい……!」

 

千冬さんの言葉にセシリアは力強く答え、それを聞いた千冬さんは満足そうにしていた。

その後、俺達3人はそれぞれの席へ戻っていった。

 

「クラス代表は織斑一夏に決定だ。異存がある者は……いないな。織斑には、今後の頑張りに期待させてもらう。それでは授業を始めるぞ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちゃんと仲直りできて、良かったな」

 

「全くだ」

 

放課後。俺達以外に誰もいない教室で、今日あったことを話していた。

 

「セシリアにも仮面ライダーは合うんだろうか?」

 

「どうなんだろう。人によって差があるから、どうにも言えないな」

 

そう言っていた時、急に一夏が真剣な顔つきでこっちを見てきた。え、何?

 

「彰人ってさ……女子のこと呼ぶ時って、大抵さんかちゃん付けだよな。なのに、何でセシリアだけ呼び捨てな訳?」

 

「っ……!」

 

やっぱ気づかれてたか……さすがは親友だ。

 

「言わないと、ダメ?」

 

「ダチ同士で隠し事はなしって、聞いたことがあるぜ」

 

「しょうがないなぁ……誰にも言うなよ?」

 

渋々ながら、俺は一夏に話すことにした。…………余談だが、後に俺はこの時周りをちゃんと確認しておけばと後悔することになった。

 

 

セシリアSIDE

 

(いけません、私としたことが……教科書を忘れてしまうなんて)

 

寮の部屋に戻っている途中で忘れ物に気づいた私は、教室の前に来ていた。教室からは彰人さんと一夏さんの話し声が聞こえていたが、私は特に気にも止めずにドアを開けた。

 

 

簪SIDE

 

(あ、彰人と一夏の声だ)

 

教室から出て寮に行こうとした時、私は偶然彰人達が一組で何かを話しているのを聞いた。

 

(何を話しているんだろう?)

 

少し気になった私は、それとなく一組の教室の前をゆっくり歩いた。オルコットさんが教室に戻ってきたが、私は忘れ物でもしたんだろうと思って気にしなかった。

 

 

彰人SIDE

 

「俺さ……呼び捨てするなら好きな人って、勝手に決めてるんだ」

 

「ほぅ。てことは……」

 

「そうだ。俺は―――」

 

ガラッ

 

「―――好きなんだよ。セシリアのことが」

 

「え……」

 

「……え……」

 

「「ん?」」

 

突然聞こえてきた声に、一夏と同時に振り向く。そこには……セシリアが居た。

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