ISG~インフィニット・ストラトス・ガンダム~ 作:レイブラスト
どうも皆さんこんにちは、矢作彰人だ。ただいま絶賛困惑中だ。というのも、俺が一夏に自分の秘密を打ち明けた時、当の本人(セシリア)が教室の入り口に立ってポカンとしていたからだ。多分忘れ物でも取りに来たんだと思うけど……完全に聞かれたようだ。
(どないしよう……)
顔を赤らめたまま固まるセシリアを見て真剣に打開策を考える。
「彰人……こうなったらさ、セシリアに全部言った方がいいんじゃないか?」
「え!?」
一夏の提案に、俺は素っ頓狂な声を上げた。そりゃそうだ、前世も含めて誰かに告白したことなんてないんだし。
「俺もこんなことになるとは思ってなかったし、俺自身今も少し驚いてるけど……言わないと後悔するって言ったのは、お前だぞ?」
「っ…そうだったな……!」
「頑張ってな。俺、ここで見守ってるからさ」
「それはそれで恥ずかしいんだが……まあいいか」
一夏の言葉でしゃんとした俺は、セシリアへ向かってゆっくり歩いていく。適当な距離まで近づいて言おうとした時、先にセシリアが口を開いた。
「あ、彰人さん……その……先ほど仰っていたことは、本当なのですか……?」
顔を赤らめて戸惑いながら、尋ねてくる様子に俺は胸の鼓動が速くなっていくのを感じた。落ち着け……こういうときこそ慌てるな。
「……ああ。
後ろで一夏が「あの時かぁ、道理で」と納得した声を上げているのが聞こえた。
「改めて言おう。セシリア、俺は君のことが……好きだ。俺と、つ、付き合ってください!!」
顔から火が出そうな思いで、俺は想いを伝えた。彼女はどう応えるだろうか? ……無理かな?
セシリアSIDE
彼…彰人さんからの告白を受けた時、私の中には様々な想いが渦巻いていた。驚き、戸惑い、そして……歓喜。それを感じた時、私は自分が彰人さんの想いに応えてあげたいと思っていることに自覚した。そう、私もいつの間にか好きになっていたんだろう。私に向き合ってくれた、彼のことが……。
「その、彰人さん……本当に、私でよろしいんですか?」
不安になって、思わずそう聞いてしまう。
「ああ。君だから、俺は好きになったんだ。だから…君さえよければ……」
そう言う彼も、どこか不安げな様子だった。少し安心した私は、自分の想いを伝えることにした。
「はい……。私も、彰人さんのことが好きです。ですから、喜んで……」
「っ!! あ、ありがとう……セシリア…俺も、好きだ……!」
彰人さんは目を丸くした後、そう言ってきた。私の中には、いとことでは言い表せない嬉しさが次々に溢れてきていた。……初恋がすぐに実るなんて、まるでおとぎ話みたいで、素敵とふと私は思った。
彰人SIDE
「そうだ。どうせだから、キスしちゃいなよ」
「「えっ!?」」
両想いになった喜びを噛み締めている最中、一夏が突然そんなことを言った。
「大丈夫だって、俺は見ないようにしてるから」
「いや、だけど……」
一夏が言うことに嘘はない。わかってはいるが、さすがに恥ずかしさもあるのでどうしようかとセシリアを見やるが……。
「………………」
(え、何その目?)
何故か顔を真っ赤にさせ、何かを期待する目で彼女は俺を見つめていた。……これはアレか? やってもいいという合図か?
「えと……いい、のか……?」
「は、はい……キス…どうぞ……」
緊張のあまり辿辿しい口調になっているのに可愛らしさを感じながら、俺は自然と顔を近づけていった。そして、後数ミリという距離まで近づいた時―――
「だっ…ダメーーーーーーーーッ!!」
「「っ!?」」
「うおっ!? 何だ!?」
突然聞こえてきた悲鳴のような叫び声に俺とセシリアは反射的に声のした方向を向き、一夏は思わず声を上げ、その方向を見た。
「……簪、さん…?」
何故か、涙目になっている簪さんが入り口のところに立っていた。
簪SIDE
「―――好きなんだよ。セシリアのことが」
「……え……」
彼が言ったことに、私は息を詰まらせた。2人ともこっちを見てきたが、丁度物陰にいたのでオルコットさんだけが気づかれたようだ。けど、そんなことより大事なことがある。
彼は、オルコットさんのことが好きと言った。私じゃなかった……私は、フラれたのだ。告白もしてないし、彼だって知る由もないのだが……けど、悲しかった。涙がどんどん溢れてくる。必死に手で拭いながら、私は今度からどうやって顔を合わせればいいんだろう? と考えながらふと彼らを見た。
彰人とオルコットさんは―――唇を合わせようとしていた。簡単に言えばキスだ。一夏は反対側を見て、見ないようにしている。私はもう終わったことだと諦め、立ち去ろうとした……けど、同時に諦めたくないという感情が自分の中にあることに気づいた。何故? 彼の想いは私には向いてないのに。だけどせめて、自分の想いだけは……伝えたい……!
「だっ…ダメーーーーーーーーッ!!」
気がつけば、私は2人を制止するかのように叫んでいた。
「「っ!?」」
「うおっ!? 何だ!?」
3人が驚いたようにこちらを見る。……どうしよう……やっちゃった……。
「……簪、さん……?」
「えっと……どなたですか?」
「彼女は、俺のルームメイトの更識簪さん。三組の子で、日本の代表候補生だけど……どうしてここに……」
もう後戻りはできない……こうなったら、言うしかない……!
「………って…………から……!」
「ん?」
「……私だって、好きだから……彰人が、好きなんだから……!!」
彰人SIDE
「……私だって、好きだから……彰人が、好きなんだから……!!」
―――しばし、頭がフリーズした。そのまま十秒程時が流れる。
「え……え? えぇぇぇぇぇ!?」
俺は驚きのあまり、叫んで一歩下がっていた。
「だってそんな、まだ会ったばっ……いや、それを言ったらセシリアとも出会ったばっかか!」
「いやそんなこと言ってる場合じゃないぞ!? どうするか早く考えないと!」
「そ、そうだな! だがその前にまずは落ち着いて……」
若干パニクってる俺と一夏は一度深呼吸をして感情を落ち着かせた。
「……よし、俺は大丈夫だ。彰人は?」
「落ち着いたよ。それと……お前が長らく抱えてた悩みが、完全に理解できた……」
「だろうな……」
告白して両想いになった直後に俺を好きだという女の子がもう1人現れたんだ。一夏の状況と正に同じ状況過ぎてある意味驚く。
それは一先ず置いといて、恐る恐るセシリアと簪さんを見てみると、互いに睨み合う…………こともなく、何かを話し合っていた。はて、何だろう?
「なるほど……つまり貴女は、自分にとってのコンプレックスや趣味を認められたことに加え、彼の真っ直ぐな意志を見たことで好きになったと……」
「……うん」
「気持ちはわかりますわ。痛い程に……私だって、理由が同じなんですもの。…………でしたら、とても私には無下にすることは………………っ!」
そこまで言った時、セシリアは俺を見た。思わずビクッとなる。
(彰人。とりあえず、覚悟の1つぐらいは決めといた方がいい)
(言われなくてもそうするさ)
こんな状況で覚悟しない奴等、果たして居るものか。……原作一夏ならやりかねんか……?
「彰人さん。1つお願いがあるのですが、よろしいでしょうか?」
「はい、何でも言ってください」
ついそう答えたが、一体何をお願いされるんだろう? ……少し怖い気がする。
「更識さんの想いにも、応えてはくれませんか……?」
「「え?」」
「……マジ?」
予想の斜め上を行った発言に俺と簪さんはハモって驚き、一夏はポカンとしていた。だってセシリアが言ったことって、つまり二股してもOKってことだよ!? そりゃ驚くさ!!
「いいのか? 君が言ってることは……」
「ええ、わかっていますわ。わかった上で、言ってますの。……私のせいで、私と同じように貴方を好きになった人が悲しむなんて……耐えられませんから……」
「…………………」
「勿論無理にとは言いませんわ。でも更識さんも、可能なら彰人さんと想いを通じ合わせたいでしょう?」
「……わ、私は……」
言い淀んだ簪さんは、小さく首を縦に動かした。
「簪さん……」
「……やっぱり私、諦めきれないみたい……オルコットさんが言ったみたいに、望んでいるもの。彰人にとって二番目でもいいから、彰人に想いを受け取って欲しいって……」
不安げな表情で告げた簪さんに、俺の心は大きく揺れ動いた。どうする? 2人はいいと言っている。なら…………しかし、日本は重婚制度じゃない。事実婚ならできるかもしれんが……ああ何だろう、考えすぎて混乱してきた。……仕方ない。こういう時は―――
「おい彰人、どこに電話するんだ?」
「……兄ちゃんとこだ」
放課後になった直後、俺は千冬さんから兄ちゃんからの伝言を密かに預かっていた。『何か困ったことがあったら、遠慮なく相談しろ』……まさかこんなにも早く相談するとは思ってもなかったけど、許してくれ。
『はいもしもし、矢作省吾だが。早速悩み事か、彰人?』
「うん、実は―――」
俺はセシリア達を見やると、自分の身に起こっていることを話した。
『なるほど……要するに本人達は重婚の許可出してるけど、法律とかを考えてブレーキがかかってるってことか』
「そうなんだ。俺としては、2人ともに応えてあげたいんだけど……」
『お前にその意志があるなら、ソレを伝えてやれ。法律の方は俺が何とかするから』
「え、何とかするって……」
『丁度法律を改正しようと思っていてな。女尊男卑の社会で男性の数が減って女性の未婚者が増えてるから、それを理由にすれば大丈夫だ。最大人数は10人程にする予定だが……まっ、さすがにそこまで増やすつもりはないだろう』
「当たり前だよ」
そこまで増えたら逆に驚くわ。どこのギャルゲーかエロゲーの主人公だよ。
『そんじゃ、切るぞ。3人分のドレスの予約をチェックしなきゃいけないし……』
「何の話だ?」
その答えを聞く前に、電話は切れてしまった。……まさか、兄ちゃんが法律変えようとしている理由って、本当は…………いや、兄ちゃんのことだ。さっきの理由も本心なんだろう。真っ直ぐだからな、省吾兄ちゃんは。
「答えは出たのか?」
「ああ。もう迷いはない……セシリアと簪さん。2人の想いを、受け止める。2人とも、愛してみせる……!」
「……あ、彰人……!」
「そう言うと思ってましたわ、彰人さん……!」
簪さんは泣きながら飛びつき、セシリアは微笑みながら近づき……同時にキスをしてきた。
「(ど、同時!? それは想定してなかった……)……ぷは……そ、その……キスありがとう。けど、ごめんな。俺、優柔不断みたいだからさ……フるなんて選択肢、選べなかったよ」
「……そんなことない。半ば押しつけた、私の方が……」
「まあまあ。どちらが悪いとかはいいではありませんの。それより、呼び方を変えませんと。簪さんともお付き合いなされるなら、その方がよろしいかと」
「確かにな」
「ていうか、セシリアってこんな聡明だったっけ? 印象ガラッと変わった気がするんだが……」
一夏よ、そこはツッコんではいけないところだと思うぞ。アレだ、恋する乙女は変革するとか覚えておけばいいんだ。きっと……多分。
「じゃあ、改めてよろしくな。簪」
「……こ、こちらこそよろしく、彰人。それに、セシリア」
「ええ、よろしくお願いしますわ。彰人さん、簪さん」
―――こうして、俺の(色んな意味で)濃い放課後は無事に終わった。……周りに軟弱者だとか言われるかもしけないけど、俺は甘んじて受け入れるつもりだ。言いたい奴には好きに言わせろ、だが自分の意志は曲げるな。剣道やってる時によく言われたから、すっかり染み付いている。
「……俺より後に告白してるのに、俺より先に解決してるし……何だかなぁ」
後ろで一夏が嬉しいようで羨ましいような顔をしていることには気づかなかった。