ISG~インフィニット・ストラトス・ガンダム~   作:レイブラスト

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37th Episode

試合当日。アリーナ管制室にいる俺達に、映像が届く。第一試合がこれから始まるのだが、その初っ端から一夏と鈴ちゃんの対決が行われるのだ。互いに臨戦状態で、気迫が充分漂っていた。

 

鈴ちゃんが纏っているISは、第3世代型ISの『アルトロンガンダム(TV版の方)』。中距離戦法を得意としており、武装は両柄にビーム刃を形成することができるツイントライデントに、背部の可動式ビームキャノンに両腕にある打突武器のドラゴンハング。そしてドラゴンハングに装備された火炎放射器、ドラゴンファイヤーだ。

 

「俺はアイツの訓練をあんまり見てやれなかったけど、果たして勝てるだろうか?」

 

「勝てますわ。私と箒さんで、互いに教え合いながら訓練したのですから」

 

若干の不安を感じながら言うと、セシリアが自信ありげに断言した。

 

「…それもそうだな」

 

「そう心配せずとも、一夏は必ず勝つさ」

 

「……私も、彼が勝つことを信じる」

 

画面の向こう側を見つめながら箒ちゃんと簪が言う。俺も信じて待っていよう。

 

『それでは両者、規定の位置まで移動してください』

 

アナウンスが流れ、一夏と鈴ちゃんが互いに5メートル程の距離感で向かい合うことになる。

 

さて、見せて貰おうか。一夏と鈴ちゃんの全力を―――!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一夏SIDE

 

『それでは両者、試合を開始してください!』

 

「うおおおらぁぁぁああああああ!!」

 

「はぁぁぁぁあああああああああ!!」

 

試合開始の合図と共に、互いの得物が刃を交える。鈴はツインビームトライデントを駆使して連続攻撃を仕掛けてくる。俺はGNソードⅡとGNソードⅢの二刀流と運動性で攻撃を捌きつつ、隙を突こうとする。

と、ここで鈴が鍔迫り合いの状態を解く為に一度距離を取った。

 

……待ってたぜ。この瞬間を!

 

「そこだ!!」

 

「なっ!?」

 

オーバーブーストを使用し、一瞬にして距離を詰めると二本のGNソードを勢いよく上段から振り下ろした。

 

「そうは……くっ!」

 

対する鈴はツインビームトライデントを頭上に上げて持ち手の部分で受け止めてきた。ダメージを与えることはできなかったか……。

再度距離が離れる。俺が再接近した時、鈴は両腕のクローを展開しながら叫んだ。

 

「やるわね一夏。でも、勝負はここからよ!!」

 

その直後、アルトロンの両腕が伸びた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彰人SIDE

 

「何だあれは……腕が伸びた?」

 

試合を見守っていた箒ちゃんが疑問を口にし、それに対しセシリアが答える。

 

「あれは『ドラゴンハング』ですわ。クローを展開しつつ腕を伸ばすことで本来届かない距離から相手を攻撃し、打ち出す際の勢いも攻撃の威力に加わる。ドラグーンと同じ第3世代兵器ですわ」

 

さらに簪が付け加える。

 

「……それにロック機能はハイパーセンサーを利用してる上に、ドラゴンハングには火炎放射まで装備されてるから実質的な射程はもっと伸びることになる」

 

「関節の稼働範囲がアレの射程範囲ってことだ。コイツは厄介だな……」

 

モニター画面を見ていると、一夏はGNビームマシンガンやGNソードⅢライフルモードで牽制しつつ様々な角度から接近を試みているが、その都度ドラゴンハングや火炎放射、ビームキャノンによる牽制を入れられ近づくことができない。遠距離攻撃が弱めのダブルオーライザーでは、中々本領が発揮できないのだ。

 

(トランザムを使えばどうにかなるんだろうけど、攻略法も見つけずに闇雲にやるのは危険だしな)

 

「一夏……」

 

思考している俺の隣で、箒ちゃんが心配そうに画面を見つめる。

 

「確かに苦戦しているようだな。だが私は、決して一方的に不利な状況ではないと思うが」

 

試合を見守っていて初めて口を開いた千冬さんは、周囲にとって予想してないことを言った。

 

「え、どういうことですか?」

 

「簡単なことだ。織斑は一見不利だが、少しずつ攻略法を掴んていっている。よく見るんだ」

 

山田先生の疑問に千冬さんはそう答える。俺達は言われた通りモニター画面に注目する。一夏はブーストを短めに多用して前後左右に動き、ロックされることを可能な限り避けながら接近し攻撃していた。

 

「先ほどまで攻め倦ねていたのに……急にどうしたんでしょうか?」

 

「至極単純な考えだ。目視によって自身がロックされるなら、目で追いつけないような機動で立ち回ればいい。……放たれた時にはもう遅い。しかし、放たせなければ勝機はある。それ故の行動だろう」

 

セシリアの疑問に、千冬さんが解説する。要はロックされなきゃいいってことだ。言う程簡単じゃないが。

 

「凄いなぁあの動き……稼働時間は俺と同じだってのに。やっぱ一夏は只者じゃないな」

 

「よく言う。お前こそその気になれば、あれぐらいの動きはできるだろうに。全く……時々、お前達が恐ろしく思えるよ」

 

そこは黙っててくださいよ千冬さん……。ほら、みんな口を噤んじゃったじゃんか。かつての世界最強…ブリュンヒルデの称号を持った人の言葉だから、笑い話にならないんですよ。……冗談めかしてるのはわかってるけど。

 

「ですが、これで一夏の勝ちが見えてきましたね」

 

「ああ。油断さえしなければ、決着は時間の問題だろう。アイツは詰めの甘い奴ではないから心配は無用だと思うが、焦って足下を掬われないか気がかりだな」

 

「あ……やっぱり織斑先生も、弟さんのことは心配なんですね?」

 

山田先生が場を和ませようと茶化したように言ったが……はっきり言おう。逆効果だそれは。

 

「…………………………」

 

千冬さんは無言で山田先生に向かい合うと、ほっぺを両手でぎゅーっと引っ張った。

 

「いひゃひゃ!? い、いひゃいですよ、織斑せんしぇい!」

 

「何て言ってるのかよくわかりませんよ、山田先生。はっきり喋って下さい」

 

「ご、ごめんなしゃい! ごめんなしゃい、織斑せんしぇい! ひゃかすことをひってすみましぇんでひた!!」

 

涙目になりながら山田先生が必死で謝ると、千冬さんはため息をついて手を離した。

 

「……私は身内がネタにされるのは嫌いなんだ。そのことをよく覚えておくように」

 

「ふ、ふぁい……」

 

頬を押さえながら言う山田先生にセシリア、簪、箒ちゃんは苦笑していた。……口は災いの元って、こういうことを言うんだろうな。

 

「……ん?」

 

モニター画面を見てみると、一夏が鈴ちゃんと真正面で向かい合っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一夏SIDE

 

「鈴、そろそろ決めるぞ」

 

GNソードⅢの切っ先を向けながら、俺は鈴に言った。

 

「っ…上等よ! 来なさい!!」

 

対する鈴も、ツインビームトライデントを右手に持って構える。緊迫した空気の中、ふと聞こえた小さな物音を切っ掛けに俺達は動き出した。

 

「はぁぁぁぁああああああああああああああ!!」

 

「うぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおお!!」

 

互いにブーストを全開にして接近する。だが―――

 

「トランザムッ!!」

 

俺はトランザムを発動し、機体速度をオーバーブースト以上に速めた。

 

「なっ、速い!?」

 

オーバーブースト状態に目を慣らしていた鈴は、見事に動揺している。この為にトランザムを温存していたんだ! 俺は鈴に急接近し、GNソードⅢを振りかぶった―――瞬間。

 

 

ズドォォォオオオオオオン!!

 

 

アリーナの中央に、強力なビーム砲らしきものがどこからか放たれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彰人SIDE

 

ビーム砲の衝撃に、俺は咄嗟に身構えた。来るのがわかっていても、こういうのは驚くもんだな。

 

「な、何!? 何が起きましたの!?」

 

「爆発か!?」

 

「……違う。何かビームのようなものが……!」

 

簪がそう言った瞬間、大出力のビームが再び放たれた。

 

「そんな……シールドレベルが4になってる!? しかも、扉が全てロックされてるなんて!!」

 

「織斑、凰―――」

 

山田先生の悲鳴に近い声の後に、千冬さんが一夏達に通信しているが、俺はそれよりもモニター画面に注目していた。ビームが放たれた地点をじっと見ていると、やがて煙が晴れて襲撃者の姿が露わになる。それを見た俺は、言葉を失った。

 

―――通常のISの二倍近くある漆黒の巨体。左腕に装着された巨大なシールド。胸部に存在する三門の砲口。不気味に光るツインアイ。

 

 

その機体の名は……サイコガンダム。

 

 

「っ……!!」

 

「あ、彰人さん!? どこに行く気ですの!」

 

次の瞬間、俺は格納扉に向かって走り出した。

 

 

 

 

(急がなければ……!)

 

通路を全力疾走した俺は、どうにか格納扉に辿り着いた。だが案の定、扉はロックされていた。

 

「なら、これで……!」

 

俺は何の迷いもなくISを展開すると、ツインバスターライフルの砲身を向けた―――。

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