ISG~インフィニット・ストラトス・ガンダム~   作:レイブラスト

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42th Episode

一夏SIDE

 

とある日。俺にとって重要なことが起きていた。それが何かは、目の前で荷造りをしている箒を見ればわかる。そう、部屋割りの変更だ。

 

「よし、これで全てだな」

 

「ああ……にしても折角慣れてきたのに、寂しくなるぜ」

 

「気にするな。元々そういう決まりだったんだからな。まあ、お前も彰人が共に居た方が気が楽だろう」

 

「え?」

 

「ん、何だその返事は? 私と彰人が部屋を交換するのではないのか?」

 

「あ、ああ。そうだったな。つい忘れてた」

 

「まったく、そそっかしいな」

 

危ない危ない……事前に彰人から聞いてたんで思わず言ってしまった。確か、今度来る転校生が編入してくるんだったな。

 

「そういえば一夏。今月は学年別個人トーナメントがあるんだそうだが」

 

「ああ。確かもうすぐだったな」

 

学年別個人トーナメントとは、IS学園生徒全員が強制参加となるIS対決トーナメント戦で、一週間かけて行われる。確か一学年が120名だったから、かなり大きい規模になる。正に一大イベントと言ったところだ。更に学年によって評価が分かれており、一年は先天的な才能評価で、二年は成長能力の評価、最後に三年は実戦能力評価だ。特に三年の試合はかなり大掛かりで、IS関連の企業のスカウトマンだけでなく、各国のお偉いさんが見に来る事もあるらしい。

 

「やはり、目指すは優勝か?」

 

「当然! 世界の頂点を目指す為の、大事な一歩だからな。そう言う箒こそ、優勝する気だろ?」

 

「ああ。訓練機というハンデはあるが、専用機持ちにも負けないように頑張るさ。一夏も、充分気をつけておいた方がいいぞ?」

 

「へぇ……言うじゃないか」

 

知らず知らずの間に、俺と箒の間に火花が散る。本気なのは箒も同じようだ。

 

「……ならさ、1つ賭けをしようぜ」

 

「賭けだと?」

 

「俺達のどっちかが優勝した時、俺は箒に、箒は俺に何か願いを聞いてもらうってのでさ」

 

「ほう、中々面白そうだ。いいだろう、その賭けに乗ってやる。……ところで、お前の願いは何かあるのか?」

 

「それを言っちゃうと面白くないんだが……特にないな。優勝した時にでも決めるよ。箒は?」

 

「そうだな……どうせなら、一夏とで、デートをするというのはどうだろうか……」

 

「っ」

 

顔を赤らめながら言う箒に、俺の胸が締め付けられた。……ったく、可愛いこと言いやがって。

 

「わかった。是非楽しみにさせて貰う」

 

「そ、そうか。私も楽しみにさせて貰うぞ、お前の願いを」

 

そう言って、箒は部屋を出た。……勝たなきゃならない理由が、1つ増えたな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日

 

彰人SIDE

 

俺と一夏が教室に入ると、クラスの女子達が何やら談笑していた。

 

「やっぱりハヅキ社製のがいいよね」

 

「え? でもあそこってデザインだけって感じじゃない?」

 

「そのデザインがいいのよ」

 

「私は性能重視でミューレイのがいいかな。特にスムーズモデル」

 

「あれかぁ……モノはいいけど、値が張るんだよね」

 

今日はISスーツの申込日なので、カタログを片手に色々な意見交換をしている。

 

「そういえば織斑君と矢作君のISスーツってどこのなの?」

 

「俺と彰人のは特注品なんだ。元々はイングリッド社のストレートアームモデルだったかな」

 

「見比べると、共通点が結構あるんだ」

 

ちなみにISスーツというのはIS展開時に着込んでいる特殊なフィットスーツのことだ。別になくてもISを動かすことはできるが、反応速度がかなり鈍るらしい。女子が着てると、正直目のやり場に困るが……原作と違ってISがガンダムそのものというのが幸いして戦闘中は全く気にならない。

 

「ISスーツは肌表面の微弱な電位差を検地することによって、操縦者の動きをダイレクトに各部位へと伝達。ISはそこで必要な動きを行います。また、このスーツは耐久性にも優れ、一般的な小口径拳銃の銃弾程度なら完全に受け止めることができます。あ、衝撃は消えませんのであしからず」

 

そこへ説明しながら現れたのは、山田先生だった。

 

「山ちゃん詳しい!」

 

「一応先生ですから……ってや、山ちゃん?」

 

「山ぴー見直した!」

 

「今日が皆さんのスーツ申し込み開始日ですからね。ちゃんと予習してきてあるんです……ってや、山ぴー?」

 

入学からおよそ二ヶ月。山田先生には様々な渾名がついていた。数えただけでも8つはあった筈。親愛の証なんだろうけど、一応年上なんだからダメだと思う。

 

「おいおい、先生相手にそんな渾名つけちゃダメだろ」

 

「完全に同級生感覚になってないか?」

 

「2人の言う通りですよ。教師を渾名で呼ぶのはちょっと……」

 

「えー、いいじゃん」

 

「まーやんは真面目っ子だなぁ」

 

「矢作君と織斑君も、真面目だねぇ」

 

「ま、まーやんって……」

 

うん、一向に直る気配はないな。一夏が言ったように、誰も山田先生を教師としてではなく同級生感覚で見ている気がする。

 

「あれ、マヤマヤの方が良かった? マヤマヤ」

 

「そ、それもちょっと……」

 

「もぅ…じゃあ前のヤマヤに戻す?」

 

「あ、あれはやめてください!!」

 

何だ? 山田先生が珍しく強い拒絶反応を見せたぞ。ヤマヤに何かトラウマ的なものでもあるんだろうか。

 

「と、とにかくですね。私にはちゃんと先生とつけてください。わかりましたか? わかりましたね?」

 

『『『はーい』』』

 

……絶対返事だけだ、これ。山田先生の渾名はどんどん増えていくだろう。俺の勘に、間違いはない。

 

「諸君、おはよう」

 

『『『おはようございます!』』』

 

ざわめく教室へ千冬さんが入って来ると、水を打ったかのように静まり返った。さすがとしか言いようがない。

 

「今日からは本格的な実戦訓練を開始する。訓練機ではあるがISを使用しての授業になるので各人気を引き締めるように。各人のISスーツが届くまでは学校指定のものを使うので忘れないようにな。忘れたものは代わりに学校指定の水着で訓練を受けてもらう」

 

水着か……余談だが、IS学園の指定水着は今は絶滅危惧種とされている紺色のスクール水着だ。……絶滅危惧種で思い出したが、体操服もブルマーだったな。何故マニア向けの物を選択したし……。ここに弾や数馬が居たなら、確実に狂喜していただろう。

 

更に余談だが、学校指定のISスーツはタンクトップとスパッツを併せ持ったシンプルな物である。何故学校指定の物があるにも拘らず各人で用意する理由は、ISは人それぞれの仕様へと変化する物であるから、早めに自分のスタイルを確立するのが大事だからだそうだ。全員が専用機を貰える訳じゃないから、どこまで個別のスーツが役に立つのかは難しいが、それはそれで各自の感性を優先させているらしい。……戦場に感性も何もあったもんじゃないと俺は思うが。

ちなみに専用機持ちの特権である『パーソナライズ』を行うと、IS展開時にスーツも同時に展開されて着替える手間が省ける。その時着ていた服は一度素粒子にまで分解されてISのデータ領域に格納される。これは便利だが同時に欠点がある。ISスーツを含むダイレクトなスタイルチェンジはエネルギーを消費し、戦闘開始時に万全な状態で挑めない。だから、緊急時以外は普通にISスーツを着てISを展開した方がいい。

 

「では山田先生、ホームルームをお願いします」

 

連絡事項を言い終えた千冬さんが山田先生にバトンタッチする。

 

「はい。では皆さん! 今日はなんと転校生を紹介します! しかも2人です!!」

 

『『『ええええええええええっ!?』』』

 

クラス中の女子達がざわめき立つ。まあ時期が時期なのもあるが、何の情報もなしに2人も転校生が来るんだから驚くのも当然だ。ちなみに俺と一夏は転校生が来ることは知っているので、大して驚いていない。

 

「では、入ってきて下さい」

 

「失礼します」

 

「失礼する」

 

山田先生に促されて2人の生徒が入ってくる。その姿を見て、ざわめきがピタリと止んだ。

 

 

 

 

何故なら―――転校生の1人が、男子だったからである。

 

 

 

 

「シャルル・デュノアです。フランスから来ました。この国では不慣れなことも多いかと思いますが、皆さんよろしくお願いします」

 

まずはその男子、デュノアがにこやかに挨拶をする。

 

「…お、男……?」

 

礼儀正しい立ち振る舞いに中性的な顔立ちで、金髪を首の後ろで丁寧に纏めている。スマートな体型で特に誇張した印象もなく、正に『貴公子』と言った感じだ。

 

が……彼は女性だ。実際見てみると男に見えることは見えるが…どこか不自然さを感じる。千冬さんもそうなのか、怪訝そうな顔をしている。

 

(なあ彰人……デュノアって奴、本当に男なのか?)

 

(いや。女だ)

 

(やっぱりか……)

 

疑問に思った一夏が小声で話しかけてくる。一夏にはただ『転校生が来る』としか言ってないんだが、初見の時点で感付くとは……何の疑いもしなかった原作一夏とは偉い違いだ。

 

「はい。こちらに僕と同じ境遇の方々が居ると聞いて、本国より転入を―――」

 

「き……」

 

どこからか女子の声が聞こえた。……ってこれはまさか!? 危機を感じた俺と一夏は耳を塞いだ。

 

『『『きゃあああああああああーーーーっ!!』』』

 

あ、危ないところだった……後少しタイミングが遅ければ、音波攻撃の巻き添えになっていた……。

 

「男子! 3人目の男子!!」

 

「しかもうちのクラス!」

 

「美形! 守ってあげたくなる系の!!」

 

「待ってたぜ、この瞬間をっ!!」

 

うちのクラスの女子達は元気が有り余ってるようで何よりです。……有り余り過ぎて、某超進化人類みたくなってる人もいるが。

 

「あー…騒ぐな。静かにしろ」

 

「み、皆さんお静かに。まだ自己紹介は終わってませんからね~!」

 

もう1人の転校生は……俺達からすると、懐かしい人物だ。俺や一夏と目が合うと、笑顔を見せてくれた。

 

「それでは、自己紹介をお願いします」

 

山田先生が促すと彼女はみんなに視線を向け、ピッと敬礼して自己紹介を始めた。

 

「ラウラ・ボーデヴィッヒだ。学校という場所に来るのは初めてなので、至らないところが色々あると思うが、皆と楽しく過ごせたらいいと思っている。好きなものは特撮作品だ。これからよろしく頼む」

 

周囲からパチパチと拍手が上がる。やはり原作と比較すると性格は大分丸くなってるようだ。正直とても嬉しい。

両者の挨拶が終わるとそれぞれ席に着く。

 

「よし、ではHRを終わる。各人はすぐに着替えて第二グラウンドに集合。今日は二組と合同でIS模擬戦闘を行う。解散!」

 

さて…早いとこ第二アリーナ更衣室に向かうか。女子達の迷惑になるだろうし。

 

「織斑、矢作。デュノアの面倒を見てやってくれ」

 

「「わかりました」」

 

っと、その前にこっちがあったな。

 

「君達が織斑君と矢作君? 初めまして。僕は―――」

 

「悪いが自己紹介は後だ。今は移動が先だ」

 

「急がないと、女子が着替え始めるからな」

 

そう言うと俺と一夏は共に歩き出した。

 

「とりあえず男子は、空いてるアリーナの更衣室で着替える。実習の度にこの移動があるから、早めに慣れてくれ」

 

「うん。わかった」

 

そのまま3人で並んで歩く。このまま何事もなければいいが……。

 

「ああっ! 転校生発見!!」

 

「しかも織斑君達と一緒!」

 

さすがにそういう訳には行かなかったか。各学年の各クラスの女子達が情報収集にやって来たのだ。人数はあっという間に増えていく……これはまずいな。

 

(一夏、アレをやるぞ)

 

(オーケー。任せろ)

 

チラッ…チラッ…

 

俺と一夏は見当違いな方向に向かって身を乗り出し、誰か合図を送ってるかのように振る舞う。すると全員の視線がそちらに集中する。

 

「(今だ!)デュノア、失礼する!」

 

「へぇっ!?」

 

俺はデュノアを背負うと、一夏と共に人数が少ない場所を一気に駆け抜けた。

 

「……あっ! 織斑君達が居ない!?」

 

「さっきのはミスリードだったのね!」

 

「矢作君が転校生を背負ってる……矢作君が攻めかしら? それとも敢えて受け?」

 

……俺には聞こえない。何も聞こえない。

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