ISG~インフィニット・ストラトス・ガンダム~ 作:レイブラスト
「午前の実習はここまでだ。午後は今日使った訓練機の整備を行うので、各人格納庫で班別に集合すること。専用機持ちは訓練機と自機の両方を見るように。では解散!」
起動テストを終えた一・二組合同班は、格納庫にISを移して再度グラウンドへ戻る。千冬さん達先生は連絡事項を伝えると、先に引き上げて行った。
「はぁー……結構重かったな」
「確かにな」
汗を拭いながら一夏と話す。訓練機はIS専用のカートで運ぶのだが、それには動力が一切ついていない。よって人力で運ばなければならない。
「それより、早く更衣室に行って着替えよう」
「ああ。シャルルも一緒に行こうぜ。俺達男子はアリーナの更衣室まで行かなきゃならないんだし」
「え!? ええと……僕は機体の微調整をしていくから、先に行って着替えててよ。時間がかかるかもしれないから、待たなくてもいいよ」
「別に微調整ぐらい今やらなくてもいいんじゃ……まぁ、君がそう言うんなら俺は行くよ。一夏、行こう」
「……ああ」
俺と一夏は互いに訝しみながら、更衣室へと歩を進めた。そして少しした時……。
「あの、彰人さん。ちょっとよろしいでしょうか?」
セシリアに話しかけられた。てか戻ってなかったんだ。けど俺はともかく、一夏を待たせる訳には……そう思っていたら。
「俺は先に行ってるから、遠慮なく話をしててくれ」
と言い残し、立ち去って行った。何も言わなくても伝わるとは……さすが親友。
「……で、何か用か?」
「彰人さん、その……今日の昼は空いていますか?」
「え? 空いてるけど、何かあるの?」
「そ、その、もしよかったらですけど…私と一緒に昼食を取りませんか?」
「昼食を?」
「はい。屋上で……簪さんにも、声を掛けますので」
「……わかった。ご一緒させて貰うよ」
「っ! あ、ありがとうごさいます!!」
俺が行くことを告げると、ぱぁっと顔を笑顔に輝かせる。やばい、可愛い……。
昼休み
俺はセシリアと簪と共に屋上にやってきていた。一般における高校の屋上というのは立ち入りができないのだが、
「「まさか、お前等までここを選ぶとはな……」」
一夏と台詞がハモる。そう、一夏、箒ちゃん、鈴ちゃんの3人も来ていたのだ。箒ちゃん達から誘ったらしい。
「考えてることは同じ、でしたのね」
「そういうことになるな……」
女子陣も互いに苦笑いしてしまう。更に―――
「あれ? なぁんだ、彰人達もここに居たんだ」
「やはりここだったか。道理で見当たらない訳だ」
シャルルとラウラちゃんまで来た。まずシャルルの理由は、
「だって2人ともどこかに行っちゃうから、僕1人で食堂に行ったら……ねぇ……」
とのことだ。これにはさすがに申し訳なく思った。……そういえば、俺が教室を出た直後にシャルルが三年の先輩に何か言ってたな。確か『僕のような者の為に、咲き誇る花の一時を奪うことはできません。こうして甘い芳香に包まれているだけで、もうすでに酔ってしまいそうなのですから』だった気がする。普通だと気障に感じる筈だが、シャルルが言うと全く違和感がない。これこそ驚きもんだ。
そしてラウラちゃんの理由は、
「久しぶりに2人と話をしたくてな。食堂に居ないので、探していたんだ」
と言っていた。……ラウラちゃんからすれば、俺達は初めてできた異性の友達だ。再会できた嬉しさは俺達以上なんだろう。なので2人はそのまま同席させることにした。シャルルは本当にいいのか不安げだったが、みんなも賛成してくれたのでそれはなくなった。
「ところで彰人さん。そちらのボーデヴィッヒさんとはどのようなご関係で?」
「そういえば私も気になってたのよね。もしかして、ドイツに居た時に知り合ったの?」
セシリアと鈴ちゃんがそう言って尋ねて来る。簪や箒ちゃん、シャルルも興味津々といった感じだ。
「鈴ちゃんの言う通り、ラウラちゃんとは第二回モンド・グロッソを観戦しにドイツに行った時に知り合ったんだ」
「改めて、ラウラ・ボーデヴィッヒだ。私のことはラウラと呼んでくれ。お前達のことは事前に見通した名簿で知っているが、名前で呼んでもいいだろうか?」
「いいですわよ」
「……いいよ」
「いいに決まってるじゃないの」
「ああ、構わないぞ」
「勿論いいよ」
「だとさ。良かったな、ラウラ」
「……ああ」
一夏が言うと、ラウラちゃんは嬉しそうに微笑んだ。が、直後。何か気になることがあったのか怪訝そうな表情になった。
「……ところで、彰人と一夏は彼女達とは特に親密な間柄のようだが、一体どのような関係なんだ?」
さすがにラウラちゃんにも俺達の関係は気になったらしい。ここはきちんと話しておいた方がいいだろう。
「そうだな。まずは俺から説明するよ」
最初に一夏が説明することになった。
「内緒にしといて欲しいんだが、箒と鈴は…俺の恋人なんだ」
「こ、恋人だと? 2人同時にか?」
「嘘っ……」
ラウラちゃんとシャルルは目を丸くしていた。普通そうなるよね。けど、この状態で俺についても話さないといけないから、辛いなぁ。
「ということはまさか、彰人も……」
「ああ。セシリアと簪は、俺の彼女だ」
「な、何だとぉおおおおおっ!?」
「うおっ!?」
戦慄しながら尋ねるシャルルに答えると、ラウラちゃんが突然大声を出しながら身を乗り出してきた。な、何事!?
「ど、どうしたのさ?」
「あ……す、済まない。よもや彰人までとは思ってなくてな……」
申し訳なさそうに謝るラウラちゃん。いや、君は悪くないんだ。悪いのは俺だから。
「驚くのも無理はないけど、早くご飯食べないと時間来ちゃうわよ。はいこれ、一夏と彰人の分」
そこへ鈴ちゃんが言って俺達にタッパーを渡す。中身は……
「お、酢豚だ!」
「凄く美味しそうだ」
「今朝作ったのよ。アンタ達、前に食べたいって言ってたからね。まあ……どちらかと言うと、一夏が主だけど」
苦笑しながら言う鈴ちゃん。一夏は鈴ちゃんの彼氏なんだから、そっちが優先されるのは仕方がない。俺にも作って来てくれたんだから、良しとしよう。
簪SIDE
(……ねえセシリア。あのラウラって子……)
私は彰人達に聞こえないように、こっそりセシリアに話しかけていた。
(ええ……私達と同じものを感じますわ。自覚してないだけで、彼女も彰人さんのことが好きなんでしょう)
(……やっぱり)
彰人の方で過剰な反応を見せていたし、それに無自覚かも知れないけど、彰人をチラチラと見ていたから間違いないと思う。
(……どうしよう、セシリア?)
(私は彰人さんが平等に愛して下さるなら構いませんが……簪さんは?)
(……私も、セシリアと同じ考え。彰人は優しいからまた凄く悩むと思うけど、きっと全てを包み込んでくれるから)
どんなことがあっても、彰人は私達を見捨てない。根拠はないけど、私はそう確信している。
(……それより早く弁当を出さないと、彰人達に変に思われるよ?)
(あ、そうでしたわ)
私達は内緒話していたことがバレないように、弁当を前に出した。
彰人SIDE
「あの、彰人さん。これを」
「……どうぞ」
今度はセシリアがバスケットに入ったサンドイッチを、簪が炒飯の入った保温弁当を差し出してきた。
「ほう、これはまた上手そうだ。頂きますっと」
両手を合わせて、まずはセシリアのサンドイッチを手に取る。見た目は上々だが……何故か嫌な予感がする。はて何だったか……思い出せない。
「(まあいいか)……あむ」
サンドイッチを口に含む。ふむふむ……これはまた刺激のある独特な味が―――
「って! ゲホッ…な、何じゃこの……ゲホッゲホッ、味は……!」
口の中に広がる刺激による痛みに悶絶し、咳き込んでしまう。そうだ、思い出した。セシリアは料理がとんでもなく下手だったんだ!
「あ、彰人さん!? どうしたんですの!?」
「お、おい彰人! 何があった!? 大丈夫か!?」
心配そうにみんなが駆け寄ってくれる。けど、一夏は箒ちゃんの唐揚げを食べる直前だった筈だ。ごめん……本当にごめん。
俺はお茶を飲んで何とか落ち着かせる。
「あ、ああ……大丈夫だ。それよりセシリア、このサンドイッチ…一口でいいから食べてみてくれ」
「え? いいですけど……何故ですか?」
「俺がこうなった原因が自ずとわかる筈だ……」
怪訝に思いながらも、セシリアは自分で作ったサンドイッチを口にした。途端に顔色が悪くなり、ケホケホと咳き込んでしまった。
「な、何ですのこれ……! こんな酷い味だったなんて……」
「……後で猛特訓する必要があるな、これは」
「はい……申し訳ありません…………………グスッ……彰人さんに、おいしい料理を食べてもらいたかったのに…………」
若干涙声になってるセシリアを、簪がよしよしと慰める。……何故だが知らないが、無性に庇護欲が湧いてきた。
「んぐんぐ……この唐揚げかなり美味いな! 混ぜてあるのはショウガと醤油と……ニンニクかな? 後は……何だろう?」
「あらかじめコショウを少量混ぜ込んである。それと、隠し味に大根おろしを適量だ」
「なるほど、道理でどっかで食べた味がした訳だ」
隣では箒ちゃんの料理を一夏が絶賛していた。
「……そういえばラウラって、特撮作品が好きだって情報があるんだけど」
「ん? まあな。主に仮面ライダーオーズが好きなんだが、如何せんドイツにはDVDがあまり売ってなくてな……」
「……じゃあ、今度貸してあげるよ。オーズ以外にも色々あるけど、それも見る?」
「な、何!? 持ってるだけではなく、他にもあると言うのか…で、では、お言葉に甘えさせて貰おう……!」
反対ではラウラちゃんと簪がすっかり意気投合していた。がっちり握手まで交わしている。