ISG~インフィニット・ストラトス・ガンダム~   作:レイブラスト

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45th Episode

シャルルとラウラちゃんが転校してきてから五日が経過した。今日は土曜日で、午前に理論学習をやって午後は自由時間になっている。それを利用して、一夏とシャルルとでIS戦闘の訓練をしようという話になった。

 

「じゃあまずは、一夏のダブルオーライザーと戦ってみたいな」

 

自身の専用IS『アリオスガンダム』を纏ったシャルルが言う。

 

「わかった。ただし、手加減はなしだぜ」

 

「望むところだよ」

 

ダブルオーを展開しながら闘争心を剥き出しにする一夏に、シャルルも雰囲気が変わる。

 

そして戦闘が始まった。結果は……双方引き分けであったが、ややシャルルが押していたように見えた。

 

「なんか、どうにか引き分けに持ち込めた感じがするんだよな。戦闘中もシャルルが優位だった気もするし」

 

「そりゃあダブルオーは近接特化の機体だけど、シャルルのアリオスはどちからと言うとバランスタイプの機体だから、遠近両方において優位に立てる戦いをすることができるんじゃないか?」

 

「彰人の言う通りだよ。ダブルオーライザーには射撃用の武器も積まれてるみたいだけど、得意としているのが近距離だからね。ある程度距離を取れば、勝ちが見えて来るんだ。だから自分が持ってる以外の射撃武器の特性も把握しておくと、対戦で有利に進めることができるよ」

 

俺とシャルルの説明を聞いて、一夏はなるほど……といった表情をした。それにしてもシャルルの説明には俺達初心者にも易しくてわかりやすい。箒ちゃんと鈴ちゃんは説明下手だし、セシリアは玄人向けの説明を主にするからわかりにくいんだよね。本当なら簪にも来て欲しかったけど、用事があって来られなかったのが残念だ。

 

「ところで、一夏のダブルオーと彰人のウイングゼロって、後付武装(イコライザ)がないんだよね?」

 

「ああ。拡張領域(パススロット)が空いてないらしくて、量子変換(インストール)が無理なんだと」

 

「俺も同じだ」

 

「多分だけど、それって単一仕様能力(ワンオフアビリティー)に容量が使われちゃってるせいだよ」

 

シャルルの予測を聞いて、俺は心の中で「ああ、やっぱりか」と頷いていた。まあ元から持ってる武装や変形機能に満足しているので、オプションとかは特にいらないんだが。

 

単一仕様能力(ワンオフアビリティー)か……それってさ、専用機持ちは誰でもすぐ使えるものなのか?」

 

「ううん。普通は第二形態(セカンドフォーム)から発現するものなんだ。と言っても、それでも発現しない機体の方が圧倒的に多いけど。だからそれ以外の特殊能力を複数の人間に使えるようにしたのが、第3世代型IS。オルコットさんのスーパードラグーンや凰さんのドラゴンハング。それにエクシアの単一仕様能力(ワンオフアビリティー)を解析して、GN-XⅣや僕のアリオスに搭載したトランザムがそうだよ」

 

「そうか……」

 

俺と一夏が例外ってだけなのか。

 

「俺の単一仕様能力(ワンオフアビリティー)は『ゼロシステム』で確定だが、一夏のは何なんだ? 『トランザム』か?」

 

「それがよくわかんないんだよな……量子化はするし、ライザーソードだって使えるようになるし」

 

うーんと顎に手を当てながら考える。原作でダブルオーライザーが持っていた特殊能力となるとアレだが……まさかな……。

 

「ウイングゼロもダブルオーも、第一形態なのにアビリティーがあるっていうのだけで物凄い異常事態だよ。前例が全くないからね。しかも一夏の方はまるで織斑先生―――初代『ブリュンヒルデ』の使っていたエクシアの上位互換みたいだし、彰人の方は高度な未来予測ができるって言うし」

 

量子化によるテレポートとライザーソードによる一撃必殺の技が使える機体に、未来予測で相手の攻撃を読んで先手を打つ機体……うん、チートだな。

 

「まあそれを考えるのは後にしよう。とりあえず俺は射撃訓練を続けるよ。彰人は?」

 

「俺は格闘訓練だな。射撃武器は逆に充実しているし」

 

ビームサーベルを引き抜きながら俺は一夏に言う。

 

「そのツインバスターライフル、俺も使ってみたいよ……って、無理だろうけど」

 

「普通はね。でも所有者が使用承諾アンロックすれば、登録してある人全員が使えるんだよ」

 

「ああ、そういえば……」

 

シャルルの言葉を聞いて何となく想像する。ツインバスターライフルを構えたダブルオーライザーに、逆にGNソードⅢを構えたウイングガンダムゼロ。……どこか違和感を感じるな。

 

「時にシャルル。お前が使ってるアリオスガンダムって、GN-XⅣと同じ技術を使ってるんだよな。にしては見た目とかかなり違うんだが?」

 

GNソードⅢ(ライフルモード)を構えて一夏が練習している最中に、シャルルに尋ねるとすぐに答えてくれた。

 

「僕のは専用機だから、技術は同じでもかなり弄ってあるよ。主な特徴としては変形機能があるのと、拡張領域(パススロット)を倍にしてあることかな。今量子変換(インストール)してある装備だけでも軽く20はあるし」

 

「マジか。機動力が高そうだと思ってたのに、火力まで高いとは」

 

仕舞ってある装備の中には同じものも幾つかある筈だから、何らかの要因で武器を損失してもすぐに予備を取り出せるということになる。仮に火力の高い武器を入れまくっていて殲滅戦に出動したなら……場合によれば完全にワンサイドゲームになるな。

 

「20って、かなりあるな……」

 

一夏も練習を中断して呟いた。俺達には今ある武器しかないもんな。そう考えていると。

 

「3人とも、このアリーナに居たのか」

 

ラウラちゃんが生身の状態でこちらに歩いてきた。

 

「どうしたのラウラちゃん?」

 

「練習をしていると聞いたな。私も参加したかったのだが、もう終わるのか?」

 

「んー、そうだね。もう少し練習してから上がる予定だよ」

 

「そうか……残念だ」

 

ラウラちゃんは目に見えてしゅんと落ち込む。……最近何故か妙に落ち込んでるのに、更に落ち込むなんて……。

 

「俺達と練習したかったのか?」

 

「ん、まあな……だが終わるのであれば仕方ない。が、せめて私の機体を披露させて欲しい」

 

「それくらいならいいけど」

 

「感謝する」

 

そう言って、ラウラちゃんは光に包まれた。そしてその姿は、1機のGへと変わった。

 

「っ!? ねえ、ちょっとアレ……」

 

「嘘っ、ドイツの第3世代型ISだ」

 

「まだ本国でのトライアル段階って聞いたけど……」

 

周りのみんなが口々に言う。ラウラちゃんが身に纏ったのは、彼女の専用IS『ハイペリオンガンダム』だ。

 

「ハイペリオンか……」

 

「今度のトーナメントで、私はこの機体で出る。どちらと当たるかはわからんが、その時は…腕を確かめさせてもらうぞ」

 

「ほう、言うじゃんか。いいぜ、望むところだ!」

 

「腕の見せ所って奴だ!」

 

俺も一夏も、ラウラちゃんの宣戦布告に闘争心を見せる。

 

「……シャルル・デュノア」

 

次にラウラちゃんはシャルルを向くと、マスク越しでもわかるように怪訝そうな雰囲気になった。

 

「何かな?」

 

「……いや、何でもない。では、トーナメントを楽しみにしているぞ」

 

そう言って、ラウラちゃんは去って行った。やはりラウラちゃんもシャルルの『不自然さ』に感付いているんだろう。

 

「今日はここまでにしとくか。もう4時過ぎだし」

 

「そうだな」

 

んー、と背伸びをしながら言う。ここまでは特に問題はないんだが……。

 

「じゃあ、2人とも先に着替えてて」

 

上がる時は必ずこれだ。シャルルと着替えたのは転校初日のみで、後は一緒に着替えたことが全くない。理由はわかっているんだが、わかっているだけに言い辛い。セシリア達に何て言われるのやら……。

 

「ああ。先に行ってる」

 

あくまで疑っていないのを装い、俺と一夏は更衣室に移動する。

 

「それにしても毎度思うんだが、俺達だけが使うには贅沢な更衣室だよな」

 

「同感だ。広すぎて持て余している感がするぜ」

 

ロッカーの数は優に50。故に広い造りになっており、2人で居るとかなり寂しく感じる。

 

「まあそんなことより、俺は風呂に入りたいが」

 

「それ俺も思ってた。シャワーだけじゃ何か気持ち悪いんだよな」

 

「山田先生がタイムテーブルを調整してるとは言っていたが、いつになるのやら……」

 

大浴場に関してあれこれ話しながら、着替えを終える。

 

「よしっと。そろそろ行くとするか」

 

「あのぅ、織斑君と矢作君とデュノア君は居ますか?」

 

更衣室から出ようとした時、ドアの向こうから山田先生の声が聞こえた。

 

「はい。織斑と彰人が居ます」

 

「入っても大丈夫ですか? まだ着替え中ですか?」

 

「着替えは既に済んでいますのでご安心を」

 

「そうですか。それでは失礼しますね」

 

一夏が応答に答えると、ドアが開いて山田先生が入ってくる。

 

「デュノア君は一緒じゃないんですか? 今日は織斑君と矢作君と一緒に実習をしていると聞きましたけど」

 

「シャルルはまだアリーナに居ます。もう戻って来る頃ですが……何か重要な用なら、呼んで来ますが」

 

俺が言うと、山田先生は特に気にしないように頭を振った。

 

「ああいえ、そんなに大事な話でもないです。後で織斑君か矢作君のどちらから伝えておいてください。それでですね、実は今月下旬から大浴場が使えるようになります。結局時間帯別にすると色々と問題が起きそうだったので、男子は週に2回の使用日を設けることにしました」

 

「本当ですか!?」

 

「噂をすれば何とやら……か」

 

一夏は嬉しそうに返事をして笑みを浮かべ、俺も声には表さないが微笑んでいた。何せ久々に風呂に入れるのだ。物凄くテンションが上がる。

 

「2人とも、どうしたの?」

 

そこへ声が聞こえてきた。振り返ると、シャルルが立っていた。

 

「先に戻っててって言ったけど、何かあったの?」

 

「実はなシャルル。今月下旬から大浴場が使えるらしいんだ」

 

「そう」

 

「そうって……あんまり嬉しそうじゃないな?」

 

「っ!? そ、そんなことないよ! 凄く嬉しいよ!! ああ、早くお風呂に入りたいなぁ!」

 

一夏に指摘されて慌てて取り繕うが……バレバレだ。千冬さんが居たら確実に見破っていたぞ。

 

「あ、そういえば織斑君と矢作君にはもう一件用事があるんです。ちょっと書いて欲しい書類があるんで、職員室まで来てもらえますか? ダブルオーライザーとウイングガンダムゼロの正式な登録に関する書類なので、少し枚数が多いんですけど」

 

「わかりました」

 

「わかりました―――あ、シャルル。今日は長くなりそうだから、先にシャワー使ってていいぞ」

 

「うん、わかった」

 

シャルルに確認した上で山田先生について行く一夏。俺も続くが―――

 

「……シャルル。いつも思うけど君ってさ、仕草がまるで女の子みたいだね?」

 

「っ!!!!!!」

 

―――擦れ違いつつそう言い残した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後

 

「ふう、もうこんな時間か」

 

廊下を1人で歩きながら腕時計を見て呟く。書類に書くのを済ませた後、俺と一夏は一旦分かれてシャワーを浴びることにした。夕食の時間が近いこともあって俺はシャワーを手早く済ませると、すぐに外へ出たのだ。

 

「それにしても……だ。シャルルの奴、本当にスパイをするつもりがあるのか? ボロ出しまくりなんだが」

 

1人であるのを良いことに、愚痴を零す。理由はシャルルの対応があまりにも杜撰すぎることがあるからだ。先ほどの大浴場の時も然り、それ以外にもトイレやシャワー等、様々なところで不自然な対応をしていた。箒ちゃんも一瞬だが胡散臭そうに見ていたし。

 

「ISの操作技術に関しては一流だが、兵士としては素人以下だ。こんなんでよく任務達成ができると思えたな」

 

「全くね」

 

「つーか初日の着替えの時点で胸見えてたし。そこはもっと警戒しろよ! どの位置に鏡があるとか、どの向きなら相手から見えないとかさ!」

 

「潜入捜査をする上では欠かせない技術…というか常識よね。それすら身につけていなかったなんて、私も呆れちゃうわ」

 

「その通りだ。ったく、こちとらいつどのタイミングで言うべきか悩みまくってるって言うのに……………………………………………ん?」

 

突然割り込んで来た声に今更気づいて振り向くと、見覚えのある人が居た。

 

「久しぶり、彰人君♪」

 

「……心臓に悪いですよ、楯無さん」

 

『私、再び参上!』と書かれた扇子を広げた楯無さんに非難がましい視線を向ける(本当に非難してはいないけど)。

 

「あら? そう言う割にはあまり驚いてないみたいだけど?」

 

「話しかける直前まで気配を消すことができる人なんて、貴女以外の誰が居ると言うんですか」

 

「それもそうね」

 

「で、一体何の用件で……って聞くまでもないですか」

 

「ええ。お察しの通り、シャルル・デュノアについてよ」

 

顔つきを真面目なものに変え、楯無さんは話し始めた。

 

「彼……いえ、彼女の本名は『シャルロット・デュノア』。既に君や一夏君は気づいているとは思うけど、彼女はスパイとしてIS学園(ここ)に送り込まれたの。ダブルオーライザーとウイングガンダムゼロのデータ収集を目的としてね」

 

「でしょうね。他国からすれば、俺と一夏のIS情報は喉から手が出る程欲しいもの。どんな手を使ってでも手に入れようとする輩は、必ず現れる。現にこうして、IS学園に潜入していますし」

 

「そこまでわかって居るなら話は早いわ。……彰人君。君がこんなことをする筈はないと思うけど、もし彼女の正体が明らかになったとしても、決して同情や怒りで動くのだけはやめて頂戴。まずは貴方の兄さんに連絡した方がいいわ」

 

「警告という訳ですか。言われなくても、そうなった時はそうするつもりで……って、何で兄ちゃんを?」

 

「私の家って色んなところに繋がりを持ってるのよ。無論、彰人君の兄さんともね」

 

……コイツはやられた。俺の知らないところで、楯無さんと省吾兄ちゃんは知り合いになっていたということか。てことは、俺がオーディンの弟だってことも……。

 

「それにしても驚いたわ。オーディンの弟が、IS適正を持っていたなんて」

 

「やっぱり知っていたんですね。ずるいや、楯無さんは。その上で知らないみたいに接してきて」

 

「貴方自身あまり目立ちたくないみたいだし、その方が良いと思ったの」

 

「……悔しいですけど、その通りです」

 

この人には俺の考えてることは筒抜けになってると思った方がいいな。ったく、底が知れない人だ。

 

「さてと。伝えたいことは伝えたし、私はもう行くわ。何かあったら連絡してね♪」

 

「そうします。では、俺もこれで。一夏達を待たせて居るので」

 

最後にそう言って、俺は楯無さんと別れた。

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