ISG~インフィニット・ストラトス・ガンダム~ 作:レイブラスト
どうもこんにちは、矢作彰人だ。シャルルが義理の母から解放され、彼女が歓喜のあまり号泣した次の日。俺は一夏とシャルル(男装)と共に教室に向かっていた……のだが。
「そ、それは本当なんですの!?」
「一体どうしてそんな噂が!?」
廊下にまで聞こえる声で、セシリアと鈴ちゃんが何事か叫んでいた。
「何があったんだ?」
「さあ……?」
「本人達に聞くのが一番だろう」
首を捻っている2人に言いながら教室へ入る。あれこれ考えてるよりは直接聞いた方が早く済む。
「本当だってば! この噂、学園中で持ちきりなのよ!? 月末の学年別トーナメントで優勝したら、織斑君と矢作君のどちらかと交際でき―――」
「俺がどうかしたって?」
「後俺も、何かあったか?」
『『『きゃあああああああああああっ!?』』』
話しかけた途端、クラスの女子達が揃って悲鳴を上げる。……何故そこまで驚くんだ?
「で、何の話してたんだ? 優勝したら俺と彰人が、どうなるって?」
「え、えと、そんな大した話じゃないわよ…………だって、私達が居るんだし」
「き、気にしないで下さいまし…………そうですわ。私達が居るのに、何を恐れる必要があるのでしょうか」
露骨に話逸らされてるし。本当にどうしたんだ?
「じゃあ私、自分のクラスに戻るから!」
「私も自分の席に着きませんと」
今度は随分落ち着いた様子で立ち去る2人。結局、どんな話かはわからず終いだった。
「のほほんさん、何か知ってる?」
「あ。あっきー。実はね~……」
のほほんさんの話を聞いて俺は仰天した。何と『学年別トーナメントで優勝したら俺か一夏のどちらかと交際出来る』という噂が流れているようなのだ。俺まで巻き込まれてるとは思ってなかった……けど、俺達恋人いるし…無駄な噂だとは思うが。
箒SIDE
(どうしてこんなことに……)
自分の席で、私は頭を抱えていた。元々は私と一夏が交わしていた、ほんの遊び心である賭け事だったのだが……誰かに聞かれていたのか噂となって一人歩きし、しかも何を間違ったのか優勝したら交際できるという話になっている(そして全く関係のない彰人まで巻き込まれているのは完全に謎だ)。
(とにかく、まずいことになった……仕方ない、私か鈴、もしくはセシリアか簪かラウラかシャルルが優勝するか……或いは、一夏か彰人が優勝するのを願うか)
幸いにも、一年の専用機持ちは今上げた私以外の人達しかいない。勝率は高い筈だ。……他力本願なのも自分でどうかと思うが……今回ばかりは致し方ない。
彰人SIDE
「ええいクソッ、いちいち距離が遠い」
「いい加減、増設してくれないものか……」
その後の休み時間。俺達はトイレから全速力で教室に向かっていた。というのも、学園内にある男子トイレが僅か3カ所しかないので、行きも帰りも全力を尽くさなければ到底授業に間に合わない。廊下を走ってはいけないという先生もいるが、だったら男子トイレを増設して欲しい。
((ま、実際キツイのは俺達よりシャルルなんだろうけど))
走りながら思ったが、これがまさか一夏と同じタイミングで全く同じことを思っていたとは夢にも思わなかった。
とにかく、走って戻っていたのだが……。
「どうだラウラ? もう学園には馴染めたか?」
「「ん?」」
曲がり角の先から聞こえてきた声に思わず立ち止まって見てみると、ラウラちゃんと千冬さんがいた。何かを話してるのか?
「はい。……ただ、皆危機感が足りないように思います。中にはISを、まるでファッションか何かと勘違いしている輩も……」
「ふむ…確かにな。軍人と一般人の差とは言え、ISは使い方次第で強力な兵器となり得るのだからな。ま、その自覚を持ってもらえるように指導するのが私達の仕事だ」
「さすがです教官……いえ、織斑先生」
お? 自分から言い直したぞ。てっきり千冬さんが訂正するとばかり思ってた。
「尊敬されることでもない。……それよりラウラ、最近元気がないようだがどうした? 折角思い人に出会えたんだろう?」
「え!? あ、あの、それは……!」
思い人? ラウラちゃんにそんな人なんて居たんだ。意外。
「まあ無理もない。だが状況を見ればまだチャンスはあるから、せいぜい頑張れよ?」
「う、うぅ………そ、それを言うなら織斑先生はどうなんです!? 知ってますよ! 貴女が省吾さんに恋慕の情を抱いていることを!!」
「なっ! そ、それは……!」
何かラウラちゃんが反撃に出た。てか結構痛いとこ突くんだね……。
「はっきり、好きと言えばいいではないですか!」
「わ、わかってはいる! ただ、電話では中々勇気が出なくてな……今度直接会った時に言おうと思っているんだ。それより、そう言うお前こそ、アイツに言ったらどうなんだ!?」
「っ!? し、しかし……彼が応えてくれるかどうか不安で……!」
この瞬間、俺の中である結論が出た。ラウラちゃんと千冬さんって、ある意味似た者同士だ。間違いない。
「……そろそろ行こうぜ彰人。俺、これ以上見てられない」
「ああ、行こうか」
げんなりした様子で促してくる一夏に頷き、バレないように立ち去った。確かに、見てはいけないものを見てしまった感があるもんな。
OutSIDE
放課後の第三アリーナ。ここでISを展開したセシリアと鈴が対峙していた。理由は簡単、学年別トーナメントに向けて本格的な実践練習をする為だ。
「機体状況は良好っと。セシリア、そっちはどう?」
「問題ありません。いつでもいけますわ」
ツインビームトライデントを構える鈴に、ビームライフルを構えながら言うセシリア。どうやら既に臨戦体勢のようだ。
「そう。それじゃあ……」
「いざ、尋常に……」
「「勝―――」」
「む……なんだ、先客が居たのか」
勝負と言いかけたところで、突然聞こえた声に動きを止める。2人の視線の先には、ラウラ・ボーデヴィッヒの纏ったハイペリオンガンダムが立っていた。
「誰かと思えば、ラウラさんではありませんか。貴女も練習しようと思ってましたの?」
「そのつもりだったんだが、邪魔してしまったな」
「気にしないで。私達もこれからしようと思ってたところだから。それより、一緒に模擬戦しない?」
「いいのか?」
鈴の提案に、ラウラは一歩歩み出て尋ねる。
「ええ。1人でやるより効果的だもの。で……対戦の順番はどうしよっか?」
「そうですわね。ここは公平に、ジャンケンで―――」
「その必要はない。私が2人同時に相手をしよう」
「「えっ!?」」
ラウラから告げられた言葉に、セシリアと鈴は耳を疑う。模擬戦とはいえ、二対一を自ら望んでいるのだ。驚かない訳はない。
「よ、よろしいのですか?」
「無論だ。こう見えて腕に自信はあるのでな」
ツインアイを光らせながら、ハイペリオンが戦闘体勢に入る。
「やる気って訳ね……よし。セシリア! 相手は軍人なんだから、初手から全力で行くわよ!!」
「鈴さん…わかりましたわ!!」
それを見た2人も、アルトロンとストライクフリーダムを再び戦闘体勢にする。
「では、改めまして……」
「いざ尋常に……」
「ラウラ・ボーデヴィッヒ。ハイペリオンガンダム……」
「「勝負!!」」
「行く!!」
それぞれの合図によって、二対一の模擬戦が開始された。
「(そういえば向こうの武器とかわからないんだった……)けどじっとしてるよりは、先制攻撃する方がマシよ!!」
始めに鈴がツインビームトライデントを手前に出しながら接近する。
「むっ…!」
それを見たラウラはビームサブマシンガンで迎撃するが、鈴はツインビームトライデントを自身の前で高速回転させ、攻撃を弾いていく。
「どう!? トライデントには、こういう使い方もあるのよ!」
「やるな。だが、これなら……」
ラウラは今度はビームサブマシンガンに備え付けられているビームナイフを展開すると、鈴に向けて射出。それは寸分違わずツインビームトライデントの柄に突き刺さり、その箇所が小さく爆発した。
「きゃっ!? う、嘘でしょ……アンタ今、どうやって狙ったのよ!?」
「どうも何も、普通に狙いをつけただけ……!」
説明の途中で別方向から攻撃が放たれ、咄嗟に左腕にビームシールドを展開して防ぐ。
「ナイスアシスト、セシリア!」
「お褒めに預かり、光栄ですわ」
そう言うとセシリアはドラグーンを一斉展開しラウラを取り囲むように配置する。一方鈴も、ドラゴンハングを展開して構える。
「行きなさい、ドラグーン!!」
「これだけの攻撃、避けられるなら避けてみなさい!!」
そしてドラグーンによる全方位攻撃と、ドラゴンハングによる死角からの攻撃が開始された……が。
「悪くない戦術だ……だが!」
声を強めると共に、ラウラは背中のウイングバインダーを前方に展開。ハイペリオンの全体に光波防御帯を張り巡らせ、全攻撃を防いだ。
「防がれた!? 何なのよあれは!」
「あれは確か、『アルミューレ・リュミエール』……機体の全体を完全防御するバリアですわ」
「その通り。このアルミューレ・リュミエールの前では、柔な攻撃は全て無意味となる!!」
マスクの下で若干得意顔になりながら、ラウラは攻撃を防ぎながらビームサブマシンガンで、ドラグーンを一機、また一機と撃墜していく。
「くっ、このままでは埒が……! 戻りなさい、ドラグーン!」
セシリアは一旦ドラグーンを戻すとビームライフルを分割状態で構え、更にドラグーン以外の全兵装を展開する。
「セシリア! アンタまさか、あれをやるつもり!?」
「バリアで防がれるなら、それを貫く程の威力で……!」
驚く鈴の言葉をセシリアは無視し、ハイペリオンをロックしようとする。だが―――
「遅い!」
その前にアルミューレ・リュミエールを解除したラウラがそのままビームキャノン・フォルファントリーでセシリアを狙い撃ち、直撃させた。
「きゃああああっ!」
体勢を崩し、セシリアは地面へ落下する。
「次は…!」
「っ!? くっ!」
左手にビームナイフを持って突撃してくるラウラを、鈴がビームキャノンで迎え撃つ。しかしラウラは最小限の動きで躱したり、右腕に展開したシールドで防ぎついに懐に飛び込んだ。
「はぁっ!」
「うああっ!?」
ビームナイフで突き刺し、突進した勢いで鈴をセシリアのところまで突き飛ばす。2人がぶつかり体勢を立て直そうとしたところに、フォルファントリーとビームサブマシンガンを同時に構える。
「まだ、やるか?」
「……いいえ。私達の負けです」
「そうね……完敗だわ」
自分達の負けを悟ったセシリア達は、そう言うとふぅ…とため息をつく。ラウラもそれを見て構えを解く。
「流石は軍の特殊部隊隊長ね。不利な状況下でもやり合うなんて」
「ええ。逆に私達の方が圧倒されてしまいましたわ」
「そうでもないぞ。ドラグーンとドラゴンハングによる同時攻撃は効果的な攻撃だし、セシリアの一斉射撃も判断が遅ければ先に撃たれていたのは私だ」
「そう言ってくれると、少しは楽な気分になれるわ。ありがと」
「ん……気にするな」
どこか照れた様子でラウラはそっぽを向く。そんな彼女を見て、セシリアと鈴は頬を緩ませた。
「さてと! 実力差がわかったことだし、今日はこの辺で切り上げてラウラへの対策を考えるわよ!」
「はい。それは承知ですけど、彰人さん達への対策も考えませんと」
「わかってるって」
和気藹々と話しながら、2人はピットへと戻った。ラウラは軽くため息をつくと、しばし自主練を続けていた。