ISG~インフィニット・ストラトス・ガンダム~ 作:レイブラスト
夕方。俺達はセシリアと鈴が模擬戦で体感したというハイペリオンガンダムの特殊能力について聞きながら、食堂に向かっていた。
「アルミューレ・リュミエールによる、完全なる防御か……厄介だな」
「てか、そんな大事なこと話して大丈夫なのか?」
顎に手を当てて考えてると、一夏が心配そうに言った。
「心配無用だ。私は
「い、今さらっと凄いこと言ったわね……」
「カタログスペックを、全てだと? 一機だけでも覚えるのに苦労するというのに……」
「……私は、半分くらいなら覚えてる」
「マジかよ」
ハイスペックを誇るラウラとそれに次ぐ記憶スペックの簪に若干驚きつつ、食堂のドアを通る。すると……
『『『あっ!!!!!!』』』
一年女子数十名が一度にこちらを向き、
ドドドドドドドッ!
と、まるで地鳴りのような足音を轟かせて一斉に駆け寄ってきた。
「織斑君!」
「矢作君!」
「デュノア君!」
そして俺達の名前を呼びながら、必死で手を伸ばして来る。……おかしい。ここはいつからゾンビ映画の撮影現場になったんだ?
「な、何だ!? どうしたってんだ!?」
「そ、そんな鬼気迫る顔して……」
「み、みんなとりあえず落ち着いて……ね?」
『『『これ!!』』』
俺達が取り乱している間に皆が突き出したのは、緊急告知分が書かれた申込書だった。とりあえず読んでみよう。
「えーっと、何々……『今月開催する学年別トーナメントでは、より実戦的な模擬戦闘を行うため、2人組での参加を必須とする。尚、ペアが出来なかった者は抽選により選ばれた生徒同士で組むものとする。締め切りは―――』」
「ああ! そこまででいいから、ともかく!」
内容を読み上げていると途中で遮られ、再び手が伸びてくる。やはりゾンビ映(ry
「私と組もう、織斑君!」
「私と組みましょう、矢作君!」
「私と組んで、デュノア君!」
口々に言われる発言に、ようやく納得がいった。要は俺達男子とペアが組みたいから来たということか。道理で一年生しかいない筈だ。
「え、えっと…それは……」
大いに戸惑うシャルル。彼女は女性なのだから、誰かと組むことになれば凄くまずいことになる。下手すりゃ正体がバレるかも……今からラウラちゃんにスキル教えてもらうってのも、無理そうだし。
「悪いみんな。俺、シャルルと組むからさ…諦めてくれ!」
その時一夏が大きな声で宣言し、それからシャルルと俺に目配せした。なるほど…そういうことか。
と、ここまでならいいのだが、それを聞いた女子達は水を打ったようにシンと静まり返ってしまった。そんなに静かになられてもこっちが困るんだが……。
「まあ…そういうことなら仕方ないか」
「他の女子と組まれるよりはいいし」
「男同士というのも中々絵に……ゴホンッ」
しかし無事に納得してくれたようだ。最後のは聞かなかったとして、これで一安心……と思っていたのだが、女子達の視線が俺に集中してることに気づいた。
(やべっ! シャルルのことばかり考えてて、俺がどうするか考えてなかった!!)
どうにかこの状況を打破しようと思考を張り巡らせるが、中々良いアイデアが出て来ない。
「(ええい、こうなったら……!)みんなごめん! 俺、この子と組むからさ!」
咄嗟に隣に居た誰かの肩をポンポンと叩いて言う。
「わ、私とか!?」
(ん?)
驚いた声に隣を見ると、俺がペアを組むと言った相手は……ラウラちゃんだったようだ。
「ええっ! ボーデヴィッヒさんと!? 何でまた?」
「そういえば、入学前からの知り合いだって聞いたけど……」
「あー、だからか。じゃあ仕方ないや」
が、女子達は勝手に納得してくれたみたいだ。よかったよかった。
「って、ごめんなラウラちゃん。勝手に決めちゃって」
「い、いや気にするな。……そうか、私と組んでくれるのか……対決できないのは残念だが、共に戦ってくれるのは、それ以上に嬉しいことだ…ふふっ」
何故か怒るどころか微笑んでるラウラちゃん。……俺と組むのってそんなに需要あるの? いやあるか……ゼロシステムチート気味だし。
「(あの様子では気づいてないみたいですわね……)鈴さん、もしよければ私と組みませんか?」
「(うん。……彰人って意外と女心に疎かったんだ)いいわよ。優勝目指して、頑張りましょう」
「(彰人って、鈍感なのかな?)……箒、一緒に組もう?」
「(案外そうかもしれん)わかった。専用機が無い故に力不足かもしれんが、全力でサポートしよう」
他のみんなも着々とペアを組んでいるようだ。……何やら変なことを言われた気がするけど。
(ま、いいか)
他人の話に聞き耳を立てるのも失礼だし、お腹もすいたので夕飯を速攻で注文した。
それから時が流れ、6月最後の週。IS学園では週明けから学年別トーナメントで大騒ぎであり、一回戦の直前まで全校生徒が雑務や会場の整理に来賓の誘導まで執り行っている。それらが終わった生徒達からアリーナの更衣室で着替えることになる。俺と一夏とシャルルは相変わらず、物凄く広い更衣室を贅沢に使っている。けど女子が使ってる方は……ぎゅうぎゅう詰めだろうな。
「それにしても、随分豪華な来賓だな」
「殆どがお偉いさんだもんな。見るだけでただ事じゃないってのが伝わるぜ」
更衣室に備え付けられているモニターから観客席の様子を見ると、各国政府関係者、研究所員、企業エージェント、その他諸々のお偉いさん達が集っていた。
「三年にはスカウト、二年には一年間の成果の確認にそれぞれ人が来ているからね。一年には今のところ関係ないみたいだけど、それでもトーナメント上位入賞者にはさっそくチェックが入ると思うよ」
「てことは、俺も入りそうだな。千冬姉さん、かなり有名だし」
「間違いなくチェックしてる筈だ。俺は……してるかしてないか微妙―――って、兄ちゃん見つけた……」
「え? あ、本当だ。由唯さんまで居る」
偶然にも、カメラが観客席に座っている省吾兄ちゃんと由唯さんを映していた。揃ってコーヒー飲んでるや。
「よし、準備完了っと」
「こっちも完了だ」
「僕もだよ」
3人揃ってISスーツに着替え、俺と一夏はISの最終チェックを、シャルルは男装の確認を行った。
「時間的には、そろそろ対戦表が決まる筈だね」
ふとシャルルが言う。理由は不明だが、急遽ペア戦への変更が決まってから従来のシステムが機能しなくなってしまったようだ。その為本来なら前日に決まっていた筈の対戦表は、今朝生徒達の手作りの抽選クジで急いで決めることになった。
「一年の部、Aブロック一回戦一組目は運がいいよな。待ち時間に色々考えなくていいし。こういうのは勢いが肝心だからな」
「そうかな? 僕だったら、一番最初に手の内を晒すことになるから深く考えちゃうかも」
「どちらの考えも間違っちゃいないけどな」
俺とシャルルの意見を聞いた一夏が、腕を組みながら言う。単純に攻めるのも良し、手の内を中々見せずに戦うのも良し、ということだ。戦いというのは実に奥が深い。
「あ、対戦相手が決まったみたい」
モニターが切り替わり、それを見たシャルルが言う。俺も一夏もじっと見つめると……。
「……え?」
「ほう、コイツは……」
「最初からクライマックスって奴になりそうだ」
出てきた文字にシャルルはポカンとし、俺と一夏は少し驚きながらも不適な笑みを浮かべた。
一回戦における対戦カードは、俺&ラウラちゃんvs一夏&シャルルだからだ。