ISG~インフィニット・ストラトス・ガンダム~   作:レイブラスト

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51th Episode

省吾SIDE

 

ラウラのIS、ハイペリオンが突然変化したのを見た時、俺は驚いて思わず立ち上がっていた。

 

「何だと!? バカな!」

 

驚いた理由は2つある。1つは先ほど述べたようにハイペリオンが変化した為。もう1つは、ISを変化させることが可能なシステムを既に知っていた(・・・・・・・)為だ。

 

「省吾、アレって……」

 

「ああ……VTシステムだ」

 

VTシステム―――正式名称『ヴァルキリー・トレース・システム』。過去のモンド・グロッソの優勝者の戦闘方法をデータ化し、再現・実行するシステムだ。アラスカ条約によってあらゆる国家・企業・組織での研究・開発・使用が全て禁止されている筈だが……。

 

(上の奴ら、さては勝手に搭載したな?)

 

この手の条約であり得そうなことを考える。メガゾーンでも軍の奴らがガーランドやハーガンを作っていたんだ。条約を破ることをする奴は居るだろう。

 

(何にせよ、状況的に子供達に後始末を押しつける形になっちまったのは、心が痛むな……)

 

プロトガーランドは持ってきておらず、アウトフレームは公衆の面前で晒せるような代物ではないので、俺は何もできない。クソ……悔しいぜ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一夏SIDE

 

赤いツインアイを不気味に光らせるエクシアダークマターを見て、俺はどういう行動を取るべきか考えていた。エクシアダークマターはプラモを組んだことがあるので武装の把握は済んでいるが、今回は内部にラウラが捕らわれている。下手な攻撃は彼女を傷つけることに繋がるだろう。

 

「(幸いにも、敵はこっちの様子を伺っている。なら……)彰人、シャルル。作戦を立てるぞ」

 

「う、うん」

 

「…………………………………」

 

「……彰人?」

 

戸惑いながらも頷くシャルルに対し、彰人はエクシアダークマターを見つめたまま微動だにしなかった。

 

「聞こえなかったのか? 作戦を立てるって「一夏」?」

 

「さっきさ……ラウラちゃん、俺に助け求めてたよな?」

 

「? そうだけど……」

 

「悲鳴の時点で何となく察してたんだけど、ラウラちゃんVTシステムに苦しめられてるんだよな……」

 

「……ああ。だから一刻も早くラウラを助け―――!!」

 

俺は言葉を詰まらせてしまった。なぜなら、彰人から尋常ではない程の殺気が溢れてきたからだ。

 

「嫌だなぁ……友達が苦しんでる姿を見るなんて……苦しめる奴が居るなんて……いけないよなぁ~……」

 

「あ、彰人……何を……!?」

 

どこか確かめるような、飄々とした……北崎を思い起こす喋り方をする彰人に、シャルルは完全に気圧されていた。言葉を詰まらせただけで済んだ俺は、幸運だったに違いない。

 

「アイツ、どういうつもりなんだろうねぇ。まったく…………………調子に乗るなよ?」

 

言うが早いか、彰人はビームサーベルを右手に持ち、エクシアダークマターに突進しながらマシンキャノンを放つ。

 

エクシアダークマターは彰人を敵と認識したらしく、弾丸を防ぎつつダークマターライフルの2種類の弾丸を駆使して攻撃する。

 

「そんなもの……効くと思ってるの?」

 

弾丸をシールドで防ぎながら彰人は接近してビームサーベルを振るう。エクシアダークマターもダークマターライフルからビームサーベルを展開、彰人のウイングゼロと接近戦を繰り広げる。

 

『…………っ!』

 

「この程度なの? つまんないなぁ。これじゃあ千冬さんの足下にも及ばないよ?」

 

コピーとはいえ、千冬さんの戦闘パターンを持つエクシアダークマターを相手に彰人は優位に立つ。たまらず距離を取るエクシアダークマターはビームサーベルを展開させたまま、ダークマターライフルを槍投げのように投げつけた。

 

「ふんっ」

 

彰人はこれを難なく回避。しかし、ダークマターライフルは尚も直進し……。

 

「シャルルッ!!」

 

「う、うわぁぁあああ!?」

 

自分目掛けて近づいてくるダークマターライフルに慌てたシャルルは、咄嗟にGNツインビームライフルを放って撃墜した。

 

「大丈夫か?」

 

「な、何とか………それにしても、完全に僕達のこと忘れてる気がするんだけど……」

 

「強ち間違いでもないかもしれないな。普段のアイツなら、避けた先に何があるのか把握しているだろうに」

 

それをしなかったということは、今の彰人は怒りによってフリットモード(俺命名)になっているということだ。ちなみにフリットモードとは彰人が絶対に許せないと思った際になる状態のことで、こうなると相手を徹底的に叩き潰すまで止まらなくなる。

 

そうこう考えている間に、エクシアダークマターは両腕にダークマターブレイドを装備。二刀流で勝負に出た。

 

「二刀流とは小癪な……でも、中々面白い!!」

 

対する彰人も左手にもビームサーベルを持ち、同じく二刀流で相手をする。

 

「ほらほらどうした!? 俺を圧倒して見せろ!!」

 

『……っ!!』

 

鬼神の如き勢いに、エクシアダークマターは押されていく。いくら技術や強さを真似たところで、人が持つ感情には勝てない…ということか。

 

『………………』

 

これ以上はまずいと見たのか、エクシアダークマターは背面のダークマターブースターを分離し、二対一で状況を有利にする。

 

「チッ、少しまずくなったかな……?」

 

小声で言うと、彰人は一瞬チラッとこちらを見た。俺は彰人が何を言いたいのかを理解した。

 

「シャルル、加勢するぞ」

 

「え……う、うんっ!」

 

すぐさまシャルルに声を掛けると、共に彰人のところへ向かう。長年一緒だった俺にはわかる。今のは、サポートしてくれという合図だと。

 

「ブースターの方は俺が行く。お前は彰人を頼んだ」

 

「わかった」

 

役割を決めると、俺はGNソードⅢのライフルモードでダークマターブースターを牽制し、注意を俺に向けさせる。案の定、奴は攻撃目標を俺に変更し、攻撃を仕掛けてきた。

 

「彰人、助太刀するよ!」

 

「ありがとう…助かるよ」

 

ハイパーセンサーで様子を見ると、シャルルは彰人の隣に並び立ち、右手にプロミネンスブレイドを、左手にブライニクルブレイドを所持したエクシアダークマターと対峙する。

 

『……!!』

 

エクシアダークマターはシャルルも敵と認識し、ブライニクルブレイドで斬りかかる。

 

「!」

 

しかしシャルルは落ち着いてGNビームサーベルを使って防ぐ。

 

「そんな攻げ……!?」

 

反撃に打って出ようとしたシャルルは言葉を失った。ブライニクルブレイドに蒼い粒子帯が纏われた時、自分のビームサーベルの刃が徐々に凍り付いていったからだ。

 

そしてプロミネンスブレイドには赤い粒子帯が纏われ、エクシアダークマターはソレを振るって凍り付いたGNビームサーベルを焼き切ってしまった。

 

「うわっ!?」

 

咄嗟にビームサーベルを離した為に連撃を食らうことはなかったが、常識外れな現象にシャルルは驚いているようだった。

 

「まさか、ビームサーベルが凍るなんて……」

 

「それがあの剣の能力だ。シャルル、ここは遠距離攻撃で攻めよう」

 

接近戦が不利になり、遠距離からの攻撃にシフトするようだ。……っと、いい加減集中しないとな。

 

ダークマターブースターは牽制するようにGNキャノンを数発放った後、トランザムを発動。翼の一部となったダークマターブレイドで切り裂こうとしてくる。ということは、こっちにISコアが入ってるという訳か。

 

「舐めるなよ、AI如きが!!」

 

俺もトランザムを発動し、GNソードⅢでダークマターブレイドと斬り合う。距離が離れるとGNキャノンを放ってくるが、当たってはやれないので素早く移動して避ける。……アリーナのバリアにヒビが入っているのを見ると、やはりというか威力は高いようだ。

 

「シールドエネルギーもそろそろ限界が近い……一気に決めるか!」

 

即断即決した俺はGNソードⅡをダークマターブースターに投擲すると同時に、量子テレポートする。ダークマターブースターはGNソードⅡを避けるが、その直後に俺は真後ろに出現、GNソードⅡを再び握ると反時計回りに回転しながらダークマターブースターを切り裂き、その勢いのままGNソードⅢで再び切り裂く。一瞬のタイムラグの後、ダークマターブースターは爆発した。

 

しかし爆発の直前にダークマターブースターはISコアをパージし、エクシア本体に再接続させると同時にトランザムを発動した。……こんなところまで再現しなくても。

 

「トランザム!? こんな時に!!」

 

危機迫った声で叫ぶシャルルを見ると、非常に申し訳なく思ってしまう。すると、突然サイレンが鳴り響いて非常事態発令との放送が流れると同時に、状況の鎮圧とトーナメント中止宣言、そして避難勧告がされた。

 

(これ以上俺達が戦う必要はないということか……だが―――)

 

「ついにトランザムを使ってくるか……でもね!」

 

トランザム状態で急接近したエクシアダークマターはブライニクルブレイドを振り下ろす。それを彰人はシールドで防ぐが、ゆっくりと凍っていく。そこへプロミネンスブレイドが振り下ろされるが、これを彰人は―――素手で受け止めた。

 

「へへ……うおらぁっ!」

 

手が溶けるのも構わずそのままプロミネンスブレイドを奪い取り、それでブライニクルブレイドを弾き飛ばすと後ろへ放り投げた。

 

「これで君の武器は内蔵武器以外なくなった訳だ……まだやるかい?」

 

『……………』

 

挑発的に言う彰人に、エクシアダークマターは両腕のGNバルカンを正面に向ける。あくまで戦いをやめるつもりはないらしい…………しかし、そうなると機体そのものを破壊しなくてはいけなくなる。何とか傷つけずに止める方法はないものか……ん?

 

単一仕様能力(ワンオフアビリティー)トランザムバースト、最終段階解除及び完全解放。全システム良好』

 

モニターに突然そんな表示が現れた。……そうか、そういうことだったのか。ダブルオーライザーの単一仕様能力(ワンオフアビリティー)は元々トランザムバーストで、トランザムやライザーソードはその副次的なものに過ぎなかったんだ。けど相変わらず、何故このタイミングで……。

 

「(何にせよ、今の状況には好都合だ)彰人! シャルル! ちょっと聞いてくれ、俺にいい考えがある!!」

 

「ほぅ…」

 

「考え?」

 

彰人とシャルルに声を掛け、相手にバレないように小声でできるだけ速く話していく。

 

「…………………という作戦なんだが」

 

「い、一応役割はわかったけど……本当にそんなことが一夏の機体にはできるって言うの?」

 

「できるできないの理屈は今は置いておこう。作戦内容からして、俺が一番責任重大だし」

 

俺の作戦を聞いたシャルルは少し戸惑い、彰人は真剣な様子でエクシアダークマターを見ていた。フリットモードではなくなったみたいだな……安心だ。

 

「それじゃあ早速、作戦通りに頼むぞ」

 

「ああ。行くぞシャルル!」

 

「うん!」

 

まずは彰人とシャルルが二手にわかれる。正面から突撃したのは彰人で、当然エクシアダークマターはGNビームバルカンで反撃してくる。

 

「甘いな」

 

だが、全ての攻撃を彰人は回避して懐に飛び込み―――

 

「とぉっ! でやぁぁぁぁっ!!」

 

顎を蹴り上げると同時に回し蹴りを決め込んだ。蹴りの勢いでエクシアダークマターは後ろに下がる。

 

「それを……待ってた!!」

 

その先にシャルルが待ち構えており、人型のままGNビームシールドを使って機体の胴体を挟み込み、動けなくした。

 

『……!!……!!』

 

エクシアダークマターは必死で抵抗し、GNビームサーベルも展開するがシャルルは決して放そうとはしない。身動きの取れないエクシアダークマターに、彰人は目前まで接近していく。

 

「ここまでは順調だな……一夏、頼むぜ」

 

「任せとけ」

 

応えるのと同時に、俺は先ほど解法したばかりのソレを起動させた―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ツインドライヴ、安定確認。各システムオールグリーン』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『              RAISER SISTEM

               TRANS-AM BURST               』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っ…うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

 

トランザムバーストの発動と同時に俺は力一杯叫ぶ。GN粒子の綺麗な輝きが俺を、彰人を、シャルルを、エクシアダークマターを……全てを包み込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『っ……こ、ここは?』

 

『ここは…人の意識だ……』

 

『そうか、ここが……何て暖かいんだ……』

 

原作でもこの場面はあったが、本当に入ることができるとは……驚く限りだ。

 

『彰人、後はお前の役割だ。お前が彼女を…ラウラを連れ戻すんだ』

 

『了解っと』

 

『……あれ? なんか彰人の髪が金色になってない? それに一夏も、目が……』

 

『何?』

 

彰人はともかく、俺も目が変化してるだと? それってまさか…………覚醒したってことか……?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彰人SIDE

 

人の意識の集合体とも言うべき不思議な空間をしばらく泳いで(?)いると、膝を抱えて目を閉じているラウラちゃんを見つけた。

 

『こんなところに居たのか』

 

『ん……その声は、彰人か…………その髪と瞳はどういうことだ?』

 

起き上がり、眼帯の外れた左目で俺を見つめてくる。同時に髪の毛と目について気になったようだ。

 

『これに関しては気にするな。ゼロシステムを動かすといつもこうなるんだ』

 

『よくわからんが…もっとよくわからんものに取り込まれた、私が言えたことではないな』

 

『それこそ気にすんなよ。ほら、一緒に帰ろう』

 

そう言って、俺はラウラちゃんに手を差し伸べる。

 

『ああ……力があっても、お前と一緒じゃないのは………嫌だからな……』

 

『え?』

 

『いや、何でもない。行こう』

 

意味ありげな発言に首を傾げていると、ラウラちゃんの方から先に動いた。

 

『ま、いいか……』

 

あまり深く考えないことにし、俺はラウラちゃんと共に一夏達のところへ向かった―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「! ラウラちゃん!」

 

気がつくと腕の中に、疲れたのか気を失っているラウラちゃんがおり、パイロットを失ったエクシアダークマターがもがき苦しみ、ラウラちゃんに手を伸ばしていた。

 

「まだラウラちゃんを利用しようってのか…………舐めんじゃねぇぞ」

 

俺は左手でラウラちゃんを抱きかかえると、エクシアダークマターの顔面を右手でぶん殴った。そこでエネルギーが尽きたのかツインアイから光が消えて落下、機体も元のハイペリオンに戻った。

 

その後は非常事態警戒が解かれ、教師陣がすぐにラウラちゃんを医務室に連れて行った。

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