ISG~インフィニット・ストラトス・ガンダム~ 作:レイブラスト
省吾SIDE
「やっぱり、ラウラちゃんが暴走したのはVTシステムのせいか……」
保健室で眠っているラウラちゃんを横目に、俺と由唯は千冬と話していた。
「そうだ。どうやらドイツが独断で搭載したらしい。それでシステムを調べた結果、アレは特定の状況下で発動するようになっていたことが明らかになった」
「特定の状況下だって?」
「具体的には…機体のダメージレベルが甚大になり、搭乗者が相手に負けた悔しさを抱き、尚且つ次こそは負けない為に力が必要か否かという問いに『YES』と答えた場合……だそうだ」
「何だよソレ……」
俺は言葉を失った。だって負けて悔しいとか、次は絶対勝つ為に力が要るかなんて……誰もが抱く感情じゃないか。
「上の奴らは、人の感情を弄んだっていうのかよ……それも軍人とは言え、こんな子供を……」
「ね、ねぇ千冬。VTシステムは結局、どうなったの?」
俺の怒りによってピリピリした空気を変えようと由唯が話題を変える。……いつも悪いな、由唯。
「アレは二度と発動しないよう、ハイペリオンの修理中に消去することになっている」
「そう……でも、そんなことをしたらドイツ政府が……」
「由唯、心配すんな。元々禁止されてるものを向こうは勝手に使ってきたんだ。ならこっちが勝手に何したって、文句は言えない筈だ」
「あ、そっか」
ホッとした表情をする由唯。その時、
「う…うぅ……………………」
ベッドからラウラちゃんの声が聞こえた。気がついたようだ。
「じゃあ千冬、俺達はそろそろお暇するぜ」
「む、もう行ってしまうのか。もう少しくらい居てもいいのだが……言いたいこともあるし……(ボソッ」
「生憎次の仕事があってな。ったく、総理がこんなに忙しいとは思ってなかったぜ……」
「それ、毎年言ってる気がするんだけど?」
「細けぇことは気にすんな」
からかい気味に言う由唯に、俺は素っ気なく返す。……少し恥ずかしかったのは内緒だ。
「……ま、仕方ないか。ではまたな、省吾」
「おう!」
元気よく返事して立ち去―――ろうとして、再び千冬を見た。
「あ、そうそう。実はつい先日、重婚制度が通ってな…日本でも可能になったんだ。でだ……今は無理だけど、落ち着いたら……また来るからな」
「……!!」
「じゃあな!」
俺は言うだけ言って今度こそさっさと立ち去った。
「……アイツ、何を言い出すかと思えば……せ、折角覚悟を決めかけてたのにそんな言い方されたら、否が応でも期待してしまうではないか…………」
ラウラSIDE
「うぅ……ん…………こ、ここは……?」
「目が覚めたようだな」
「織斑先生……」
気がついた時、私は保健室らしき部屋のベッドで横になっており、すぐ側には織斑先生が立っていた。……何故か顔がほんのり赤くなっていたが。
「検査ではVTシステムによる後遺症は見られなかったが、どこか具合が悪いところはあるか?」
「いえ。それより、トーナメントはどうなりましたか?」
「一通り一回戦を行ってデータ収集をするが、それ以降は中止だ」
「そうですか……申し訳ありません。私がシステムに呑まれなければ……」
「お前が悪い訳ではない。勝手にシステムを載せた、ドイツの上層部に問題がある」
折角のトーナメントをダメにしてしまったことに私が謝ると、織斑先生はそう言って慰めてくれた。
「それよりラウラ。後で彰人達にしっかり礼を言うを忘れるなよ? お前を救ってくれたのは、彼らなのだから」
「はい」
そうだ……彼らが助けてくれなければ、私はここにこうして居られなかった筈だ。直後に気絶してしまったが、今でも覚えている。私をエクシアもどきから引っ張り抱いてくれた、IS越しに感じた彰人の温もりを………っ。
ドクン……
「っ……!!」
「ん? どうした?」
「な、何でもありません……」
まずい……長年謎だった気持ちが、今頃になってわかってしまった……彰人に抱いている気持ちは、紛れもなく恋心というものだ。その証拠に自覚した途端、胸の締め付けが強くなる。このまま仕舞い込むのは、最早不可能だ。しかし彰人には既に恋人が…………そうだ! こういう複雑な話はクラリッサが詳しかった筈。後で聞いてみるとしよう。
彰人SIDE
「何だ、結局トーナメントは中止か……」
「危険だから仕方ないとは言え、これで二回連続中止とは……三度目もあるか?」
「さすがに無いんじゃない~?」
事情聴取が一通り終わり、学食で夕食をのんびり食べながら、俺達は色々なことを話していた。ちなみに居るのは俺、一夏、のほほんさんで他のメンバーはコンビネーションの確認や機体のチェックをしている。ラウラちゃんは多分まだ保健室で寝てる。けどシャルルが居ないのは……謎だ。
「それより~、おりむーの機体からどば~ってGN粒子が出たよね~? あの時みんなと意識が繋がった感じがしたんだけど~…何が起きてたの~?」
のほほんさんはダブルオーライザーが発動したトランザムバーストに興味津々らしい。ていうか、観客席にも僅かながら効果が及んでたのか。
「うーん……対話、かな?」
それ以外に良い言葉が見つからない。
「そっか~」
しかし納得してくれたようだ。のほほんさんが相手で本当に良かった……。
「あ、織斑君に矢作君。ここに居たんですね。2人とも、今日はお疲れ様でした」
ホッとしていると、山田先生が近くに来ていた。
「いえ、山田先生こそ。後処理任せてしまって、すいません」
「大変じゃありませんでした?」
「そうなんですよ……ただでさえ事故が起きたというのに、その上一部の方が変な空間を見たと電話でうるさくて……」
……すいません山田先生。それ、やったの俺等です。
「って、こんなこと言ってもわかりませんよね。それよりも大事なことがありますし」
「「大事なこと?」」
「実は織斑君達の大浴場使用が今日から解禁されまして。それで今日は、試合の疲れを癒す為に大浴場が男子だけの貸し切りになったんです」
「マジですか!? やった!!」
「貸し切り!? っしゃあ!!」
俺と一夏はガッツポーズをとって喜ぶ。疲れた日にこそ大浴場に入りたいと思ってたけど、本当に入れるとは。今日はツイてるぜ。
「良い湯だなぁ~」
しばらくして、俺は大浴場の湯船に肩までつかっていた。さっきまで一夏も居て湯船耐久レースなんてやってたが、のぼせかけたので先に上がっていった。俺? 平気ですけど。
ガラガラ
ん? 誰か入って来た……ははぁん、さては一夏の奴、俺にリベンジを果たしに来たな? いいだろう、受けて立って―――
「あ、あの、彰人……」
―――ってこの声は一夏じゃない……まさか!?
「シャルル!? 何故にWhy!?」
「は、入りたかったから……」
「だからって来る奴があるか!? お前は女なんだぞ! 男に裸体見られたらまずいだろうが!!」
「いいもん別に! 彰人になら……見られたって……」
…………………………ゑ? 今何と仰いましたシャルル=サン? 俺なら見られてもいい? え、どゆこと? それってもしかし―――
「う、後ろに座るね……?」
「てって、お前はいつの間に俺の真後ろににににに!?」
背中に感じた感覚に変な声を出してしまった。これ……シャルルと背中合わせになってるよ……アカン、心臓がバックバクだ。
「「……………………………」」
そしてしばし無言になる。そりゃそうだろうね。
どれだけ時間が過ぎただろうか。沈黙を破ったのはシャルルだった。
「……彰人」
「な、何だ?」
「僕の父さん達を助けてくれて、ありがとう」
「ああ…どういたし……ん? 待てよ、今回実際に助けたのは兄ちゃん達だし、兄ちゃんに連絡したのは楯無さんだから…………俺に礼を言ってもしょうがないんじゃ?」
せいぜいシャルルを落ち着かせて、話を聞いたぐらいしかしていない。
「ううん、そんなことはないよ。楯無先輩だって言ってたでしょ? 彰人に影響されたって。彰人がいなければ、楯無先輩は僕を助ける為の連絡をしなかった。君が居てくれたから、今の僕がここにいるんだ。だから……ありがとう」
「シャルル……」
「それと……」
ギュッ
今度は向きを変えたらしく、シャルルが俺に後ろから抱きついてくる。そして背中に何やら柔らかい感触ががががが!?
「僕の名前……本当の名前は、シャルロット・デュノアって言うんだ。できればそっちの方で呼ばれたいな…なんて」
「そ、そうか。けどそうなると、公私で分ける必要があるから少しややこしくなるな。……あ。だったら、『シャル』って呼び方はどうだ? これなら大丈夫だろ」
まさか原作一夏が呼ぶ愛称を、俺が言うことになるとは思ってなかったがこの場合だとこうするしかない。てか今更だけど、混浴してることがセシリア達にバレたら……!
「シャル……自分で言うのもなんだけど、良い響きだね。ありがとう。……シャルかぁ。ふふっ♪」
シャルル…否、シャルの言葉は既に耳に入って来ない。頭に浮かぶのは殺気を出しながら飛影見参!をバックに無表情で詰め寄るセシリアと簪の姿。やべぇよ……やべぇよ……このままだと俺、確実に2人にアバーッ!されるよ!
(マジでどうしよう……)
幸せそうな表情を浮かべているシャルとは裏腹に、俺の表情はどんどん暗くなっていくのであった。
クラリッサSIDE
ピリリリリリ!
「ん?」
突然私の携帯が鳴った。相手は……ラウラ隊長? 何故こんな時間に……戸惑いながらも私は携帯を手に取る。
「もしもし」
『もしもし、クラリッサか?』
「そうですが、何か御用ですか?」
『う、うむ。実は大事な相談があってだな……』
そう言って隊長は言葉を濁す。これは本当に何かあったみたいだ。私も真剣な面持ちになる。
『あ、彰人に抱いている感情が、恋心だと気づいたんだが……彰人には、既に恋人が2人も居るんだ……わ、私はどうしたらいいんだろうか?』
「……………………………」
隊長の話を聞いた私はしばし黙り込む。そして―――
「……恋愛、キターーーーーーーーーーーー!!」
『!?』
『『『何事ですか!?』』』
思わず大声で叫んだ。電話の向こうで隊長が驚き、他の隊員達が部屋に入ってくる。しかしそんなことはどうでもいい。逆に好都合だ。
「フフフ、諸君。聞いて驚け! 実は隊長が……矢作彰人への気持ちにお気づきになられたのだ!!」
「なんですって、それは本当ですか!? 副隊長!」
「ついに、ついに隊長にも春が!」
「だが! 当の矢作彰人には、恋人が居ると隊長は仰った。それも2人、だ」
騒ぐ隊員達を落ち着かせるように言うと、驚愕の表情のまま固まってしまった。
「す、既に恋人が居るですって!? しかも2人!?」
「それじゃあ隊長の想いは……」
「副隊長、どうすればいいんですか!」
「心配無用だ。フッ、今こそ私の知識が役立つ時だ」
言いながら、私は日本から通信販売で買った漫画を取り出して皆に見せる。
「この本によると、矢作彰人のように複数の女性と付き合うには、全ての女性を平等に愛する覚悟を持つことが前提となると書いてある。簡単に聞こえるかもしれんが、これはかなり難しいことだ。しかしだ。矢作彰人は恋人が2人ということから、この条件を見事に成していることになる。即ち―――隊長が新たに恋人となっても、彼なら平等に愛してくれるということだ!!」
堂々と隊員達に力説する。果たして、無事に伝わっただろうか?
『『『なるほど。ならばまったく問題ありませんね!!』』』
心配は杞憂だったようだ。
「その通り! では皆の意見が纏まったところで、早速隊長にアドバイスしようと思う。……お待たせしました。それでですね、隊長―――」
『ふむ……ふむ……』
私は隊長に恋人になっても問題ないこと、そしてどう告白すればいいか等のアドバイスを送った。後は…吉報を待つだけだな。