ISG~インフィニット・ストラトス・ガンダム~   作:レイブラスト

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53th Episode

どうも皆さんこんにちは、矢作彰人だ。まさかのシャルと混浴するという展開が起きた次の日。俺は嫌な予感がしてならなかった。理由は簡単。原作でシャルが女子だとカミングアウトし、原作一夏と混浴したことがバレてボコボコにされる日だからだ。さすがにカミングアウト……しないよな?

 

そう願っていると、山田先生がどこか疲れた表情で教室に入ってきた。

 

「えっと……今日は皆さんに転校生を紹介します。と言っても、もう紹介は済んでると言いますか……」

 

言葉を濁して訳のわからないことを言う山田先生。……この流れは、まさか……。

 

「失礼します」

 

俺の不安を余所に教室に入ってきた転校生は、俺達が見知った人物だった。

 

「シャルロット・デュノアです。皆さん改めてよろしくお願いします」

 

そう、シャルルが本来の性別―――女子の制服を着て登場したからだ。

 

(おい彰人。一体全体どういうことだ?)

 

(俺に質問をするな……)

 

カミングアウトをしたシャルを見た一夏が尋ねて来るが、俺はそれを受け流す。そのせいで怪しい目で見られたが、許せ。今回ばかりは俺も困惑してるんだ。

 

「ええと…という訳で、デュノア君はデュノアさんでした。はぁ……また寮の部屋割りを組み立て直す作業が始まります……」

 

やはり山田先生が疲れていたのはこれが理由だったのか。いや待て。それよりも、シャルが原作と同じ行動をとったということは……!

 

「え? デュノア君って女の子なの……!?」

 

「美少年じゃなくて、美少女だったの!?」

 

「てことは、矢作君も知ってたの? 同じ部屋なんだし、知らない筈は……」

 

「ちょっと待って! 昨日って、確か男子が大浴場を使ったわよね!?」

 

まずはご覧の有様になる。問題はこの後だ。原作では怒り狂った鈴ちゃんが突入して衝撃砲をぶっ放したけど、似たようなことになるのは間違いない。そうなったら一大事だ!

 

「みんな落ち着いてくれ! 俺は彰人と2人で入ってて、のぼせかけたんで先に上がったんだ。だからシャルルとは一緒に入ってないよ」

 

「ふむ。一夏がそう言うなら、私は信じよう」

 

「じゃああっきーは~?」

 

「…………………」

 

「おい彰人、何故無言―――お前、ひょっとして……」

 

俺は無言で左手にファイズアクセル(おもちゃ)を取り付け、

 

『Start Up!』

 

ボタンを押すと同時に全速力でドアへと向かう。が―――

 

「……」

 

「おわっ!?」

 

ドアを開けるとラウラちゃんが居たので、驚いて立ち止まってしまう。タイミングが重なったのか。そう考えていると……。

 

「彰人……」

 

「どうしたラウラちゃ―――!?」

 

言い終える前に、ラウラちゃんは背伸びをして俺に……キスをした。

 

 

突然のことに目が見開かれる。この場に居る全員も俺と同じになってるようで、シンと静まり返った。

 

「何々? 一体何の騒ぎ? シャルルが女の子とか聞こえたけど―――」

 

「……どんな感じかな―――」

 

「わ、私は……お前が、好きだ! お前が欲しい、彰人!!」

 

丁度鈴ちゃんと簪の姿が見えたところで、ラウラちゃんはGガンを思い起こすような爆弾発言を言ってのけた。更にこのタイミングで、ファイズアクセルが『Three・Two・One・Time Out!』と鳴った。ここまでわずか十秒の出来事だったのか……ってそうじゃない!

 

(このままじゃ、セシリアと簪から全部装一斉射を貰うことに……!)

 

恐る恐る後ろを振り返ると、そこには―――

 

「どうしよう、ラウラに先越されちゃった……」

 

「大丈夫ですわ。昨日の一件と今日のことで、彰人さんも女性として意識している筈ですから」

 

(へ?)

 

どういう訳かセシリアがシャルと仲良く会話していた。更に―――

 

「……凄い。ラウラ、私達が何もしてないのに、自分から……」

 

「か、簪!? いやその、これは……知り合いに相談したところ、思い切った方が良いと言われて……」

 

簪も感嘆しつつラウラちゃんと話していた。……え、何で? ここで嫉妬のあまり攻撃してくるんじゃないの?

 

「……あ~、なるほど。そういうことか」

 

「薄々と事情がわかりかけてきたぞ……」

 

「そうか…そういうことだったのか」

 

「え、何? 3人とも勝手に納得してないで、俺にもわかるように説明してよ」

 

何かに気づいて頷く鈴ちゃん、箒ちゃん、一夏に説明を求める。お願いだから1人だけ置いてきぼりにしないで。

 

「そうだな……簡潔に言うと、まずセシリアと簪がシャルロットを女性として彰人に意識してもらう為に、色々と企てたんだと思う。何があったかは知らんが、昨日の大浴場で起きたこととさっきのカミングアウトまでの流れを」

 

「な、何だって!?」

 

俺は驚いてセシリアと簪を交互に見やる。

 

「申し訳ありません。ですが同じ彰人さんに好意を抱く者同士放ってはおけず、多少強引ながらもシャルロットさんを意識して貰う為にこのような手段を取りました」

 

「は、はぁ……ってそれより、もっと大事なこと言わなかったか!? 同じ好意を抱く者って、それってシャルが俺のことを……その……」

 

「うん……好きだよ……」

 

恥ずかしげにシャルが言い、周囲の女子達から軽く歓声が上がる。

 

「も、勿論私も、彰人のことが好きだ。忘れないでくれっ」

 

「う、うん。それはわかってるけど、ラウラちゃんは何故あんなことを? 簪達の入れ知恵じゃなさそうだけど……」

 

「その件ならさっき簪にも話したが、軍の知り合いに尋ねたら日本の告白とは、世界中に伝わる程に大胆かつストレートにやるものだと言って教えてくれてな。私には他に良いアイデアがなかったから、実行したんだ。さすがに、世界中は無理だったが」

 

よし、その教えた人(十中八九クラリッサさんだけど)を連れて来い。Gガンに染まった頭を改革してやる。てか何でよりによってGガンなんだよ、ガンダムXも告白シーンがあっただろうに。

 

……と、ここまで来て俺は大事なことに気づいた。

 

「……あれ? よく考えたら俺、複数の人と交際してることを教室で暴露してる!?」

 

さすがに慌てて周囲を見渡す。しかし、驚くべき一言が箒ちゃんと簪から放たれた。

 

「ああ、それなら心配ない。どうやら一組の皆には感付かれていたようでな……この前応援を貰ってしまったんだ」

 

「……私と鈴に至っては、四組や二組からも支援されてる。気持ちは嬉しいけど、少し恥ずかしい」

 

「なん……だと……」

 

完全に絶句してしまった。え……みんな既に知ってたの!?

 

「い、一夏。お前もこのことは知ってたのか?」

 

「いや、つい昨日聞かされたばかりだ。ったく、これまで隠そうとしてきた俺達の努力は、一体何だったんだって話だよ」

 

腕を組みながら言う一夏。全くその通りだと思う。気づいてるなら気づいてるで教えてくれればいいのに……なんか損した気分。

 

「2人ともごめんね。言おう言おうと思ってたけど、中々言い出せなくて」

 

「それより~、あっきーはどうするの~? シャルるんとラウラんのこと~」

 

「どうするって、それは……」

 

のほほんさんの言葉に、俺はハッとさせられる。そうだ……俺はシャルとラウラちゃんの2人からも好意を抱かれているんだ。けど、俺は既に2人の女性と交際している。それだけでかなり贅沢なのに、これ以上増えて良いんだろうか? それに何より、セシリアと簪がOKしてく……って、そういえばシャルについてはセシリア達が後押ししてたんだっけ。

 

「彰人さん。私達は、彰人さんがどんな人物か知っているからこそ、2人を応援したい。そう考えたのですわ」

 

「……酷なことを言うかもしれないけど、ここは彰人が決断して。彰人が決めたことなら、文句はないから」

 

俺の考えてることを知ってか知らずか、セシリアと簪が言う。クラスの女子達と山田先生も固唾を飲んで見守っている。……おい山田先生、アンタさりげなく生徒に混じってるけどいいのか?

 

まあそんなことはいい。自分で決めろ、か…………真剣に判断しなければな。省吾兄ちゃんが一夫多妻制の法案を可決直前まで持って行っているとは言え、4人と付き合うことになっていいのだろうか? 俺1人で養えるのか、本当に平等に愛することができるのか……問題はたくさんある。けど色々考えが浮かんだ末、ある結論に至った。

 

(ま、いいか……考えるのはやめた)

 

これからのことを今あれこれ考えていても仕方がない。大事なのは今、自分がどんな気持ちを抱いているかだ。俺はシャルとラウラちゃん……ラウラの想いを無下にしたくない。だったら、言うべきことは決まっている。

 

「…………俺は、シャルとラウラの気持ちも、受け入れる。2人のことが、好きだから。……例え世間にどう思われようとも構わない。俺は、俺の意志で4人と付き合う!」

 

力強く、そして一気に述べた。壁があったら殴って壊す、を体現しようじゃないか。世間体がどうのなんて、それがどうした!って言ってやろうじゃないか。覚悟を決める必要があるなら、いくらでも決めてやるさ。

 

「「彰人……!」」

 

感極まり、涙目になったシャルとラウラが飛びついてくる。特にシャルは勢いがつきすぎたのか、唇が俺と当たってしまった。

 

「あ……えと、今のは、その……」

 

途端に歯切れが悪くなるシャル。そんな顔されてもな……俺だって少しびっくりしてんだから。

 

「すげぇ覚悟だな、彰人……ともかく、一件落着って奴か? 朝のHR丸ごと使った気もするけど」

 

チラッと時計を見ながら一夏が言う。確かにSHRを丸々使ってしまった感じも若干ある。

 

「織斑の言う通りだ。やれやれ……」

 

そこへため息をつきながら現れたのは―――千冬さんだった。

 

「えっ! 千冬さ……織斑先生! いつからそこに?」

 

「更識と凰がここに来た辺りだ。お陰で入るタイミングを見失ってしまったぞ……それとだ」

 

俺をじっと見つめ、千冬さんは真剣な口調で言う。

 

「そこまでお前が覚悟を秘めているなら私は何も言わんが、敢えて一言だけ言わせて貰おう。……4人全員を、全力で愛せ。以上だ」

 

それだけ言うと、千冬さんは再びシンと静まり返った教室に授業開始の挨拶を求めた。……改めて、何だかとんでもないことになったけど、仕方ない。一度決めたことは覆さないのが男ってもんだ。千冬さんの言ったように、4人全員を全力で愛してやろうじゃないか!!……って何か、言ってて恥ずかしくなってきたな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

放課後

 

楯無SIDE

 

「はぁ、ため息が出ちゃうわね」

 

目の前の書類を見ながら私はそう漏らした。今現在私と虚ちゃんが格闘しているのは、ラウラ・ボーデヴィッヒのIS『ハイペリオンガンダム』に組み込まれていたVTシステムとその暴走に関するものだ。

 

「ただでさえ今年は男子生徒の入学に、クラス対抗戦での無人機の乱入まであるって言うのに……誰かが意図してるんじゃないかしら?」

 

「それはさすがにない……とは言い切れませんね。何せ、こうも立て続けにイレギュラーな事が起きてますし」

 

トントンと資料を整理しながら虚ちゃんが言う。今までIS学園で事件が発生したことなんて(生徒同士の喧嘩等を除いて)なかったと言うのに。どうにも嫌な予感がしてならない。……あ、そうだ。

 

「イレギュラーと言えば、今朝の騒ぎは一体何なのよ……。シャルロット・デュノアが女性として改めて通うことは問題ない。けど、ラウラ・ボーデヴィッヒ共々矢作彰人に好意を抱いてたってどういうこと!? それも公衆の面前でキスしたって報告もあるし……というか、彰人君も彰人君よ! 4人全員と交際するなんて…………!!」

 

苛立ちをぶちまけるように言葉を並べる。何故だか知らないけど、今朝の告白事件について考えると無性にイライラする。我ながらなんでこんなにイラついてるのか、理解できない。彼だって答えを出すまでの時間が限られてたとは言え悩んだ末に出したんだ。なのに……。

 

(何でこうも必要以上に怒りたくなるのかしら……)

 

「あの、お嬢様……」

 

「? どうしたの?」

 

気づくと、虚ちゃんが何か言いたげに声を掛けてきた。

 

「単刀直入にお尋ねしますが、お嬢様は彰人さんのことが……好きなんですか?」

 

「ぶっ!? な、何を言い出すかと思えば……そんな訳ないでしょ! ていうか、逆にどうやったらそう思える訳!?」

 

「(この反応、やっぱり……)でしたら一度、考えてみてはどうです? そうですね……例えば、彰人さんがお嬢様に見向きもしなくなった、とか」

 

「見向きも何も、彼は私のことなんか見てないでしょうに……」

 

そうぼやきつつ、私は想像してみる。テレビとかの話題を持って彰人君に話しかける。けど彼は簪ちゃん達に意識を向けていて、私のことは半ば無視している。……将来的にはあり得そうだけど、だからって―――

 

 

 

 

ズキッ……

 

 

 

 

……あれ?

 

(何今の……胸に痛みが?)

 

針を刺すような痛みが胸に走り、やがて少しずつそれは大きくなっていく。同時に彰人君のことが急に頭から離れなくなる。

 

(ち、ちょっとこれ……どういうことなの!? まさか私、本当に彼のことが……!)

 

そう思った途端、更に痛みが強くなる。どうしよう…………私、虚ちゃんの言うとおり、彰人君のことが好きになっちゃったみたい……けど理由は何なんだろう? 髪が綺麗だと褒めてくれたから? 私と簪ちゃんの間にあった蟠りを解消する手助けをしてくれたから? 彼の姿勢に心打たれたから? わからない。どれも当てはまりそうで、当てはまらない気がする。けど好きになった理由はどうだっていい。結果的に好きになっているという事実こそが大事なのだから。

 

(……本当にどうしよう……)

 

この気持ちをどうやって整理するか、次に彰人君と顔を合わせた時にどう接すればいいか、私はずっと考えていた。

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