ISG~インフィニット・ストラトス・ガンダム~ 作:レイブラスト
54th Episode
「ふぅ……。こんなところか」
どうも皆さんこんにちは、矢作彰人だ。シャルのカミングアウトとラウラの告白&俺の全員受け入れという衝撃的な日から数日が経過した。俺は現在、使用可能になっているアリーナでウイングゼロを展開して立っていた。目の前にはシールドエネルギーが無くなって動けなくなっているGN-XⅣとM1アストレイがいくつか横たわっている。
「うぐ……つ、強い……!」
「男の癖に、何で……!」
俺に対して憎らしげな目線を向けてきたソイツ等は、女尊男卑思想に染まったIS学園の生徒と教師達だ。最近何度か勝負を挑まれることがあり(それも多勢に無勢な状況で)、その度に返り討ちにしている。挑む理由としては、やはり天を獲るという発言と、俺が4人の女性と交際している状況が気にくわないからだろう。……俺としても何も言い返せないので断らずに戦っているが、どいつもこいつも似たようなことしか言わないのでウンザリしている。
(その闘争心を、有意義なことに向けられないものか……)
ついため息をついてしまう。……今日のは一段と重く感じられた。というのも、実は今朝俺が起きた時、こんなことがあったのだ。
「ん……ふぁ~……あ?」
俺が目を開けた時、俺のベッドに誰かが居ることに気づいた。簪か? そう思って布団を捲ったら……。
「んぅ……む、彰人か。おはよう」
そこに居たのはラウラだった。しかも全裸で。
「………………………おい、何で裸なんだ? 目のやり場に困るんだけど」
目を逸らしながら、極めて冷静な態度を装ってラウラに問いかける。
「恋人同士は裸の付き合いをするものだとクラリッサから聞いたのだが……間違いだったか?」
「間違えすぎだ」
てかクラリッサさん……中途半端な知識をラウラに教えないでくれ。ただでさえこの子は純粋なんだから、今回みたいに変なこと覚えちゃったらどうするんだよ。
「とりあえず服を着てくれ。裸でなくても、恋人同士の付き合いはできるから」
「そうか……彰人が言うなら、正しいんだろうな」
そう言いながら、ラウラは近くに畳んであった服を着始める。俺はそれを見てホッとする。……簪が眠ったままで正直、かなり助かった。
―――と、ここまでが今朝起きたプチ事件だ。お陰で二重の意味でドキドキさせられた。それに最近、楯無さんの俺を見る目が何か変だし……変態とか節操なしとか思われてるのかな? だとすると悲しいが。
「…………ん?」
ふとそこへ、ウイングゼロのセンサーが別のアリーナで誰かが戦っているのを察知した。戦ってるのは…簪と箒ちゃんか。模擬戦でもしてるのかな。
箒SIDE
「はぁあああああっ!」
ブルーフレームがソードフォームのタクティカルアームズを真上から振るって来る。
「はっ!」
私は対艦刀二本をクロスさせてそれを防ぐ。鍔迫り合いになるかと思ったが、タクティカルアームズの方が重さがあるので徐々に押され始める。
どうするか考えていると、ブルーフレームの右足にアーマーシュナイダーが展開されるのが一瞬見えた。
「(剣に集中させておいて、不意打ちする気か。だが……!)はっ!」
「っ!?」
私は咄嗟に対艦刀を離して後退した。目論見が外れたこととバランスが崩れたことで、簪は一瞬だが動揺する。
その隙を逃さず、私はビームライフルを構えて即座に連射する。
「……させない!」
簪はソードフォームのタクティカルアームズを楯代わりにして攻撃を防ぐと、ガトリングフォームに変形させて銃口から弾丸を放った。私は左腕のシールドで防ぎつつ、簪の真下辺りの地面目掛けて移動し、対艦刀を拾い上げると素早く方向転換した。
「これで終わりだ……!?」
真下から一気に接近して右手に持った対艦刀を振るおうとした瞬間―――右腕の動きが、急に鈍った。
「……え?」
突然のことに簪すら驚いて動きを止めている。しかし私はすぐに切り替えると、左手の対艦刀で一閃した。
「でやぁあああああ!!」
「しまっ……きゃああああ!」
シールドエネルギーを減少させながら、ブルーフレームは墜落する。撃墜には至ってないようだ。……やはり攻撃力に差があるのはカバーし難いか。それも気になったが、私は右腕が動かなくなったことに疑問が沸いていた。
(M1アストレイが、私の動きについてこれないのか? いや、まさかな……)
あり得ないと思いつつも、その可能性がしばらく頭から離れなかった。
束SIDE
私はIS学園の監視カメラを通して箒ちゃんの模擬戦を観戦していた。そして戦いが終わったところで画面を切ると、ある確信を口にした。
「やっぱり、箒ちゃんの動きにM1アストレイが追いついていないね……」
これは予想の範囲内のことだと思っていたが、1つ誤算があった。箒ちゃんの成長が思ったよりかなり早かったのだ。本人は気づいてないだろうけど、箒ちゃんのIS特性はCランクからAランク上位まで上昇している。M1アストレイの動きが一瞬鈍ったのは、量産機故に設定されてあった限界値をパイロットの成長が追い越してしまったからだ。
(『アレ』を渡した方がいいかもしれない。でも―――)
私はラボに鎮座している『機体』に目を向ける。この機体にはパイロットの意志に合わせて自ら進化する機能がついているが、その為には一度危機的状況に陥り、打破することが不可欠となる。
「となると可能なのは……この日だね」
ディスプレイに表示されたカレンダーの日付を指して言う。その日からはIS学園がある行事を行うので、その期間を利用していっくんとあっくんの機体の覚醒を促す為にある敵と戦って貰うことを予定している。そこに箒ちゃんを加えれば、一度に3つの機体を覚醒させることができる。
勿論、その為に戦わせる機体の目星もついているけど……。
(いっくん達に危険が伴うし、敵役のISは暴走させないといけないのが辛いなぁ……)
この戦いは、文字通り命を掛けた戦いになる。下手をすれば死者が出るかもしれない。そして何より、自分の子供のようなISを自らの手で暴走させなければならないのに強い抵抗感を覚える。
……だけど、やるしかない。世界を、私が本来望んだ希望溢れる未来に変える為に。
「ごめんね……お母さんを、許して……」
表示されてる敵役の新型ISに手を伸ばし、私は泣いた。
OutSIDE
場所は変わり、とあるアメリカの軍事施設の1つ。そこの格納庫に、2人の女性が壁にもたれかかって話をしていた。
「コイツが例の新型か。乗り心地とかはどうなんだ?」
「抜群といった感じかしら。あの子、私の方に合わせてくれるし」
先に尋ねたのはイーリス・コーリング。この基地の軍属者かつアメリカの代表操縦者であり、第3世代型IS『ガンダムエピオン』の操縦者でもある。
その彼女に答えているのが、ナターシャ・ファイルス。イーリスの友人で、アメリカの新型機のテストパイロットだ。
この2人はとても仲良しで、イーリスはナターシャを「ナタル」と、ナターシャはイーリスを「イーリ」と呼んでいる。
「合わせてくれる? ISが?
「ええ。何ていうか、私の気持ちを酌み取ってくれるというか、気遣ってくれるというか……上手く言い表せないけどとにかく、そんな感じなのよ」
「へぇ……不思議なこともあるもんだな。他の連中なんて『ISに合わせなきゃなんない』とか『強迫観念みたいなのを感じる』とか、ぼやいてるのにさ」
「そう言うイーリはどうなの?」
「私か? 特にそういったものはないな。信頼してるパートナーって感じかな」
待機状態のエピオンを見つめながら、イーリスは言う。
「それよりさ、ナタル。IS学園の矢作彰人と織斑一夏って奴だけどさ……どっちと戦ってみたいと思う?」
「藪から棒にどうしたの?」
「学年末トーナメントってのを見ただろ? あの試合での動きが目に焼き付いちまってな。久しぶりに血が騒いじまったんだ。ナタルもそうだろ?」
「……否定はしないわ」
闘争心を湧き上がらせるイーリスに、少しばかりの照れを見せながらナタルは同意する。
どうして2人が学年別トーナメントのことを知っているのか? それは2人の上司が、予め録画しておいた男性操縦者の試合を見ておくようにと言ったからだ。
当初ナターシャは興味有り気だったが、対するイーリスは関心が薄かった。軍人として死線を潜り抜けてきた彼女にしてみれば、男性だろうが女性だろうがまだまだ未熟な学生であることに変わりないと思っていたからだ。しかしいざ試合を見てみると、彼女はすぐに引き込まれていった。ハイペリオンのアルミューレ・リュミエールによるバリアを全く同じ箇所を集中攻撃して突破するという奇策を編み出した一夏と、ゼロシステムを完全に使いこなしアリオスを完全に翻弄した彰人。2人の圧倒的な強さに、イーリスもナターシャも武者震いを覚えたのだ。
「で、どうなんだ?」
「そうね……私は、織斑一夏君かしら。彼の剣裁きに私とあの子でどこまで通じるか、確かめてみたいの」
「新型で挑む気かよ。お前も案外気が早いな。んじゃ私は……やっぱ矢作彰人だな。アイツ、まだ学生なのにエピオンに積まれてるのと同じシステムを完全に使いこなしてる。それに一度暴走してた時があったが、その時に見せた冷酷なまでの強さにやられてな……できることなら、あの状態で私と戦って欲しいぜ」
「まあ何にせよ、私達がまずやらなければいけないのは『あの子』の試験稼働よ。そろそろ準備しないと、ハワイ沖に行けないわよ?」
「りょーかいっと」
そこで会話を切り上げると、2人は格納庫を後にした。