ISG~インフィニット・ストラトス・ガンダム~ 作:レイブラスト
午前7時、ハワイ沖にて。
OutSIDE
ナターシャの駆る新型ISがイーリスの動かすガンダムエピオン随伴で、稼働テストを行っていた。
「PIC正常稼働。各部問題なし」
『武装チェックの方は終わらせたか?』
「今やってるわ」
目の前に浮かぶモニターを操作していくナターシャだったが、ふと右端に小さく表示された赤いメッセージに気づいた。
「何かしら? ……外部からの通信? 一体どこから……」
眉を細めて訝しんだ―――次の瞬間。
『通信内容を解析。創造主による新たな命令を確認』
「え?」
『創造主による命令を優先。操縦者はその妨げになると判断。よって電気ショックによる軽度の意識障害を行う』
「え、何!? どうし―――うっ!」
驚いて反応した瞬間、電気が体に走りナターシャの意識を刈り取った。そして操縦者が意識を失ったまま、新型ISは動き始めた。
『ナタル? どうした、何をしてる?』
『命令を再確認。現機体コンディションは任務の遂行に支障なし』
新型ISのツインアイが怪しく光り、遙か彼方―――IS学園の臨海学校先の旅館をハイパーセンサーで捉えた。
『―――
彰人SIDE
翌日の午前9時。今日の合宿は丸一日使ってISの各種装備の試験運用とデータ収集が行われる。特に専用機持ちは本国から送られてきた大量の装備をチェックしなければならないので、大変だ。……まあ俺と一夏のは後付けできないから、その辺は楽でいいんだけど。
「さて、それでは各班ごとに振り分けられたISの装備試験を行うように。専用機持ちは専用パーツのテストだ。全員、迅速に行え」
全員が集合したところで千冬さんが言うと、『はーい』という返事と共にそれぞれのポジションにつく。さすがは今回の合宿の目玉だけあって、大がかりだ。俺と一夏は専用パーツがないので、他の生徒達のパーツ運びを手伝っている。ちなみにパーツと言っても予備の武器とか補助ブースターのようなものとか、色んなものがある。俺も補助ブースターとかは欲しかったかも……。
「ああ、そうだ篠ノ之。お前には今日から専用機を……」
千冬さんが言いかけた、その時だった。
「ちーちゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!」
大声が聞こえたかと思うと砂煙を上げながら何者かが物凄いスピードで走って来ていた。しかもその人物は、昨日会ったばかりの人だった。
「……束か」
そう、人参型ロケットという凄まじくインパクトのある登場をした篠ノ之束さんだ。
「やあやあ! 会いたかったよちーちゃん! さあ、今すぐハグをしよう! そして愛を確かめ―――ぶへっ!?」
出会い頭にセクハラを働こうとした束さんにアイアンクローをかます千冬さん。しかもあの力の入れ具合……本気だ。
「会って早々うるさいぞ、束」
「ぐ、ぐぬぬぬ……相変わらず冗談が通じないねっ!」
するりとアイアンクローから抜け出しながら束さんは言う。……何をどうやったら本気の千冬さんから脱出できるんだ? と、ここで束さんは箒ちゃんに視線を向けた。
「やあ箒ちゃん! おっ久~!」
「久しぶりです、姉さん」
相変わらずの態度で接する束さんに対し、箒ちゃんは複雑そうな面持ちで応えた。再び会えた嬉しさ半分、いきなり専用機を貰えるという戸惑い半分なんだろう。
「えへへ、それにしてもホントに久しぶりだね。こうして会うのは何年ぶりかなぁ? 色々おっきくなったね、箒ちゃん」
「……どこを見て言ってるんですか!!」
束さんの視線が明らかに自分の胸に集まっていることに気づいた箒ちゃんは、咄嗟に両手で胸を隠す。いきなりなにしてんだ、あの人は……。
「恥ずかしがらなくてもいいじゃん。姉妹同士の軽~いスキンシップと思えば―――」
「そこまでにしておけ、束。スキンシップよりも此処に来た用件の方が大事だろう?」
「む、それもそうか。―――コホン。それでは皆さん! 大空をご覧あれ~!!」
天に向かってビシッと指差して言うと、金属の塊が落下して展開。中身が露わとなる。そこにはM1アストレイに似た紅白のISが佇んでいた。
「じゃじゃーん! これぞ箒ちゃん専用機こと『ガンダムアストレイレッドフレーム』!! 全スペックが現行ISを上回る束さんお手製のISだよ!」
得意げに衝撃の事実を言う束さんに、周囲がざわつき始める。
「全スペックが現行機を? ということは、まさかアレは……第4世代型なのか!?」
「そんな! 各国でようやく第3世代型の試験機ができた段階ですわよ!?」
「なのにもう第4世代が完成って……」
「どことなくM1アストレイに似ている気がするね……」
「……私みたいに、M1アストレイをベースにしたのかな?」
簪が最後に言った時、レッドフレームを外に移動させていた束さんがピクッと反応した。
「んー、惜しい! この子はM1をベースにしたんじゃなくて、M1の方がこの子をベースにしたんだ~」
楽しそうに言うが、それはこの場に居る全員を唖然とさせる更なる衝撃発言だった。原作でレッドフレームは確かにM1アストレイのベースになった機体だが、そこまで再現するとは。だとすると、この機体はエクシアが登場した時既に完成していたことになる。スペックが高すぎて量産の際にダウングレードしたのか……。
「ともかく箒ちゃん、今からフォーマットとフィッティングを始めるよ! 私が補佐するから、リラックスしていてね」
「……はい」
束さんが持っているリモコンを操作するとレッドフレームの装甲が割れ、操縦者を受け入れる状態になり膝を落とした。
「さっき確認したけど、箒ちゃんのデータはある程度選考して入れてあるから後は最新データに更新するだけだね。それじゃ……」
コンソールを開き、瞬く間に作業を進めていく。その様子は見る者全てを圧倒すると言っても過言ではなかった。改めて束さんがトンデモスペックの持ち主だと確認させられる。
「あの専用機って篠ノ之さんが貰えるの? 身内ってだけで」
「だよね……何かずるいよねぇ」
向こうに居る生徒達からそんな会話が聞こえる。ヘッドパーツが閉じる瞬間、箒ちゃんは彼女達に申し訳なさそうな視線を向けていた。
「はい、初期化完了っと。それじゃあ試験運転も兼ねて軽く飛んでみて。箒ちゃんの思い通りに動く筈だよ」
「ええ。それでは……」
箒ちゃんは意を決した様子で空を見た。次の瞬間、レッドフレームは凄まじいスピードで大空へ飛び立って行った。
「「速っ……」」
思わず一夏と同時に呟いてしまう。どこぞのゲッター線で動くロボや最新型ASもこんな感じだったのかな。
「うんうん、やっぱ箒ちゃんは凄いね。束さんの想像以上だよ。じゃあ次は刀使ってみて。『ガーベラストレート』って言うんだ」
「わかりました。……はっ!」
右腰の刀、ガーベラストレートを抜刀すると構えをし、突きや横薙ぎの一閃等を放った。他にもビームライフルやビームサーベルを取り出しては構える。
するとここで、束さんの周囲からターゲットドローンらしきものがいくつか空へ舞った。それらは箒ちゃんに攻撃を仕掛けるが、箒ちゃんは怯むことなくビームライフルで数体を迎撃。更にガーベラストレートで残る全てを叩き切った。その威風堂々たる姿に、全員が魅了されていた。
「あの、姉さん。何故このISを私に? この力は、私には過ぎたもののように思えるのですが……」
降下してきた箒ちゃんが束さんに尋ねる。突然得た力に戸惑っていて、浮かれてることはないようだ。
「あー、それはね……今の箒ちゃんならこの子を正しく使ってくれるって思ったからだよ」
「え?」
「作った私が言うのもなんだけど、このレッドフレームは危険な力を持っている。けど箒ちゃんなら、大切な人達を守る為に使ってくれる筈。そう頭にビビッと来たから渡そうかなって考えたんだ~。あ、念のために聞くけど、ちゃんと正しく使ってくれるよね?」
「姉さん……はい!!(まだよくわからないが、姉さんは私を信じてレッドフレームを与えてくれた。浮かれてはいけない。この力が私のものになった以上、姉さんの言う通り正しく使わなくては。それに……それが、皆に対する罪滅ぼしになるかもしれない)」
元気よく返事したその声からは、力を手にした責任感とそれを正しく使う為の希望という強い覚悟が表れていた。慢心や浮かれといった感情は一切ない。原作とは大きく違う展開に、俺は大きな安心感に包まれていた。そして俺と一夏が束さんに尋ねようとした、その時だった。
「た、大変です! 織斑先生、これを!!」
山田先生が大急ぎで走って来て、千冬さんに携帯を渡した。電話を変わって内容を確認すると、千冬さんの顔色が見る間に変わった。
「特命任務レベルA、現時刻より対策を始められたし……か。全員注目! 現時刻よりIS学園は特殊任務行動へと移る。今日のテストは中止! 各般、ISを片付けて旅館に戻れ! 連絡があるまで各自室内待機する事! それと専用機持ちは全員集合! 以上だ!!」
チッ、やっぱり来やがったか……原作における『銀の福音』の暴走が。