ISG~インフィニット・ストラトス・ガンダム~ 作:レイブラスト
千冬SIDE
「作戦は失敗の上、織斑と矢作は重傷か……最悪な結果になってしまったな」
空中に表示されたモニターを見ながら、私は呟いた。2人が撃墜された場面を見たとき、私は心臓が止まる程のショックを受けた。本来なら傍についていてあげるか様子を見に行きたいが、今は1.5ガンダムが最優先で指揮を疎かにしてはいけないので作戦室に籠もっている。山田先生が居る手前顔には出さないが、想像以上に辛い。すぐにでも向かいたい衝動が湧き上がるが今もぐっと堪えている。
「途中までは織斑君達が優位に立っていたのに……どうして……」
「戦場ではちょっとしたことが、その後の戦局を大きく変えるターニングポイントとなる。今回はあの密漁船がそうだったんだろう」
あって欲しくなかったが。心の中で付け加え、再びモニター画面を見た。
「そういえば、さっき他の専用機持ちの皆さんが何か作業していましたが……何をしていたんでしょうか?」
思い出したように山田先生が尋ねてくる。この状況で作業することの必要性といえば1つしかない。
「おそらく、自分達だけで1.5ガンダムの下へ向かうつもりなのだろう」
「えっ!? そ、そんな! 止めに行かないと!」
「無駄だ、山田先生。君や私が止めに入ったところで彼女達は止まるまい。まして、篠ノ之とオルコットは尚更だ」
思い人が自分を庇って撃墜されたんだ。同じ立場なら、私もすぐさま再出撃しているだろう。
「で、ではどうしたらっ」
「……祈るんだ。彼女達の無事と、2人が元気な姿を見せてくれることを。今の私達には、それぐらいしかできない」
未だ1.5ガンダムの居場所を補足できない状況を歯がゆく思いながら、私は一筋の望みを掛けていた。
OutSIDE
「……っ、出たぞ。ここから30キロ程離れた無人島に目標を確認した。ステルスモードに入ってはいたが光学迷彩までは搭載されていないようだ。衛星による目視で確認出来た」
端末を見てラウラが言う。それを聞いた面々は笑みを浮かべた。
「流石はドイツ軍特殊部隊の隊長ね。やるじゃない」
「まあな。お前こそ、準備はどうなんだ?」
「アルトロンのパッケージなら既にインストール済みよ。シャルロットと簪は?」
「準備オッケーだよ。いつでも行ける」
「……大丈夫」
「いよいよ……ですわね」
「ああ。先ほどとは違った緊張感だな……」
決意を胸に、彼女達は出撃しようとしていた。が、その前にラウラが全員を見て言った。
「確認するまでもないが、私達がやろうとしていることは完全に命令違反だ。生き残れる保証はないし、処罰も覚悟しなくてはならない。わかっているな?」
その言葉に誰も何も言わず、決意の籠もった目を一様に向けていた。並大抵の覚悟を決めている訳ではないのが窺える。
「よし。では出撃するが、その前に敢えて言っておこう……全員、必ず生きて帰るぞ。誰1人として死ぬな」
「「「「「了解!!」」」」」
そして6つの翼が大空へと舞い上がった。
「見えましたわ!」
目的地に着き、ハイパーセンサー5キロ先で海上約200メートルの地点でスタンバイモードで静止している1.5ガンダムを見つけると、彼女達はすぐに戦闘体勢に入った。
「まずはコイツで、あの寝坊助を叩き起こしてやる…………ファイア!!」
ハイペリオンガンダムのフォルファントリーで狙いをつけ、発射する。緑色のビームは一直線にターゲットに向かうが、それに気づいたのか1.5ガンダムは俯いていた顔をツインアイを光らせながら急に上げた。
直後、ビームが1.5ガンダムの頭部に直撃して爆発した。
『ターゲット捕捉。ダブルオーライザーとウイングガンダムゼロの反応なし。これより攻撃を開始する』
「初弾は命中。ならば!」
すぐに第二射を行うが、1.5ガンダムは自慢の機動力で避けつつ接近してくる。
「チッ、予想よりも速い! そう簡単には当たってくれんと言うことか!」
砲撃をやめて下がろうとするが、1.5ガンダムはラウラからおよそ300メートル離れた地点からハイスピードモードで急加速を行い、GNビームサーベルを持った左腕を振り翳した。
「やれ、セシリア!」
「了解ですわ!」
しかしラウラは焦ることなく指示を飛ばす。その瞬間、ストライクフリーダム(ミーティア)が真上からビームソードを展開して垂直に降下、1.5ガンダムを切り裂きつつラウラを助けた。まともに食らった1.5ガンダムは海へと落ちていくが体勢を立て直そうとする。が、そうはさせまいとセシリアはミーティアの全部装を使った攻撃、ミーティア・フルバーストで狙撃する。
1.5ガンダムもただ食らってはいられないとディフェンスモードになりつつ、持ち前の機動力で回避行動を取りながらセシリアと距離を取り、迎撃しようとする。
「シャルロット!」
「了解、行くよ!!」
そこへGN粒子によるステルスモードに入っていたシャルロットがGNツインビームライフルで背後から奇襲する。1.5ガンダムは体勢を崩すもアタックモードになり反撃に移る。
「悪いけど、そのくらいじゃアリオスは落ちないよ!」
GNビームシールドによって展開された防御フィールドで攻撃を防ぎつつ、シャルロットは『
「(やはり、いくら機動力に優れていても連携や一斉攻撃を避けきるのは不可能か。となると、奴が次に取る行動は……)箒、鈴、簪! 奴が離脱して背中を見せたら、速攻且つ全力で仕掛けろ!」
「わかった!」
「……了解!」
「任せて! ドラゴンハングで取っ捕まえてやるわ!!」
ラウラが攻撃しながら3人に指示を入れた瞬間、1.5ガンダムはアルヴァアロンキャノンモードで強力なビームを薙ぎ払うように放った。咄嗟に防御と回避に専念した為大した被害はなかったが、1.5ガンダムはラウラの予測通りハイスピードモードで離脱しようとする。すると―――
「そうは!」
「させるか!!」
簪と箒が真下と真上から接近し、タクティカルアームズソードフォームとガーベラストレートで擦れ違い様に切り裂いた。
「今だ鈴! ドラゴンハングで奴の身体を軋ませてやれ!!」
「わかってるわよ!!」
返事をしながら、鈴はドラゴンハングを放つ。鈴のアルトロンガンダムはパッケージによってカスタム化し、いくつか武装が減ったものの機動性が高まり、ドラゴンハングは射程と柔軟性が強化されている。
それによって捕まれた1.5ガンダムは必死で暴れるが、鈴は意地でも離すまいとしていた。更に左のドラゴンハングは右のバインダーを掴んでいた。
「これでぇぇぇええええええええええ!!」
バキバキバキィッ!
そのまま力任せに右のバインダーを引っ張って引き千切ると、スパークして小さく火花が散った。1.5ガンダムはバランスを崩しながらも鈴に膝蹴りを食らわせようとする。
「はぁぁぁああああああああああああ!!」
だが簪が背後を取り、タクティカルアームズソードフォームで残るバインダーも切り落とした。
「これでトドメッ!!」
両方のバインダーを失った1.5ガンダムに簪はローエングリンランチャーを放ち、近くにあった無人島に吹き飛ばした。
「今だ! 全員火力を1.5ガンダムに集中させろ! 出し惜しみはなしだ!!」
「「「「「了解!!」」」」」
ラウラの声に全員が返事をし、箒はビームライフルで、鈴はツインビームトライデントの投擲で、ラウラはフォルファントリーで、セシリアはミーティア・フルバーストで、シャルロットはGNキャノンで、簪はタクティカルアームズガトリングフォームで攻撃した。
それらは1.5ガンダムに命中し、機体周辺で爆発が起きた。
「はぁ……はぁ……ど、どうなったの?」
「わからん。これで倒れてくれればいいが……」
1.5ガンダムが激突した地点を見ながら言った時、それは起きた。
『ダメージレベル深刻。操縦者の生命維持及び任務遂行に支障あり。
無人島がまるで抉られたかのようになくなり、そこから1.5ガンダムが空中へと飛び出した。その装甲は徐々に修復されていった。それだけではなく機体の青い部分は赤色になり、シールドの形状や背面も大きく変わっていた。背面にあったISコアは左肘部分にあり、右肘部分にも同じものがあった。
「な、何だ!? 何が起きた!?」
「まずい、『
箒とラウラが叫んだ瞬間、1.5ガンダムのツインアイが強く光った。更に機体を見ていたセシリアがあることに気づいた。
「そんな! ISコアの反応が、2つですって!?」
「えっ! じゃあまさか、アレってツインドライヴ!? でもどうして!」
「……多分、
混乱と推測の中、敵は全員を一瞥し武器を持つ手を強く握った。そして―――
『―――リボーンズガンダム。行く!!』
―――1.5ガンダム改め、『リボーンズガンダム』が彼女達に牙を向けた。
一夏SIDE
「ん……ここは?」
気がつくと、俺は不思議な空間に居た。一面浅い水辺で、空の青さと雲が水面に映っている。それ以外にあるのは朽ちた木々だけだった。俺は近くにあった流木に腰掛け、海を眺めた。不思議と不安な感情はない。
ふとその時、人の気配を感じた。振り向くと青のワンピースを着て白の大きな帽子を被った少女が居た。
「君は……」
「何故、力を求めるのですか?」
「え?」
少女は突然そんなことを聞いてきた。
「貴方は戦いを求めない優しい人。無理に戦わなくても代わりに戦ってくれる人が居るのに、どうして?」
「どうして、か。そうだな……大事な人を守る為、かな」
「大事な人を?」
「ああ。俺の友達に、恋人。俺に関わった人達をできる限り守りたい。そのせいで他の誰かが傷つくかもしれないけど……それでも力が欲しい」
「そう……」
「それが、力を求める理由なのですね」
「っ」
新たな声に逆を向くと、グレーの鎧を着た女性が立っていた。一体どこから現れたんだ?
「まあな。けど、他にも理由はあるんだ。それは―――」
彰人SIDE
目が覚めると俺は謎の空間に居た。どこかの海岸みたいだが……どこなんだ? 不思議と安心感を感じながらその場に座っていると、後ろに人の気配を感じた。
「ん?」
そこには青のドレスを着た女の子が居た。この子は誰なんだろうか? そう思っていると、その子が話しかけてきた。
「どうして貴方は、力を欲するの?」
「?」
「いつも危険と隣り合わせなのに、貴方はそれを顧みないで……何故?」
「そうさなぁ……強いて言うなら、自分にとって大切な人を守る為…か?」
「それが、力を求める理由?」
「そうだ。俺の親友や恋人達。それにこれから出会う色んな人。全部は無理だけど、自分のできる範囲内で守りたいんだ。その為なら、誰かを傷つける覚悟だってある」
「…………」
「あ。それと、もっと大きな理由があるぜ。それはな―――」
「「―――この世界で、天辺を取ることだ!!」」
「「「そう……なら、行かなきゃね」」」
美しい世界から、2人の姿は消えた。
彰人SIDE
今度こそ目を覚ますと、旅館に居ることに気づいた。隣には同じく起きた一夏が居る。
「お互い、目が覚めたばかりか?」
「どうもそうらしいな」
「つーことは俺もお前も病み上がりと。……行けるか?」
「当然!」
言うが早いか外に飛び出すと、俺達はISを展開した。が、その姿は大きく変わっていた。
一夏のISはダブルオークアンタになっており、俺のISは海面に映っているのを見る限りエンドレスワルツバージョンになっていた。
「これは……
「間違いなくそれだな。まあそれはともかく早く行こう。皆は多分戦ってる筈だ」
「おう。折角だ、近道使って行くぜ!」
一夏はGNソードビットを射出すると、それで空中に円を作った。それが何かわかっている俺達は、迷わず円に飛び込んだ。