ISG~インフィニット・ストラトス・ガンダム~   作:レイブラスト

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62th Episode

「作戦終了……と言いたいところだが、お前達は独断行動により重大な違反を起こした。帰ったら反省文の提出と懲罰用の特別トレーニングを組んでやるから、そのつもりで」

 

『『『はい』』』

 

旅館に帰還してすぐに救急班にリボーンズガンダムの操縦者を頼んだ後、俺達は千冬さんの前に整列してそう告げられた。結果がどうであれ、今回のことは完全な命令違反なので潔く受けよう。むしろみんなの命が無事だったことに感謝せねば。

 

「それとだ………………よくやったな」

 

『『『え?』』』

 

「何でもない。ほら、もうすぐ夕食の時間だ。早く宴会場に行きなさい」

 

千冬さんの最後の一言に山田先生まで聞き返したが、すぐに俺達に促した。かなり貴重だな、千冬さんのこういう一面って。そう思いながら歩き出すと、

 

「ああそうだ。織斑、矢作、ちょっと来てくれ」

 

俺と一夏だけが呼び止められ、旅館の隅まで移動させられた。その顔は真剣そのものだ。

 

「操縦者の保護の際に聞いたことは、本当なのか? 一夏が、イノベイターに覚醒したというのは……」

 

声を顰めて尋ねてくる千冬さん。操縦者を頼んだ時、こっそり千冬さんに打ち明けておいたのだ。

 

「ああ。実際見た方が早いと思うんだけど……一夏、できるか?」

 

「わからんが、一応やってみる」

 

一夏は目を閉じて気を集中すると、少しして再び目を開けた。すると、瞳は澄んだ金色に輝いていた。

 

「……どうやら、本当のようだな」

 

「やっぱり輝いてるのか?」

 

「ああ……しかし解せないな。イノベイターとはガンダム00の、アニメの中の能力ではなかったのか? いや、ガンダムの機能を完全再現しているなら、あり得なくはないが……」

 

「それで、どうしましょう? みんなには黙っておいた方がいいですか?」

 

「そうだな……そうした方がいい。下手に混乱させてしまったら収集がつかんからな」

 

「だとさ一夏」

 

「むしろそうしてくれて助かるよ。これ以上注目集めたら、俺どうしようかと……」

 

ただでさえ男性操縦者で注目されているのに、その上イノベイターに覚醒したとなれば世界中がてんやわんやの大騒ぎになる。そうなれば普通の生活を送るのは難しいだろう。

 

兎にも角にも、一夏がイノベイターになったことは俺達3人だけの秘密として、宴会場へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

宴会場

 

相変わらず俺達は端の方で食べていたが、席順は変わっていた。具体的には俺の左右がセシリアと簪になり、俺の正面と斜め左がシャルとラウラになった。後、近くにのほほんさんが座って何やら尋ねてくる。

 

「ねぇねぇ、おりむーもあっきーももう大丈夫なの? あんなに怪我してたのに」

 

「これが不思議なことに、傷1つないんだ」

 

「痣とかもなんにも残っていない。綺麗さっぱりさ」

 

「へぇ~。どうしてなんだろ~?」

 

頭に疑問符を浮かべて首を傾げるのほほんさんだが、すぐに食事を再開した。俺達もどんどん食べていく。

 

「そういえば彰人。先ほどは織斑先生に呼び出されていたが……何かあったのか?」

 

「一夏も呼び出されてわね。何言われてたの?」

 

「ん……あれはだな…怪我はないかとか、そんな内容だったな」

 

「んで俺達、もう大丈夫って言って安心してもらったんだ」

 

ラウラと鈴ちゃんの疑問に予め考えておいたことを話す。嘘をついてるみたいで心が痛んだけど、この場を混乱させるよりはマシだ。

 

「………………………」

 

ふと右を見ると、セシリアが何かを考えているようで箸が止まっていた。

 

「セシリア?」

 

「!? あ、彰人さん。どうしました?」

 

「それはこっちの台詞だよ。考え込んでたみたいだけど、何かあったの?」

 

「い、いえ別に…何でもありませんわ(リボーンズガンダムとの戦闘中に、突然思考がクリアになってドラグーンの完全自由操作が可能になったことを考えてたなんて、言えませんわ)」

 

何かあるのは明らかだったが、これ以上詮索するのも野暮だと思ったのでそこで切り上げることにした。……そういえば、あの時セシリアはドラグーンを完全に使いこなしていたな。訓練ではそんな様子なかったのに、何でだろ?

 

「そういえばさ。箒のISって戦ってる途中で変身したよね。あれってどういう原理なの?」

 

シャルが思い出したように隣に居る箒ちゃんに聞いた。イノベイター云々のことで忘れてたけど、そっちの方も大事なことだったな。

 

「それが私にもよくわからん。私の想いに応えてくれたとしか形容しきれない。それか若しくは、アレがレッドフレームの特殊能力なのかもしれんが」

 

第二形態移行(セカンドシフト)とは違うみたいだし……そうなのかな?」

 

ふむ。要するに操縦者の意志に応えて進化することが、レッドフレームの単一仕様能力(ワンオフ・アビリティー)と言ったところか。それなら改になったのも理由がつく。あくまで推測みたいだけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一夏SIDE

 

夕食が終わった後、俺は夜の海岸に箒を呼び出していた。場所は今日の昼間と同じだが、時間が違うと見える景色も変わってくる。ちなみに少し暑く感じたので、俺は軽装をして約束した場所に来ている。そして右手には、今回呼び出した最大の理由であるものが握られている。そわそわしながら待っていると、後ろから箒の声がした。

 

「待たせたな、一夏」

 

「おう。来てくれてありがとう………!!」

 

言いながら振り向いた時、俺は心臓が跳ね上がった。何故なら箒の格好は昨日とはまた別の真っ白なビキニを着ていたからだ。箒がどこか恥ずかしげな表情をしているのは、思い切って着たからだろう。

 

俺と箒は地面に腰を降ろし、俺の方から話を切り出した。

 

「箒……実はさ、大事な用があって、今日ここに呼んだんだ」

 

「だと思った。一夏のことだからな、意味なく私を呼ぶことはないだろう。……で、その用事とは?」

 

「ちょっと待ってくれ。今、見せるから」

 

俺は手に持っている小箱を箒の前に出すと、徐にそれを開けた。

 

「これは……!」

 

「誕生日おめでとう、箒。これからも、俺の傍に居てくれ」

 

中身は赤と白の二色で彩られたリボンだ。箒の誕生日が臨海学校と被ることは承知していたので、山田先生にこっそり相談して決めたのだ。箒は目を丸くしながらリボンを手に取ると、感慨深げにそれを見つめていた。

 

「どうだった……? 気に入ってくれたら嬉しいが……」

 

「……ありがとう、一夏。これほど幸せに満たされた誕生日は、生まれて初めてだ。これ以上に嬉しい贈り物はきっとない。一夏に愛されて、本当に良かった……」

 

目にうっすらと涙を浮かべながら、箒は飛びっ切りの笑顔を見せてくれた。この笑顔を俺だけのものにしているという事実が現時点で最高の幸せだ。そう思っていると、箒は髪を縛っているリボンを取ってロングヘアにすると、先ほどプレゼントしたリボンを俺の手にそっと乗せた。

 

「その……これを一夏の手で結んで欲しい。ダメ、か?」

 

「……ダメなものか!」

 

俺は力強く言うと箒の髪の毛に手を伸ばし、リボンを結んで再びポニーテールにしてあげた。

 

「箒…好きだ。お前を、愛している」

 

「私も……愛してるぞ、一夏」

 

互いに言葉を交わし、俺達は唇をゆっくりと合わせた。語る言葉も、飾る言葉も必要なかった。今ここにあるのは、箒を愛しているという気持ちだけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鈴SIDE

 

(こういうことだったのね……)

 

影からこっそりと一夏と箒の様子を伺っていた私は心の中でため息をついた。旅館の外へ向かう箒を偶然見かけ、気になって後をつけたのだが一連の流で納得がいった。

 

今日は箒の誕生日だったんだ。だから一夏は、誰もいない場所に誘って……。

 

(見なかったことにしましょう。その方がきっといいわ)

 

旅館に戻りながら思った。できる限り早く、このことは忘れるように心がけよう。私も自分の誕生日で、一夏に2人きりで祝って貰えばいいし。

 

(……あれ?)

 

ふと、遠くの方に誰かが立っているのを見つけた。あれは千冬さんと……篠ノ之束?

 

(下手に首突っ込むのはやめた方がいいわね)

 

直感でそう判断すると、私は急いで旅館へと戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

OutSIDE

 

「全ては順調、と言ったところか……いっくんとあっくんが墜ちた時はさすがの私も肝が冷えたけど、これなら……」

 

「その口ぶりだと、1.5ガンダムの暴走にはお前が一枚噛んでいそうだな」

 

「っ、ちーちゃん……」

 

岬の柵に腰掛けて呟いていた束が振り返ると、千冬が腕を組みながら立っていた。

 

「何故あんなことをした? ダブルオーとウイングゼロの第二形態移行(セカンドシフト)、それに一夏のイノベイター化が目的だったのか? だとしたら、わざわざこんな「時間がない」何?」

 

「時間がないんだよ、ちーちゃん。悠長に構えて居られる暇なんてどこにもない。だから……」

 

「束……何を焦っている?」

 

親友の心情の変化を感じ取った千冬は、戸惑いながらも束に尋ねた。すると束は、しばらく沈黙してから千冬に問いかけた。

 

「ねぇちーちゃん。今の世界って、楽しい?」

 

「……そこそこにな」

 

「そっか。………………ちーちゃん、『奴ら』には気をつけて。きっとまた、いっくん達を狙ってくる」

 

そう言った直後、束は姿を消した。千冬は「『奴ら』とは何か? 今後、一夏達の身に何かが起きるのか?」と嫌な予感を感じながら考えていた。

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