ISG~インフィニット・ストラトス・ガンダム~   作:レイブラスト

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63th Episode

翌朝の臨海学校最終日。俺達は帰り支度を済ませ、バスに乗り込んだ。リボーンズガンダムと戦った疲労がまだ抜けておらず、俺も一夏も眠気が残っていたが。

 

「一夏ぁ……何か飲み物持ってない?」

 

「持ってたらとっくに飲んでるよ……」

 

少し望みを掛けて聞いてみたが、やはり持ってなかった。途中のサービスエリアまで我慢するしかないか……。

 

「失礼。矢作彰人君は居るかしら?」

 

「俺ですが……何か?」

 

後ろから名前を呼ばれ、振り向きながら返事をすると金髪の外人女性が立っていた。はて、どこかで見たような……あ、確かあの人だ。

 

「君が矢作なのね。じゃあ君が織斑一夏君ね」

 

「はい。……なあ彰人。この人ってリボーンズガンダムの―――」

 

「ああ、操縦者だ」

 

「そう、私はナターシャ・ファイルス。初めまして。君達にお礼をしに来たの」

 

「「お礼……ですか?」」

 

一夏とハモりながら聞き返した。てっきりリボーンズガンダムの武装をぶっ壊しまくったから、それについて何か言われるのかと思っていた。

 

「ええ……あの子の暴走を止めてくれて、ありがとう」

 

そう言うと、ナターシャさんは俺と一夏の頬に手を添えて唇を近づけてくる。俺と一夏は半ば反射的に手を顔の前に出してストップをかけていた。

 

「すいません。お気持ちは嬉しいのですが……キスは、恋人としかできないというか……」

 

「俺も彰人と同じです。俺の中では、キスは恋人であることの証であると思っていて……すいません、生意気なこと言って……」

 

「いいえ。2人の気持ちは、私にもよくわかるわ。恋人の証か……大事なことを教えられちゃったわね」

 

ナターシャさんはにこやかな顔つきで手を振りながら去って行った。俺達がしばし呆然としていると、いつの間にかバスは発進していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

OutSIDE

 

「……で、どうだった? 2人の男性操縦者は」

 

バスから降りたナターシャは千冬に問いかけられ、微笑みながら答えた。

 

「2人とも素敵な人でしたよ。心に芯があって、将来きっと大物になると思います。……ただ」

 

「ただ、何だ?」

 

「一瞬だけですけど、目を見た時、大事な人の為なら悪人になるのも厭わない……そんな覚悟が伝わって来ました」

 

「何? まさか」

 

千冬は驚いてバスに乗ってる2人を見た。正義感の強い一夏と彰人が、そんなことをするだろうか?

 

「(いや、守るべき者達を得た今なら、確かに悪になるのも辞さないとは思うが)それより、身体の方はもう平気なのか?」

 

「ええ、ご覧のとおりです。あの子が守ってくれましたから」

 

「リボーンズガンダムが?」

 

「はい……それに気を失っている間、あの子の悲しげな声が聞こえたような気がするんです。単に夢なのかもしれませんけど、どちらにせよ私は許すことができません。目的が何であれ、あの子を暴走させた元凶を」

 

「……そうか…………」

 

怒りを露わにするナターシャを、千冬は複雑な眼差しで見つめていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

IS学園

 

彰人SIDE

 

俺達はバスに揺られてIS学園に着くと、すぐに寮へと戻った。

 

「っしゃあ! 色々あったけど、ようやく帰って来れたぜ!!」

 

「……テンション高いね」

 

廊下を歩きながら叫ぶ俺に、簪が苦笑いしながら言う。別に普通の臨海学校なら背伸びするだけで終わってたんだけど、今回は一度死にかけたからね。叫びたくなるってもんさ。

 

そんなこんなで感動を噛み締めながら、俺は自分の部屋の扉を開けた。

 

「ただいま~!」

 

誰もいない部屋に向かって言う。勿論返事はない。むしろあった方が逆に怖い……って、何か俺のベッドの上に水色の髪の人が居ませんか? しかも段々近づいて―――

 

「彰人君っ!!」

 

「ぐおっ!?」

 

「お、お姉ちゃん!?」

 

気がつけば、俺は何故か部屋に居た楯無さんに突撃されていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時は前日に遡り、生徒会室にて。

 

楯無SIDE

 

「…………今……何て言ったの……?」

 

私は虚ちゃんに聞き返していた。虚ちゃんを通じて聞かされた本音の報告内容が、とてもではないが信じられるような内容ではなかったからだ。

 

「ですから、その…………織斑一夏と矢作彰人が、暴走中の1.5ガンダムに………撃墜、されたと……」

 

「ふ、2人の様子は、どうなの?」

 

「…………意識不明の、重体だそうです」

 

瞬間、全身から全ての力が抜けていくような気がした。いや、実際に抜けていたのかもしれない。とにかく私は呆然として、持っていた扇子も無意識の内に放してしまっていた。

 

「嘘……よね……? あ、彰人君が…………意識不明……?」

 

私は今までにはない程取り乱していた。けど、どうにか平常心を取り戻そうと1つ咳をすると虚ちゃんを見据えた。

 

「……とりあえず、虚ちゃんは今後新たな情報が来たら真っ先に教えて。仕事は私が片付けておくから」

 

「お嬢様、しかし……いえ、わかりました」

 

虚ちゃんは怪訝そうな視線を向けながらも、退室した。彼女の心配は当たっていて、私は生徒会の仕事や授業がそれ以降ほぼ手に着かない状況になってしまった。何度か気持ちを切り替えようとするも、その度に報告を思い出し、更には悪い方向に想像力が働いてしまうこともあった。

 

(もし…彰人君が死んだら、私…………って、何考えてるのよ! まだ死んだって決まった訳じゃないでしょ!!)

 

必死で自分を奮い立たせながら、私は半日を過ごした。そして放課後になった時、再び報告があった。

 

「お嬢様! 先ほど、織斑一夏と矢作彰人の意識が回復したとの連絡が入りました! 2人とも無事です!!」

 

「っ!!!!」

 

私は驚愕と歓喜に打ち震えた。彰人君が……無事で……!! もう居ても立っても居られなくなり、その日の晩は中々寝付くことができなかった。

 

翌日の一年生が帰って来る日に至っては、朝早くからマスターキーを使って部屋で待つなんていう暴挙までやってしまった。挙げ句、待ちくたびれて彰人君のベッドの上に寝転んだら寝不足でそのまま寝るという失態を犯した。

 

「ただいま~!」

 

扉が開く音と彰人君の声で、私はようやく目を覚ました。そして彰人君の姿を見つけると、気持ちが溢れて抑えきれず、まだ寝ぼけてるのもあって今がどんな状況か全く考えずに彰人君に抱きついた。

 

「ぐおっ!?」

 

「お、お姉ちゃん!?」

 

「彰人君、大丈夫だった!? 撃墜されたって聞いた時は凄く心配したけど、怪我とか残ってない?」

 

「ぐっ……え、ええ。あの、何故俺が撃墜されたことを?」

 

見ると、彰人君は困惑した様子で尋ねてきた。

 

「……本音が報告したんだと思う。電話掛けてるところを見たし」

 

隣に居た簪ちゃんが言うと、彰人君は納得したように頷いた。

 

(……あれ? 何で簪ちゃんが……あ、そういえばここ、彰人君の部屋だっけ……)

 

「あの…楯無さん? 何でここに居るのかは敢えて聞きませんから、そろそろ離れてくれませんか? その……色々とまずいところが当たっているというか……」

 

「え?」

 

彰人君に言われて気づかされた。今の私は彰人君に正面から密着しており、その様子を簪ちゃんに見られているということを。

 

「……っ!!!!!!! こ、これは……違うの!!」

 

今更恥ずかしさがこみ上げ、私は彰人君に背を向けた。

 

「いや違うって……簪、どういうことかわかるか?」

 

「(もしかしたら、お姉ちゃんも私達と……)多分。確証はないけど。ただ、ちょっとセシリア達を呼んで会議しないといけないかもしれない。」

 

「会議? 何故にWhy? まあいいけど……」

 

「……念のために、虚さんにも声を掛けておいた方がいいかな」

 

簪ちゃんの話を聞いて、流れがどんどん危うい方向に向かっていることを冷や汗を流しながら感じていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彰人SIDE

 

楯無さん激突事故(俺命名)があった後、俺と簪と楯無さんは生徒会室に来ていた。周りには簪が呼んだセシリア、シャル、ラウラにのほほんさんのお姉さんも居る。けど……そんな大事なのか?…………大事だな。生徒会長が部屋に不法侵入してたんだもんな。まあ盗られて困るものとかないんだけどね。いや、ライダーベルトは困るか。

 

(何か……見当違いなこと考えてない?)

 

(無理もない。ここ最近驚きの連続で余裕がなかったからな)

 

何か言われてる気がするけど、多分気のせいだ。

 

「ねぇ虚ちゃん……やっぱり、やめにしない? 他の皆だって居るし……」

 

「ダメです。元はお嬢様の行動が招いた結果なんです。こうなってしまった以上、自分の気持ちをさらけ出す以外に方法はありません。言いたくないなら、私の口からお伝えしましょうか?」

 

「そ、それはダメよ! こういうのは、ちゃんと自分の口から言うものだから……」

 

珍しいな。あの楯無さんがここまで取り乱すなんて。俺が簪との話を言った時も、ここまで取り乱したりはしなかったぞ。でも俺にも前世で似たようなことはあった。確か、隠してたエロ本を親に発見された時だったな。あれには相当びびったぜ……。

 

俺が昔の苦い思い出を振り返っていた時、楯無さんは深いため息をすると俺を真っ直ぐ見据えてきた。その様子からして、何か重要な話がされるのかもしれない。楯無さんのことだ、意味もなく俺の部屋に居る筈はないだろう。

 

「とにかく、思い切って言うべきです。」

 

「(もう覚悟を決める他ないわね……ええい、当たって砕けろよ!)彰人君、単刀直入に言うわね…………実は私……貴方のことが…………………す、好きなのっ!!」

 

「…………………………………………………………………は?」

 

顔を真っ赤にして言った楯無さんに、脳がフリーズする。そのまま十秒が経過して再び脳が動き出す。

 

「…………えっと……好きって、俺が? 何でまた……?」

 

「……わからないわ…………ただ、気づいたらどうしようもなく好きになったとしか……」

 

「嘘ぉ…………」

 

そんなのありかよ……それじゃあ自分の取った行動のどれに原因があるか、探しようがないじゃないか……というかそれ以前に、みんなの反応はどうなんだ? さすがに人数が飽和してきているんだ。さすがに無理って言う―――

 

「「「「(コクリ)」」」」

 

「え、何その頷き?」

 

―――と思ったら完全に違っていた。無言で頷かれたけど、これって容認されたってこと? え、何で!?

 

「話は先ほど簪さんに伺いましたわ。彰人さんに負担がかかるのは承知の上なんですが、楯無さんだけ認めないというのは自分で納得がいかなくて……」

 

「……私のお姉ちゃんだもの。好みの人が一緒になるかもって予想はしてた。だから、お姉ちゃんの気持ちはよくわかるの」

 

「楯無さんには僕とお父さん達を助けて貰った借りがあるし、どうしようもなく好きになったって気持ち……よくわかるんだ」

 

「私もシャルロットと同意見だ。それに更識家の当主と結ばれるのは、メリットが大きい。……加えて、クラリッサが言っていた姉妹丼とやらが見られるやもしれんしな」

 

各々が理由を話してくれたが、ラウラのところでズッコケそうになった。おいクラリッサさん、アンタ何てこと教えてやがる! お陰でこの場に居る面々全て(ラウラ除く)が赤面したじゃねーか! いっそツインバスターライフル叩き込んでやろうかな。うん、それがいいかも。

 

「と、ともかく、私達の総意は伝わりましたわよね?」

 

「アッハイ」

 

もう何か外堀埋められてるっぽいし、ここで断ったら俺が酷い目に遭わされるのは明白だ(IS使われるかも)。それに……シャルとラウラの時のように世間体云々より今自分がどんな気持ちを抱いているかを優先したら、自ずと答えが出てきた。

 

「楯無さん……こんな軟弱者でよければ、俺の恋人に……なって下さい」

 

言うと同時に頭を深々と下げる。恋人多すぎだと世間に言われようが、優柔不断と言われようが関係ない。前に言った通り、俺は俺の意志で楯無さんとも付き合うことを選んだ。

 

「あ、彰人君…………本当? ……う、嬉しい……嬉しいよぉ……!!」

 

ポロポロと泣きじゃくりながら、楯無さんは言った。セシリア達が貰い泣きをし、俺がポカンとしている中、楯無さんは俺を見てこんなことを言い出した。

 

「あのね……彰人君。私の楯無って名前、本当の私の名前じゃないんだ」

 

「え……そうなんですか?」

 

確か襲名されるとか言ってたけど、本当の名前はなんだっけ? 忘れた……。

 

「私の本当の名前は、刀奈って言うの。これからはそう呼んで欲しいんだけど……わがまま、かな?」

 

不安げに尋ねてくる楯無―――刀奈さんは反則級の可愛らしさだった。俺のハートが打ち抜かれたと言っても過言ではない。

 

「わかった……刀奈」

 

「っ!! 彰人君!!」

 

感激して立ち上がり、机越しに俺に飛びついてくる刀奈。驚きながらも、これで新たな問題は解決……してるのかこれ? 俺の恋人ついに5人になったんだぞ? 某エロゲーじゃあるまいし、モテる顔でもない筈。むしろそれは一夏の方なのに、何故平凡な俺? 今日一日そんな疑問が尽きなかった。

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