ISG~インフィニット・ストラトス・ガンダム~ 作:レイブラスト
一夏SIDE
―――夏祭り。
それは夏における風物詩の1つであり、人間が生み出した文化と言っても過言ではない。夏祭りで行われることは花火や屋台等があるが、神社等では巫女による舞を行うことがあるという。それを楽しみにしている人も居るとか居ないとか。
つまり何が言いたいかと言うと、俺も舞の1つである篠ノ之神社の『神楽舞』を楽しみにしているのだ。理由は至って単純、箒が舞をするからだ。確実にその姿を拝むために俺は最前列をキープし、記録に残せるようビデオカメラを持っている。ちなみに鈴も来る筈だったんだが、風邪を引いて家で寝てるそうだ。一緒に見たかったが、残念だ。彰人はどうしたって? アイツも来るって言ってたけど、まだ見てないな。別行動かもしれん。
っと、そうこうしてる間に開始時間になった。舞台をじっと見ていると、奥から箒がゆっくりと歩み出てくる。その身には真白の衣の上に綺麗な赤い舞装束を纏っており、神々しいオーラを放っていた。また右手には刀を、左手には扇を持っていて演奏に合わせて神楽舞を踊り始める。その神秘的な姿に、俺は見入ってしまっていた。
(この世界に神はいないという台詞があったが……目の前に居るじゃないか)
そう思いながら見ていると箒と目が合った。すると箒は頬を赤く染めながら笑みを浮かべてきた。……この破壊力抜群の一撃に若干悶絶してしまったのは言うまでもない。
その後、俺は箒と一緒に屋台を見て回ることにした。箒は赤い浴衣を着て、顔には薄化粧をしている。正に大和撫子という言葉がピッタリだ。やっぱり箒には和服が似合う。
「ん? どうした一夏?」
「ああ……さっきの衣装もそうだけど、似合ってて綺麗だなって思ってさ」
「っ、そ、そうか……ありがとう……」
少し俯きながら箒は言う。照れているのだろうけど、これもまた可愛い。気がつけば、俺は自然と箒の左手を握っていた。箒は一瞬びっくりしてこっちを見たが、すぐに握り替えしてきてくれた。
お陰でテンションが上昇し、俺は率先して色んなところを巡り、付き合ってから初めての2人だけでのデートをした。金魚掬いに射的、リンゴ飴に焼きそばetc……これまでに何度か行ったことはあったが、今日ほど楽しく感じたことはなかっただろう。
そんなこんなで夏祭りを全力で楽しみながらふと時計を見ると、名物である花火が始まる少し前になっていた。
「やべっ、花火始まっちまう! こりゃすぐ行かないと間に合わないな」
「どこかへ行くのか?」
「実はとっておきの穴場があってな。折角だからそこに行こうと思ってるんだ」
「穴場か。わかった、連れて行ってくれ」
「オッケー!」
俺は箒の手を引くと神社から少し離れた雑木林を抜け、穴場へと向かった。その場所は街全体が見渡せる場所で、これまでで知っていたのは俺と彰人だけだ。
「ふぅ……久しぶりに来たからどうなってるかと思ったけど、昔とちっとも変わってなくて安心したぜ」
座りながら言った時、花火が打ち上がって夜空が輝いた。この場所で箒と一緒に、花火を満喫できるのはこの上なく幸せなことだ。
「花火……綺麗だな……」
「そうだな……一夏と一緒に見られて、良かった」
花火に見とれながら会話をしていると、俺はあることを思いついた。そこでまずは箒の肩を指でトントンとし、顔をこちらに向けさせる。次に俺は箒の顎を手で軽く上げると顔を近づけ―――キスをした。やがて離れると、箒は恥ずかしげに俺を睨んでいた。
「……不意打ちはずるくないか?」
「箒のことが好きなんだから、仕方ない」
「ものは言いようだな……だが、一夏らしいよ」
笑い合いながら、互いに見つめ合う。そのまま次のキスをしようと思っていたが―――
ガサッ
「「っっ!?」」
突然背後から物音がして、驚いて一緒に振り返った。すると、
「いかん、バレた……」
「……ど、どうしよう……」
困り顔で頬を赤く染めた彰人と簪が草むらに立っていた。
「な、何故彰人と簪が!?」
「もうすぐ花火が始まる時間になるから、穴場スポットで簪と一緒に見ようかなと思って来たんだ。そしたら2人が先に居て、キスまでしてるし……」
「俺と同じ考えだったのか……」
さすがは親友と言うべきなんだろうけど、こんな時まで同じでなくても……。
「……ご、ごめんなさい。見るつもりはなくて、その……」
「そ、そのことならもういいんだ。過ぎたことなんだし……それより、どうしてお前だけなんだ? 他の皆は?」
「……お姉ちゃんは生徒会の仕事で学園に。他の皆は用事が被って来られなかったの。そっちこそ、どうして箒だけ?」
「鈴は風邪を引いたようで、今は家に居るんだ」
……さりげなく状況まで似てるし。俺は苦笑しながら、スターマインで彩られる空を見上げた。