ISG~インフィニット・ストラトス・ガンダム~ 作:レイブラスト
省吾SIDE
「クソッ! アイツ等、好き放題言いやがって!」
「兄ちゃん……」
自宅のリビングで、彰人の心配そうな目線を受けながら俺は憤慨していた。理由は論文発表だ。あの場にいた連中はガーランドやISを頭から全否定しやがった。俺は別にいい。否定されるのは慣れている。だが許せないのは束をバカにした奴らだ。「小娘が調子に乗るな」だと!? 何様のつもりだ!! 束に抑えられてなかったら殴ってたぞ!!
……結局、全てを否定された俺達はあの場から退出した。その直後だった。束が、泣き出したんだ。自分の夢を、あっくん達との約束をバカにされたって。俺は悔しくて仕方なかった。どうにかして、ISを認めさせてやりたいと思った。
(だからなのか? あの時、アイツが現れたのは)
俺と束が退出し控え室に居た時、突然ブラント・ダグラスって言うアメリカの国会議員が訪ねて来た。「友人がやっている企業を通して、開発援助をしたい」とのことだ。正直願ったり叶ったりだったが、俺にはどうも胡散臭く感じた。
(だってどう考えてもアイツ、B.Dだもんなぁ)
前世で戦った宿敵を思い出し、ため息をつく。単にイニシャルが同じというだけじゃない。アイツの纏っている独特の雰囲気が感じられたからだ。向こうも、俺が何者なのか気づいている筈だ。
(ま……相手が何であれ、今は猫の手も借りたい状況だ。それに、こっちは予定が大詰めだし)
元々論文発表が上手く行こうが行くまいが、俺と束は一ヶ月後にISとガーランドの本格的な稼働テストを行う予定だ。武装を使う為許可を得るのが遅れたが、どうにか行えることになった。
(俺はともかく、束のメンタルケアもしてやんなきゃならねぇってのに……)
再びため息をつきながら、俺はこの後の予定に頭を痛めた。
彰人SIDE
束さんの論文発表から一ヶ月が過ぎた。束さんは今日Oガンダムとプロトガーランドの稼働テストを行うらしい。既に実験現場となる海岸にはプロトガーランドに跨がった省吾兄ちゃんと、Oガンダムを纏った千冬さんが居て束さんは地下研究所からそれをモニターしている。
「2人共、準備いい?」
『いつでもいいぜ』
『私もOKだ』
兄ちゃんと千冬さんが準備万端と言った表情で返事する。
俺と一夏と箒ちゃん、そして由唯さんも研究所に来ていた。みんなどのような結果を出すのか知りたいんだ。でも、俺は別のことが気がかりになっていた。
「あの、束さん……。束さんは、気にしてないんですか?」
「あっくん……?」
「省吾兄ちゃんから聞きました。論文を真っ向から否定されたって。普通なら悔しくて仕方ない筈なのに、何故―――落ち着いていられるんですか?」
そう、束さんは落ち着いていた。否、落ち着き過ぎていた。原作では(おそらく)感情的になってミサイルをハックした。が、目の前の束さんにはそれが見られない。
「………………」
束さんは黙っていたが、少しして口を開いた。
「……悔しいよ。本当に、はらわたが煮えくり返るどころか噴火するレベルで。でも、しょーくんはあの時、怒ってくれた」
「兄ちゃんが?」
「うん……私の為にあんなに怒ってくれたの、久しぶりに見た。だから良いの。私の夢を、ISをちゃんと理解してくれる人が居れば、それだけで……」
「姉さん……」
「……束さん」
滅多に見せない穏やかな表情。それを束さんが見せた時、箒ちゃんと一夏は心境を察したようだ。が、俺は今だに驚きっぱなしだった。まさか束さんの性格が、ここまで良くなっているとは。
……神様。これもアンタの気紛れの賜物なのか?
「それじゃあ、そろそろ始めるよ。ターゲットドローン、起動」
キーボードを操作すると、画面に映っている海岸に無造作に置かれた球状の物体が次々と宙に浮き始めた。
「これから一定時間、ドローン達に攻撃を命中させて。使い捨てだから壊しちゃっても平気だよ」
『わかった。行くぜ、ガーランド!』
《各システム異常なし。戦闘モード、起動確認》
『織斑千冬、Oガンダム。行くぞ……!』
プロトガーランドはマニューバスレイブ形態に変形し、OガンダムはGN粒子(!?)を撒き散らしながら浮かび始めた。粒子まで再現するとは、さすが束さん……。
「頑張って、千冬。省吾」
胸の前で手を握りながら、由唯さんが呟く。少なからず心配なんだろう。
しかし、そんな心配を余所にプロトガーランドはビームガンを、Oガンダムはビームガンとビームサーベルを使い分けながらドローンを次々に撃墜していく。
「千冬姉さんも省吾さんも、凄い!」
「これがISと、ガーランドの力……!」
一夏と箒ちゃんは、画面の向こうで起きている出来事に感動を覚えているようだ。とは言いつつ、俺も心の中では感動しまくっていた。何せ、画面越しとは言えガンダムとガーランドが並び立ちしかも動いているところを見られるんだ。これを感動せずに何に感動しろと言うのか。
そうこう思っている間に、Oガンダムとプロトガーランドは動きを止めた。ドローンを全て撃破したみたいだ。
「3分ジャスト。さすがだね。2人共ウルト○マン並の反射速度だったよ」
『いや、
『しかし、恐ろしい性能だな。宇宙進出用としてではなく軍事用として開発していたら、どうなっていたことか……』
千冬さん、それフラグです! と言っても、ミサイルハックをやらないみたいだから、どうなるかはわかんないけど。
「よし、テスト終了っと。2人共帰って来て……あれ?」
指示を出そうとした束さんが、ある画面を見てどういう訳か凍り付く。
「あの、束さん?」
嫌な予感がし、おそるおそる尋ねた俺は全く予想してない、一番聞きたくないことを聞いてしまった。
「た、大変! 何でか知らないけど、世界中のミサイルがハッキングされて日本に発射されてる!!」
『な、何だとぉぉおおおおお!?』
『バカな!? 何時だ! 一体何時どこに来るんだ!?』
「後五分……ううん、もう一分もない! 到達地点は……そんな! テスト場の近く!?」
こんなに慌てている束さんを見たのは今まで初めてだ。けど……
(どういうことだ? 束さんじゃないとしたら、一体誰がミサイルをハッキングした? そんな技術力を持つ人間が、そう何人も居る筈は……)
ブラントSIDE
数分前
アメリカ合衆国 ロサンゼルス
「ダグラス議員。全軍事ミサイルのハッキングに成功しました」
「そうか、ご苦労。これで後は手元のスイッチ1つでいつでも撃てるという訳だ」
部屋に入ってきた私の部下でありこの世界の友人の1人に礼を述べる。私の持つノートパソコンには、人工衛星を通じてISとガーランドの居場所がリアルタイムで送られて来ている。
「そろそろ頃合いか……ミサイル、発射」
パソコンのエンターキーを押し、ミサイル発射の指示を送る。実感など無い。が、別のモニターに発射される映像が映されている。
(これで世界は変わる。しかし…………何をしているのだろうな、私は)
篠ノ之博士が作ったISとガーランドの性能を腐りきった上役共に認めさせる。これはその為の強行手段だ。あれだけの性能なら、この数のミサイルならどうにか落とせるだろうし、もしもの時の為に緊急停止装置もある。だが、ISとガーランドは本来の思想としては認められないだろう。
それらを用いた軍事化。上の奴らはそんなことしか考えん。ダイナマイトの時もそうだ。本来工事用として作られてのを、軍事兵器として利用した。奴らのやり口はわかっているつもりだが……私は奴らと何ら変わりないかもしれない。
(矢作は
下手をすれば私は、開発者である篠ノ之博士の人生さえも狂わせてしまったかもしれないのだから。
という訳で、いきなりB.Dがやらかしました。メガゾーンの時と同じく上の人間に失望したが故の行動です。