ISG~インフィニット・ストラトス・ガンダム~ 作:レイブラスト
文化祭まで残り二週間を切った今日。俺と一夏は五反田食堂の弾の部屋に上がっており、弾と偶然居た数馬に四組の野外ライブについて話をしていた。
「はー、野外ライブとはまた派手なことをやるもんだな。俺等の高校はまだ先だけど、やるのか?」
「やろうと思えばやれるんじゃないかな? それより2人とも、どうしてその話を僕達に?」
数馬に問われ、俺はいよいよ本題に入る。
「ああ。弾と数馬ってさ、バンドやってるよな? そこでだ……」
俺は文化祭の招待状二枚を見せながら話を続ける。
「2人に四組のライブで助っ人バンドメンバーとして出て貰いたい」
「「え…………えぇぇぇええええええええええええええ!?」」
2人は思わず叫ぶと同時に立ち上がる。落ち着くように言うと、動揺しつつも腰を降ろした。
「さっきも言った通り四組は野外ライブをやるんだけど、全員が女子だから男子メンバーが欲しいということになってな。俺と一夏は一組の出し物をやらないといけないから、他に誰か……ってところで真っ先に弾と数馬が浮かんだんだ。……やってくれるか?」
緊張しつつ尋ねる。2人は招待状を見ながらしばし呆然としていたが、やがて我に返ると即答した。
「「ああ! 任せろ!!」」
「サンキュー2人とも! これで簪も喜ぶぜ!」
「これが役割表と希望してきた歌の一覧だ。一応楽譜も落としてきたから、見てくれ」
俺はホッと一息つき、一夏は簪から借りたのをコピーした一覧表と楽譜を渡した。
「どれどれ……うーむ、難しい曲ばかりだな」
「けど上手くいけば、女の子にモテるかもしれないぞ?」
「よし、やるか!!」
((やっぱり目的はそこか……))
熱く闘志を滾らせる弾と数馬に苦笑しつつ、期待を寄せていた。この2人なら、必ずライブを成功させてくれるだろう。
―そして時は流れ、学園祭当日―
一組にて
開始一時間にして俺達は大忙しだった。招待状を渡した人しか来てない筈だが、そのほとんどが流れて来てるんじゃないかと錯覚する程に大量の客が押し寄せてきたからだ。
「いらっしゃいませ、お嬢様。席までご案内いたします」
今お客さんを案内したのは一夏だ。黒い執事服とイケメンフェイスがよく似合っており、更に持ち前の笑顔によって女性客の中には顔を赤くしてる人もいる。……お陰で箒ちゃんが時折不安げな顔になってるけど。
「ご注文はお決まりでしょうか? ……メロンソーダを1つとレモンケーキを2つ、オレンジスカッシュを1つですね。畏まりました。少々お待ち下さい」
かくいう俺もあちこちを走り回って注文を承っていた。事前に一夏共々虚さんに指導して貰ったお陰で、執事としての振る舞いや喋り方は完璧だ。だから失敗とかはしてない筈なんだが、何故か俺が声を掛けた女性客は顔を赤くすることがある。怒ってるのか? 俺と執事服が似合ってなくて怒ってるのか? セシリアとシャルとラウラはたまに心配そうにこっち見てくるし、何故……って考えてる暇はないか。
「いらっしゃいませ。あちらの席にご案内しますわ、お嬢様(彰人さん、まだ気づいていないのでしょうか? 自分が女子に密かに人気があることを)」
「お待たせしました! クルミ&チョコクッキーとバナナパフェ、お持ち致しました(うーん、立場的に彰人がやや鈍感なのは良いのか悪いのか……)」
(なるほど、気づいてないのか。ともあれば私達には好都合だな)
? 何か今変なこと思われた気がするが、気のせいか。
言い忘れたが、一組に人気が集中しているのは俺や一夏だけではなく、セシリア達美少女が笑顔で接客をするからでもある。ちなみに格好だがセシリアは青いドレスの様なメイド服を、シャルはオレンジのオーソドックスなメイド服を、ラウラは眼帯を付け黒いゴスロリメイド服を、箒ちゃんは模造刀を腰に携え赤のメイド服をそれぞれ着ている。最初はみんな気乗りしてないと言うか緊張気味だったが、あまりの可愛らしさに俺と一夏が絶賛したらすぐに乗り気になった。褒めて伸ばすとはこのことか。
「へぇ~、結構繁盛してるじゃない」
「いらっしゃいませ……って刀奈じゃん。どうしたの?」
「各クラスの見回りがてら彰人君に会いに来たのよ」
やっぱりか。そうじゃなきゃ立ち寄ったりしないもんな。
「それにしても、こんな早くからお客さんが来たら後が大変じゃないの?」
「そうなんだよな。どっかで減ってくれると助かるんだが」
「ふうん。……ならさ、今からデートしない?」
耳元に顔を近づけて、囁くように刀奈は言った。ってデート?
「今から?」
「ええ。いいでしょ?」
「俺はいいけど……一夏ー! 俺今から抜けるけど、1人で大丈夫かー?」
「え? 別にいいぞー!(助かった。これで彰人目当ての客分が減ってくれる)」
一夏はあっさりと了承してくれた。なら気にすることは何もないか。
「OK、行こう」
「エスコートお願いね、執事さん」
「お任せを、刀奈お嬢様」
俺は一礼すると、刀奈と一緒に学園内を見回ることにした。
IS学園正門前
OutSIDE
「数馬……」
「弾……」
周囲を見渡した後、弾と数馬は顔を見合わせて言った。
「「桃源郷って、あるんだな……」」
まるで夢のようだとここに来る間2人は思っていたが、この言葉と共に夢ではなく現実であることを確信した。
「ようし、弾。早速色々見て回ろうぜ」
「まあ待て。まずは招待状を見せないとな」
「っとそうだった。ええっと、受付の人は……」
『ああっ!? どういうことだよ!』
2人が受付を探そうとした時、誰かが声を荒げるのが耳に入った。
「「ん?」」
弾と数馬は思わず声がする方を見る。
「何で俺達は入れないんだよ!?」
「ですから、招待状がないとだめだと先ほどから」
「んな細けぇことどうだっていいだろうが!」
「ダメなものはダメなの~!」
そこには虚と本音が3人組の不良男子に絡まれていた。しかもその3人は、弾と数馬の通う高校の評判の悪い先輩達だった。
「アイツ等、こんなとこにまで来てたのかよ……」
「どうする? 僕としてはすぐにでも止めに入りたいんだけど」
「奇遇だな、数馬。俺もそう思っていたところだ」
そう言うと、2人は背中に背負っている楽器を降ろして3人のところへと歩いて行った。
「失礼」
「あ? んだよ?」
「その人達、嫌がってるじゃないですか。他のお客さんにも迷惑だし、招待状持ってないなら早く帰ってくれませんか?」
「テメェ等何様のつもりなんだよ? テメェ等こそ招待状持ってんのかよ?」
「「当然」」
懐から招待状を取り出して見せると、すぐに仕舞う。こういった状況では盗られる可能性もあるからだ。
「ほぅ、持ってんのか。だったら丁度いい。テメェ等から招待状奪って俺等の内2人だけでも楽しい思いをしてやる! おい、やれ!」
リーダーらしき男子が言うと、両隣に居た男子達が前に出た。そして有無を言わさず襲いかかるが……。
「ふっ! はっ! はっはっはっはっはっはっはっ! てやぁっ!!」
弾は相手のパンチを避けて突き出された腕を上へ弾くと、すぐに腹に連続でパンチを決め、とどめに蹴りを放って相手をダウンさせる。
「おっと! よっ! ほっ……おらぁっ!!」
数馬は後ろに少し下がって攻撃を避けると素早く身を屈めて足払いをし、バランスを崩させる。それによって相手が前のめりに倒れるのを見ると左手で肩を押さえつけ、右手で鳩尾に強烈な一撃を食らわせた。
「「ふぅー……」」
2人は息を整えながら、リーダー格の男子を「まだやるか?」と言わんばかりに睨み付ける。
「なっ!? テメェ等よくも……もう容赦しねぇ!!」
逆上した男子はナイフを一本取り出す。それを見た弾と数馬は気を引き締め、構えをつくる。
「死にやがれっ!!」
男子がナイフを持って突進する。が、頭に血が上った攻撃は弾達に軽々躱され、弾の膝蹴りでナイフを落とされると数馬のパンチが顔を直撃。更に弾と数馬は顔を見合わせ頷き合うと、同時にキックを放って男子を吹っ飛ばした。
「ぐあっ!? ば、バカな……後輩の癖に、何でそんなに強ぇんだよ……!」
「こんなこともあろうかと、日頃から鍛えていたからな(ドラゴンナイトのレンに影響されて良かった)」
「まさか先輩に対して役に立つとは思ってなかったけど」
「くっ……覚えてやがれ!」
不良男子達は立ち上がると、捨て台詞を残してフラフラと立ち去って行った。
「はぁ…あれが僕らの先輩だと思うと情けなくなるよ」
「全くだ。ああいう奴らが居るから、女尊男卑が酷くなる原因になるんだ。……っとそれより、2人ともお怪我は?」
地面に降ろした楽器を背負いながら、弾はポカンとしている虚と本音に声を掛ける。
「……あ、えっと…大丈夫です」
「う、うん。どこも怪我してないよ」
「良かった……あ、それとこれ、招待状なんだけど」
再び取り出した招待状を弾は虚に、数馬は本音に渡した。
「招待者は……彰人さん?」
「あっきーの友達なんだ~!」
少し驚いたような表情をしたが、すぐに招待状を返す。弾と数馬はIS学園に向かって歩き出したが―――
「あ、あの!」
「待って!」
呼び止められ、振り向く。すると虚が弾の前へ、本音が数馬の前へと駆け寄って行った。何だろうと思っていると、2人は口を開いた。
「私は布仏虚といいます。あの、貴方のお名前は?」
「私、布仏本音って言うんだ~。君は何て言う名前なの?」
それを聞いた2人は初対面の女性に名前を尋ねられるという事実を心の中で深く噛み締め、こう言った。
「俺は五反田弾って言います。覚えて頂けると嬉しいです」
「僕は数馬。御手洗数馬って言うんだ。よかったら、君の胸に刻んでおいて欲しい」
自己紹介を終えると、弾と数馬はIS学園に向けて今度こそ歩み始めた。その後ろ姿を見ながら、虚と本音は考えていた。
(五反田弾さん……私を助けてくれた、カッコイイ
(御手洗数馬、カズーだね……言われなくても、もう刻まれちゃったよ……)
彰人SIDE
「ほぅ、やるじゃないか……」
建物の陰から刀奈とともに様子を伺っていた俺は、弾と数馬の活躍を見て呟いた。
「そうね。年齢が上の相手にああも立ち回るなんて、良い鍛え方をしているわ」
「いや俺が言いたいのはそうじゃない。アイツ等普段から彼女欲しい彼女欲しい言って、俺や一夏に女性の落とし方とか聞いてくるのに、今落としてるじゃん…って思ってな」
「え? ……ああ、なるほどね」
刀奈は疑問を浮かべながらも、虚さんとのほほんさんを見て納得した。2人とも目が完全に恋する乙女のそれになっている。
「まあこっから先は各々に任せるとして、とりあえず2人に合流しましょう」
「え、いいのか?」
「彰人君の親友なんでしょ? だったら案内してあげないと。それに、友達を助けて貰ったお礼をしたいし」
「なるほど……わかった」
合点がいき、俺は弾達に声を掛けた。
「おーい、弾! 数馬!」
「おお、彰人! こないだはありがとな~って、何その格好?」
「今は休憩してるが、ご奉仕喫茶で一夏共々執事やってるんでな」
「執事!? お前と一夏が!? きっと似合ってるんだろうなぁ~」
「それはともかく、2人とも曲は弾けるようになったか?」
背中に担いであるギターとベースを見ながら俺は言う。ちゃんとできてるとは思うが。
「当然。一生懸命練習したからな!」
「男子3日会わざれば刮目せよって奴だ。しっかり目に焼き付けとけよ!」
自信満々に宣言する。これなら安心して任せられるだろう。あ、でも2人は大勢の人の前に立つのは初めてだった筈。そこは大丈夫かな?
「ところで彰人。隣に居る水色の髪の女子は…誰だ?」
弾が刀奈を見て不思議そうに尋ねてくる。
「ああ、彼女は―――」
「初めまして。私は更識楯無。IS学園二年生で、生徒会長をしているわ。それと、彰人君の恋人の1人よ♪」
俺の言葉を遮って自己紹介を済ませた刀奈は、俺の左腕に絡みついてきた。聞いていた弾と数馬は呆然としている。
「……………………あれ? お前、確か恋人はセシリアと簪って子の2人じゃ―――」
「悪い、言ってなかったな。あの後訳あって恋人が3人増えたんだ」
申し訳なく思いながら言うと、2人は何度か頷くと、俺に掴み掛かってきた。
「彰人テメェ! 何いつの間にハーレム拡大してやがる!? 何をどうしたらそうなった!」
「く、詳しいことは俺にもわからん! 俺はただ自分の思うままに行動しただけで―――」
「やっぱり! 彰人は一夏以上の行動力を見せる時があるからな! 大方それに惹かれたんだろ!?」
「え、そうなの!?」
「「知らなかったのかよ!!」」
そんな同時にツッコまれても……てか、俺の行動力が原因って本当なの!? 今まで全然意識してなかったけど、今度から注意しといた方がいいな。
「まあまあ。そんなことより、ライブ会場に案内してあげるわ」
「え……でも、2人ともデート中なんじゃ―――」
「気にしない気にしない。ほら、行くわよ!」
「わ、わかったから引っ張るな!」
先頭に立って進んでいく刀奈引っ張られていく俺を、弾と数馬は苦笑しながら追いかけてきた。……何か恥ずかしい……。