ISG~インフィニット・ストラトス・ガンダム~ 作:レイブラスト
俺は目の前の敵、ガンダムスローネツヴァイを見据えながらGNソードⅣフルセイバーを構える。
「アンタの目的は何だ? また俺の誘拐か?」
「いいや……私の任務は、お前のダブルオークアンタを奪うことだ!」
そう叫ぶと、オータムは接近しながらGNバスターソードを引き抜き、そのままの勢いで振り翳してきた。俺はGNソードⅣでそれを防ぐ。
「っ、そうかよ……! なら尚更戦う理由ができた!!」
GNソードⅣからGNガンブレイドを1つ取り外すと、ガンモードにしてオータムの腹に撃ちまくる。
「うおっ!? やるじゃねぇか! ますますソイツが欲しくなったぜ!」
オータムは左腕に取り付けられたアタッチメントから何かの機械らしきものを射出した。それは俺の体に取り付くとエネルギーを放ち、直後にクアンタが解除された。
「クアンタが!?
「ほう、知っていたとは大した奴だ。その通り、これのお陰でダブルオーのコアはいただきだ!」
スローネツヴァイの左手にはダブルオークアンタのコアである、菱形のクリスタルが握られていた。
「チッ、万事休すか……クソッ!」
「そういうこった。お前のことは嫌いじゃないが、これも任務なんでな。悪く思うなよ!!」
再びGNバスターソードを構える。だが―――
ドガァァァァァン!!
「なっ、グアッ!?」
そこにバスターライフルのビームが襲いかかり、オータムを吹っ飛ばした。
「ったく、遅いじゃないか……彰人!」
「悪い悪い。抜け出すのに苦労してな」
振り返った先には、ツインバスターライフルを構えたウイングガンダムゼロカスタム―――彰人とガンダムアストレイコールドフレーム天ミナ―――刀奈さんが居た。
「気づくのが遅かったら危なかったわね……状況は?」
「クアンタを奪われた。どうにかして取り返したいんだが、できないか?」
「OK。私に任せて頂戴」
「俺も手伝った方がいいか?」
「いいえ、この程度の相手なら1人で平気よ」
刀奈さんはそう言って1人前に出た。随分自信があるようだが、大丈夫だろうか?
「チッ…横から割り込んだ癖に言うじゃねぇか! 食らえ!!」
立ち上がったオータムはGNファングを放つ。
「甘いわね」
しかし刀奈さんは即座にミラージュコロイドを発動。ファングを全て避けた。
「ミラージュコロイドか! どこへ行った―――グアッ!!」
周囲を見渡すオータムの身体がくの字に曲がると、トツカノツルギで装甲を貫き、マガノイクタチで機体を挟み込んだ刀奈さんが姿を現した。……アレをやる気か。
「貴女のエネルギー、吸わせて貰うわよ!」
そう言った直後、マガノイクタチが光り輝いた。
「スローネツヴァイのエネルギーが!? させるかっ!!」
咄嗟にGNハンドガンを放つオータム。刀奈さんはトリケロス改で防ぐが、オータムは脱出してしまった。
「まさかエネルギーを吸収するとは恐れ入ったぜ。だがその目論見は外れたな!」
「そうね……でも、目的は達成したわ」
刀奈さんは右手をひらひらさせて見せる。そこにはクアンタのコアが握られていた。
「っ! テメェ、あの時に奪ってやがったか!!」
「ええ。……ああそれと、シールドエネルギーに気をつけた方がいいんじゃない?」
「はぁ? 何を言って―――」
怪訝そうに首を傾げた時、オータムは何かに気づいたようだ。
「……シールドエネルギーが減少し続けている? テメェ、何を……まさか!?」
「そのまさか。私のマガノイクタチには、直接触れなくてもエネルギーを吸収できる機能があってね。速度は落ちるけど不意打ちには持ってこいなの」
トリケロス改を構えながら言う刀奈さん。形勢逆転とはこのことだ。
「さて、どうするかしら? 大人しく降参してくれると助かるんだけど」
「誰が……っ! ようやく来たか!」
その時、上空から三機のISが降下してきた。機体はどれもサイコガンダムだった。
「またコイツ等だと? お前等が持ってたのか?」
「ご名答だ。さあ、やれ!!」
サイコガンダム達に指示を出すと、オータムはISを解除して逃走した。
「逃がすか!」
「待って彰人君! まずはコイツ等を倒すのが先よ」
「っと、そうだったな」
「一夏君、これを」
「おっと。ありがとうございます」
投げ渡されたクアンタのコアをキャッチすると、俺もクアンタを身に纏う。
「さあて、やるか!」
「ああ! 一気に決めてやるぜ!」
「相手が無人機なら、私も遠慮はしないわ!」
それぞれの得物を構え、俺達はサイコガンダム三機と対峙した。
OutSIDE
「はぁ……はぁ……クソッ! 私としたことが!」
息を切らしながら悪態をついたオータムは、建物の陰に隠れた。そこで息を整えると、状況を判断する。
(任務に失敗したから、スコールとエムが来る筈だが、それまでに私が襲われたら―――)
「そこを動くな」
「っ!?」
突然後ろから聞こえてきた声に振り返ると、ビームサブマシンガンを突き付けてくるハイペリオンガンダム―――ラウラがおり、その周辺にはストライクフリーダムガンダムやアルトロンガンダム、アリオスガンダムにアストレイブルーフレームセカンドLとアストレイレッドフレーム改が武器を構えてオータムを取り囲んでいた。
「突然楯無さんが来て緊急事態って言うから何事かと思ったけど、テロリストが侵入してたなんて」
「僕達が遅ければ、そのまま逃げられてたかも」
言い合いながらも、彼女達は武器を下ろさない。相手が生身だからと言って、決して安全ではないからだ。
「お前の所属はわかっている。
「へっ、私は口が堅いんだ。誰が言うか!」
「……そうか、仕方ない。少々手荒に行くぞ」
ビームキャノンを展開しながらラウラが言った時、ハイペリオンが警告を示した。
『上空より二機のISが接近中。本機及び周辺機はロックされています』
「! いかん、全員避けろ!!」
「「「「「っ!!!!」」」」」
ラウラの咄嗟の指示で全員がその場から離れた直後、先ほどまで居た場所に一斉にビームが襲ってきた。
その後上を向くと、敵機と思われる二機のISが映った。が、その内の一機を見てセシリアは目を見開いた。
「そんな……まさかアレは!?」
ドラグーン搭載型IS二号機、『プロヴィデンスガンダム』。ストライクフリーダムの兄弟機として開発されていたが、展覧会で何者かに奪われたとセシリアは聞いていた。
「
理解しつつもう片方の機体を見る。こちらは全身を金色の装甲で包んでおり、データベースに該当するものはなかった。が、基になったガンダムと照合したことで少なくとも『アカツキガンダム(オオワシ装備)』という名前であることはわかった。
二機のISは銃口を各機に向けながら降下し、その内のアカツキガンダムにオータムは駆け寄った。
「スコール、ごめん……ダブルオーもウイングゼロも、奪えなかった……」
「いいのよ。貴女が無事なら……チャンスはいくらでもあるわ」
そう言うとスコールはオータムを脇に抱えて再び飛行し、離脱しようとする。
「逃がすと思っているのか!」
「……ここで倒す!」
箒と簪が接近しようとするが、その前にプロヴィデンスが立ちはだかる。
「ありがとう、エム。できる限り時間を稼いだら戻って来るのよ。いいわね?」
「……了解だ」
エムは一言だけ応えると、スコールとオータムが上空に脱出するのを見届け、『ユーディキウム・ビームライフル』を構えた。
周囲に緊張が訪れたその時―――突如としてサイコガンダム三機が吹き飛ばされてきた。
「「「「「「「っ!?」」」」」」」
全員が思わず吹き飛んできた方向を見ると……。
「どいてろみんな! 怪我するぞ!!」
叫びながら走ってきた彰人、一夏、刀奈がISを纏った状態でジャンプ。それぞれGNソードⅣフルセイバー、ビームサーベル、トツカノツルギを投げつけ頭部に突き刺すと、空中からキックを放った。
「「「セイッ、ハァァァァァァアアアアアアアアアアア!!」」」
それは各々の武器を蹴り込んでより奥に押し込むと、サイコガンダムのボディを足場に武器を引き抜きながら離脱し近くで着地した。サイコガンダム達は火花を散らし、ツインアイから光が消えて動かなくなった。
「ふぃ~、やろうと思えばライダーキックもできるんだな」
「機体に負担がかからないか心配だが」
「中々面白い技ね。今後取り入れてみようかしら」
余裕有り気な3人を見てセシリア達は安堵するが、ただ1人、エムだけはダブルオークアンタ・フルセイバーをじっと見つめていた。その視線に一夏も気づき、プロヴィデンスを見据える。
「? 何だお前? 俺のこと見つめてきて」
「私の名前はエム。織斑一夏、貴様を倒させて貰う!」
言うが早いか、エムは左腕の複合兵装防盾システムからビームサーベルを展開し、一夏に斬りかかった。一夏は咄嗟にGNソードⅣ・セイバーモードで攻撃を防ぐ。
「っ……! 恨みを買った覚えは、無いんだがな! せめて理由を聞かせてはくれないか!?」
「……いいだろう。よく見るが良い」
そう言うと、エムはプロヴィデンスのフェイス部分を解除した。現れた素顔に、一夏だけではなくその場に居たほぼ全ての人間が驚愕した。
「な、何だと!?」
「……………………」
「嘘でしょ……」
「ば、バカな……有り得ん……!!」
「な、何故…………!!」
「……どういう……こと!?」
「な、何よ? 何がどうなってるっていうの!?」
「これって現実? 僕の目が、おかしくなっちゃったんじゃないの!?」
「そんな……何故貴様がその顔を!!」
彼女の顔は―――織斑千冬そのものであった。正確には、若い頃の織斑千冬であったが。
「ついでに教えてやろう。エムというのはコードネームだ。私の本当の名前は……織斑マドカだ」
『『『っ!!!!!!!』』』
エム―――織斑マドカの言葉に彼らは目を見開く。一体彼女は何者なのか? 一夏と千冬には他にも血縁者が居たのか? など様々な疑問が脳裏を過ぎる。
「さて…これでわかった筈だ。私が貴様を倒さねばならない理由が!!」
言いながらマドカは距離を取り、複合兵装防盾システムからビーム砲を放つ。一夏はソレを避けつつ、GNソードⅣフルセイバーをライフルモード(連射)にする。
「いいや、余計わからなくなった! そして知りたくなったね! お前の正体がさ!!」
GNソードⅣ・ライフルモードからビームを連射し、マドカを攻撃していく。マドカは軽々避けるが、避けた先に投げられたGNガンブレイド・ツインエッジを食らって機体がダメージを受ける。
「っ、そうか。なら私も、本気になるとしよう!!」
今度はドラグーンを全機展開すると、それらを使ってオールレンジ攻撃に移行。更にマドカ自らも移動しつつユーディキウム・ビームライフルを放つ。
「うおっ!? くっ!」
一夏も負けじとGNソードビットを放つが、マドカの方がやや有利であった。
(ドラグーンを稼働させながら自らも攻撃するなんて……! ドラグーン適正が私よりも高いと言うんですの!?)
公式記録でドラグーンの最高適正値を持つセシリアは、マドカの操作技術を見て愕然とした。
「一夏! 1人じゃ危険だ! 私が加勢し「必要ない!」一夏!?」
「コイツの相手は俺が努める。干渉、手助け、一切無用!!」
「よく言った織斑一夏ぁ!!」
一夏の宣言にマドカも攻撃の手を強める。が、一夏はGNソードⅣを量子変換して通常のクアンタに戻ると、攻撃を避けながらマドカに問いかけた。
「織斑マドカと言ったな! お前が何者なのか、何故俺を狙うのかを、話す気はないのか!?」
「ない!」
「そうか……なら少々強引な手を使うまでだ!!」
そう言うと一夏は動きを止め、モニターを操作した。
『ツインドライヴ完全安定。システムオールグリーン』
『 TRANS-AM BURST/.
QUANTUM SYSTEM 』
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
「な、何だ―――うわあぁぁぁああああああっ!?」
GN粒子がクアンタとプロヴィデンスを包み込み、2人の意識は現実から切り離された。
一夏SIDE
クアンタムバーストによって意識が繋がれた空間に飛んだ俺は、そこで織斑マドカとその隣に佇んでいるプロヴィデンスガンダムのコアと思われる、グレーの髪の少女を見据えた。
『よう。気分はどうだ?』
『一体何なんだこの空間は? 不思議と心地良いが……それに私の隣に居るコイツは誰だ?』
『彼女はプロヴィデンスのコアだ』
『何?』
『こうして顔を合わせるのは初めてね。改めてよろしく、マドカ』
『あ、ああ……』
随分フレンドリーに絡んでくるプロヴィデンスのコアにマドカは困惑しているようだ。
『さて、マドカ。色々と聞きたいことがあるんだが……いいか?』
『……別に構わない。ここには武器も、何もないのだからな。良い退屈凌ぎになる』
反応が上々だったことに一先ず安心し、俺はマドカに1つずつ質問を投げかけていく。
『何故お前は千冬姉さんと同じ顔をしているんだ? 俺に妹はいなかった筈だが』
『それは、私が織斑千冬をベースにして生み出されたクローンの1人だからだ』
『クローン…ラウラと似たようなもの、か……1人ということは他に何人も居るんだろうな……まあそれは今は置いといて、何故お前は俺の命を狙った? 俺に何か恨みでもあるのか?』
『いや……任務だからだ』
『そうか……随分と従順なことで。で、そこにお前の意志とかは含まれているのか?』
『…………………………………………………………』
俺がそう問いかけた途端、マドカは急に押し黙ってしまった。
『おい、何とか言ったらどうだ?』
『……言わない。言える訳がない、それだけは…………!?』
小声で呟いたマドカは何かに気づき、体中をまさぐる。一体どうしたんだ?
『体内の監視用ナノマシンなら既に消滅してるわよ』
プロヴィデンスのコアが代わりに答えるように言った。……監視用ナノマシンだと? そんなものが体の中に?
『マドカは組織に対しての忠誠心が無かったから、逆らえないようにナノマシンを注入されていたの。それが消滅したのは、恐らくクアンタムバーストの影響よ』
『なるほどな……』
確かに原作でも疑似GNドライヴの毒性に蝕まれていた人達の体を、完治させたもんな。そっくりそのまま再現してあるなら、ナノマシンを消滅させても何ら不思議じゃあない。
『で、では……私は、自由なのか……!? もうなんのしがらみも無いのか……!!』
『……マドカ。さっきの質問に、答えてくれるか?』
『ああ…いくらでも答えよう。私を縛るものは、無いようだからな』
驚いた表情から落ち着いたものに変わると、マドカは少しずつ話し始めた。
『私は、貴方を……兄さんを殺すつもりは無かった。任務の性質上仕方なく従っていただけで、本当はずっと……会いたかった』
『そうか…なら、組織に戻りたいという気持ちはないんだな?』
『当然だ。拾ってくれたことには感謝しているが、誰があんな組織に……!』
手を強く握りしめて腹立たしげに言うマドカに安堵し、俺は次の質問をした。
『じゃあ組織の事とか、身の回りの事とかも詳しく教えてくれるか?』
『わかった。そうだな……まずは―――』
『待て、ここから先は一度みんなのところへ戻ってからしよう。その方が手間がかからない』
『兄さんが言うなら私は構わないが、それではプロヴィデンスと離れてしまうな……』
コアを見つめながら寂しそうに言うマドカだったが、彼女は頭を振るとマドカを見て言った。
『心配いらないわ。私はいつもマドカの傍に居るもの。だから……ね?』
『……ありがとう、プロヴィデンス。お前と話せて、嬉しかった』
マドカが言った後、俺の意識は空間から離れた。
次の瞬間、俺はクアンタを装着した状態で立っており、マドカはプロヴィデンスを解除した状態で倒れていた。俺はマドカに近づいて彼女を抱きかかえると、呆然としている箒達を見て言った。
「この子を保健室に連れていく。尋問等はそれからだ」
すると箒達は我に返って頷き、ISを解除した。ただ……彰人だけは難しそうな顔でマドカを見ていた。