ISG~インフィニット・ストラトス・ガンダム~   作:レイブラスト

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72th Episode

OutSIDE

 

彰人達がサイコガンダム三機にキックを放っている頃、IS学園から少し離れた上空では。

 

「ここまで来れば、逃げ切れたか?」

 

「さあ……どうかしらね? 逃げ帰る場所さえも、私達には無いのかもしれないのだから」

 

「……そうだな」

 

アカツキガンダムを展開したスコールとその脇に抱えられたオータムが若干暗い気持ちで話す。2人とも何かにウンザリしているようだった。スコールは首を横に振って気持ちを切り替えると、アカツキガンダムのスラスターを噴かそうとした―――だが。

 

「逃がさないぜ、亡国機業(ファントム・タスク)さんよ!!」

 

「「!!」」

 

声がすると同時に目の前にGR-2ガーランド隊とヴィルデ・ザウ隊が立ちはだかり、更にそれぞれの部隊の先頭にはガンダムアストレイアウトフレームD(エールストライカー装備)とザーメ・ザウが佇んでいた。

 

「騒ぎを聞きつけたら、まさか白昼堂々と忍び込んで来ていたとは……こんなこともあろうかと、持ってきた甲斐があったな」

 

「まさかこんなところで貴方と相まみえるなんてね……しかもデータにないISまで居るし」

 

「スコール、奴の相手は私にさせてくれ」

 

いつの間にかスコールの腕を抜け出し、ダメージが抜けきってないガンダムスローネツヴァイを展開したオータムがアウトフレームDを見て言った。

 

「大丈夫なの? 貴女のISはダメージが残ってるし、あのISは性能が未知数だから私が相手した方がいいと思うんだけど」

 

「だからこそだ。私じゃ負けるかもしれないが、スコールならブラントと互角に張り合ったことあるんだろ? だったら賭けてみるべきだ」

 

「なるほど……確かにそうね(最も、彼の実力が前のままだったらという話だけど)」

 

若干の不安を胸に抱きながらも、スコールはザーメ・ザウの前へ進んだ。

 

そして……

 

「さあて、行くぜっ!!」

 

「来るぞテメェ等! 気をつけろ!!」

 

『『『了解!!』』』

 

「悪いけど、本気モードで行かせて貰うわよ!!」

 

「全機、撃ち方用意。ターゲットは金色のISだ!!」

 

『『『はっ!!』』』

 

両者の戦いがついに始まった。一体どのような戦いになるのか、まずはオータムの方からだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「散開して敵を取り囲め! 相手が手負いだからって油断すんなよ!」

 

省吾の指示でGR-2ガーランド達がオータムの周囲に散らばり、省吾自身は正面から一斉攻撃を仕掛けていく。

 

「(チッ、やるじゃねぇか……だが!)行けよ! ファングゥ!!」

 

オータムは8基のGNファングを射出し、GR-2ガーランド達へ攻撃させる。が、それを見た省吾はマスクの下でニヤリと笑みを浮かべた。

 

「よし、かかった! やっちまえ!!」

 

指示を飛ばすとGR-2ガーランド達は広く散らばった上でビームガンを使って一機ずつ、確実にGNファングを撃墜していく。

 

「なっ!? まさか、最初からこれが狙いで!?」

 

「いくらファングでも、あんなに広がっちまったら威力は分散されるからな!」

 

そう言い、ビームライフルを連射しながら接近する。

 

「っ!!?? その声、テメェまさか男なのか!?」

 

驚きながらもオータムはその場で左右に動いて回避し、GNバスターソードで迎え撃とうとするが省吾はエールストライカーパックを分離しつつオータムを飛び越える。その行動に一瞬反応が遅れた為、オータムはエールストライカーの体当たりを食らってしまった。

 

「ぐおっ! んの野郎! 小癪な手を―――うわぁあああっ!!」

 

背中への強い衝撃に悲鳴を上げるオータム。彼女の後ろには、ブラストシルエットを装備したアウトフレームDがケルベロスを構えて見下ろしており、彼女が振り向くより前にソードシルエットに換装してエクスカリバーを両手で一本ずつ持ち急接近する。

 

「貰った!」

 

まずは右手に持ったエクスカリバーでGNバスターソードを真っ二つに両断すると、左手に持ったエクスカリバーを喉元へ押し当てる。オータムはGNハンドガンを展開するが、省吾に右手で掴まれ握り潰された。

 

全ての武器を破壊され、更にとどめと言わんばかりに周囲をビームガンを構えたGR-2ガーランド隊が取り囲んでいた。

 

「……参ったよ。降参だ」

 

勝ち目なしと判断したオータムは両手を上げ、降参の姿勢を取った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方スコールは、アカツキガンダムのバックパックをシラヌイ装備に変更し、ビームライフル『ヒャクライ』を構える。

 

「各機、プラズマサーベルを構えろ。あの機体にビーム攻撃は通じない」

 

ブラントは部下に指示を出し、プラズマサーベルを手に持つ。ザーメ・ザウやヴィルデ・ザウの主武装はほぼビーム兵器であり、アカツキガンダムの特殊装甲はビームを無効化する効果があるので接近戦を挑まざるを得ないのだ。

 

「良い判断だわ。でも、それで上手く行くほど甘くはないのよね……」

 

呟きながらスコールはバックパックにある7基のドラグーンを射出し、ヴィルデ・ザウ達を追尾しつつビームで攻撃する。そして自分はヒャクライでブラントを狙い撃っていく。

 

奇しくもオータムと似た戦法だったが、ビームが効かないという能力がある分、こちらの方が有利であった。ブラントはどうにか攻撃の合間を潜り抜けて懐に飛び込んでプラズマサーベルを振るうが、スコールは柄を連結させたビームサーベルでソレを防いだ。

 

「ふふ、惜しかったわね。念願だった初勝利、獲らせて貰うわよ!」

 

ビームサーベルを持つ手に力を込めるスコールだったが、ブラントは小さく笑って言った。

 

「フッ……私の部下をあまり舐めない方がいいぞ?」

 

「? どういう意味かしら?」

 

怪訝に思いながらハイパーセンサーで見てみると、衝撃的な場面が映った。今まで動き回っていたヴィルデ・ザウ達が急に動きを止め、そこにドラグーンで攻撃した。……のはいいが、それと同時にヴィルデ・ザウ達は急速上昇して回避し、目標を失ったビームは互いに衝突、爆発が起き煙幕でドラグーンやヴィルデ・ザウが隠れてしまった。

 

「っ!……良い部下達を持ったのね」

 

「まあな!」

 

言うと同時にブラントは一度身を引いてスコールを前のめりにさせると、ビームサーベルを持っている手を掴んで膝蹴りを食らわせ、ビームサーベルを落とさせる。更にアイアンクローをかまして頭部のバルカンを潰すと、プラズマサーベルを喉元寸前まで斬りかかって静止させる。そこへ続々とヴィルデ・ザウ隊が集まって来る。どうやらドラグーンは全て撃墜されたようだ。

 

「生憎だが、まだまだ勝ちは譲れんよ」

 

「……そうみたいね」

 

オータム同様全ての武器を失ったスコールは、彼らに投降することとなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

IS学園・保健室

 

彰人SIDE

 

「……どうしたんだ? 人の顔をじろじろ見て」

 

「いや……あまりに似ていると思ってな。織斑先生に」

 

保健室のベッドに入って上半身を起こしている織斑マドカは、刀奈を含めた専用機持ち達や千冬さんの視線を受けていた。

 

「もう調子は良くなっただろうし、そろそろ聞いてもいいんじゃないかしら? あの子が何者なのか……とか」

 

「そうだな。よし、では私が「ちょっと待った~!」ん?」

 

鈴ちゃんの言葉に千冬さんが頷いた時、保健室の扉が開いて束さんが入って来た。後ろには唯さんと険しい顔をした省吾兄ちゃんが居る。

 

「束さん……それに省吾兄ちゃん達まで?」

 

「束さん……?」

 

「ね、姉さん?」

 

「束…省吾…由唯……何故ここに?」

 

突然の登場に俺、一夏、箒ちゃん、千冬さんは不思議に思い、セシリア、鈴ちゃん、シャル、ラウラ、簪、刀奈は驚いて目を見開いていた。

 

「この娘に関しての詳細は束さんが代わりに答えるよ~! さすがに本人の口からは言えないようなこともあるし、いいでしょ?」

 

そう言って束さんはマドカを見る。いきなり現れたことに驚いていたが、事情がわかると無言で頷いた。彼女的には言いたくないこともどうやらあるらしい。

 

「ではまずこの子の正体からなんだけど~……なんとこの子は、ちーちゃんの遺伝子から生み出されたクローンなのだ~!」

 

『『『なっ……!?』』』

 

束さんの言葉に、この場に居た全員が声を上げる。いや、前以て知っていた俺とある程度予測してたらしい一夏はそこまで驚いてないが。それと省吾兄ちゃん達も驚いてはいない。既に束さんが話してたのかな?

 

「そ、それは本当なのか……? 束……」

 

恐る恐る千冬さんが尋ねると、束さんはマドカちゃんを一瞥して言う。

 

「そうだよ。正確には、最強の兵士を誕生させる為にちーちゃんの遺伝子を使って作られた、A~Zまでの26人の試作クローンの内の1人……『M』だけどね。ああそれと、その研究所は地球上から末梢してあるよ」

 

続けて言う束さんに俺達は驚くと同時に背筋が寒くなる。特にA~Z辺りで俺は「マジか……」と思った。マドカちゃん以外にクローンが作られていたとは……予想外だ。

 

「だけど私が研究所に向かった時には、もう試作クローンのほとんどは『処分』されてて、まーちゃんや僅かに生き残った子達も奴ら……亡国機業(ファントム・タスク)に攫われていた。そこでまーちゃん達はナノマシンを注入され、奴らの戦闘マシンとして訓練させられた。織斑マドカって名前も、その時与えられたんだと思うよ」

 

「そうだったんですか…………ん? 待って下さい。その話だと、マドカの他にも生き残ってる子達が居ますよね? その子達はどうなったんですか?」

 

「それは「みんなは……まだ亡国機業(ファントム・タスク)に居る」まーちゃん?」

 

「この説明は私にさせてくれ。そうでないと、みんなに申し訳がない……」

 

「まーちゃん……わかった」

 

神妙な面持ちで言ったマドカちゃんに束さんは頷く。そして、マドカちゃんはゆっくりと話していった。

 

「篠ノ之博士が言った通り、私と共に生き残った者達は亡国機業(ファントム・タスク)に拾われ、逆らえないようナノマシンを注入された上で戦闘マシンになるよう訓練を受けさせられた。そして訓練だらけの日々の中で、私達は織斑一夏とオリジナルである織斑千冬の存在を知った」

 

どこか遠い目をしながら、マドカちゃんは説明を続けていく。

 

「更に、IS学園に潜入するメンバーを私達の中から1人選抜するという連絡も来た。……正に渡りに船で一瞬喜んだよ。私達の兄さんや姉さんに会うことができるんだから。でも、それは同時に会いに行くことができるのは、たった1人ということを意味していたんだ」

 

「で、マドカが選ばれた、と……」

 

「ああ。最初は皆に申し訳がなかったが、希望を託し、後押ししてくれたお陰で行く決心がついた。……だが、私に与えられた任務は『ダブルオークアンタ』ないし『ウイングガンダムゼロカスタム』の奪取に失敗した場合、敵を足止めしろというものだった…無論、兄さんもだ。織斑マドカという名も、敵を錯乱してその間に撃破する為に与えられた」

 

「そんな……それじゃあ、一夏や千冬さんと会えても、戦うことしか……」

 

「酷い……」

 

「酷いなんてもんじゃねぇ、奴らは悪魔そのものだ。束経由で詳細を見たが、奴らは仲間の意志なんかこれっぽっちも考えちゃいない……!」

 

愕然として言う鈴ちゃんとシャルに、怒りを滲ませて言う省吾兄ちゃん。やっぱり束さん経由で知っていたのか。でもあの兄ちゃんがここまで怒るなんて、相当ヤバイんだな。亡国機業(ファントム・タスク)って。

 

「結局、私の体内にあったナノマシンはクアンタムバーストで消滅して自由の身にはなれたんだがな……」

 

「……それで、マドカはこれからどうするんだ?」

 

「これから、と言うと?」

 

千冬さんの問いにマドカちゃんは首を傾げると、刀奈がそれに続いて言った。

 

「本来ならIS委員会に引き渡すべきなんだろうけど、マドカちゃんの件に関しての元凶だからそれだと危険すぎるのよね」

 

「それってどういう……! まさか、織斑先生の遺伝子を渡したのは、IS委員会だと言うんですの!?」

 

「そうでなきゃ、人間のクローン作製が禁止されてる中でとても研究なんてできないもの。委員会が後ろ盾になってる可能性はほぼ100%よ」

 

そうだったのか……確かに、刀奈の言う通り監視の目を誤魔化すにはIS委員会の力を借りなければ不可能だ。どこの組織も、一部の人間が悪いことをするというのはお約束なのか……。

 

「だから織斑先生はどうするかを尋ねたのよ。このままここに居るのかどうかを、ね」

 

「…………私は……」

 

マドカちゃんは俯き、黙り込んでしまった。自分だけがここに居ていいのか、とかを考えているんだろう。俺は思い切って声を掛けることにした。

 

「選ぶんだ。亡国機業(ファントム・タスク)の一員じゃない、君自身の意志で」

 

「私の、意志……」

 

再び俯くと、彼女は顔を上げ何かを決心した表情で言った。

 

「……私は…此処に、兄さん達の居るこの学校に居たい。他の誰でもない、織斑マドカとして。……あんなところは、もう嫌だ……」

 

「マドカ……」

 

「よっし、決まり! んじゃ後は色々手続きとかしないといけないけど、そこんとこ頼んじゃっていい?」

 

「ええ、勿論です」

 

パンッと手を叩いて言った束さんに、刀奈は頷く。手続きか……一体何をするんだろう。機体を引き続き使えるようにするのかな? まあそれはともかく、大事なのは―――

 

「その……これから、よろしく頼む」

 

―――マドカちゃんは、俺達の仲間になったってことだ。

 

「ああ、こちらこそよろしく。だけど……ごめん。俺達のせいで、迷惑を掛けて」

 

「すまない……」

 

「兄さん、姉さん、顔を上げてくれ。私は兄さん達を恨んじゃいない。むしろ感謝してるぐらいだ。2人が居なければ、私達は生まれなかったのだから。……ただ、スコールやオータムが聞いたら、どう思うか―――」

 

「あら。私は喜ぶけど? やっと組織の呪縛から逃れられたんだし」

 

「私も同意見だな」

 

『『『っ!!!!』』』

 

突然聞こえて来た声にドアの方を見ると……。

 

「よっ。さっきは包囲してくれてどーも」

 

「もうオータムったら。嫌味を言わないの」

 

「昔から変わらないな」

 

手錠をつけたオータムとスコールという女性が、ブラントさんに付き添われていた。




マドカにオリジナル設定を加えました。後々生き残りも登場します。
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