ISG~インフィニット・ストラトス・ガンダム~ 作:レイブラスト
「オータム……! それに隣の人は、アカツキのパイロットか!?」
「何故ここに……!! ひょっとして、ブラントさんが撃墜したのか?」
何が起きてもいいよう警戒しつつ、ブラントさんを見る。そうでなければ説明がつかないが、果たしてどうなのか。
「そうよ。見事に追い詰められちゃってね」
「最もブラントにやられたのはスコールで、私はソイツのISでやられたんだがな」
そう言いながら、オータムは省吾兄ちゃんを見やる。そうか、兄ちゃんが倒したのか…………………ん? 今何て言った?
「ちょっ! おま、その話は―――」
「IS? どういうこと?」
「い、いや、それは……」
汗をダラダラ流しながら省吾兄ちゃんが言葉に詰まっていると、束さんが焦ったように前に出た。
「い、言っちゃダメだよしょーくん! それ以上言ったら、しょーくんにIS適正があって、私がこっそり専用機を作って渡したことがバレちゃう!!」
「何だって!? 兄ちゃんにIS適正が!?」
「専用機を渡したぁ!?」
「ほらバレた~!」
「お前が言ったんだろうが!! 何もかも包み隠さず!!」
自分から言っておいて頭を抱える束さんに、省吾兄ちゃんが鋭いツッコミを入れる。いやそんなことより、束さんが言ったことの方が大事だ!
「……省吾、束。どういうことか、詳しく話して貰おうか? 包み隠さず、な?」
千冬さんの絶対零度の視線に束さんと兄ちゃんは無言でガクガクと頷くと、すぐに色々話し始めた。それによると、俺と一夏がISを動かした段階で束さんはもしやと思い省吾兄ちゃんにIS適正があるかどうか調べたそうだ。結果、理由は不明ながらも適正があることがわかったので、来るべき時(おそらく
「事情はわかった。が、私にずっと隠していたのは許せない。後でたっぷり説教をさせて貰うぞ、いいな?」
「「「は、はい……」」」
明らかに怒り心頭の千冬さんに兄ちゃん達は気圧されており、みんなはそれを見て絶句していた。
「そ、それよりスコールとオータムが言ってたことなんだけど、本当なのか?」
空気を変えるように言ったマドカちゃんの言葉に、スコール達が我に返って答えた。
「勿論そうよ。というか、私が今まで嘘をついたことがあったかしら?」
「それはそうだけど……でも、私は
「いいんだよそんなこと。私もスコールも、ついさっき組織を抜けたばっかだし。ま、元々上の連中のやり方には賛同しかねていたし、いい頃合いさ」
「抜けたって……」
「元々任務にしくじったら抜けようって決めててな。それにどうせ、今頃上の連中は私達を死亡扱いしてるだろうからな。仮に戻ったところでお前等誰だ?ってなるに決まってらぁ」
肩をすくめながら冗談めかしたようにオータムは言ったが、とても笑えるような話ではない。任務に失敗した者は即切り捨てるのが、向こうの連中のやり方か……酷いなんてもんじゃないな。
「……ちょっと待って。じゃあそこの2人は、味方になったってこと?」
疑いの目を向けながら簪が言うと、代わりにブラントさんが口を開いた。
「そうだ。勿論私も疑ったが、我々の仲間になる代わりに重要な情報を与えてくれた」
「交換条件ってことか。ちなみに、どんな情報だったんだ?」
ただならぬ雰囲気を出しているブラントさんに省吾兄ちゃんも真剣な面持ちで尋ねる。どうにも嫌な予感がしてならないな……何があるって言うんだ?
「今度、IS学園でキャノンボール・ファストという行事が行われるそうだが、そのタイミングで再び
『『『何だと(ですって)!?』』』
原作通りの展開だが、驚いてしまった。本来そこで襲って来る筈のマドカちゃんはここに居るのに、誰が仕掛けて来るんだ?
「それなら私達の方でも少しは知っているわ。確か織斑マドカが襲撃してくる予定になっていたけど、別の誰かが来るのかしら?」
「ああ。万一織斑マドカが任務に参加できない場合には、エスとオーともう1人の人物が任務を遂行させるそうだ」
「何っ!? それは本当なのか!?」
刀奈の問いに答えたブラントさんに、マドカちゃんが目を見開いて驚く。エスとオー……まさか―――
「マドカ。そのエスとオーってのは、お前の……」
「……そうだ。私と共に救出された、試作クローンの2人だ……」
やはり……嫌な予感は、これのことだったのか……。
(姉妹同士で、戦うことになるっていうのか……)
重苦しい雰囲気になってしまい、結局その場は一旦解散することになった。だが俺と一夏、ラウラと千冬さんは保健室に残った。
OutSIDE
「マドカ、大丈夫か?」
「ああ。この通り、元気そのものだ」
「そうじゃない。さっき言ってたことだ。……戦うことになるかもしれないんだろ? 姉妹と」
心配そうに一夏が言う。マドカはため息をつくと言った。
「兄さんが心配しなくても、私はちゃんと戦える。相手が誰であってもな」
「本当か? 無理をしているんじゃあるまいな?」
「無理なんてしていない。私はこう見えて、任務で多くの戦場を渡り歩いて来たんだ。肉親同士の争いなど、とっくに見飽きた」
ラウラの言葉にマドカは事も無げに答えると、「だが」と前置きをして話を続けた。
「だからと言って何も話さずに戦う訳じゃない。できる限り穏便に済ませられるように心がけるさ」
拳を強く握りながら、マドカは言う。それを見て、皆はマドカが本当は姉妹との戦いを望んでいないことを悟った。
「……マドカ」
「? どうした、姉さん?」
「お前はこれからIS学園で生活することになるんだが、制服のサイズを測らせてくれないか?」
「わかった」
場の空気を変えようと発言した千冬に頷き、ベッドを降りようとしたマドカだが、突然動きを止めた。
「どうしたの?」
「いや……よく考えれば私は普通の暮らしをしたことがないと思ってな。楽しいものなのか?」
首を傾げて素朴な疑問を投げかけてくるマドカに、一夏と彰人は顔を見合わせると笑顔で述べた。
「ああ、一言じゃ言い表せないくらい楽しいことがあるぞ」
「例えば、そうだな―――」
思いつく限りの楽しいことを上げていくと、マドカは目を輝かせる。IS学園での暮らしに期待を寄せてる彼女を見て、千冬もラウラもつられて笑顔になった。
海岸にて
省吾とブラントは並び立ち、共に無言で海を眺めていた。が、やがて省吾の方から口を開いた。
「IS学園も、そろそろ安全じゃなくなって来たな……襲撃されまくってるし」
「退学者も増えているそうだ。平和ボケしていた者を一掃できたという意味では良いかもしれんが……」
「良い訳あるかよ。ったく」
近くに落ちてた小石を拾って海に投げ込み、小さくため息をつくと省吾は座り込んで再び海を眺めた。
「……何でこんなことになっちまったんだろうな……俺達はISやガーランドを兵器として作ったつもりはねぇのに。十年前のミサイルハックから、全部おかしくなったんだ……」
「……省吾。そのことだが……」
ブラントは省吾の隣に座り込みながら、話を切り出した。聞いてる側の省吾もただならぬ雰囲気に何事かと顔を向ける。
「あの日、世界中のミサイルをハッキングしたのが俺の指示によるものだとしたら……どうする?」
「っ!!」
その言葉に省吾は目を見開き、そしてブラントを睨むように見る。が、ふぅと一息つくと昔を懐かしむような表情で見て言った。
「やっぱりな……って言うと思うぜ。何せお前は、軍を掌握したことがあったからな。それくらいやっても不思議じゃあない」
「理由は聞かないのか?」
「大方、束をバカにした連中が許せなかったんだろ? 俺だって今も許せないからな、あの場に居た連中は」
「そうか………………」
彼の言葉に目を閉じながら呟いたブラントは、ゆっくりと立ち上がりそれにつられるように省吾も立ち上がる。
「B.D。お前、名乗り出る気か? 今の世界を作ったのは
「ああ。
「………………………」
立ち去ろうとするブラントの肩を省吾は掴み、今度は強い怒りの籠もった目で睨み付けた。
「俺はテメェがどう行動しようが知ったこっちゃねぇって思ってる。だがな、アイツ等のことはどうすんだよ?」
そう言って省吾は目配せする。その方向をブラントが見ると、スコールとオータムが立ち尽くしていた。
「スコール、オータム……聞いていたのか」
「ええ。お陰で色々と知りたくないことを知ってしまったわ」
言いながらスコールは近づき、ブラントをじっと見つめた。
「勝手な人ね……昔からいつもそう。何でも独断で決めちゃって、私達のことなんてほったらかしでどんどん先に進んで行って……挙げ句に、居なくなるって言うの? ふざけんじゃないわよ」
スコールは目に涙を浮かべ、言葉を繋いでいく。
「やっと本当の意味で会うことができたのに、置いて行かないでよ……もう、寂しい思いをするのは嫌なの……!」
ブラントに抱きつき、啜り泣くスコール。そんな彼女とブラントを見て、オータムが近づいて言った。
「スコールさ……お前と誘拐事件で一度会った時、私以上に喜んでいたんだ。組織を抜けるのも、お前と共に歩められると思ったからだ」
「俺は世界を変えた、重罪人だぞ?」
「そんなこと関係ねぇよ! 確かに今の世界に不満は抱いてる。けどな、今更自分がやったって言って晒し者になるってんなら、ぶん殴ってでも止めてやる!」
「………………」
「俺もソイツと同意見だ。テメェのことを想ってくれてる奴が居るのに、1人でどっか行こうってんなら、ぜってぇ許さねぇ。それにテメェだって、本当は……」
しばし考え込んだブラントは深いため息をつくと、スコールとオータムを見やって言った。
「……そうだな。お前の言う通りだ。俺が正しいと信じていたことは、全て正しい訳ではなかった」
「お前……」
「思い通りに生きる……ずっと前にお前に言ったことを、お陰で思い出せたよ」
「かなり大事なことじゃない、それ。思い出すのが遅すぎるのよ、貴方は……」
そう言うとスコールはブラントの胸元に顔を埋め、オータムも彼の体にコツンと頭を当てた。ブラントは無言で彼女達を抱き締め、省吾は静かにその場を立ち去った。
IS学園生徒会室
「今度はキャノンボール・ファスト、か……アイツ等、どうしてこうも行事がある時ばかり狙って来るのかしらね」
呆れながら刀奈は、手に持っていた缶ジュースを飲み干す。近くには簪と箒、セシリアに鈴にシャルロットがいた。
「中止にはできないんですか? そうすれば―――」
「できるんならとっくにやってるわよ。でもそんなことをすれば逆に学園全体がパニックになるし、連中が何をしてくるかわかったもんじゃないわ」
セシリアの疑問に即答で刀奈は返す。中止にしたくてもできないというジレンマに、彼女は困っているのだ。
「とりあえず予定通りキャノンボール・ファストを行って、襲って来たら僕達が相手をするのがいいと思う。大丈夫だって! 勝てない相手じゃないんだからさ」
「……そう、ですわね」
頷きながら同意したセシリアだったが、彼女の脳裏にはプロヴィデンスの戦闘場面が何度も再生されていた。
(プロヴィデンスガンダムが奪われてから今日までの日数は、私が訓練をしていた日よりも短い……なのに操作技術は彼女の方が上……私は、これまで何の為に―――)
「ちょっとアンタ、どうしたの? そんな険しい顔して」
「っ、何でもありませんわ(これまで以上に練習しなければ。負けっ放しは、もうたくさんですもの)」
心配そうに覗き込む鈴に平静を装うが、その心中には闘志が沸いていた。
「それが妥当ね。でも……アレはどうしたらいいのかしら?」
横目で刀奈は部屋の隅を見る。そこには待機状態のアストレイブルーフレームとプロヴィデンスとスローネツヴァイを持った束が何やら考え込んでいた。
「姉さん、さっきから何をしているんですか? というか残ってていいんですか?」
「ん? あ~、帰るタイミングを逃しちゃってね~……それにやりたいことも見つけたし」
「……手に持ってる私のISと、何か関係があるんですか?」
「モチのロンだよ! 3つとも中々の出来だとは思うけど、私的にはもうちょっと改善できると思うんだ。これから本格的な戦いも始まるだろうし、やっておいて損はないからね」
「は、はぁ……」
「キャノンボール・ファストまでには完成させとくから安心しといて。……あ、ところでキャノンボールっていつやるんだっけ?」
「今月の27日ですけど」
「あ……」
日程を刀奈が言った瞬間、箒が何かを思い出したような顔になった。
「……どうしたの?」
「9月27日……その日は、一夏の誕生日なんだ」
「あ、そういえばそうだったわね」
箒の言葉に鈴も思い出したようで、2人して「どんなプレゼントをあげたらいいんだろう?」という話になる。更にセシリア達も「そういえば彰人の誕生日っていつだっけ?」という話題で盛り上がった。
(いいねぇ、青春だね~。ま、ちょっと違うとこがあるけど)
その状況を束は楽しみつつ、三機のISの改造プランを考えていた。