ISG~インフィニット・ストラトス・ガンダム~ 作:レイブラスト
74th Episode
やあ諸君、矢作彰人だ。学園祭も終わって兄ちゃん達も帰り、再びいつもの日常が始まった……とは残念ながら言えない。朝のSHRからして既に変化があるからだ。
「みんなおはよう。今日は、新しいクラスメイトを紹介したいと思う。では入って来なさい」
ガラッ
「失礼します」
千冬さんに促されて教室に入った女の子を見て、誰もが目を丸くした。無理もない話だ。何せその顔は、千冬さんそっくりだからな。
「初めまして、織斑マドカだ。兄さんや姉さんとは訳あって離れて暮らしていたが、この度転校することになった。何卒よろしく頼む」
女の子―――マドカちゃんの挨拶にクラスの女子達は納得して頷く。ちなみにこれは一夏と千冬さんが捻りだした案だそうだ。中々上手いと俺も思う。ああそれと、スコールとオータムはIS学園の教師としてしばらく働くことになったそうだ。確かオータムが体育教師でスコールが保険医だったような。
「よし。では織斑妹は……ボーデヴィッヒの隣に座りなさい」
「はい」
教壇から歩き出し、ラウラの隣の席に腰掛けるとすぐに2人で軽く話をし始めた。
「よろしくな、ラウラ」
「ああ。私こそよろしく、マドカ」
……こうして見てると似てるよな、ラウラもマドカちゃんも。喋り方とか雰囲気とか。
「次に連絡事項がいくつかあったな。山田先生」
「はい。まずは今度行われる『キャノンボール・ファスト』についてですが―――」
この後HRは滞りなく進んだが、休み時間にはマドカが質問攻めに遭っていた。見てて辛かったので俺達で救助してあげた。
そういえば学園祭の結果が気になったけど、一夏は剣道部に入ったみたい。偶然だけど本人も嬉しがってたな、箒ちゃんと一緒だって。俺? 俺はソフトボール部だよ。お陰で力加減が大変。割と楽しいけど。
昼休み、食堂
「疲れた……何なんだ彼女達は? 何故戦場に居る時よりも疲れなければならないんだ……」
疲れ切ってテーブルに突っ伏しているマドカを見て苦笑しながら、俺はみんなと食事をしながらキャノンボール・ファストについての話をしていた。
さて以前から話題となっているキャノンボール・ファストが一体何なのか、説明しよう。と言っても、ISを使ったレースのようなものだが。ちなみにこれはIS学園と市の共同による特別イベントで行われ、安定性が約束されているので、妨害が認められている。無論量産機と専用機では性能が違い過ぎるので、別々に行われるが。
「確か、それ用にISを調整するんだってな。具体的に何するんだ?」
「例えば、私のストライクフリーダムのように高機動パッケージを換装しますわ」
つまりミーティアということか。アレは一口に高機動と言っていいのか些か疑問ではあるが。
「エネルギーの配分を調整するのも良さそうだな」
「スラスターの出力調節も、忘れずやっておかないとね」
「私はパッケージを使うわ。リボーンズガンダムの時と同じだけど、機動力が上がるからね」
順にラウラ、シャル、鈴ちゃんが答える。やっぱり機体ごとにカスタマイズできるというのは正直羨ましい。一度でいいからやってみたいなぁ。
「……私の機体は束さんが改造しているからどうなるかはわからないけど、ちゃんとキャノンボール・ファスト用の調節もしてくれるみたい」
「私のもだな。ただ、しの……束さんがどんな機体にするのか気になるけど」
簪とマドカちゃんの話を聞きながら俺はふとセシリアを見た。が、セシリアはどこか沈んだ表情をしていた。
(マドカちゃんが来てからずっとこの調子だ。理由は大方わかっているけど)
多分マドカちゃんの方がドラグーン稼働率が高いので、焦りを感じているんだろう。昨夜もそれでか結構遅くまで練習してたみたいだけど、あまり根を詰めるのはよした方がいいと思う。
「彰人。俺等はどうしたらいい?」
「小細工なしの全力、これに尽きるな。だから量子テレポートとか使うんじゃねーぞ」
「当たり前だ。あんな反則技、レースで使う訳ないだろ」
わかっていると思いながらも一応一夏に釘を刺しておき、俺達は昼食を進めた。
放課後、整備室にて。
簪SIDE
私は織斑先生立ち会いの元、マドカとオータム…先生と整備室に訪れていた。何と、束さんが改造していた私達のIS全てが昨日の今日で完成したと言うのだ。
「本当に完成したのかよ? いや疑う訳じゃないけどさ、普通じゃまず無理だぜ」
「ふふん。ISを一度に改造するくらい、束さんには朝飯前なのだ~!」
至極真っ当なオータム先生の疑問に束さんは胸を張って答える。どうしてか説得力のある答えだと思った。
「コイツは昔から不可能を可能にしてきたからな……」
「(姉さんがそれを言うのか?)それでどんな機体になったんだ?」
「よくぞ聞いてくれました! ではでは早速お披露目しちゃおう!!」
言いながら束さんは待機状態のISを地面に置き、手持ちのディスプレーを操作するとパイロットがいない状態でISが通常形態に変化した。
「……これが、改造した私達のIS……」
「どことなくプロヴィデンスの面影はあるな」
「何か私のだけ、悪人面じゃないか……?」
それぞれのISを見て抱いた感想を口にする。
「順番に説明していくね。まずかんちゃんのISはガンダムアストレイブルーフレームセカンドリバイと言って、タクティカルアームズに新たに2つのフォームを追加して使いやすさを向上させたんだ。それとアーマーシュナイダーのデザインも変えたし、踵にも仕込んどいたよ」
「……す、凄い……」
それしか言いようがなかった。たった1日で武装を追加して、しかもレース用に調整してあるだなんて。……ていうかその呼び方、本音や姉さんみたい。
「次にまーちゃんのだけど、このISはレジェンドガンダムって名前なんだ。具体的にどこが変わったかって言うと、まずビームライフルの連射性の向上に小型化でしょ? それから複合兵装防盾システムを取っ払って柄同士で連結できるビームジャベリン二本とビームシールドにして、ドラグーンは前よりやや小型化して連結状態でも向きを変えて攻撃できるようにもしたよ」
「……昨日の今日でホントよくここまで改造できたな」
マドカは束さんの業に脱帽しているようだった。かくいう私もとことん改造されてるマドカのISを見て驚きを隠せない。
「最後に君のISを説明するね。名前はアルケーガンダムで、GNファングを10基に増やして威力と速さを上げたり、GNバスターソードにライフルモードに変形する機能を加えたんだ。後、両足の爪先にGNビームサーベルを隠し武器で追加しといたよ」
「へぇ、見た目の割に中々高性能じゃないの」
腕を組み、感心した様子で言うオータム先生。その後ろでは織斑先生が額を押さえてため息をついていた。
「束……少しやり過ぎじゃないか?」
「え、そうかな?」
「これをやり過ぎと言わずに何と言うんだ。ブルーフレームやレジェンドはともかく、アルケーに至っては原型を留めていないじゃないか」
「…………た、多分大丈夫だよ。もしアレなら、謝罪文でも送るし」
2人の話を聞いて、「それだったらどこの人も許してくれそう」と私は思った。
(これからもよろしくね……ブルーフレーム)
新たな力を備えた相棒に、私はそっと手を添えて微笑んだ。……ブルーフレームの目が一瞬光ったように見えたけど、気のせいかな?
ほぼ同時刻、アリーナにて。
OutSIDE
「……ふぅ…」
そこではセシリアが1人、ISを纏って練習をしていた。周囲にはドラグーンが展開されており、ビームライフルや他の武装も展開して仮想ターゲットをロックする。
「……はぁっ!!」
そして一気に攻撃する―――だが放たれたのはドラグーンからのビームだけで、他の武装からは何も出てなかった。
「またダメですわ……はぁ、何故出来ないのでしょう……あの時は出来たと言うのに」
ビームライフルを降ろすとセシリアはため息をついた。リボーンズガンダム戦でドラグーンを操作した時のイメージを元に彼女は練習しているのだが、中々上の段階に進むことができずにいる。
「やはり私には……っ、いいえ! このセシリア・オルコットに不可能はありません! 必ず可能にして「おーい、セシリア~」って彰人さん?」
自分に言い聞かせるように力強く宣言すると、声が聞こえてきたのでハイパーセンサーで見る。そこには彰人が手を振って立っていた。
「どうしてここに?」
「例によって挑戦者達を倒しまくってたら偶然見つけてな。苦戦してるようだし、様子を見に来たんだ」
「そうですの……」
歩いて近寄る彰人を見つつ、セシリアは再びため息をついた。
「……確か、ドラグーン・フルバーストだったな?」
「はい。ですが、最大稼動までまだまだでして……」
「ふむ……どれ、まずは深呼吸してリラックスしよう。何か無理してるっぽいし」
「わかりました。すぅー……はぁー……」
言われた通り深呼吸をし、心を落ち着かせる。すると幾分か気分が良くなったようにセシリアは思えた。
「で、どうやってフルバーストをするかだったな」
「リボーンズガンダムでの時は上手くいったんですけど……」
「その時の自分の心境を教えてくれないか?」
「心境ですか? そうですわね……強いて言えば、1つの感情を爆発させた、でしょうか」
「感情を爆発……」
顎に手を当ててしばし考えていた彰人はふ何かに辿り着き、はっとした顔になるとセシリアを見た。
「それだ! 意識を集中させて1つの感情……怒りでもなんでもいいけど、とにかくソレを高めるんだ」
「感情を高める、ですか。確かにあの時動かしたイメージに近い気はしますが、上手く行くでしょうか?」
「うーん、どうだろう。絶対とは言えないけど、確率としては高いと思うぜ?」
「……そうですわね。やってみて、それでもダメなら別の方法を探せばいいんですし」
「その意気だ。けど今日はもう休んで、続きはまた今度だ。でないと千冬さんに怒られちまう」
そう言い、彰人はセシリアと共に寮の廊下を歩いた。
フランス 某刑務所
様々な犯罪者が収監されているこの刑務所の一室に、とある女性が投獄されていた。彼女はストレスを発散するかのように、鉄格子に何度も何度も頭をぶつけ、やがてやめると呟いた。
「クソッ! そろそろ限界だ……この私をこんなところに閉じ込めやがって! これも全てシャルロットのガキが裏切ったせいだぁ……!!」
何を隠そう、彼女は全ての真実を白日の下に晒され、転落したソランジュ・デュノア……否、ソランジュ・エキューデだった。
「アイツの! アイツの! クソォォォッ!!」
再び頭突きを再開するソランジュ。そんな彼女の居る部屋の前に、帽子を深々と被った2人の女性警備員が近づいてきた。
「ソランジュ・エキューデ。そんな風に自分を痛めつけて、何が楽しい?」
その言葉にソランジュは振り向くと、鋭い眼光で睨み付けて言った。
「イライラするんだよ……! 奴らのことを考えているとね!」
「……そんなに復讐したいのか? シャルロット・デュノアに」
「ああしたいね! アイツが秘密をバラしたせいで私の人生は滅茶苦茶になったんだ! ぶっ殺さねぇと気が済まないよ!!」
怒りをぶちまけるソランジュを見て、2人の女性はひそひそと言い合った。
(姉さん、本当にこんな人を強襲隊に入れてもいいの? 小物にしか見えないんだけど)
「(まあ問題ないだろう。こんなのでも使いようはある)ならばお前に、復讐のチャンスをやろう」
片方から「姉さん」と呼ばれた女性は懐から待機状態のカオスガンダムを取り出すと、格子を介してソランジュに差し出した。
「……何でアンタがこれを? っ、まさか2人とも、組織の―――」
「そうだ。今度IS学園に襲撃するんだが、専用機持ち達が中々厄介でな。お前にも手伝って欲しいんだ」
「なるほど。要するに人手不足だからどうにかして欲しいってことか…………いいね、乗ったよ。丁度あのガキを殺したいと思ってたし、ここでの生活にもウンザリしていたところだし」
「お前ならそう言ってくれると思ってたよ。お前の活躍、期待させて貰うぞ(ま、コイツが連中に勝てるかどうかは正直疑問だが)」
女性が抱いてる感情に気づかないまま、ソランジュは待機状態のカオスを手に取った―――
その数分後のことだった。全世界に、ソランジュ・エキューデが脱獄したとのニュースが流れたのは。