ISG~インフィニット・ストラトス・ガンダム~ 作:レイブラスト
数日後、キャノンボール・ファスト当日
ついにキャノンボール・ファストが開催される日がやってきた。会場となっている市のアリーナには大勢の見物客が来ており、その中には各国の重鎮達も居る(兄ちゃんやブラントさんもいるかな?)。みんな、各国のISの性能を是非この目で確認しようとして来てる人達だ。かなり大事な催しなので、襲撃の有無に関わらず俺達は全力を出すことを心に決めている。
キャノンボール・ファストのプログラムだが、まず二年生のレースが訓練機、専用機別に行われ、次に一年生の専用機持ちのレースでそれが終わったら訓練機のレース。最後に三年生によるエキシビションレースが行われることになっている。
「なあ彰人。お前、チケット誰に渡した?」
「俺は数馬に渡した。それ以外に思いつかなかったからな」
俺と一夏が何を話しているか気になった人もいると思うが、キャノンボール・ファストでは開催前に全生徒に優先チケットが配られ、1人につき1人ずつ一般人を招待することができるのだ。一夏と鈴は既に弾と蘭に渡していたので、俺は数馬に渡したという訳だ。
色々話しながら順番を待っていると、一夏の隣に箒ちゃんと鈴ちゃんにマドカちゃんが寄ってきた。
「一夏、調子はどうだ?」
「ん? ああ、バッチリってところだ。もしかしたら優勝は、俺になるかもな」
「へぇ、言うじゃない。けど私だってそう簡単に譲るつもりはないから」
「私とレジェンドだって、負けないぞ」
4人とも笑顔だが、火花が散ってるように見える。下手に話しかけない方がいいな……。そう考えていると、簪達が近づいてきた。
「……彰人。今日のレースは負けない。パワーアップしたブルーフレームの力を見せる」
「私も、今度ばかりは負けませんわよ」
「共に全力を尽くそう」
「おう、みんな強気だな。でも俺だって簡単には負けないからな」
みんなを見渡しながら言っていると、1人だけ元気がない奴を見つけた。
「シャル……?」
「…………え? な、何かな?」
「いや、さっきから黙ったままだから」
「そ、そうだったっけ? えと、じゃあ…僕も負けないからね」
笑顔を作って言うが、明らかに無理をしていた。こうなるのも無理はない。マドカちゃん達が仲間になった次の日に、逮捕されていたシャルの義理の母であるソランジュ・エキューデ(旧姓デュノア)が何者かの手によって脱獄したと言うのだ。更に悪いことに、彼女から押収されフランス軍に保管してあったカオスガンダムまで盗まれたらしい。
裏に
「そう暗くならなくても大丈夫だ。ソランジュ・エキューデが襲って来たら、私達が相手をする。お前が戦う必要はない」
シャルを気遣ってラウラが声を掛ける。が、シャルは顔を上げると首を横に振って言った。
「ありがとう……でも僕は戦うよ。あの人を付け上がらせたのは多少なりとも僕にも責任があるし、自分の手でケジメをつけたいんだ。ああでも、1人で戦うって訳じゃないからね?」
確固たる意志を持って答えたシャルに、俺達は笑顔を向けた。心配する必要は、どうやら無いみたいで安心した。
市アリーナにて
Out SIDE
二年生のレースが終わり、観客席が歓声に包まれる最中、刀奈は観客を1人1人注意深く見ながら歩いていた。
「ここはいないか……」
そう呟いていると前方からオータムが、後方からスコールが歩み寄ってきた。
「そっちはどうだった?」
「誰もいなかったぜ。スコールの方は?」
「こっちは誰もいなかったわよ。やっぱり観客として紛れ込んでいる可能性は薄いわね」
2人の報告を聞いた刀奈は「そう……」と言って軽く目を閉じると、レース会場を見て不安げに声を漏らした。
「せめてレースが終わるまでは大人しくしてくれるといいんだけど……」
彰人SIDE
二年生のレースが終わり、いよいよ俺達の番になる。全員ISを展開し、スタートラインに並んでいく。
「全て…振り切らせて貰う!」
ウイングバインダーを調節しながら、俺は自分の士気を高める為に宣言する。
「させるかよ。ここは俺がフルスロットルで、一っ走りさせて貰うぜ!」
ダブルオークアンタのツインアイを輝かせながら、一夏も宣言してくる。
「優勝、それが私のゴールだ!」
レッドフレーム改を纏った箒ちゃんは、見た目もあってまるで武士のような気迫が感じられる。
「そうはいかない。最速なのは、この私だ」
マスクの下で笑みを浮かべているのが想像できるようなトーンで、ハイペリオンのブースターを調整しながらラウラが言う。
「フフ。言っとくけど今日の私は、かーなーり、強いわよ!」
パッケージで機体をアルトロンカスタムとした鈴ちゃんが、拳を強く握り締めた。
「残念ですが、ここからは私のステージですわよ!」
ミーティア装備のストライクフリーダムを正面に向けながら力強く言うセシリア。
「負けないよ。今日は僕のショータイムだ!」
アリオスの可動域を確認したシャルが、軽快に言う。
「……見えた。勝利のイマジネーションが」
新しくなったブルーフレームセカンドを展開した簪が感触を確かめつつ立ち並ぶ。
「兄さんにも彰人にも、誰にも負けない。最初から最後までクライマックスで行く!」
レジェンドを装着したマドカちゃんがいつでもスタートできる体勢をつくる。
誰にも勝利を譲る気も、譲らせる気もない。あるのはただ1つ、自分の勝利のみ。それ以外の考えは排除する。
『それでは、これより一年専用機のレースを開始します』
山田先生のアナウンスと同時にスラスターを点火させる。これで発進はいつでもOKだ。
3、2……
カウントダウンのシグナルが点滅する。決して目を逸らしてはならない。そして……
1……GO!!
「「行っっくぜぇぇぇえええええええええええええええええ!!」」
「「「うぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおお!!」」」
「「「「はぁぁぁぁあああああああああああああああああ!!」」」」
その瞬間、俺達は一斉にスタートを切った。
OutSIDE
最初にトップに躍り出たのは彰人と一夏だった。どちらが一位になるかで猛烈なデッドヒートになっているが……。
「これも勝負だ、悪く思うなよ!」
「今だ!」
「そこですわ!」
箒がビームトーチで、マドカが突撃ビーム機動砲で、セシリアがミサイルランチャーで2人を狙い撃った。キャノンボール・ファストでは妨害が許可されているので、こういうのも有りになっている。
「うおっ危なっ!?」
「やっぱり狙って来たか!」
「……これも勝負。やらなければ、こちらがやられる」
言いながら簪が彼らの隣を通り過ぎ、更に皆が続いていく……が、彰人達も負けてはいなかった。
「こっちもやってやるぜ!」
「行け、GNソードビット!」
スピードを上げながらツインバスターライフルを発射したり、GNソードビットを射出したりして牽制していく。勿論実際に当てる気はないが、それでも相手の集中力を削ぐには十分だった。
「くっ、避け切れませんわ!」
「ああもう、冷や冷やするじゃないの!」
混乱する面々の合間を縫って一夏と彰人は進んで行く。このまま順調に順位を上げていこうとした―――その時。
「「っ! 来るっ!!」」
イノベイターの力とゼロシステムで何かを察知した一夏と彰人は、先頭を行くラウラとシャルにわざと避けられるような攻撃をした。
「熱源!? ええい!」
「うわわっ!?」
2人がそれを回避した直後、上空から先ほどまで居た位置に2つのビームが放たれた。
「今のは……! てことはついに来たって訳ね!」
「……せめてレースが終わってからにして欲しかったんだけど」
他のメンバーも襲撃者が現れたことを察知すると、機体を止めて上空を見た。そこにはマスクオフした三機のISが佇んでいた。
「チッ! 奴らのせいで当て損ねたか!」
(さすがはイノベイターだね、姉さん。危険を察知する能力が長けていると見たよ)
(そうだな、オーよ。だがウイングゼロの能力もかなり厄介だ。十分に気をつけるぞ)
明らかに憎々しげな言葉を吐いているのはカオスガンダムを纏ったソランジュ・エキューデだ。残りの2人はこの場にいる誰とも面識はないが、その顔は千冬やマドカと酷似していたので自ずと正体はつかめた。
「とうとうこの時が来てしまったか……エス、そしてオー」
悲しげにマドカは言う。そう、残る2人はマドカの姉妹である、ガンダムヴァサーゴを纏ったエスとガンダムアシュタロンを纏ったオーだ。
三機はゆっくりと降下しながらマスクを装着し顔を隠す。
「相手は三機……さて、ここはどうするか」
「カオスは私とシャルと簪で行こう。あの赤いISは彰人とセシリアとマドカ、残る一機は一夏と箒と鈴で相手をする。異論はあるか?」
「いや、それで行こう」
ラウラの提案に一同は反対することなく3つに分かれ、それぞれが担当する敵ISをセンサーで捉えた。
一夏&箒&鈴vsオー
「アシュタロンか……2人とも、アイツはアトミックシザースっていう伸縮可能な二本のハサミを持っている。十分気をつけてくれ」
「わかった」
「伸縮自在ね…私と似たようなもんか」
オーの機体、ガンダムアシュタロンを見ながら一夏が注意を促す。
「見ているだけとは随分余裕だね? じゃあこっちから行かせて貰うよ!」
笑みを浮かべながらオーはアトミックシザースを展開、内蔵されているシザースビーム砲を放った。3人はそれを回避する。
「いきなり攻撃とは上等じゃない! 食らえっ!」
反撃に鈴がドラゴンハングを伸ばしてアシュタロンを掴む。そのままダメージを与えようとするがオーはアシュタロンをMA形態に変形させ、スラスターを全開にして強引に離脱。更にその勢いで箒へと向かった。
「可変機だと! それにこのスピード……ならば!」
箒は敢えて正面からアシュタロンを受け止める。衝撃で肺の中の空気が外に出て、頭がグラグラとするが正気を保つとアトミックシザースの付け根部分を掴み、強引に押さえ込んだ。
「アトミックシザースを!? コイツ、どれだけ無茶なことを!」
「今だ、一夏! 鈴!」
「「おう!!」」
そこへフルセイバーを装備した一夏と鈴が、それぞれGNソードⅣとツインビームトライデントを持って斬りかかろうとする。
「チッ!」
「うわっ!?」
だがオーはノーズビーム砲で箒を引き剥がすとMS形態に変形。ビームサーベルとアトミックシザースで応戦する。
「GNソードビット!」
「何?」
そこへGNソードビットが襲い来るが、オーは機体を後退させ防御姿勢を取り、自慢の装甲で攻撃を耐えた。
「中々やるわね」
「だがエネルギーは削れている筈だ」
「くっ…どいつもこいつも、思ってたよりやるじゃあないか」
彰人&セシリア&マドカvsエス
「エス……どうしても戦うつもりか?」
対峙したマドカは通信でエスに問いかける。エスは驚いたようにレジェンドを見つめると、声を上げた。
「お前、エムか? 敵の捕虜になった筈では? それに私達に反逆しているということは、ナノマシンが―――」
「私の中のナノマシンはもうない。そして今の私はエムじゃあない。兄さんと姉さんの妹の、織斑マドカだ!」
力強く宣言すると、エスは満足そうにため息をついて述べた。
「そうか……私達の希望は、潰えてなかったのだな……」
「ああ。だからエス達も組織を「だがそれとこれとは話が別だ」何!?」
「私達姉妹は心の奥底から、この世界を憎んでいる。故に組織にも自分の意志で加わっているのだ。いくら私達を懐柔しようとしても無駄なことだ」
「そんな……」
愕然として棒立ちになるマドカだが、その隣に彰人とミーティアを解除したセシリアが並んだ。
「……残酷なことを言うけど、敵対した以上はやるしかない。行けるか?」
「…………ああ……私とてこうなることは覚悟していたのだが…辛いな」
「仕方ありませんわ。相手は自分の家族なんですから……」
セシリアもマドカとエスを交互に見つめて悲しげに言う。直後、エスが戦闘体勢を取った。
「どうやら来るらしいな。セシリア、ヴァサーゴは全体的に出力が高い。攻撃もそれに比例するから、気をつけろ」
「わかりましたわ」
「っ、来るぞ!」
マドカが叫んだ瞬間、ビームサーベルを持ってエスが突撃してきた。咄嗟に彰人もビームサーベルを引き抜き、エスと斬り合う形になる。
「重い……だが!」
「ほう、やるな。学生だと侮っていたが、認識を改める必要があるか!」
互いにツインアイで睨み付けるが、そこへマドカとセシリアによるドラグーン攻撃が放たれた。
「!? くっ!」
鍔迫り合いをやめ、すぐに回避をしようとするがいくつか当たってしまう。しかしエスは両腕のストライククローを展開すると、セシリアとマドカに向けて腕を伸ばした。
「「っ!!」」
2人はほぼ同時に反応し、マドカは素早く回避したがセシリアはシールドで防いだ。これを見たエスは何かに感付き、セシリアの方のストライククローからクロービーム砲を連射した。
「この! しつこいですわ!」
ドラグーンを収納したセシリアは回避行動を取る。ここでエスは確信し、マスクの下でニヤリと笑う。
「食らえ!」
「お返しですわよ!」
バスターライフルからのビームやレール砲にカリドゥス等が放たれる。エスは反撃しつつ、その時を今か今かと待っていた。
そしてセシリアがドラグーンを再び展開した瞬間―――エスはヴァサーゴの腹部を上下に展開し、背部のラジエータープレートも展開させた。
ラウラ&シャルロット&簪vsソランジュ
「自分からこっちに来るなんてね……手間が省けて良かったよ! シャルロットォォォオオオオオ!!」
言うが早いか、ソランジュはいきなりビームライフルを連射する。が、ラウラ達は難なくそれを回避する。
「いきなりか。しかも狙いが荒すぎる。素人が何故襲撃を?」
「……多分、人数合わせだと思う。でなきゃ参加させる筈がない」
「それとも僕と当たらせて揺さぶり掛けようとしてるのかも。まあ確かに、また顔を合わせなきゃならないのかってウンザリしてたけどさ。だからトドメは僕に譲ってよ」
攻撃を余裕で避けながら3人は言い合う。機体性能の差は置いておくとして、パイロットの力量差ではソランジュの方が明らかに下であった。加えて彼女は精神的にかなり荒々しくなっており、まともに狙いをつけられる訳はなかった。
「了解した。なら初撃は私と簪か」
「……任せて」
ビームサブマシンガンとタクティカルアームズⅡ(ソードフォーム)を構えたラウラと簪が前に出る。
IS学園で始まった戦いは、激しさを増していく。
エスとオーのキャラクターは、とあるガンダムの某兄弟を意識しています。機体の時点で、誰もがわかるとは思いますが……。