ISG~インフィニット・ストラトス・ガンダム~ 作:レイブラスト
「ミサイルって、映画に出てくるミサイルだよな? それが、日本に……!?」
「そんな! ど、どうすれば!?」
「クッ、こんなことになるなんて!」
無数のミサイルが日本に向かっているという事実に一夏と箒ちゃんがパニックになる。2人とは違う理由でだが、俺も内心混乱していた。束さんでないとすれば、一体誰が何の為にハッキングをしたのか。……チッ! 原作の知識が役立つどころか、これじゃあ息してないも同然じゃないか!!
「みんな、落ち着いて」
その時、俺達3人をしゃがんだ由唯さんがふわっと抱き締めてくれた。
「大丈夫。省吾と千冬が、ミサイルなんて落としてくれるから」
「ほ…本当……?」
「ええ。だから安心して(どうか、2人とも無事で……)」
省吾SIDE
「おらぁ! どうだこの野郎!!」
「油断するな! ミサイルはまだ残っている!!」
接近してくる大量のミサイル(その数二千!!)をおよそ半分程にまで撃墜することに成功したが、ミサイルは絶え間なく向かって来ている。
(クソッ、マガジンの数も少ないってのによ!)
ビームガンの弾は数に限りがある。予備のマガジンがいくつかあるとはいえ、今はそのほとんどを使い切ってしまっていた。
(そういやぁ、千冬はどんな戦い方して……うおっ!?)
Oガンダムが居る方向を見て俺はびっくり仰天した。何故なら、Oガンダムはビームガンを連射しミサイルを素早く確実に撃墜していったからだ。千冬が射撃苦手だったのを考えると、ISの性能が凄いんだろう。
そうこうしている内に、ミサイルは全て撃墜することができた。
「ようやく終わったな。やれやれ、私は射撃が下手なのだが……
「ちぇっ、羨ましいぜ。こっちはほとんど手動だってのに」
このガーランドはISよりいくらか劣っている部分がある。オートロックシステムや緊急回避システムのオミット、更にバリアシステムの有無が主なものだ。それでも機体性能は高い方だけどな。
「まあそう言うな。……? 何か集まって来ていないか?」
千冬が周りを見渡すと、空母やらF-22やら軍隊がわんさかと集まって来ていた。
「そりゃあアレだ。ミサイル二千発飛んで来て、全部俺達で撃墜したってんなら、警戒されるだろうさ」
問題はこの後どうするかだ。千冬は束と連絡を取り合ってるようだが……。
「省吾、新たな指示が出た」
「何だ?」
「可能な限り死者を出さずに敵戦力を無力化、脱出せよと」
「へぇ。アイツにしちゃあ、ちったぁまともなこと言うじゃんか!!」
瞬間、俺とプロトガーランド、千冬とOガンダムは軍に向かって突撃した。
彰人SIDE
Oガンダムとプロトガーランドが全ミサイルを撃墜、更にその後軍を鎮圧し帰還してからそれなりに日が経った。箒ちゃんと俺の家にはマスコミやら何やらが大量に押し寄せ、一時は外出も困難だったが今はどうにかなっている。ただ、束さんと省吾兄ちゃんが「しばらく家を開ける」と言って出て行き、まだ帰って来てない。俺も去ることながら、一夏と千冬さん、由唯さんと箒ちゃんもみんな心配していた。
そして今日、2人はやっと帰って来た。重苦しい表情と共に。何か嫌な予感がした俺は、みんなを俺の家に集めた。やがて束さんが絞り出すように言った。
「私……もう、みんなと一緒に……居られない……」
場の空気が凍った。俺は心の中でそうだろうなと思ってはいたが、かなりショックだった。みんなも我に返ると、束さんに「どうして」と聞いた。それには省吾兄ちゃんがこう答えた。
「政府の連中がよ、束を監視下に置くって決めやがったんだ。ISとガーランドは現在の兵器を超越する性能を持っているからってさ」
「何で、どうして……っ、省吾はどうなるの?」
「お咎めなしだってさ。ガーランドを開発したと言っても実質作ったのは束だし、ミサイルを撃墜した数もOガンダムのが上だから、俺なんか眼中にもないんだろ。ったく、ふざけてやがる」
「バカな。何故、何故こんなことに……!」
「そんな…嫌だ! 姉さんがどこかに行ってしまうなんて!」
箒ちゃんが離れたくないと束さんにしがみつく。
「ごめんね、箒ちゃん。迷惑かけてばかりの、ダメなお姉ちゃんで……でも、ここに私が居るともっと迷惑を掛けることになっちゃう」
「ど、どうして?」
「開発者は命と家族を狙われる可能性が高い、ということか……」
極めて冷静に、だけど怒りを隠しきれない様子で千冬さんが言った。
「千冬姉さん、何とかできないの!? 束さんが作ったISは日本を救ったのに!」
「一夏」
「何だよ彰人!?」
「もう無理だ……政府の命令なんだ。俺達にどうこうできる話じゃないことは、わかるだろ……」
「……!!」
正直、悲しいどころの話じゃない。俺は心の片隅に、もしかしたら原作での出来事が回避されて平和に暮らせるんじゃないかと思っていた。けど、それは砕かれた。そして束さんと、姉のように思っていた人と離れ離れになる。それがどんなに絶望的なことか……!
俺の心境が伝わったのか、一夏は何も言わなくなった。箒ちゃんも、束さんから離れた。
「じゃあねみんな。私、そろそろ行かなきゃ。政府の奴らが待ってる」
「束…せめて、送ろうか?」
「ううん。あ、でも最後に1つだけ言わせてほしいな」
省吾兄ちゃんが「何だ?」と言う前に、束さんは省吾兄ちゃんに近づいて―――
「っ、あ……」
―――キスをした。
「……私、しょーくんのことが、大好き。小さい時から、ずっと」
「お前……」
「グスッ…それじゃあみんな、お元気で! いつ会えるかわからないけど……さようなら~!!」
そう言うと束さんは車に乗り込み、行ってしまった。
「束のバカ……先越した直後に居なくなるなんて、やり返せなくなるじゃない……!」
「アイツはいつもそうだ。自分勝手でお調子者で、でも…明るくて……!!」
「姉さん…うぅ……! 姉さあああああああああああああん!!」
由唯さん、千冬さん、箒ちゃんは泣き出してしまった。
「……彰人。お前、泣いてるのか?」
「そう言う一夏だって、泣いてるじゃんか……」
「おいおい、男ならこういう時泣くんじゃねぇよ。こういう時は、明るく……行かねぇと……!」
俺や一夏、兄ちゃんも泣き出し、しばらくは涙が止まらなくなった。……原作通りと割り切ることなんて、俺には無理だったよ……神様……。
希望は砕かれ、家族は離別する。破壊されし明日への秒読みを刻みながら。