ISG~インフィニット・ストラトス・ガンダム~ 作:レイブラスト
IS学園、地下ルーム
千冬SIDE
「ヴァサーゴにアシュタロンか……操縦者の出自も考えると、皮肉としか思えんな」
私はモニターに映っている二機のISを見ながら呟く。聞けば、基になったガンダムのパイロットはフロスト兄弟と言い、自分達を紛い物と見なした世界へ復讐する為に暗躍したと言う。これを皮肉と言わずに、何と言えばいいのだろうか……。
「そうだね……全然笑えないジョーク出されてる気分だよ」
そこへ学園祭が終わってからずっとここに居る親友がやってきた。
「遅かったな。それでカオスの方はどうだった?」
「見事なまでに破壊されてたよ。コアも部品も、みんな粉々。さすがの私も修復は無理だね」
「……証拠隠滅の為、だろうな」
「うん」
カオスガンダムの残骸を見ながら、悲しそうに束は俯いた。アイツにとって、全てのISは娘同然の存在だ。それを壊されたんだ、悲しくない訳がない。
「それよりちーちゃん、今日いっくんの誕生パーティがあるんだってね。ちゃんと行ける?」
「問題ない。だが…お前も来れば良かったのに」
「無理無理。束さんが行ったら場が白けちゃうって」
とは言っているが、本当は行きたいに違いないのを我慢しているんだろう。私だけ行くのは気が引けるが、そうなったら束は落ち込んでしまう。……まあ、束の分も祝うと思えば、いくらか気も楽になるが。
夜、織斑家
彰人SIDE
皆さんこんばんは、矢作彰人だ。今夜は一夏の家でとあるパーティーをやっている。それは……。
「ようし、やるぞ! せーのっ……」
『『『一夏(織斑君)(おりむー)(兄さん)! お誕生日、おめでとう~!!』』』
パンパンッ! パンッ!
「ありがとう、みんな! とても嬉しいぜ!」
一夏の誕生パーティーだ。メンバーは俺や一夏は勿論、千冬さん、箒ちゃん、鈴ちゃん、セシリア、簪、シャル、ラウラ、刀奈、マドカちゃん、のほほんさん、虚さん、弾、数馬だ。パーティーはリビングでやってるけど、人数が人数だけにちょっと部屋が狭く感じる。
「ところでセシリア。今日はかなり疲れてたみたいだが、大丈夫か?」
「ご心配なく。この通り元気ですわ」
微笑を浮かべながら、セシリアは言う。どうやら本当に大丈夫のようだ。
「みんな! 昼間は色々大変だったけど、今は思う存分騒いで楽しもうや!! アーユーレディ!?」
『『『イェェェェェェェーイ!!』』』
「近所迷惑にならないようにな」
注意する千冬さんだったが、そうは言いつつとても楽しそうでノリノリなのは明らかだった。さて、今年はいつも以上に騒ぎまくるとしますか。
騒いだことその1、ケーキ
誕生日パーティーはまずこれを食べることから始める(今年のは大勢来るので結構でかいのを買った)。なので切り分けていざ食べようとしたのだが……。
「「「「「彰人(さん)(君)、あ~ん♪」」」」」
「おい待て、一斉に来られても食えんぞ!?」
セシリア達がはい、あーん×5をしてきた。勿論俺の分のケーキで。だけど5人が差し出して来たのを一緒に食うのはさすがに無理がある。
「あ、そっか。じゃあ順番決めなきゃ」
「なら、手っ取り早くジャンケンで決めるか」
と、大きな争いもなく解決してくれるので助かった。一夏も同じ状況か? と思って見てみると……。
「一夏……あ、あ~ん……」
「あむ……」
「今度は私よ。はい、一夏」
「はむっ」
見事なまでに交互に食べさせ合っていた。……ある意味手間がかからなくて羨ましいというか何というか……贅沢な悩みだが。
「はぁ、一夏も彰人も可愛い女の子に囲まれて……」
「僕、初めてリアルでハーレムを見たよ……」
…………この2人の前では、特にな。
「あ、あの、弾さん……」
「ねぇ、カズー……」
「「ん?」」
「「あ、あ~ん……」」
「「っっっ!!??」」
前言撤回。コイツ等もリア充の入り口に立っていた。まあ妬まれなくなるなら、それでいいか。
「やった……!」
「え、簪? ひょっとして一番勝った?」
「……うん。だから、その……あ~ん」
「お、おう」
簪にケーキを食べさせて貰いながら、俺はふと千冬さんの方に視線を向けた。
「青春か。全く、羨ましいよ」
「姉さん、あ~ん」
1人飲み物を飲んでいる千冬さんに、マドカちゃんがみんなが俺や一夏にやってるのと同じことをやる。
「? どうしたマドカ? 何でそれを?」
「これは自分にとって大切な人にやる行為の1つではないのですか? 彼女達の行動からして、そう解釈したんですが……」
「(そういうことか……)いや、間違ってない。少し戸惑っただけだ。どれ……はむ」
微笑ましい光景がそこにはあった。見てて和むな……って見過ぎるのは失礼か。
「次は私だぞ、彰人。あ~ん」
「あむっ」
「…………くっ、これがリア充と言うものなの……!」
促されるままラウラに食べさせて貰っている時に、蘭ちゃんが何やら言っていたが……小さくてよく聞こえなかった。
騒いだことその2、カラオケ(W○i U版)
切っ掛けは弾が「お前W○i U持ってたよな? だったらカラオケできんじゃね?」と言ったことから始まった。俺もそれには賛成だったけど、ちょっと変わったものになってしまった。どう変わってるのかと言うと女子達は歌ってるのを見るだけで、歌うのは俺達男子だけという奴だ。
ちなみに提案したのは例によって刀奈で、「そうすれば彰人君達の歌を、何度も聞けるじゃない」だと。しかも、これに皆は(虚さんとのほほんさん、そして何と千冬さんとマドカちゃんまでも)大賛成してしまい、俺達4人で順番に歌うことになった……喉、大丈夫かな?
「つーか何歌うよ? アニソンと特撮ソングに、その他カッコイイ系の歌?」
「「「それ以外に何があると?」」」
「だと思ったよ……」
カラオケ行く度にそればっか歌ってるからな、俺達。何でそればっかだって? だって俺達、カッコイイの好きなんだもん。
「んじゃ、歌いますか」
「俺オーズな」
「なら俺Vガンダムで」
「僕はガンダムSEEDを」
喉を痛めないように気をつけながら、俺達4人はローテーションしながら歌い始めた。
そして歌い終えた後、みんなを見やる。さすがに今回はトリップしてないみたいだ……と思っていたら。
「やっぱり、カッコイイです……弾さん……」
「カズーの歌……ハートにズ~ンって響いて来ちゃった」
虚さんとのほほんさんがしてました。今度はそっちか……あ、刀奈と簪がそれぞれ耳打ちしてる。んでもって2人が真っ赤になった。ははーん、さては「そんなに好きなら告白すればいいのに」とか言ったな。俺としても同感だが、どうするかな……。
騒いだことその3、変身遊び(!?)
「本当にやらないといけないのかよ……」
期待の目線を向ける女子達を見つめながら、天を仰ぐ。偶然にものほほんさんが隅っこに置いてあったオーガドライバーを見つけたことから発展したことだが、こんなことなら奥の方に仕舞うように言っとくべきだった。箒ちゃんと鈴ちゃんも久々に見たいって言うし、簪に至っては目を輝かせてるし。
「心配すんな。弾と数馬も居るんだ、恥ずかしさは減る筈だ」
「いや恥ずかしいとかじゃなくてだな。何かこう、やりにくいというか」
「確かに。子供達に見られるのとは、また違うもんな」
ため息混じりに呟いた言葉に、弾が同意する。中学時代に近所の子供達の前でヒーローショーの真似ごとをしたが、あの時感じた視線と今回の視線はまるっきり違うのがわかる。上手く言えんが。
「ま、やるしかないっしょ。幸いバカにされることはないし」
「そんなことする奴らじゃないからな」
言いつつバックミュージックとしてEGO ~eyes glazing overを流しながら、俺はキバットバット二世を、一夏はリュウガのカードデッキを、弾はダークカブトゼクターを、数馬はオーガフォンを持つ。そして俺は二世を腕に噛ませるアクションをし、数馬は変身コードを入力する。
『ガブリ!』 『Starting By!』
「「「「変身!」」」」
ほぼ同時に『変身』を叫ぶと、それぞれのアイテムをベルトにセットしていく(弾のみ、変身と同時にゼクターホーンを動かした)。
『変身!』 『HENSHIN! CHANGE BEETLE!』 『Complete!』
効果音が鳴り響き、やがて曲も終わって静かになる。……この静まり返った時の間が嫌なんだよ、俺は(前世の経験による)。でも何故か、みんな凄いと言いたげな目線を向けてきていた。「何で?」と聞いてみると「本気で変身できるような感じがした」とのことだった。まあ、その為の変身ベルトだからな。やる以上は本気でやらんと(気迫的な意味で)。ちなみに箒ちゃんと鈴ちゃんは「久しぶりだけどあの頃を思い出した」と、簪は完全に感動しきっていた。
騒いだことその4、プレゼント
テンションが上がりまくった時、ついにパーティーのメインであるプレゼント渡しが行われた。誰がどんなプレゼントを渡したのかは順番に説明しよう。
まずセシリアが渡したのは高級ティーセットに同じく高級な茶葉だ。正直羨ましいと思った。
続いてシャルがブランド物の腕時計を、ラウラが愛用している軍用ナイフを渡した。腕時計はとても綺麗で多機能と目が行ったが、ラウラのナイフも普通じゃ手に入らないようなものなので驚いた。
弾と数馬はスーパーヒーロージェネレーションのPSV○TA版と攻略本を、蘭ちゃんは手作りのクッキーをプレゼントした。正直スパヒロは俺も欲しいと思ったが、そこはさすがに我慢した。自分で買おう。
刀奈と簪は自分達のISの基になったガンダムアストレイのプラモがプレゼントだった。出来上がったら是非見させて貰うか。
千冬さんとマドカちゃんはTシャツとネックレスを一夏に渡した。ああいうのもありなのか、勉強になった。
そして本命である箒ちゃんと鈴ちゃんからは夫婦茶碗とペアリングを貰っていた。ぶっちゃけこの2人からのプレゼントを貰った時の一夏のテンションが一番高かった気がするが、恋人なんだし当然だろう。
最後は俺が渡す番になる。ここで渡すのは……。
「一夏。前にドライブドライバーが欲しいって言ってたよな?」
「え? ああそうだけ……! まさか!?」
「そのまさかさ! ほら!」
後ろに隠していたDXドライブドライバーを一夏に渡す。
「うおおおおっ!! マジか! スゲー嬉しい! でもいいのか?」
「おう。もうありすぎて困るぐらいだからな。いっそ周りに分けて周りたいよ」
肩をすくめながら俺は言う。少なくなったとは言え、兄ちゃんからライダーベルトは送られてくる。近所の子供達にちょくちょく分けたりしているが、それでも結構あるからな……。
「結構苦労してるんだね、彰人って……あれ? そういえば彰人の誕生日っていつ?」
苦笑していたシャルが尋ねてきた。ああ、俺の誕生日はまだ言ってなかったか。
「12月15日だよ。だからまだまだ先だな」
「そうですわね。ですがそれなら、プレゼントを考える余裕も大分ありますわ」
「そうだな…何にせよ、楽しみにしているよ」
「(カズーの誕生日はいつなんだろ? 今度聞いてみようかな)……あ、ジュース無くなっちゃった」
「じゃあ俺が買ってくるよ。何でもされっぱなしじゃ、悪いもんな」
ぽつりと呟いたのほほんさんに一夏が自ら立ち上がり、欲しい飲み物を聞き出すと財布と買い物袋を持って行った。
一夏SIDE
「よし。これで全部……っと」
頼まれた分のジュースを自販機で買い、袋に入れていく。買い忘れがないことを確認して俺は家に戻ろうとした……だが。
「ん?……っ! お前達は!!」
「先ほどは妹が世話になったな、織斑一夏君。だが安心したまえ、今は休戦だ。戦うつもりはない」
壁にもたれかかって腕を組むエスとその隣にいるオーに出会した。思わず買い物袋を置いて身構えたが、戦うつもりがないとわかると若干の警戒をしつつも構えを解いた。
「じゃあ、何の用でここに来た?」
「何、妹の……マドカのことで礼を言いに来たのだよ」
「マドカの?」
「君のクアンタムバーストが彼女のナノマシンを破壊したんだろ? 何となく察しはつくさ」
「という訳で、一夏君には感謝しているんだ。……ありがとう。組織の呪縛から、マドカを解き放ってくれて」
そう言うとエスとオーは頭を下げた。予想してなかったことに、俺は戸惑ってしまった。
「い、いや、あの時はただ相手の素性を知りたかっただけというか、まあ結果的には助けたことになるから、良かったというか……」
「何であれ、君がマドカを救ってくれたことに変わりはないよ。……さて、用事も済んだことだし帰るとするか、オーよ」
「そうだね、姉さん」
どうやら本当に礼を言う為だけに来たようで2人は帰ろうとする。が、俺は思わず呼び止めていた。
「待ってくれ! どうして2人は、世界を憎む? 廃棄されかけたのが理由か!?」
「……そうでもあるが、一夏君。私達2人が世界を憎むのは、もっと別な理由があるんだ」
振り向きながらエスは険しい顔つきになる。そして周囲を確かめると訥々と話し始めた。
「私達姉妹が織斑千冬のクローンとして生まれたことは既に知っているな? その姉妹達はそれぞれ個性があってな、何が得意で何が苦手とかも様々だった……だが、それを連中は許さなかった」
拳を強く握り締め、エスは怒りを滲ませる。
「私を含めた全ての姉妹が完璧でないことを知るや否や、奴らは私達を殺そうとした! ただ完璧でないという、それだけで!」
「……………………」
「私とオーもだ。私達には本来全ての姉妹に備える筈だった、シンクロニティという姉妹間における一種のネットワークを唯一所持することができた。それも奴らは、どちらかが欠けたら何もできないと、
エスから彼女達が廃棄された理由を聞いて、俺の中に怒りがこみ上げてきた。余りにも信じられなかったんだ。
「それだけ……?」
「何?」
「たったそれだけの理由で、アンタ達姉妹を廃棄したって言うのか……!? 完璧でないのは当たり前だろ! 1人じゃ何もできないのは当たり前だろ! 何か欠点があるから、支え合うことができるから人間なんだ! 完璧じゃないことが、命を奪う理由になるなんて……!!」
正直、頭が狂ってるんじゃないかとさえ思えた。マドカやエスにオー。彼女達は確かにクローンなんだろうけど、今も生きている。自分の主張をこうしてぶつけてきている。なのに廃棄だと!? ふざけてるのか!!
込み上げてくる怒りを必死で抑えながらエスとオーを見ると、彼女達はとても驚いたように俺を見ていた。
「……優しいな、君は。いや…君だけじゃないか。君の親友や仲間達も、優しいんだろうな」
「残念だよ。君みたいな人が、あそこにも居てくれたらよかったのに……」
悲しげに言うと、2人は姿を消した。俺は買い物袋を持ちながらため息をつき、語りかける。
「隠れてないで出て来いよ。居るんだろ?」
「……やれやれ、やっぱ気づかれたか」
電柱の陰から彰人が現れた。気配を感じたのでもしやと思ったんだが。
「嫌な予感がしたんで後を追いかけたんだ。そしたらエス達が話すところを見てな」
「それじゃあ、聞いたのか?」
「ああ。全く腹立たしい話だ……!」
彰人は全身から怒りを滲ませていた。下手をしたらフリットモードになる一歩手前だ。彰人がここまで怒るのも相当だ……。
「っと、それより早く戻らないと。みんな待ってるぜ」
「あ、やべっ!」
我に返った俺達は大急ぎで来た道を戻って行った。その間、俺の中ではある決意が固まっていた。確かにエスとオーの気持ちもわかる。だがだからと言って、それが誰かを傷つけるのは間違っている。だから俺は戦う。俺の大事な人達を守る為に。