ISG~インフィニット・ストラトス・ガンダム~ 作:レイブラスト
83th Episode
アリーナ
皆さんこんにちは、矢作彰人だ。季節は10月の半ばになり、肌寒い風が吹き荒れ刺激してくる。こんな時に俺を含む全校生徒や教師達はアリーナに集まっている。今度は何をしているのかって? それはだな―――
「宣誓! 我ら生徒一同はスポーツマンシップに乗っ取り、正々堂々競い合うことを誓います!!」
―――聞いた通り、体育祭だ。
『『『うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!』』』
女子達が一斉に雄叫びを上げる。……男子より男らしいとか思ったが口にはしない。したところでどうせ聞こえないが。
ちなみに今回勝者への特典は無い。嘘だと言ってよ、刀奈……。
「ここんとこ襲撃続きでテンション下がってるのに、更に半減しちまうよ……何かくれよ」
げんなりしながら言った時、俺の様子に気づいたセシリアが近づいて小声で伝えてきた。
「優勝したら、私がご褒美をあげますわ。ですから……頑張りましょう?」
瞬間、俺の脳裏に稲妻が走り、「RX-0」が脳内再生される。
「ゲームスタートだ……」
油断も容赦も一切しない、デストロイモードの気分で挑ませて貰おうか……!!
第一種目・100メートル走
最初に行われるのは至ってシンプルで、各クラスから2名ずつ選ばれた代表が100メートルを全力で駆け抜けるというものだ。そして一組の代表は俺と一夏。同じクラスだが、奇しくも直接対決の形になる。
「一夏、ちょっと勝負しないか?」
「どっちが先にゴールするかって奴だろ? 勿論、やってやるぜ!」
闘志を漲らせながら言う一夏。提案したこっちも張り合いが出てくるというもんだ。
「位置に着いて! よーい……」
ピストルを真上に構えて言う先生の声に、俺や一夏に他の走者達が構える。
パァン!
「「っらぁぁあああああ!!」」
音が鳴り響くのと同時に一気に走り出す。俺と一夏は男子なのでぶっちぎりで女子を追い抜いて行く。
「ようし! このまま一位をもぎ取ってやる!」
「させるかぁ! トップは俺だ!」
「「ぬぅぅぅうううううううううううううう!!」」
負けるかという気持ちと根性で、俺はついにゴールまで辿り着いた。
「矢作彰人君、12秒52!」
「織斑一夏君、12秒52……って嘘! 同時!?」
「「何ィ!?」」
先生の言葉に驚愕し、それぞれの記録を計測していた先生の元へ行って確認する。
「ほ、本当に同じだ……」
「んなアホな……決着つかずかよ」
がっくりと項垂れながら、一夏と共に一組のテントへと戻る。クラスの女子達に賞賛と驚きを持って迎えられたのは言うまでもなかった。
第二種目・障害物競争
2つ目の種目である障害物競争は、平均台にハードル、跳び箱や網潜りと最後に即席着替えがある。単純に速さが求められる訳でもないし、障害もそう多くないからそんなにきつくはないかな。俺や一夏がやる訳じゃないけど。
「障害物か。基本は軍の訓練と同じだ、行ける!」
「いや軍の方が明らかにキツイでしょ」
「……落ち着いて、普段通りのリズムで」
今回一組からはラウラが、二組からは鈴ちゃんが、四組からは簪が出場している。なので俺と一夏は観戦且つ応援役なんだけど……。
「彰人。俺個人としては鈴を応援したいんだが……」
「言うな。俺だってラウラと簪の両方を応援したいんだ」
よりによって応援したい人が違うクラスに居るという状況が枷になってしまっていた(ラウラは俺達と同じクラスだから、一応応援はできる)。
「……とりあえず、心の中で応援しとこうぜ」
「そうだな……後で何か言われそうで怖いが」
やめてくれ一夏、変なフラグを立てないでくれ。俺も怖くなるから。
「では位置に着いて! よーい……」
パァン!
そうこうしているとピストルの合図で始まり、選手達が一斉に走り出す。先頭はラウラ、鈴ちゃん、簪が並び平均台まで辿り着く。
「ふっ!」
「よっと!」
「……っ!」
ラウラはバランスを全く崩すことなくクリアし、鈴ちゃんと簪も順調にクリアする。この時点でラウラが若干有利になる。
続いてハードルは3人共難なくクリア。そのまま網潜りに挑戦する。
「何の、この程度は!」
ここではラウラが匍匐前進で一気に突破し、差を広げた。毎度思うけど、伊達じゃないな。
そして最後に待ち受ける即席着替えへと向かう。これはちょっと特殊で、選手毎にコース上に設置された試着室へと入り、その中で選手が予め指定したペアに用意されてるコスプレ衣装に着替えさせて貰うというものだ。これが原因で俺と一夏は参加出来なかったようなもんだが、中々面白い試みだと思う。はてさて、どんな衣装を着てくるのやら。
「どうやら私が一番みたいね!」
最初に出てきたのは鈴ちゃん。着ているのは、張五飛の白いチャイナ服だ。
「……
次に出てきた簪が着込んでいるのは、叢雲劾の制服だった。しかもご丁寧に彼のサングラスまでしている。
「しまった! 遅れたか!」
その次に出てきたラウラは、カナード・パルスの服を着ていた。……っておい、ちょっと待て。確かにコスプレだけども、これ各々の持ってる機体に関連するものじゃないか! よく調達したもんだ……。
その後、一位は再び追い抜いたラウラになり、二位が鈴ちゃん、三位が簪だった。
第三種目・ISファイト
さて、この3つ目の種目だが……タイトルからして予想できる方も居ると思うが、あのガンダムファイトをISで再現したトーナメントバトルだ。と言っても完全に再現している訳ではなく、相手が特設されたバトルステージから落下したり、「参った」と言ったり、頭部パーツに甚大なダメージが与えられた場合に決着が着くという形になっている。ちなみにこのISファイトでは公平を期す為に、専用機持ちも含めて全員がM1アストレイに乗る義務が与えられている(カラーリングを変えてあるので見分けはつくらしい)。
『いよいよ始まりました、第三種目ISファイト! 司会は私、黛薫子と!』
『サラ・ウェルキンがお送りします!』
お、今回は司会があるのか。気合入ってるな。心なしか2人ともノリノリだし。でも正直驚いたな……黛さんはともかく、ウェルキンさんはイギリスの代表候補生でセシリアに操縦技術を教える程優秀な人って聞いてたから、てっきり生真面目な人なのかなって思ってたけど……そんなことはなかったな。
『では一回戦の選手はバトルステージに移動して下さい』
すると通常カラーのM1アストレイと赤い部分がイエローになったM1アストレイがステージに上がり、対峙する。
『最初の対決は、こちら!
ディスプレーに通常カラーのM1アストレイがアップで表示され、一組から歓声が上がる。
『そして! お菓子好きの今時女子! 一年三組、ティナ・ハミルトン!!』
イエローカラーのM1アストレイが表示され、今度は一年三組から歓声が上がる。
『紹介も終わったところで……それでは! ISファイト、レディィィ……ゴー!!』
いやその掛け声もやるんですか、黛さん!!
箒SIDE
『ISファイト、レディィィ……ゴー!!』
「はぁああああああああああ!!」
「っ!」
試合開始の合図と共に、ハミルトンがビームサーベルを構えて突っ込んで来る。それを私は受け流し、拳を叩き込んでいく。この競技は基本的に徒手空拳とビームサーベルとバルカンしか使えないので、対艦刀を主武装としていた私には少し不利だ。
「だがそんな状況下でも相手を倒すのが、真の一流というものだ!」
「きゃあっ!?」
相手の腹部にパンチを当てて怯ませると、右手で頭部をすぐに掴んで地面に倒す。
「剣の無い私なら倒せると睨んでいたか? 確かにそう思うかもしれんが、生憎剣が無い時の対処法も考えていてな……!!」
アイアンクローの応用で手に力を込める。ハミルトンのM1アストレイの頭部が軋み始め、バキッ!という音と共に一部がへこむと火花が散り、ツインアイの光が消えた。
『決まったぁーっ!! ISファイト一回戦勝者は、篠ノ之選手!! 決まり手は頭部破損!!』
拍手と歓声が響き渡る中、私は倒れたハミルトンに肩を貸すと客席に居る一夏を見た。
(一夏、見てくれたか? この戦い、私は勝ち進んで見せるぞ!!)
IS学園上空・高高度
OutSIDE
「体育祭だってさ。呑気なもんだね、姉さん」
ISを纏ったオーが隣に居るエスに忌々しそうに言った。
「年に一度の大切な行事らしいからな」
「私達は体育祭どころか、学校すら行ってないって言うのにね……」
「言っておくが、癇癪を起こすんじゃないぞ、オーよ。私達はこれまで全ての行事を潰して来たのだから、最後の行事ぐらいは終わるまで見逃してやろう」
「わかってるよ姉さん。ちょっと羨ましかっただけだよ」
釘を刺されながらも、オーは体育祭の様子をハイパーセンサーで羨ましそうに見ていた。
箒SIDE
『さぁて! ISファイトもいよいよ最終決戦! 対決するのは一年一組篠ノ之選手と、三年二組相原選手!!』
バトルステージで私はブルーカラーのM1アストレイと睨み合う。まさか相原先輩が最後の相手とは。
『しかも情報によると、相原選手は篠ノ之選手が所属している剣道部の元部長だそうで、短いながらも互いに剣を交わしたこともあるそうです!!』
解説が言うように、相原先輩は私が部活でお世話になった人だ。正直戦いたくは無いのだが……。
「言っておくけど、私は手加減しないから。貴女も手加減は無しでお願いするわよ?」
「っ、望むところです!!」
『ようし、それじゃあ行ってみよう! ガンダムファイト最終決戦! レディィィ!!』
『『『ゴォォォオオオオオ!!』』』
「はぁああああああああああ!!」
合図と共に最初に相原先輩が右腕で殴りかかってくる。私はなんとかそれを避け、殴り返すが逆に左手で殴られ、更に連撃を食らい一気に端まで追い込まれる。
「これで終わりよ!!」
「くっ……!」
相原先輩が突っ込んで来る。いよいよ私も負けるかと思った、その時―――
「箒ーっ! 負けるなぁぁぁあああああああ!!」
「(っ、一夏!)うおおおおおおおおおおおおお!!」
「何っ!? ぐあっ!!」
一夏の声援で体に活を入れ、相原先輩の攻撃を避けると頭部を掴んで力を込める。が、相原先輩も私の頭部を掴む。
「ここまで来て、負けてたまるかぁぁぁぁああああああああああ!!」
「それは……こっちも同じだぁぁぁぁぁああああああああああああ!!」
互いに全力を出し、頭部を握り締める。やがて同時に頭部が破損し、センサーにノイズが走る。判定は……?
『えー、少々お待ち下さい。…………判定結果が出ました! 勝者、篠ノ之選手! 篠ノ之選手の優勝です!!』
大きな歓声が会場を包み込む。私は頭部マスクを解除し、一夏を見る。一夏は笑顔でサムズアップをしてきてくれた。私も笑顔とサムズアップで一夏に返した。