ISG~インフィニット・ストラトス・ガンダム~ 作:レイブラスト
90th Episode
前回のあらすじ。
ゼロシステムで増幅した負のイメージをGN粒子に乗せて世界中にばらまくという、とんでもないことをやろうとしたプロフェッサー相手に捨て身の自爆を敢行した俺達は目を覚ますとIS学園……それも別の次元のに漂着していた。
あの後俺達はISを解除し、千冬さんに連れられ学園にて事情聴取を受けていた。で、一夏と共に洗いざらい話したんだが……。
「ISと共に普及したというガーランドとやらは私達の世界にはないし、お前達が言う
「まあ…そうでしょうね」
「じゃなきゃ逆に驚きますって」
「……しかし、言われずとも私に礼儀正しく接する一夏とは、私からすると違和感があるな。だからこそ別の世界から来たという確証を得たのだが」
顎に手を当てながら言う千冬さんに、一夏は「え?」と声に出した。
「もしかして、ここでの俺って千冬姉さんを敬ってないんですか?」
「そういう訳ではないのだが……公私が混同していてな。何度注意しても「千冬姉」と呼ぶわ敬語が出ないわ……成長しないのかアイツは…と、すまない。思わず愚痴が零れてしまった」
「い、いえ……」
顔には出してないが、一夏はショックを受けているみたいだ。そりゃ今の自分の元になった人が、別の存在とはいえ自分の姉に愚痴られていたらそうなるだろう。
(というか彰人。お前のその髪、一体どうしたんだ?)
小声で言う一夏は、金髪になった俺の頭を指してくる。
(ここに来る前に束さんが話してくれたんだけど、俺の身体はゼロシステムに対応すべく発動時に変異しているんだそうだ。で、そうなると金髪緑眼になるが、ゼロシステムを使い続けたせいで常時こうなるかもしれないんだと)
(かもしれないって、もう遅いじゃん。てかそれだといつもとどう違うんだ?)
(簡単なゼロシステムと同じことを常にできるらしい。例えば……もうすぐ山田先生がこの部屋に来る)
コンコン、ガチャッ
「失礼します、織斑先生」
扉を開けて入ってきたのは資料を抱えた山田先生だった。
(……な?)
(チートすぎんだろ……)
いや確かにチートだけど、先に起こることが常にわかってしまうのってかなりつまらないと思うぞ。サプライズとか無理だし……ま、へこんでばかり居ても仕方ないが。
「それでどうだった?」
「はい。矢作彰人君と、もう1人の織斑君が装着していたのは…形こそ違いますが、ISです。それと、織斑君の方はコアが2つ内蔵されていた他、コアが『白式』と同じ反応を示しました」
「何っ!? そうか……」
(『びゃくしき』って何だ?)
(本来の織斑一夏の専用機で、真っ白の白と計算式の式で書き表すんだ)
(白式……ああ、白い百式か!!)
(全然違うからな……)
確かにネットで画像検索すると真っ先に出てくるけど。同じ名前でもそっちの方が性能的に安定しているけど。
「ありがとう、山田先生。……さて。今までの話を纏めると、お前達が自力で元の世界に帰ることはほぼ不可能に近い」
「「……はい」」
「そこでだ。帰る手段が見つかるまで、
「「えっ?」」
揃って面食らってしまった。俺の方から頼み込もうとずっと考えてたから、ちょっとびっくりだ。
「大丈夫なんですか?」
「ああ。束の奴にも多少強引にでも手伝わせるから、期待しておいて損はない筈だ」
「そうではなくて、IS学園に居ることです。混乱しませんか? 特に、織斑一夏と同じ顔や背格好、名前を持つ男が現れたら」
最大の疑問を一夏が言い放つと、千冬さんは「それなら問題ない」と言って続けた。
「お前達のことは真実を話すつもりだ。下手に隠すよりも、その方が場を収めやすいからな。たださすがに『そちら側』の織斑は名前を変えて貰うぞ。呼ぶ時に紛らわしいからな」
「それくらいならOKです」
「では名前は「菅山龍でお願いします」……やけにあっさりだな。まあいいが」
一夏の返答を聞いた千冬さんは頷くと、山田先生に寮の部屋と思われる鍵を渡した。
「私は諸々の手続きを済ませてくる。山田先生は2人を部屋に案内してくれ」
「わかりました」
先導する山田先生に俺達は席を立ってついていく。しばし歩いていると、俺達の部屋の前に着いたがその隣辺りの1025室から何やら騒ぎが聞こえる。
「ん? 何だろう」
「あ、あんまり近寄らない方がいいですよ」
「へ?」
「だって多分、あの中では……」
言いにくそうに山田先生が話そうとした瞬間―――轟音と共に1025室の扉が吹っ飛んだ。
「「うおおおおおおおっ!?」」
突然すぎる出来事に驚きながら、部屋から出る煙の奥を目をこらして見る。大体見当はついてるんだけど……。
「ま、待ってくれみんな! 頼むから話を聞いてくれ!」
「問答無用! その根性を叩き直してくれる!」
「い~ち~か~? 覚悟はできてるんでしょうね?」
「あまり動かないでくださいまし。狙いがずれるので」
「フフ、安心して。痛みは一瞬だから」
「嫁よ、どうやらお仕置きが必要なようだな」
「……み、みんな待って。お願いだから、彼の話も聞いてあげて……!」
腰を抜かして必死の形相で頼み込む『この世界』の一夏に、真剣(!!)を構えた箒ちゃんとISを展開した(!!!)鈴ちゃん、セシリア、シャルや軍用ナイフを持ったラウラがじわりじわりと近づく。後ろで簪が必死に止めようとしている。……うん、これはアレだな。
「「バイオレンス過ぎだろ!!」」
どうやらい…龍も同じことを考えていたようだ。原作で読んでて知ってたけど、あんな感じなの? アレ死人出るよな!? 間違いなく殺しにかかってるよ! そう思っていたら一夏がこちらを二度見して目線が合った。
「ん!!?? ち、ちょっと待て! あれを見ろ!!」
「ふん! そんな古い手を使って、どうせ何も………………え?」
次に鈴ちゃんが見たのを切っ掛けに、次々に視線が向けられる。先ほどまでの殺気が嘘のように消えている……切り替えが早いというか、何というか。
「お、男だと? IS学園には一夏以外の男子生徒はいない筈……」
「しかも片方は、一夏と同じ顔してるよ!?」
「……ど、どうなっているの? 貴方達は一体……」
「説明したいのは山々だけど……なんでこんなことになってるの? 山田先生、何か知ってますか?」
「え!? あ、それはですね。こちらの織斑君は恋愛事に物凄く疎くて、皆さんの気持ちに全く気づかないんですよ。いつしか『唐変木・オブ・唐変木ズ』なんて呼ばれているくらいですし」
訳がわからないといった風に聞く龍に山田先生が答えると、龍は目を見開きそして静かに涙を流した。
「……龍。今の説明でわかったのか?」
「……ああ。わかったが故に、情けなく思えて……」
その気持ちはよくわかる。現に俺も一夏が情けなく見えてきた。
「いや何の話かさっぱりだけど、それよりアンタ達は何なんだ!? 説明してくれ!」
「混乱してるのは理解したから、少し落ち着けって。とりあえず俺達の部屋で話をしようぜ」
ずいっと顔を近づける一夏を制し、俺はこれからしばらくやっかいすることになる部屋へ案内した。
部屋に移動した後、俺達は自分が何者であるか、どういった経緯で『こちら側』に来たのかを幾分噛み砕いて説明した。ちなみに先ほどの騒ぎを聞いて駆けつけた楯無さんも居る。
「平行世界の一夏君か……普通なら信じられないけど、現にこうして目の前に居るんじゃあね……」
「それよりそっちの俺…龍と、彰人って言ったか? 結構凄まじい経緯でこっちに来たんだな」
「差し違える覚悟はあったからな。まさかこうなるとは夢にも思ってなかったよ」
「何にせよ、2人が相当な実力の持ち主だということは私にもわかる」
「うん。戦うことを覚悟してるっていう雰囲気が出てるよね」
そんな雰囲気が出ていたのか? 言われるまで気づかなかったが……まあ覚悟してるのは合ってるが。
「男である俺達がISを動かした時点で、やがて戦いに巻き込まれることは想像してたからな。特に、ブリュンヒルデの弟となると余計にな」
「だからよく体を鍛えたりとかはしたな。いくらISに乗れても、きちんと体が作れてなかったら碌に動かせずに終わっちまうし」
肩をすくめながら言うと、一夏が顔を逸らした。……そういえば、原作の一夏はバイトを切っ掛けに練習をやめたんだっけ。確かに俺達もバイトはしたけど、トレーニングは欠かさなかったな。折角身につけたものを無駄にはしたくないもの。
「……あの。2人の居た世界ではISはガンダムと同じ見た目になってるって言ってたけど、私達の機体はどんな機体になってるの?」
ここで簪が恥ずかしげに尋ねてきた。なるほど、気になるところではあるな。折角だし話しておくのもいいだろう。
「えっと、箒ちゃんのはアストレイレッドフレーム改で、セシリアのがストライクフリーダムで鈴ちゃんのはアルトロン。シャルがアリオスでラウラがハイペリオン、楯無がアストレイゴールドフレーム天ミナで、簪はアストレイブルーフレームセカンドだ」
ざっくり説明すると簪は「おおっ」といった感じで目を丸くしていたが、他のみんなはちんぷんかんぷんのようだ。そこで簪が端末を使って各ガンダムの情報を見せていくと、様々な感想が出てきた。
「日本刀二本に、大剣を使うのか。ううむ、向こうの私が羨ましい」
「ブルーティアーズのように、BT兵器を搭載しているのですね。けどそれ以上に、武装が豊富なのが羨ましいですわ……」
「ドラゴンの意匠が入っているのね。おまけにパイロットも中国人……私が使っても違和感ないわ」
「へぇ~、僕のと同じバランスタイプか。でも可変機構があるのか…いいなぁ」
「機体全てを覆うバリアか。状況によってはAICより使い勝手がいいかもしれん」
「ミラージュコロイドによる不可視化に、エネルギー吸収能力。クリア・パッションとは違った便利さがあるわね」
「……カッコイイ機体で良かった」
皆素直に驚いたり感心したり羨望したりしている。ちなみに隣では一夏が龍のIS、ダブルオークアンタのデータを見て沈んでいた。
「俺の武器はどれも燃費悪い上に、近接武器が大半を占めてるっていうのに……ビットがある上にワープ可能でエネルギー自動回復って、チートすぎんだろ!? 少しはこっちにも分けて欲しいぜ……」
「そんなこと言われてもな……」
「ともかく、今日からここで過ごすことになる。迷惑を掛けるかもしれないけど、これからよろしく」
「……ああ。よろしくな!」
右手を差し出すと、一夏も応じて握手をしてくれる。その上から更に龍が手を乗せる。そして互いに笑みを浮かべると、手を離した。
「あ、ところで一夏。1つ聞いてもいいか?」
「何だ? 俺にわかることなら何でもいいけど」
「じゃあさ……お前って、面と向かって女子に告白されたこととかある? 『好きです』とか『付き合ってください』とか」
小声で耳打ちする。これでどう返ってくるかによって鈍感さを調べたいが……。
「は? ないない! てかそれって、食べ物とか買い物の誘いとかじゃねーの?」
「「……………………は?」」
「あれ告白だったのか? そう考えればいくつかあるが、だからってさすがにあんなに多いの全部な訳ないよ。だってほぼ毎日言われてたし」
「「…………………………………」」
一夏の話を聞いて俺は直感した。コイツはかなりの強敵だと。面と向かって告白されても気づくどころか完全に違う考えをすることが、どれ程厄介なのかこうしているだけで伝わってくる。……俺達、一夏争奪戦に巻き込まれないようにできるかな……?