ISG~インフィニット・ストラトス・ガンダム~   作:レイブラスト

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94th Episode

「ふぅ、何とか無事に終わりましたね……」

 

大方事後処理が終わった時、俺は龍と千冬さんにそう述べた。龍は頷いたが千冬さんは首を横に振って俺達にこう告げた。

 

「まだだ。ハッキングを仕掛けてきた奴のところに行って、一言物申さなければな」

 

「え、場所わかるんですか?」

 

「ハイパーセンサーで特定した。移動していない今がチャンスだ」

 

「でしたら俺達も行きますよ。敵の正体がわからない以上、いくら千冬さんでも1人は危険すぎます」

 

「お願いします、千冬姉さん」

 

「……わかった。他の教職員も後始末に追われているし、お前達に頼むとしよう」

 

申し訳なさそうな顔をしながら、千冬さんは歩き出し俺達もその後に着いて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

臨海公園前カフェ

 

千冬姉さんが入ったのはとあるカフェだった。そこで俺達は飲み物を頼むと、あるテーブルに座っている目当ての人物に近づいた。

 

「失礼、相席させて貰おうか」

 

「………………!」

 

目を閉じたまま座っていた『彼女』はギクリとすると目をゆっくりと開けた。その目は金色の瞳に黒い眼球というものだった。

 

「織斑千冬……それに、貴方達は……?」

 

「俺は平行世界から来た織斑一夏だ。こっちじゃ菅山龍って名乗ってる」

 

「龍のダチの矢作彰人だ。同じく平行世界から来た」

 

俺と龍が名乗ると、彼女は目を見開いて驚いた。

 

「驚くのも無理はないが、まあ座れ。それとお前の分のコーヒーだ。ブラックだが構わないか?」

 

その問いに頷くと、彼女は千冬さんからコーヒーを受け取る。

 

「さて、単刀直入に言おう。……束に伝えておけ。『余計なことはするな』、と」

 

千冬さんは目の前の少女―――『この世界のクロエ・クロニクル』を睨みながら言う。やはり俺の予想は間違ってなかった。原作の束さんは一夏や箒ちゃんの為にならどんなことでもする。今回のことも、一夏に身近な女性を異性として意識させる……たったそれだけの為にクロニクルに引き起こさせたんだ。

 

「…………っ!!」

 

クロニクルから殺気が発せられる。しかしエスやオー、エーといった敵と戦ってきた俺達にとってはこの程度何ともない。

 

「それにしても生体同期型のISとは……束の奴、そこまで開発していたのか」

 

じっとクロニクルの目を見つめながら千冬さんは嘆息する。どうやら彼女はISと融合しているらしい。黒い目がその証拠だとすると、俺達の方のクロニクルも何らかのISと融合している可能性が高い。そんなことを考えていると、周囲の空間が上下左右の無い真っ白なものに変化した。気を抜いたら感覚がわからなくなるな……。

 

「なるほど。電脳世界では相手の精神に干渉し、現実世界では大気成分を変質させることで幻影を見せる能力か……大したものだ」

 

感心した様子で千冬さんが言った時、俺達の首筋にナイフが投げられる。予め予測しておいた俺はキャッチし、龍と千冬さんもキャッチする。そして千冬さんはクロニクルに接近すると、ナイフの切っ先を右目の直前で止めた。

 

「……抉られたいか?」

 

瞬間、周囲の景色が元に戻る。さすがに千冬さんには敵わないと思ったんだな。

 

「それでいい」

 

ナイフを遠ざけると、クロニクルはコーヒーを一口飲んで苦そうに顔を歪めると立ち上がった。

 

「もう行くのか? ラウラに……妹に会わなくていいのか?」

 

俺が問いかけると、クロニクルは首をゆっくり横に振るとこう言った。

 

「妹じゃない……あれはなれなかった私。完成型の『ラウラ・ボーデヴィッヒ』。私はクロエ…クロエ・クロニクルだから」

 

「……………………」

 

会う気はない、という訳か……その場にラウラが居たとはいえ、『向こう側』のクロニクルは会えたことに感激し、互いに姉妹となれた。こっちのクロニクルはそうなりたいと思う気持ちが無い(或いはあっても隠している)と考えるべきか。少し寂しいな……。

 

「そうだ、俺からも束さんに伝えておいてくれ」

 

「……?」

 

立ち去ろうとするクロニクルに龍が呼びかけ、不思議そうに龍を見る。

 

「今回のことって、束さんが私情でやったんだろ? もしそうでなくてもさ……こういうの、良くないと思うんだけどなぁ?って」

 

「………………ッ!!??」

 

おう、久々に草加スマイルをやりやがったな。てことは龍が完全にキレているという証だ。若干ビビリながらもクロニクルは今度こそ立ち去っていく。

 

「やれやれ…………ん?」

 

ため息をついた時、頭にクロニクルが『こちら側』のオータムに攫われるビジョンが見え、同時に俺と龍のISに何らかのメッセージが送られてきた。そこでISを展開すると、何故か束さんが現在居る場所のマップデータが表示された。

 

「こんなところで展開して、アラスカ条約違反だぞ」

 

「それどころじゃありませんよ。かの天才科学者の居場所が掲示されているんですから」

 

「でも俺達2人に表示されたってことは、千冬姉さんは誘われてないってことか……?」

 

「アイツ……ふん」

 

何か言いたげな千冬さんだったが、すぐに顔を逸らした。様子からして俺達を止める気がなくなったようだ。

 

「んじゃ行くか」

 

「追跡だな。ダンボールとかあれば完璧だが」

 

「逆に怪しまれるわそんなん」

 

軽口を叩きながら、俺達はマップを見つつ歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

OutSIDE

 

某地下レストラン

 

「あのさぁ、私ってよく天才天才と周りに言われるけど、それって思考や頭脳だけじゃなくてさ……肉体も細胞レベルでオーバースペックなんだよ」

 

亡国機業(ファントム・タスク)のスコール・ミューゼルは、篠ノ之束とIS開発について会食しつつ交渉していた。断られていた時の為に食事に睡眠薬も入れて。

 

ところが束には睡眠薬が効かず、ISの話も拒否された。そこで先ほどクロエを人質に取ったオータムが新造ISをコア込みで提供するよう脅しを掛けたが、逆に束が驚異的な身体能力を発揮してオータムを圧倒し、クロエを救助して現在に至っていた。

 

「ちーちゃんぐらいだよ、私に生身で挑めるのはさ」

 

「そこを動くな」

 

その場に外で待機していたエムこと織斑マドカが専用IS『サイレント・ゼフィルス』を纏って現れ、束にライフルを突き付けた。

 

(ナイスタイミングよ、エム。これで交渉は……)

 

「ふうん……君、面白い機体に乗ってるね」

 

スコールが安堵した瞬間、束は一瞬でマドカに接近すると指だけを動かしてライフルを『解体』した。

 

「なっ!? バカな……!」

 

更に束はサイレント・ゼフィルスのビットやアーマーまで『解体』し、ヘッドギアを『解体』して素顔が見えたところで手を止めた。

 

「ん? 君は…………」

 

「っ……」

 

「ねぇ君。名前なんて言うの?」

 

突然投げかけられた質問にマドカは答えたれない。だが―――

 

「当ててみよっか? ……織斑、マドカ……でしょ?」

 

「「っ!!??」」

 

「その顔だと当たりみたいだね! えへへ、やった~!」

 

スコールとオータムの驚く顔を見て満足そうにする束はしばし考え込むと、スコールを向いて言った。

 

「私、この子の専用機なら作ってもいいよ」

 

「え……?」

 

「だから、私のところにおいでよ。ねえねえ、この子貰ってもいいでしょ?」

 

「そ、それは困りますが……」

 

マドカは重要な戦力であり切り札でもある。ここで手元から失う訳にはいかない。

 

「え~? もう、ケチだな~。っとそれよりマドっち、どんな専用機がいい? 遠距離型? それとも近距離型? 特殊装備はいる? もしくは単純にパワー勝負?」

 

次々と捲し立てる束に一同は着いていけない。だが……

 

「そうだな……圧倒的火力で殲滅するってのはどうだ?」

 

「或いは一撃離脱戦法で攻める、でもいいんじゃないか?」

 

そこに堂々と意見を述べた者が居た。今し方来たばかりの彰人と龍だ。

 

「来てくれたんだ。束さん嬉しいなぁ~」

 

「よく言うよ。ハッキングから俺達に自分の居場所を教えるまでが一連の作戦だったなんて、ここに来るまで思わなかったぜ」

 

「ありゃ、気づかれちったか~!」

 

「それでどうして俺達を呼んだんだ?」

 

「聞かせてほしいからだよ。君らの世界で起きたことを全てね……ダメかな?」

 

「ダメと言って引き下がる人じゃないだろ、貴女は。まあ話すこと自体に異論はないけど、せめて自己紹介くらいはさせてくれ。他の面々が混乱してる」

 

「それくらいならいいよ」

 

彰人はふぅ、とため息をつくと未だに唖然とした表情で固まっているスコールとマドカ(と起き上がったばかりのオータム)を龍と共に見渡して言った。

 

「俺は矢作彰人。平行世界から来た人間で、IS操縦者だ」

 

「菅山龍だ。平行世界からここに来た『織斑一夏』だが、紛らわしいんでこう名乗っている」

 

「「「なっ……!?」」」

 

驚きのあまり目を見開くスコール達。とても信じられないという表情だが、織斑一夏そっくりの顔の男とIS学園の制服、更に待機状態のISを見てしまっては信じる他なかった。

 

「さて、それじゃ話してくれるかな? 君らの世界では何が存在し、何が起きていたのか」

 

「そうだな……どれから話そうか……」

 

少々悩みながらも、彰人と龍は学園で話した時同様1つずつ話し始めた。自分達の周囲に居る『家族』から『向こう側』での『白騎士事件』と女尊男卑に対する抑止力たるガーランドの存在。ISの根本的なデザインと性能の違い、『向こう側』の束さんの思惑とスコール、オータム、マドカのこと(ただしエスやオーについては伏せておいた)、世界規模で起きた決戦等を。

 

「……ふむふむ。そっちじゃガーランドってのがISと同じく出回ってて、差別が緩和されてるんだね。これは驚きだなぁ」

 

「信じてくれるのか?」

 

「そりゃあ衛星中継して君達のIS見ちゃったし、2人がかりとは言えちーちゃんに勝っちゃうんだもん。そんな人この世界に居る訳ないよ」

 

「なっ……!?」

 

束の言葉にマドカは目を見開いた。織斑千冬が二対一だが、目の前の男達に敗北したのだというのだ。驚いてしまうのも仕方ない。

 

「それと君達を元の世界に返す件だけど、りゅーくんのISを貸してくれると助かるな」

 

「(りゅーくんて、俺か)クアンタを? それで帰れるなら貸すけど、変に弄くり回さないでくれよ?」

 

「まっかせなさーい!」

 

((ちょっと心配だな……))

 

胸を張って言う束に「大丈夫かな?」と思う龍と彰人。それを見ていたマドカ達は自分達が割り込む隙は無いと考え立ち去ろうとした。が、そこに龍が声を掛けた。

 

「待ってくれマドカ。お前、他に姉妹は居ないか?」

 

「姉妹……? 何のことだ? 千冬姉さんのことしか私は知らないぞ?」

 

「いや……ならいいんだ」

 

訝しみながら去るマドカを見て、龍は『こちら側』のマドカの出生が根本的に違うことを感じた。

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