旅団狩りRPG   作:GGアライグマ

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アリとゴンとキルア

 旅団を全員始末したメルエムは、しかしすぐに別の世界に飛ぶことは無かった。

 もとより憑依と違って転生なのだから、死ぬまで別の体に移ることは無いのかもしれない。または、メルエムがまだこの世界でやり残したことがあると感じているから、別の世界に飛ばないのかもしれない。

 おそらく両方ともそうなのだろう。メルエムはそう思った。

 

 それからまず、メルエムはカルトのことを考えた。

 家に帰しても良いのかどうかをだ。

 ゾルディック家にメルエム暗殺の依頼が出ている可能性はそれなりにある。そして、カルトを家に帰せばメルエムはすぐに見つかってしまうだろう。厳密には正体は教えていないが、なんとなくメルエムがアリの王ではないかと疑われ、なんとなくでバラミサイルが送られてくる可能性も無きにしもあらずなのだ。

 いや、おそらくは調査が入り、バラミサイルを使うのはしっかりとした証拠をつかんだ後になるだろうが。

 

「なあカルトちゃん。殺し屋を辞める気は無いのかい?」

 

 だから、メルエムとしてはカルトがキルアのように家出してくれると一番助かるのだ。

 監禁とかも最終手段としてはありだが、10歳前後の女の子にはしたくない。

 

「今のところは、無い」

 

 カルトは表情を変えずに答える。

 メルエムはそんなカルトを見て、ちょっと慌てさせたくなった。

 

「キルアのことは好きか?」

「なっ!?」

 

 突然の話題転換。

 驚き目を見開くカルト。若干頬が赤く染まっているのを、メルエムは見逃さない。

 

「キルアと一緒に家出すればいいじゃないか。それが君にとって一番いいんじゃないか?」

 

 いけると確信したメルエムは攻める。

 また、これは本心でもあった。カルトが望んで殺し屋をしているとは思えなかったし、キルアと一緒にいれば楽しいことがいっぱいあると思った。

 

「兄さんは……違うんだ」

「何が?」

「僕が好きな兄さんは、もっと、かっこよくて」

 

 かみしめるように言うカルトを、メルエムはにやにやしながら眺める。

 これは嘘だ。好きなのをごまかしているに過ぎない。本当はやさしい兄が好きなのだろう。なぜなら、残忍な兄が好きなのなら、イルミに執心しているはずだからだ。と、メルエムは思った。

 

 それから、やや強引にキルアの居場所を聞きだすと、メルエムはカルトを連れて飛び立った。

 

 今回行くメンバーはメルエムとユピーとカルトだ。他はゴンやキルアに顔がキメラアントとバレるため連れて行かない。

 

 一時間ほどで、メルエム達はキルアの下にたどり着いた。場所はキルアの実家の近く、ククルーマウンテンが見渡せる町だ。

 やはり近くにはゴンもいて、仲良く歩いている。

 

 と、メルエムがそんな2人の様子を見ていると、ギリッと歯ぎしりした音が聞こえた。

 カルトちゃんはゴンに対し嫉妬のようなものを感じているのだろうか。もしくは兄を腑抜けにした悪人とでも思っているのだろうか。

 メルエムはそんなことを考えながら、2人の目の前に飛び出すタイミングをうかがっていた。が、特にいいタイミングなど見つかりそうにないので、素直に姿を見せることにした。カルトの手を引いて。

 

「はじめまして。キルアに、ゴンだね」

 

 軽く話かけるメルエム。

 いつもと雰囲気が違うのは、相手を安心させるためだ。

 

「うわっ、なんだよいきなり。つーかカルトいんじゃん。何やってんだよお前」

 

 言ってキルアがカルトに視線を送ると、カルトはプイとそっぽを向いた。

 

「はじめまして。そっちの子は、ゾルディック家の屋敷で会ったよね。キルアの妹さん?」

 

 ゴンは笑顔で丁寧に挨拶する。それを見たカルトは顔をしかめる。

 

「そうだよ。妹のカルト。何か用か?」

「ええっと、用と言うか、この人に無理矢理……」

 

 緊張しているのか、妙によそよそしげに話すカルト。

 話の内容が予定からずれていくと面倒なので、ここでメルエムが割って入る。

 

「いきなりで悪いんだけど、今後カルトと一緒に行動してやってくれないかな。なんでも、家出してこれからは兄のキルアと一緒に過ごしたいらしいから」

「ええっ!? お前まで一緒に来んのかよ」

 

 キルアは困った風にカルトを見る。

 

「いや、これは、ちがっ」

「頼むよお兄さん。かわいい妹のためと思ってさ」

 

 メルエムは何か言おうとするカルトの口を塞ぎ、懇願するように言った。

 

「まあ別にいいけどさ」

 

 キルアが軽く認めてくれたので、メルエムはカルトの口から手を離した。

 うれしいだろうカルトは、しかしそれを表情に出さない。と言うより、それがバレないようにメルエムのことをキッとにらんでいる。

 それが分かるから、メルエムはいっそうにやにやする。

 

「ところで、あんたはなんなの?」

 

 ふと、キルアが尋ねた。もっともな質問である。

 そしてその瞬間、メルエムの雰囲気ががらりと変わった。

 

「うっ!」

 

 緊張感を高めるゴンとキルア。メルエムは品定めするように2人を見る。

 どこまで言おうか、とメルエムは考えている。どこまで言って大丈夫か、また、信用を得るためにはどう言うのが一番いいか。

 

「クラピカの知り合い、と言うべきなのかな」

 

 思わぬ人物の名前が出たことに驚く2人。

 しかし取り乱さず、ゆっくり語るその言葉を、集中して聞いている。

 

「知っているか? 最近幻影旅団が全滅したことを」

「小耳にはさんだことはある。しかし、あれはデマじゃないのか?」

「デマではない。なぜ言いきれるかというと、メンバー全員、俺がこの手で直接、殺したからだ」

「うわっ!」

「くっ!」

 

 「殺したからだ」と言いながらメルエムは手にオーラを集中して見せた。

 そのオーラのすさまじい濃度とまがまがしさに、ゴンとキルアは固まってしまう。

 

「クロロがやられている場面を映像で見た。あそこに写っていたのはお前だったってわけか」

 

 しばらくして、冷静になったキルアが話しかけた。

 

「そうだ」

「クラピカと知り合いってことは、クラピカに旅団退治を依頼されたの?」

「違う」

 

 心配そうに尋ねるゴンにメルエムはあっさりと返す。

 それを聞いたゴンはホッと一息つく。

 

「じゃあなんで?」

「俺自身が幻影旅団に恨みがあったからだ」

「どんな?」

 

 と、予想外にゴンは直接的に尋ねて来た。メルエムもここまで遠慮無しに聞いてくるとは思わなかった。

 しかし、語るのも場合によってはありだ。

 メルエムはジッと2人を見る。

 

「家族を殺された」

 

 ポツリと語るメルエム。

 ゴンはハッと息を飲み、申し訳なさそうな顔になった。キルアはつまらなさそうだ。理由としてはありきたりで、おもしろみが無いのだろう。

 一見メルエムは意味も無く過去を吐露したように見えるが、本人の持った印象は違っていた。この、申し訳なさそうなゴンを見て、『こいつは信用できる』と思った。『彼が味方にいてくれればとても頼もしい』とも。

 

「俺のこの強大な力は、多くの敵を呼び込む」

 

 だから、メルエムはゴンにお願いすることにした。

 

「秘密にしてほしい。俺のことを。ネテロ会長や、その他上層部に。ゾルディック家の殺し屋たちにも」

「敵って?」

「ただの臆病者さ。権力にしがみついているだけとも言える。とにかく、俺のような強すぎる存在を認めることができない、そういう連中がいるんだ」

「あんたなら返り討ちにできるんじゃないの?」

「俺一人なら、孤独に生きるならそれで問題ない。だが、俺には守るべき人たちがいる。全ての敵から、そいつらを守り切れるとは思えない」

 

 王になどならず、田舎でひっそり暮らすならば殺される心配はないだろう。

 しかしメルエムは、女王以下キメラアントの望み通り、全世界を治めたいと思うようになっていた。そうなるとネテロのような人間に特攻をかけられる可能性はかなり高くなる。

 

「分かったよ。理由はよく分からないけれど、秘密にするよ」

 

 よし、と思ったメルエムはにやりと笑う。やはりゴンに頼んで正解だった。

 おそらくキルアもゴンに倣い秘密にしてくれるだろう。それに倣ってカルトも。

 それに、もしネテロにバレたとしても、ゴンが敵対を止めてくれる可能性も出てくる。あの頑固なネテロも、ゴンなら止められる気がする。

 

「ねえ。秘密にするのはいいけどさ。代わりに何か手伝ってくれたりはしないの?」

 

 ふと、キルアが話しかけた。このしたたかさにはメルエムも感心した。

 

「ちょっとキルア」

「もちろんかまわないぞ。俺にできる範囲でなら」

 

 ゴンは諌めようとしたが、メルエムはむしろ乗り気だった。ここで信用を得て、一気に仲間になっておこうと思ったのだ。

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