旅団狩りRPG   作:GGアライグマ

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魔人に憑依

 次に男が目を覚ました時、そこは先の漫画家の記憶にある創作の世界だった。

 

「お、おまえが……魔人ブウ……なのか?」

 

 目の前にいる、男かそもそも性別があるのか分からない生き物の名前は確かバビディだったはず。近くにはダーブラと孫悟飯と界王神もいる。ならば、俺は魔人ブウに憑依したということか。

 

 男の予想通り、男はドラゴーンボール最強の敵、魔人ブウ(デブ)に憑依していた。

 

 しかも今誕生したばかりである。ならば、まだブウによる悲劇は起こっておらず、ここで男が破壊活動をやめれば魔人ブウ編はそれで終わる。

 

「さようなら」

 

 ブウのその言葉と共に目にも止まらない速さでこぶしが振るわれ、バビディの顔が吹き飛んだ。

 

「なっ」

「あいつ、バビディを」

 

 驚く一同。その中でもダーブラの反応は異質だ。バビディを殺された怒りがバビディに操られていた怒りへと変化して行っている。

 

「チョコになれーーー!!!」

「ん?」

 

 だが、ブウとしてはやることに変わりはない。危険因子のダーブラには死んでもらうに限る。

 

「ダーブラが……一瞬でチョコに」

「あいつ、味方をどんどん」

 

 悟飯と界王神の会話を無視してダーブラチョコを一口で丸のみする魔人ブウ。口いっぱいに入れて、というより入りきらない分は口をゴムのように伸ばしてでも押し込んで食べている。その様はこの場の緊張感にふさわしくない奇天烈なものだ。

 

「ゲプッ。ふー。食った食った」

 

 その言葉と共に悟飯の方を向く魔人ブウ。

 悟飯と界王神は戦いに備え構える。

 

「おい、俺は戦う気も無いし破壊する気も無いぞ。楽にすればいい」

 

 予想外の言葉に場は静まりかえる。

 悟飯も界王神もじっと魔人ブウを見据えたまま動かない。

 

「信じられないか。まあそれもしょうがないか。いやでも、信じてくれないと困るんだよなあ」

 

 言って戦う気は無いと示すかのように、今度はあぐらをかいて座り込むブウ。

 

「界王神様。どうしましょう。あいつあんなこと言ってますよ」

「嘘の可能性が高いです。油断してはいけませんよ」

「でも、あいつからは邪気を感じません。僕には嘘だとは……。ためしに会話をしてみましょう」

「……そうですね。ただ、油断しないようにお願いしますよ」

「はい」

 

 やや焦りながらこそこそしゃべっていた二人は話が終わると魔人ブウの方を向き、キッと顔を険しくさせる。

 

「やい! 魔人ブウ! お前が言っていたことは本当なのか?」

「ああ、本当だ」

「それをどうやって証明する?」

 

 証明。そう言われても困るだろう。できることは特にない。

 

「ダーブラとバビディを殺したのは証拠にならないか? それでダメなら地球で真面目に働いているところを見てもらうとか」

 

 苦し紛れに発した言葉だが、案外効果はあったようだ。悟飯の表情がスッとゆるむ。

 

「界王神様、やっぱりこのブウからは敵意を感じません。ここはあいつの言う通りにさせてみてはどうでしょうか」

「しかし……」

「どの道戦っても勝ち目はないのでしょう? ならば、あいつの言っている言葉が真実だという可能性にかけた方が良いのではないですか?」

「……そうですね。仕方がありません。今回はやつを信じましょう」

 

 その言葉と共に界王神の表情もだんだんほぐれていく。

 

「やっと信じる気になったみたいだな」

「ああ、疑って悪かったね」

「監視は付けさせてもらいますよ」

 

 キッとブウをにらんでそう言う界王神に、悟飯は苦笑する。

 しかし、何かに気付いたらしく、その苦笑もすぐに一転、慌てた顔になる。

 

「か、界王神様。その監視役って」

「はい。悟飯さん以外には務まらないでしょうね」

「そんな~」

 

 

 その後、ベジータや悟空にも事情を説明して、特に戦闘にもならず魔人ブウ編は幕を閉じた。

 

 

 そして半年後。

 

「ブウも悟飯ちゃんも気を付けて行くだよ」

「はい。行ってきます」

「世話になった。ありがとう」

「帰って来ないの?」

「いや、用事が済んだらまたこっちに来ると思う。俺を監視しないと悟飯が怒られる」

「ごめんよ。僕は大丈夫だと思ってるんだけどね」

「気にしなくていい」

 

 チチと悟天に見送られるブウと悟飯。外は昼だというのに暗く、巨大な龍が彼等の頭上にたたずんでいる。

 

「じゃあ神龍。俺の魂が元いた世界へ、旅団という悪の下へ、俺と悟飯を運んでくれ」

「承知した」

 

 その言葉と共に消え去る二人。去り際、ブウはこれから起こることを思い黒い笑みで顔を歪ませていたのだが、本人を除きそれに気付いたものはいなかった。

 神龍は残り2つの願いを叶えずに姿を引っ込め、後には7つの球が残される。

 

 

「さあ来たぞ。俺の元いたハンターの世界だ」

「へー、本当に僕らのいる地球にそっくりだ」

 

 空中で静止し話込む2人。それは念という異能を知る彼らの目にも異様に写っただろう。

 

「放出系か。オーラの扱いがうまいな」

「それに、かなり鍛えられてるな。どっちとも」

「片方は魔獣か? まあ、何にせよ」

「俺達になんの用だ」

 

 場所はどこかの工場跡地。

 その廃れた空き地に、旅団員メンバー勢ぞろいである。

 

「ヒソカがいるってことは、まだヨークシン前か。それともここがヨークシンかな」

「何ごちゃごちゃ言ってんだ。俺の質問に答えやがれ。俺達に何の用だつってんだよ」

 

 その声に、宙に浮かぶ二人もようやく会話を止めて、旅団をキッとにらむ。

 

「お前達を捕まえる。命が惜しくば自首しろ」

 

 悟飯が真剣な顔になってそう言う。しかし、旅団員は皆、悟飯のその態度に逆に乗り気になる。

 

「へっ。話がはええじゃねえか。そういうのは歓迎するぜ。おい! 俺にやらせろ! お前達は手え出すんじゃねえぞ!」

 

 一際大きい男がそう言ってしゃしゃり出てくる。

 

「おいウボォー。独り占めしてんじゃねえよ。片方は俺のだ」

「というかお前あいつらの高さまで飛んでなおかつ攻撃当てられるのか?」

 

 その声を聞いて固まる大男。しばらくの静止の後、再び動き出す。

 

「やいお前ら。ここまで下りてきて戦え」

 

 場に男の声が響く。

 

「ククク。それで降りてくるようなバカはいないネ」

「私の糸か、フランクリンのマシンガンで落とした方がいいんじゃないの?」

「やい! お前達うるせえぞ!」

 

 やや怒りを含ませそう言う大男の願いが通じたのか、空に浮かぶ二人の男は徐々に降下を始めた。

 

「へっへっへ。分かってるじゃねえか」

「ははは。相手もウボォーと同レベルの馬鹿だったみたいネ」

「フェイタンおめえ後で覚えてろよ」

「ハハハ、ウボォーの馬鹿さを覚えておくヨ」

「ああん!」

「ちょっとあんた達、目の前の相手に集中しな。思ったよりずっとできそうだよ。どっちも」

 

 勝気そうな女にそう言われて蜘蛛二人も冷静になる。

 そして、今降りて来た目の前の相手二人をジッと見る。

 

 その時、旅団員全員が不思議な感覚になった。

 相対しているのに、相対している気がしない。戦っている気がしない。動きが全く読めない。敵意すら感じない。

 

「へっ。確かにやばそうなやつらだな。だが、だからこそやりがいがあるってもんよ」

「待って、ウボォー」

 

 女の制止を待たず、大男が一人突っ込む。

 狙いはブウだ。

 

 一瞬。ウボォーの攻撃が当たるかと思われた瞬間、ビル一つ程の爆発が起きたかという爆音と共に、ウボォーの上半身が消し飛んだ。

 

「は?」

 

 何が起こったのか、旅団員は誰一人理解できない。

 残されたのはウボォーの下半身のみ。上半身と切り離された面は焼け焦げており、血はほとんど流れていない。

 

「こうなりたくなかったら自首するんだな」

 

 険しい表情でそう吐き捨てる悟飯。しかし、これが逆に火に油を注ぐ形になってしまう。と言ってもその火は悟飯やブウにとっては線香の火にも劣る微弱なものだが。

 

「野郎! ウボォーに何しやがった」

「何らかの念能力だろうね」

「許せねえ」

「殺しちゃだめだよ。ウボォーをどうしたのか吐いてもらうから」

 

 いきり立つ蜘蛛達はしかし、2人の実力に気付かない。とは言え、ブウも悟飯も気(この世界ではオーラ)を極限まで抑えているため、この時点で2人の実力を知るのは至難の業だが。

 

「あああああああ!!!!!!」

 

 しかし、蜘蛛が二人に襲いかかろうとした瞬間、ブウは苦しそうな雄叫びをあげると共に己の力を解放した。

 

「は?」

「ウソ……」

 

 蜘蛛は今目の前で起こっていることが信じられない。それもそのはず、目の前のブウのオーラは目に見える範囲いっぱいに広がっているのだから。

 ただ広げるだけなら星を丸ごと多いつくせるようなオーラの量である。それが爆発すれば、この星ごと木端微塵になるような、そんなとんでもないものだ。

 皆そのオーラに圧倒され、身動きできない。最強を自負している男など興奮のあまり失禁している。

 

「ブウ、落ち着くんだ」

 

 目の前にいる旅団に対するブウの黒い感情はおさまりそうにない。

 悟飯の制止も無視してなおブウのオーラは跳ね上がり、まがまがしくなっていく。

 地面はそのオーラに呼応するように揺れ、空も大雨に稲妻を伴って荒れる。

 そして……

 

「がーーーーー!!!!!」

 

 雄叫びと共にブウの頭から煙のようなものが飛び出す。

 ブウはその煙をにらみ、皆の視線も自然とそれに集まる。

 煙は不自然な流れで一か所に集まって行き、そうして人の形になっていく。

 

「来たか。悪の魔人ブウ」

 

 悟飯はここへ来て一番険しい表情になっている。その悟飯の言葉通り、そこにはガリガリに痩せこけた人相の悪い魔人ブウがいた。

 悟飯が今回付いてきたのは、このガリガリの魔人ブウが暴れないかどうか監視して、危険なようなら排除するためだ。

 

「ああ、やっぱりこっちが俺なわけか」

 

 しかし、その懸念に反して落ち着いた声で話す痩せたブウ。

 やはりという言葉通り、これはある程度予想していたことだった。元が死者の念が憑依した存在だからだ。怨念のようなものであるし、イメージとしては悪だろう。

 

「そっちが君ってことは大丈夫なのかい?」

「ああ。問題ない。俺は旅団以外は壊す気はない」

 

 その声にホッと一息つく悟飯。これで彼のここでの役目は終わったと言える。

 

「君たち、これが最後のチャンスだ。死にたくなければ自首するんだ」

 

 一転、固まってしまった蜘蛛に助言を送る悟飯。

 しかし、誰一人その助言に耳を貸すものはいなかった。

 

「誰が自首なんかするかよ」

「どんなトリックを使ったかはしんねえが、あいつがウボォーに何かをしたのは確かだ。許せねえ」

「きっととんでもない制約をかけているはずよ。それが見極められれば」

「の前にさっきみたいなのはもう二度と使えないでしょ。はったりよきっと」

「というよりそういうはったりを見せる能力だろうな」

「団長の言う通りネ」

 

 ブウの途方も無い実力を信じられない蜘蛛達は、ブウは脅しに長けた念能力者だろうとあたりをつけ、逆に戦意を高めていく。

 そして、彼等が戦闘態勢に入ったその瞬間……

 

「残念だったな」

 

 その声と共にブウが消えた。

 のだが、0.1秒も経たない内に、何事もないかのようにブウはその場に戻っていた。

 

 何をやったんだ?

 

 その言葉が旅団員の脳裏によぎる。実は何もしていないんじゃと思いかけたその時、旅団達は激しい痛みに襲われた。

 

「あああああーーーーー!!!!!」

 

 足が、手が、何一つ残っていない。

 旅団員全員がその手足をもぎ取られた状態で、空中に静止していた。

 その切断面はウボォーと同じように焦げており、血はほとんど流れていない。

 

 絶叫のさ中、地面に落ちていくダルマになった蜘蛛達。

 

「はっはっはっはっはっはっはっは」

 

 蜘蛛の苦しむ声を聞きながら、痩せたブウは愉悦に顔をゆがませる。

 ブウは一しきり笑ってから、手足の無い蜘蛛達をボールの如く蹴って一か所に集めると、自分の腕を引きちぎって操り、長い縄のように伸ばして彼らをぐるぐる巻きにする。

 

「じゃあ予定通り、こいつらを一度クラピカに見せに行くよ。君も来るかい?」

「いや、遠慮しておくよ」

 

 痩せたブウはそう言うとクラピカを探しに旅立った。

 

「あの、俺はどうすればいいの?」

「ああゴメン。4か月は待っていて欲しいんだ。ドラゴンボールが使えるようになるまでそれだけかかるから」

 

 残された魔人ブウ(デブ)と悟飯もその間この世界を満喫することになる。

 とは言え、悟飯は勉強道具をたんまり持ってきており、ほとんどの時間を勉強に費やすることになるだろうが。

 

 

 

 

 痩せたブウがクラピカ探しに旅立って3日目、ブウはとうとうクラピカを発見した。

 グルグル巻きにした蜘蛛達は死なないように尿を飲み水として、はらわたを食べ物として与えている。嫌がらせのように唐辛子を混ぜたりして。

 もちろん体を洗ったりはさせていないため、とても臭い。

 

 しかし、クラピカに見せる時に匂いもこのままでは失礼だと思ったので、洗剤を薄めずにぶっかけて、さらに海につけてグルグル回すことで体の汚れを取った。

 

 ということで、準備万端。瀕死だが臭くない彼らをクラピカの下に持っていく。

 

「おい。お前」

 

 空中でクラピカに話かけるブウ。

 場所は辺り一面田んぼの田舎道。クラピカは360度あたりを見回すが、誰も見つけられない。

 代わりに怪しげな影を見つける。

 そして、もしやと思い上を見上げた時、それを発見した。

 

「何だお前は! 何をしている!」

 

 緊張感を高め、威嚇するようにそう言うクラピカ。

 ガリガリでピンク色、頭に一つ触覚のようなものを付けている片腕の化け物が、これまたピンク色のよく分からない縄のようなものでぐるぐる巻きにされたダルマのような人を担いで、しかも空中に静止しているのだ。

 この異様な光景を見たクラピカが焦って敵意をむき出しにするのも無理はない。

 

「こいつらは幻影旅団のメンバーだ。お前に見せに来た」

「は?」

 

 クラピカはその言葉の意味を理解できず、しばらく固まっていた。

 

 

 いろいろ説明をして10分後。

 

「なるほど。こいつらが蜘蛛か」

「そうだ。どうする? 拷問して殺すか? 女なら辱めてから」

「いや、私はそういうのは好まない。一思いに殺そうと思う」

「ふん。お前ならそう言うと思ったよ。ただし初期メンバーだけは許さんがな。まあ今の俺は性欲がほとんど無いから女を辱めてもつまらんがな」

「なんだ。結局拷問するのか」

「お前だってやりたいだろう?」

「いや、それは、その……」

 

 

 

 結局、ブウとクラピカは旅団員全員の前でクロロを拷問し苦しみの果てに殺すと、他の連中は一思いに殺して行った。

 これはクラピカが出した案にブウが乗った形である。

 しかし、ブウは拷問を諦めたというよりは、早く殺したくて拷問を我慢できず、結果的にクラピカの案に乗ったという形だった。

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