旅団狩りRPG   作:GGアライグマ

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邂逅

 キルアのその後は気になったが、ウイングが存外積極的に「キルア君のことは私に任せてください。君は修行の続きを」と言うので、息子はビスケとの修行に意識を向けた。

 

 200階までは簡単にたどり着き、そこで変態ピエロに目をつけられる。

 

「くくく、きみもおいしそうだ」

「うっ」

「まあ、素敵な殿方。お名前をおしえていただいても?」

「ん? ヒソカだけど。君は?」

「ビスケと申しますっ」

 

 変態ピエロのねっとりするような気持ち悪さ、ビスケの猫かぶりっぷりに、ズシは苦い顔になるばかりだった。

 このヒソカ以外に相手になりそうな使い手はおらず、ズシがわざとヒソカと日をずらしたので、闘技場ではつまらない連戦連勝が続いた。もっぱらビスケとの基礎トレーニングが修行の中心だった。ズシはこれでいいのか疑問に思いつつも、かといって変態ピエロとは絶対に戦いたくないので、何も言えなかった。ビスケやウイングも何も言わなかった。というよりウイングはキルアを探しに行ってから希にしか帰ってこない。

 何をしているんだろう? と思い始めたところで、ウイングはキルアと黒髪のゴンという少年を連れて帰ってきた。

 

「リベンジだ。ズシ」

「待ってよキルア。次は俺の順番でしょ」

「オメーじゃ無理だよ。俺だってまだギリギリ勝てるくらいなのに」

「じゃあ俺がすんなり勝ったら俺の方がキルアより強いってことだね」

「アンだとォ。オメェもういっぺん言ってみろ!」

「じゃあ俺がすんなり勝ったら俺の方がキルアより強いってことだね!」

「本当に言ってんじゃねえ!」

 

 仲良さげに漫才を始める二人。とりあえずズシの次の対戦相手はゴンに決まった。

 

 そして試合が始まる。

 開始直後、いつものように肢曲から入ろうとしたが、ゴンがにやにや笑っているので止めた。代わりに、腰を軽く落として警戒しながら、ただ真っ直ぐ歩く。

 歩き始めてすぐ床に釣り針を引っかけたゴンは、残像のないことを悟ると、不満げに言う。

 

「ちょっと、あの肢曲ってやつやってよ。せっか……くっ」

 

 しゃべっている隙に、真っ直ぐ飛び込んだ。ゴンは後に飛び「ずるいよ!」と叫ぶ。キルアの「ばーか」なんて声が聞こえる。ズシはゴンの手前でしなる釣竿の、無防備な糸をちら見し、オーラを纏った手刀で一線。糸を断ち切る。

 

「ああっ!」

 

 叫ぶ間に、もう一度踏み込んで接近し、そこで肢曲。

 慌ててデタラメに殴る蹴るするゴン。ズシは冷静に顔面にカウンターを合わせる。

 がすっ、と拳は顎を叩き、ゴンは崩れ落ちた。

 

「勝者、ズシ!」

 

 とりあえずゴンとの対戦は終わった。しかし、ズシにとって重要なのは次のキルア。アルカと母親役だった執事の安否を尋ねたい。

 そして、ウイングが言うには、試合に勝てば教えてくれるらしいので、ズシは全力で挑むことにした。

 

「勝者、ズシ」

 

 結果、電光石火からの硬パンチで一撃。キルアは白目を向いて倒れた。

 

 ちょっと申し訳なく思いつつ、それ以上に知りたかった情報が得られる期待に胸膨らませ、病室に向かうズシ。

 病室に入り、キルアと目があった瞬間、キルアは苦い顔になった。

 ずるいぜ、と言って何度か殴られる。自分でも卑怯だと思っているので受け入れる。

 しばらして落ち着いたところで、本題へ。

 

「アルカ? ああ、そういえばそういうのもいたなあ。今の今まで忘れてたぜ。そのなんとかって執事は全く覚えがねえ」

 

 予想外の反応に、ズシはしばらく固まってしまった。とかく、キルアが家を嫌っていることだけは分かったので、それ以上は尋ねなかった。キルアの方も、ウイングとの約束でなぜズシがその情報を得たいのか追及してこなかったから、ズシには助かった。

 

 しばらくして、変態ピエロはカストロという男とそれなりの戦いを繰り広げてから、どこかへ去った。ゴン達もほどなくゴンの実家に行ったので、再び単調な基礎トレーニングを繰り返す日々が始まる。しかし、ただ強くなることのみ求める、刺激の少ないはずの時間は、予想以上に充実していた。体を動かすのはキツくもあるが、清々しくて気持ちよくもある。それに、武を極めようとして、足の角度を何ミリ、呼吸の深さとタイミングを僅かにずらす、もっと奥にある筋肉に意識を向ける、などと細かいことを考えていると、怨みや辛みを忘れられた。僅かな変化が少しずつでも確かな進歩を見せてくれるのは、おもしろくもあった。

 

 見ている側のビスケも、弟子が思ったより早く強くなっていき、復讐者ではなく武人らしい生き方を見出だしていることに、喜びを感じていた。ウイングが連れていたあの二人はもっと輝きそうな気配があって、楽しみは増すばかり。

 そう言えば、そろそろグリードアイランドの選抜試験があったわね。誘ってみようかしら。

 なんて思って、ウイングに二人の連絡先を尋ね、電話する。

 

「マジか。そんな方法であのゲームに参加できるとは。サンキュー助かったぜ。これで旅団と戦わずに済む」

「旅団? 何の話だわさ」

「気にすんな。こっちの話だ」

「ちょおおおっと待ったああああ!」

 

 っと、不穏な単語が聞こえたので、ズシが割って入る。

 

「あ、そういやあんたって」

「はい。幻影旅団は僕が意地でも殲滅するつもりです。話を聞かせてもらいたいのですが」

「いや、ダメだ。俺たちはもう手を引くんだ。知りたきゃ勝手に調べろ」

「分かりました。あなた達も、それが賢明だと思います」

「くぅー! 勝者の余裕ってやつか? その言い方は」

「いえ? 僕はどちらかと言うと敗者ですが?」

「はあ!?」

 

 そんなやり取りがあって、ズシは修行の合間にネットでヨークシンの情報を調べた。

 そこで、マフィアが運営する大オークションに幻影旅団がケンカを売ったことが判明。どっちも非社会的な集団だったから、クズ共通し潰し合えばいいと思ったが、自分が漁夫の利を狙うことに関しては、悩み所だった。

 武人らしい感覚としては、一対一で挑みたい。しかし、そもそも相手は複数で活動しているから、こちらもチームで挑むか漁夫の利を狙わなければ、タイマンに持ち込めない。

 しかし、現在の実力でどこまでやれるか分からない。ズシの体で失敗し死ぬことは許されない。

 

 悩んだ末、まだ戦わないことに決めた。

 

 

 それから1ヶ月程度経って、グリードアイランドの選考会の日が近づいてきた。

 ズシら3人はヨークシンに向かい、ゴン達と再開する。さらに、その仲間という長身のレオリオという男と、男にも女にも見えるクルタ族のクラピカという若者も。

 

「あれ、クラピカじゃないか! 生きてたのか!」

「ん? 誰だ?」

「ええーと、話は長くなるんだけど、俺もクルタ族の人間だ」

「なに?」

 

 ちょっと二人で話が、と言って集団に距離を取り、ズシはこれまでにあったことを話し始める。

 クラピカは訝しげに、しかし内容はしっかり聞き続けた。終えると、一言。

 

「全てを信じることはできんが、興味深い話ではあった」

 

 なんだかすっきりしない。

 

「だったら」

「だったら、なんだ? 協力しようとでも? 悪いが、まだお前のことをそこまで信用できていない」

「それは分かるが。一人で緋の目を探し、そうしながら力をつけ、旅団に復讐するつもりなのか?」

「ああ。お前もそのつもりだったのだろう? 眼については何も言わなかったが」

「まあ、復讐についてはな……」

 

 クラピカは随分衰弱していて、弱々しい。痩せていて表情に覇気が無く、目の下には隈。

 復讐にとらわれ、できもしない、またはできたとしても喜びなどないことに人生をかけて、不幸を突き進んでいる。そう見えた。

 かわいそうで、哀れ。美人なのに。

 そこで初めて、自分の愚かさにも気付かされる。彼女は自分を写す鏡。自分も、こんなに痛々しい人間だったのだ。幸福になどなれるはずがない。魂の解放もまたありえない。

 

「そうだ! 幸福になりたいという意志だ!」

 

 気づいたズシは叫ぶ。目から鱗。心が一気に明るくなったような感覚だった。

 

「なんだ? 藪から棒に」

 

 クラピカは怪訝そうな視線を向ける。

 

「分かったんだよ。俺に、お前にも、足りなかったものが。幸福になりたいという意志! これだ! だから、やつらを殺しても物足りない。蜘蛛に囚われているという感覚が無くならなかったんだ!」

「勝手に言っていろ。お前はどうだか知らんが、私はこの生き方を受け入れている」

「ふっ。それがどうした! お前が糸に絡まれ自由を諦めたというのなら、俺がその糸を断ち切ってやる!」

「おいおい、抽象的にゴンのようなことを……」

 

 途端にいやな予感がして、苦い顔になるクラピカ。ズシは目をキラキラさせて思案する。が、不意に、さらにパッと顔を輝かして、告げる。

 

「俺と付き合え! クラピカ! 幸せにしてやる!」

「断る。私は女としての生き方などとうに捨てている」

 

 きっぱり言うと、ズシは目に見えて落ち込んだ。是認するはずないだろうに、何をとちくるったことを思ったのだろうか。

 が、すぐに復活した。

 

「力ずくで休ませる! 目の下の隈が消えるまで!」

「なに?」

 

 弱ったクラピカは反応する間もなく、電撃を浴びせられ、気絶した。

 

 そんなことがあって、ズシはぐったりしたクラピカを背負って帰ってきた。

 

「クラピカ!」

 

 ゴンやレオリオが心配して駆け寄る。

 

「ビスケ師匠、センリツさん。クラピカとしばらく行動を共にしたいのですが、いいでしょうか?」

「私はいいけど」

「考えは分かるけど、ちょっと無理矢理過ぎるんじゃ無いかしら」

「無理でも通すんです。そうでなければクラピカが、いや俺が幸せになれない」

「変わったわね。あの一瞬で」

「見てたんですか? 人が悪い」

「聞こえちゃうのよ。あれぐらいの距離だと」

 

 クラピカを大事そうに抱えるわりに、気絶する彼女に手当てしようともしないズシ。センリツとの会話もよく意味がわからなかった。

 

「幸せ? 何言ってんだ? あいつ」

「さあ」

 

 眉をつり上げ、口をへの字に曲げるレオリオに、ゴンは苦笑気味に答えるだけだった。

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