ビスケはゴンとキルアと共に出掛けた時に、二人と手合わせしていた。そこで予想以上の才能を感じ、今すぐにも育てたくなっていた。そんな折、ウイングが回復系の能力を得たので、ビスケがゴンとキルアを鍛え、ウイングがズシとクラピカを鍛えることになった。ビスケとゴンとキルアはグリードアイランドに用があって、クラピカは体調からして選抜試験が無理そうなので、そのタイミングとしても丁度よかった。
センリツ、レオリオ、ビスケ等に別れを告げて、ズシは新たな3人で修行を始める。やることはほぼ基礎トレーニングのみ。クラピカも同じで、ただし、体調を考えて初めは軽くから。徐々に負荷を上げていく。
単純な作業でも真面目に繰り返す二人。かと言って惰性にはならず、「踏み込みをより鋭くするためには、あと23ミリ腰の筋肉を厚くしていい」とか、「さっきは股関節の反転が約0.1秒速くて連動が乱れていた」とか、「怒りによってオーラを引き出すために、ルーティーンを用いる。そのルーティーンの時間を短くする修行をする」とか、細かいところを詰めていく。だから、当然のようにめきめきと上達していった。
ビスケはゴン達子供の方が才能が高いように感じたが、彼等も十分な才能がある。無知な子供は何でも勢いよく吸収するが、感受性が強い過ぎるために余計なものまで感じ取って、集中力を乱しがち。細かい部分を切り詰めるような作業は、むしろクラピカのように寡黙に冷静に処理できる人の方が向いている。武道においても、おそらく最終的に勝つのは……。
恐ろしい速さで上達するズシとクラピカを見ながら、ウイングはそんなことを思った。
彼自身も修行の身であり、寡黙な二人に触発されて黙々と鍛練を積む内、今までになかった成果が感じ取れていた。
そうして淡々ながらも充実した日々を過ごし、クラピカにもズシにも故郷にいた頃のような笑顔が戻ってきた。年も明けて、ちょっと新年の祭りにも参加してみたりして。外食ばかりは問題だからと、クラピカが料理を始めたりして。「素朴でおいしい。懐かしいお袋の味がする」「ふふっ、まあ故郷の料理だからな」なんて、なんだか甘い空気さえ立ち上ぼり始めたかもしれない頃、キルアが現れた。
「ちょっとゲームに来てくんないかなあ。人数がいないと攻略できないイベントがあるんだよ」
「選抜試験はどうする?」
「必要ない。現実に戻りたくても戻れないやつ等がいるんだ。だから戻してやる代わりにゲームの参加権を、どころかゲームごともらえるんじゃないか? そうしたらバッテラのおっさんに数百億で買ってもらえるな。うわっ、なんてぬるゲー。今気付いたぜ」
キルアはごちゃごちゃ言い始めるが、とにかく参加は可能らしい。面白そうだし修行にもなりそうだったので、二人は承諾した。ウイングも無視するとビスケに怒られそうなのでくることに。
というわけで、ズシ等はグリードアイランドに飛んだ。そこでゴン達や変態ピエロやツェズゲラ等に出会い、詳しい説明を聞く。その後簡単にスポーツの練習をして、アカンパニーという呪文でソウフラビという町へ飛んだ。
海賊とスポーツでいくつかの競技を争い、多く勝てたらイベントクリアならしい。
首領は別格だが、海賊は一般的な念能力者より強い程度で、真面目に訓練を受けている人間とはいくらか開きがあった。イベントが始まってから、ツェズゲラの仲間に簡単にいなされていく。しかしウイングが勝ったところで、首領レイザーが動いた。
「俺が望むのは8対8のドッジボールだ」
そんなのありか、などと文句を言うキルア等。ズシ等グリードアイランドの詳細をよく分かっていない面々は、離れて静かに聞くだけ。とかく、レイザーと7体の念獸対、ゴン、キルア、ビスケ、ヒソカ、ゴレイヌ、ツェズゲラ、ズシ、クラピカでドッジボールを行うことになった。ちなみにゴンチームの最初の外野は、ゲーム攻略に興味がないうちで最も被弾しやすそうなクラピカとなった。
ジャンプボールはレイザーが譲ってくれて、受け取ったゴレイヌが念獸に当てる。そこでレイザーの番となったが、彼のオーラの大きさは予想以上で、久しく見ていないレベルのものだった。
硬じゃないと受け切れない。
思ったズシは素早く動けるよう電気のオーラを纏う。
そして、砲弾のようなボールが、ゴレイヌに向かって放たれた。
速っ。回避、無理、死!? 痛っ?
ボールのあまりの勢いに死を連想したゴレイヌは、突然、鋭い痛みと共に視界が横移動した。
いや、誰かに真横に飛ばされたんだ。気づいて元いた位置を見てみると、ズシがこちらを蹴ったように足を上げている。ゴレイヌはそまま相手外野陣まで吹っ飛んだ。
と、そこでピーとホイッスルが鳴った。
「反則! ズシ選手、ゴレイヌ選手アウトです。回避行動でラインを超えてはなりません」
「おい! ズシもかよ!」
「はい。彼が反則を招いたと見なせますので」
キルアは文句言いたげだったが、そこまでこの勝負に懸けてないズシは素直に従った。
「すまねえ。それと、ありがとう。助かった」
と、いつの間にかズシの真横に来ていたゴレイヌは、気恥ずかしげに告げた。
「ああ、はい」
「では、試合再開です」
ボールはレイザー陣営で始まる。再び来るレイザーの凶弾に、ゴン達はどう対処するだろうか。
※以降、原作とほぼ同じ流れです。ただしゴレイヌさんはやられっぱなしで終わります。
「なんだかおまけで終わっちゃったな」
「部外者があんまり活躍するのも悪いからな。仕方ない」
ゴン達がカードを得て大喜びするのを眺めるだけ。ゴレイヌに再び礼を言われ、「気にしなくていいです」と返すものの、「いいや、何か返させてくれ。やられっぱなしは主義じゃないんだ」と言われ、「でしたら、何か困ったことがあったらよろしくお願いします」と今は保留にして連絡先を交換した。
それから、ゲンスルーという男から通信があって、ゴンが激昂する一幕があった。その直後キルア達が焦りだしたから、ズシ等も心配になったが、当のゴンに「大丈夫。大した奴等じゃないから俺たちだけで対処できる」と言われて、他の連中も、無言ながら妙に神妙な顔つきで『危険だからゲームに関係のない連中を関わらせられない』と言いたげだったから、空気を読んで引いた。
その後現実に戻り、再び修行の日々に戻る。
ちょっと方向性を変えて、カメラで型の映像を撮ってコンピュータで分析したり、食事や趣味がオーラに与える影響はないかデータを取ってみたり、神字という念を込めた文字について調べたり、その神字を込めた戦闘用の服を作ってみたりしてみた。結果は上々で、以降さらに修行の効率が増すことになる。
ちなみに、データを眺めてぶつぶつ言う二人に、ウイングは「参りました。私の武に対する考えはまだまだだったようです」と顔を引きつらせながら頭を下げたりした。