旅団狩りRPG   作:GGアライグマ

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まさかのラブコメ戦士vsアリの王 前編

「もう私に教えられることは何もありません。今後は自分達の足で世界を回り、様々な価値観を持った人、異なる文化、そして大自然に触れるといいでしょう。きっと困難や感動が、あなた達を人間的に成長させてくれるはずです。案ずることはありません。回り道などないのです。あらゆる経験が、あなた達の血となり肉となるでしょう」

 

 ウイングにそう言われて、ズシとクラピカは二人で旅に出ることになった。

 最後に簡単なパーティを開き、お別れ。初めの行き先は、大自然と共に理想的な生活を営んでいるという、NGLへ決めた。

 

 移動中も修行は欠かさない。さすがに密度は落ちるが。それに、NGLは入国時に機械文明を感じさせるものを取り上げられてしまうから、準備することがあった。

 特に重要なのが、服や靴。別に現地で買ってもいいのだが、ちょうど念字を込めた服を作ろうとしていたから、それをさらに高い水準で完成させることにした。

 念字に込めるのは思い。服だから、保護などのイメージが相性としていい。そして、保護という思いの強さは、己の身かわいさよりも、相手への思いやりの方が絶対値が大きくなりやすい。だから、クラピカとズシは互いに相手の服を作ることにした。また、さらに効果を高めるために、肌身離さず持ったり、作りながら思いを口にしたり、思いに合致した柄にしたりもする。

 

 そうしてできたのが、図らずもペアルックだった。それも、でっかいハートの刺繍が、クラピカの服は体の中心より左に、ズシの服は体の中心より右にあって、背の違いにより若干ずれるが、並ぶと1つのハートになるという、バカップルが好むようなもの。ハートはネテロの心Tシャツしかり、念の効果を高めるために付けようと二人で決めていたのだが、対で歩くということを考慮していなかった。

 もちろんズシは喜んでそれ着たが。クラピカも、せっかくもらったものを無下にできず、NGL内に限り着ることを承諾した。ただし、ハートが重ならないようにクラピカが左側を歩くという条件付きで。

 

 NGLでは、予想通りまったりおっとりした人達が大自然と共に暮らしていた。二人は故郷を思い出して心地よかった。事前に何が食べられるかは調べていたので、山菜や木の実をつみ、または野生の獣を掴まえて、日々の糧にしたり、そうして得たもので、別の何かを買ったりした。

 服装はやはり悪目立ちして、独り身の若者には舌打ちされ、バカップルには「私達も負けてられないわ」「見せつけてやろうぜ」と目の前でディープキスされ、赤子を抱く母親には「あらあら」と笑われたりしたが、警戒を解くにはよかったかもしれない。

 

 そうして進んで行った中で、とあるのんびりした村に着いた。が、そこでは、働き盛りの男衆が一斉に行方不明になる事件が起きていた。もっとも当人達は「私達は野生の獣に殺されても、それが定めだと受け入れる」とあまり悲観はしていなかったが。それでも人手が足りないと農作業に支障が出るので、困っていた。

 

 人助けのため、また現地の生活に触れたかったので、二人は仕事を請け負うことにした。

 服装のためかあまり期待されておらず、「猫の手も借りたいぐらい忙しいんだ。そうでなきゃあんたらなんか雇わねえ」とまで言われてしまったが、真面目な二人は、もちろん彼等の予想を裏切ることになる。人並外れた身体能力を十分に駆使し、10人の若い成人男性が2週間かけてする仕事を、たった2日で終わらせてしまった。

 二人は大いに感謝され、豪華なもてなしを受けた。新鮮な野菜をふんだんに使った体に良さそうな料理をお腹一杯に食べ、久しぶりに温かい風呂に入り、ベッドで寝た。

 

 身も心も温まった二人は、いつになく新鮮な気持ちでいつも通り早起きし、朝の鍛練を行う。その後、一晩の恩のためにと井戸の水を汲もうとして、若い奥さんに断られる。「ゆっくりしていって。まだ働いてもらった分の返し終えていないから」と。

 

 なんて、談笑をしていた時だった。

 

 不意に、ゾゾッと身の毛がよだち、額に脂汗が浮かんだ。

 ズシとクラピカがほぼ同時に同じ方向を振り向き、凝で目にオーラを集めると、おぞましい何かが、とんでもないスピードでこちらにやって来ていた。

 

 旅団なんて目じゃない。この世の全ての不吉かと思えるような絶望的なオーラ。

 現在でも世界最強と名高いネテロがトップを務める心源流、そこの師範代を任されたウイングをして敵わないと悟らされた、そんな二人でさえ恐怖に呑まれた。

 

 が、ズシはキルアさんの記憶があったため、まだ敵の力を図ることができた。4人いるが、おそらくうち3人はあの頃の自分より数段劣る。残り一人も、あの頃の自分ほど洗練されてはいない。

 ズシは固まっているクラピカの背にそっと手を置いた。

 

「大丈夫だ」

 

 せめて彼女を安心させようと、絶望を押し止めて気丈に振る舞う。

 ハッとして振り返るクラピカ。

 そのすがるような瞳に、図らずも初めて女を見せてくれた気がして、ズシは自分でも驚くほど心が静かになった。

 キルアさんの頃、いやそれ以上に、充実した闘志が沸いてくる。冷静な頭が機械のように複数の戦闘パターンをシミュレートし、勝利の可能性が最も高い解を求めていく。

 

「俺が隙を作る。その時に小指の鎖で制約と誓約を。一撃で決める。それくらいの制約がいる」

「何を……っ!」

 

 クラピカが続きを告げる前に、4匹の化け物が2人の前に降り立った。

 人、に似ているが違う。体の形も、色も、皮膚の質も。猫の耳や蝶の羽根、野獣の表皮。特徴だっててんでバラバラだ。

 

「ひっ、ばけも……っ!」

 

 叫ぼうとした奥さんは、オーラに当てられて気絶する。無理もない。4匹全てオーラを浴びせるだけで並みの念能力者なら殺せてしまう。特に、他の3体を従えるように立つ、少年にも見える、尊大そうな男がヤバすぎる。オーラの底が見えない。おそらく、あの頃のキルアよりも上。

 しかし、二人には絶対的な強者に弄ばれた過去があり、それでもめげずに抗っていたのだ。戦闘意欲がなくなるようなことはなかった。

 

「ほう。なかなかのレア物だな。このような辺鄙な村に珍しい」

「恐れながら王。彼等は旅行者か何かでしょう。服の装飾……がっ」

「言われずとも分かっておるわ! 無用な助言は侮りと知れ!」

 

 王と呼ばれた尊大そうな男は、へりくだって話しかけた蝶の羽根を持つ男を、突如尻尾でぶん殴った。その凄まじい威力に、蝶の男は一瞬意識を失ったか、殴られた勢いで首を向こうに回したままに固まったが、しばらくして復帰すると、口端に血を流しながら頭を下げた。

 

「はっ、申し訳ありません」

「二度目はないぞ」

 

 目の前にいるクラピカとズシを完全に無視してそんなやり取りが行われる。4体にとって、二人はその程度の取るに足らない存在なのだろう。実際、現時点の二人のオーラ量では、どう攻撃しても王には傷ひとつ与えることができない。そのことは二人も理解していた。

 

 が、二人とて何もせずにぼうっとしていたわけではない。むしろ、王とその他3人の性格を大まかに把握したことで、光明が見えていさえいた。

 

「残り二人も分かっていような。余計な手出しは無……」

「ぷぷっ。なんだあの頭。パンツかぶってんじゃねーか。だっさ。チンコみたいな形しやがって。ああそうか。チンコ隠すためにパンツ被ってんのかっ。ぷふっ」

 

 不意にズシが、間の抜けた声で割って入った。

 4体の化け物達は、一瞬呆気に取られる。元々殺すつもりが、王の言葉を遮ったためにさらなる罰が必要となり、尚且つ、いや、言葉にするのも忌々しいような、何をもってしても許しがたい暴言の数々だ。あまりの罪の大きさにどう怒ればいいか分からず、止まってしまった。

 だが、それも長くはない。主君を侮られた狂臣、虫けらにコケにされた暴君は、一斉に牙を剥く。

 

 一番先に動いたのは、魔獣のような皮膚の大男。次いで、猫のような男にも女にも見えるやつ。次いで暴君。最後に蝶だった。

 

 電光石火、疾風迅雷。

 

 対して、ズシは予想以上に順番がよかったことに喜びながら、自身の持つ最高の移動能力で、暴君が大男で隠れるような線上に移動する。大男は憤怒によくわからない声を上げながら、ボコボコと、ウイルスの繁殖を早送りで見るように、巨大化していく。そしてビルのように巨大化した腕のような何かを、大きく振り上げ、しかし突然、浮く。そのままズシの頭上を飛んでいく。

 

「邪゛魔゛を゛するな゛ぁ゛あ゛あ゛!」

 

 恐ろしい顔、恐ろしい声量で叫ぶ王が、巨大化する化け物の後ろで足を高く上げていた。蹴飛ばしたらしい。

 

 チャンスだ。

 

 先程の王の行動で、猫娘が遠慮して棒立ちになっている。

 次の狙いに定めて、ズシは王と猫娘の線上に移動していく。が、王が思ったよりも速い。猫娘も、ズシの策を理解して逃げようとする。

 

「チッ」

 

 舌打ちし、作戦変更。今度は猫娘に飛び込み、接触。王と猫娘に挟まれるような形になる。猫娘は王に遠慮して、攻撃にならないよう撫でるようにズシを外そうとするが、電撃で動きを止められる。王は構わず猫娘ごとズシを殺そうと、鋭い爪を振り上げる。

 が、そこでズシは大量のオーラを電気に変換し、王に向かって放電した。

 

 怒り狂った王は避けようともせず、また避ける必要性も感じず、直にそれを受ける。が、王の予想に反して体は痺れ、硬直する。

 ズシはにやりと笑い、猫娘を蹴り、王へと飛ぶ。

 

「ん゛ナ゛メ゛ル゛ナ゛アアア!」

 

 王は凄まじい怒りを乗せて咆哮し、オーラを爆発させる。動け、殺せ、と筋肉に限界を超える指示を出し、ぶち、ぶち、と己の筋が切れるのを気にもせず、無理に動き始める。

 しかし、疾風迅雷と電光石火を合わせたズシを捉えるには至らない。一般的な念能力者からすると決殺だろう一振りも、こと回避能力に関しては護衛団にも勝るかもしれないズシにとってみれば、しびれた王は鈍重だった。

 空中で体を捻って腕をすり抜け、その勢いのまま顔面に蹴り。当然電撃のおまけつき。

 その衝撃で王とズシは互いに反対方向に飛んでいく。

 

「よっわ。まあチンコの王だしな」

 

 耳も抜群にいいからきっと聞こえるだろう。とどめの煽りもしておく。

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