王は厳密には死んでいなかったと言えるかもしれない。脳は完全に意識を失っていたが、細胞は生首1つながら生命活動を続けていた。
が、それも直に止まるだろう。今日明日ではないかもしれないが、さすがに一年もは持つまい。その時に、死者の念が発動してはおそらくズシが殺される。だからクラピカは生首1つ持ち歩き、センリツを呼んで、怒りを静めるよう歌を聞かせた。
その後、ぐちゃぐちゃになったズシの手足を治すべく、グリードアイランドに移動した。ゴレイヌの助けも借りて、大天使の息吹というカードを手に入れ、その能力で怪我は一瞬で完治する。さらに、一坪の密林というカードを使い、その密林の奥に王の生首を埋葬した。
が、その直後、ズシはクラピカに手紙を残し、姿を消した。
遊魂枕というカードを使えば、幽体離脱ができる。これでズシに体を返せると思い、1人ホテルのベッドの上に寝転がっていた。
覚悟を決め、枕に頭を置くと、まず、当人の魂が抜け出た。
『う、うわあああ。う、浮いてるっす。ここはどこっすか? というか真下に自分がいるっす。ということは、もしかして自分、死んでしまったんすか? そんなあ……』
息子はそれを確認し、もう一度枕に頭を置く。すると、ふっと、突然体が軽くなった。
起き上がり下を見ると、ズシの肉体があった。
『うわっ! だ、誰っすか? なぜ自分の体から? はっ、そうか。守護霊。あたなは自分のご先祖様ですね。はじめましてっす』
『それよりも、早く体に戻った方がいいんじゃないか? 君はまだ死んでないんだから』
『ほ、本当っすか!? ありがとうございますっす。でも、どうやって戻れ』
しゃべっている途中、自分の肉体に触れたズシは、吸い込まれるようにあるべき場所に戻っていった。
その後、息子の魂はクラピカの守護霊となり、“旅団狩りRPG“の呪縛から逃れた。
そして、能力は再び別人を主人格に選ぶ。最後に選ばれたのは母親。しかし、彼女1人の怨嗟では強力な人間に宿ることは叶わず、彼女当人の過去に憑依、つまり逆行という形になった。
それも、襲撃のたった1日前に。彼女は必死で逃げるよう村長等に伝えたが、傍目からは突然イカれたようにしか見えず、相手にされなかった。そこで母親は、村人達、親戚や夫さえ見捨てて、自分と子供だけ連れて逃げ出した。
が、その途中、腹を空かせた獣の群れに襲われ、3人とも亡くなってしまった。
再び“旅団狩りRPG“が発動し、今度は村を出る直前まで戻る。
傍らには、頬を叩かれ、涙目で己に付いてくる息子と、声を荒げることができぬよう、ふとんで巻いた娘。と、娘が乗る手押し車。
逃げれば獣に殺され、逃げなければ恐ろしい盗賊に徹底的に痛めつけられ、殺される。だったら……っ!
母親は全力で村に戻り、ある男の家を訪れた。そいつは力が強いが、意地悪く、顔も悪いから、独身だった。
母親はその男に自分と夜逃げしてくれるよう頼んだ。男はもちろんいぶかしんだが、体を差し出し、全力で奉仕すると、嫌らしい顔で請け負ってくれた。
母親が男と共に息子がいた場所に戻ると、誰もいなくなっていた。きっと家に帰ったのだと思い、連れ戻そうと、自宅へ駆けようとしたが、男が「俺を騙すつもりだな」と言って母親を遮った。「邪魔をするな!」と全力で叫び、男が怯んだ一瞬の隙を付き、自宅へ。
しかし戻ると、息子娘は夫の後ろで怯えていて、その夫には、拘束された。
何を言っても聞き入れてもらえず、むしろ怒りや哀れみの目で見られた。「気など狂っていない。いや、狂っていたかもしれないけど、もう戻ってる。だからおねがい。縄を解いて」と言っても「それでもダメだ。きっと疲れていたんだろう。今日は家事も子守も俺がするから休んでいるといい」と返され、それ以降はまともに会話さえしてくれなかった。
そうして十数時間後、幻影旅団が現れ、再び何もかも蹂躙されてしまった。
再び“旅団狩りRPG“が発動する。母親が旅団に対する怒りをさらに強めたことで、今度は襲撃の3日前まで戻ることができた。そして前々回の失敗をふまえ、声を荒げず、「どうしても子供達と遠くの泉に行きたい」と言って、家族を連れ出すことにした。夫は「あそこは遠すぎる。子供達には危険だ」と反発したが、母親はいつになく激しく肉体的に奉仕し、なんとか認めさせることに成功した。そして、襲撃を躱し、焼け野原となった村に戻り、青い顔になった子供達を励まし、「こんな時に私達がしっかりしなくてどうするの!?」と夫に喝を入れた。
それから、自分達と同じく運よく生き延びていたクラピカと合流し、移動を開始。なんとか獸の襲撃を撃退しつつ、百キロ近く移動して、人間の住む村を見つける。
それからは、とても貧しく厳しい状況の中、5人で慎ましく暮らすことになった。クラピカは成人を前に「ハンターになる」と出ていき、見事合格。半年後、大きな仕事で得たらしい金で、豪華な家をプレゼントされる。
その半年後、息子もハンター試験に挑んだが、残念ながら敗れた。それから心源流という道場に入り、訓練を始めた。激動の幼少期を生き抜いただけあって、そこそこ才能はあるようだ。
やがて息子はハンター試験に合格し、娘は嫁に行き、息子も結婚し、孫が生まれ、孫の子も生まれた。年老いた母親は多くの子に囲まれて、90でこの世を去った。
“旅団狩りRPG“は、発動しなかった。
旅団狩りRPGは、厳密には幻影旅団に恨みを持つ全ての人間の念が込められています。そうでなければここまで常識外れの規模にはならないと思うので。
ともかく、これでこの話はおしまいです。今までお付き合いいただきありがとうございました。途中放置して申し訳ありませんでした。王の話も途中放棄みたいですみません。しかしさっさと完結させたい欲が強かったものでして。
今後はできればオリジナルの方の応援を頼みます。できれば書籍化したいので。そうすると二次創作は全て削除することになるかもしれませんが。