現代の戦女神   作:A:suna

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お久しぶりです。


はい。



本当にお久しぶりです。


ショウタイ

「それじゃ、私こっちだから」

 

学校の門まで来ると、葵は二人と家の方向が違うため別れを告げた。

 

「そうか、じゃあまた明日」

 

「明日はちゃんと来るのよ」

 

真由美に釘を刺され苦笑しながら手を振った。

流石に明日もサボれば申し訳なく感じる。葵自身のことなのだから別に感じる必要は無いのだが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで、何か用なの?」

 

二人と別れ暫く歩いた後、葵は足を止め後ろをついてきていた人物に問いかけた。

 

「…いつから気付いていた?」

 

「いつから、ねぇ。強いて言うなら最初からかな?達也くん。エリカが待ってくれてるかなーって思ったら君がいるからびっくりしちゃった」

 

振り返りクスクスと笑いながらそう言う葵を見て、尾行をしていた人物──司馬達也は顔を強ばらせる。

 

「それで?私に何か用があるの?」

 

「柊葵、お前について少し調べさせてもらった。俺一人では調べ切ることが出来なかったが分かったことがある。お前の経歴は怪しすぎる。俺の持ち有るコネを使っても、それでも尚何も分からなかったが深雪がどこかで見たことがあると言っていたのを聞いて思い出したんだ」

 

そこまで言うと一旦区切り一息付く。尚も葵は聞きに徹していて笑顔を浮かべていた。

 

「────叔母である四葉真夜が持っていた写真に映る母である四葉深夜と四葉真夜、そしてお前を」

 

葵は内心で舌を打つ。

二年前、目が覚めてから一度だけ四葉の邸に行ったことがある。行ったことがある(・・・・・・・・)というのは少し語弊があるかもしれないがとにかく真夜にあった事がある。

その時に、今どき古風な現像の写真なんてものを見つけて処分し、完全に記憶から消していたのだが達也の言葉で思い出した。

葵にとってあの写真を撮るまでの工程は羞恥に耐えることの出来ないほどのものだったのだから黒歴史に近いものに当たるのだ。

 

だが尚も表面では笑みを浮かべていた。

 

「二人からお前のことは聞いたことがある。内容が内容だったからよく覚えている」

 

葵は二度目の舌打ちを内心打つ。

一体何を話したんだ、と。真夜なら平気で盛った話や恥ずかしい話などもしそうなのだからたまったものではない。

 

「柊葵、本名はか────ッ!?」

 

達也が葵の以前の名、と言うよりも本名を言いかけた時、その瞬間に葵から“死”をも連想させる程の殺気が放たれた。

突然の殺気に咄嗟に距離をとろうと後ろへ飛び、顔を上げるとそこに葵の姿は無い。

代わりに耳に聞こえる声。

 

────その名前は出しちゃいけないよ

 

耳元から発せられる驚く程低い声、背後から針を刺されるように浴びる殺気。

達也は反射的に背後に腕を伸ばした──がそこには何も居らず、再び前を向くと先程の殺気が嘘のように笑顔を浮かべている葵がいた。

 

「私のことが知りたいなら付いてきて」

 

そう達也へと告げると葵は何も無かったかのように歩きだした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここは?」

 

あれから達也は迷うことなく葵に付いていった。

先の出来事で十中八九葵は神威で間違いないという確信が生まれたのだが話に聞く通りの人ならば大丈夫だと判断したためだ。

 

「私の家。そのへんに座っていいよ」

 

その結果、葵の家へと招き入れられている。

言われた通りに近くにあったソファに腰を落とし辺りを見回す。物という物が無く、とても質素な部屋である。達也も人のことは言えないのだが女としてこれはどうだろうと考えていた。

 

「物、何も無いでしょ?一昨日から住んでてまだ何も買ってないんだ」

 

不意に聞こえる葵の声に振り返ると匂いからしてコーヒーだろうか、液体が入ったコップを二つ持っていた。

差し出された片方を受け取り口にする。葵は達也とは反対側にある椅子に座った。

 

「さて、と。それで何が聞きたいの?」

 

そこまで言うと葵の雰囲気ががらりと変わった。

帰り道に問うた感じとは全く異なっていた。まるで言外に簡潔に話せ、と言っているようだ。

達也も知りたいことはただ一つであり、素直に応じた。

 

「この際細かいことは聞かない。俺が知りたいのは一つだ。柊葵(・・)、お前は深雪に害をなすものか?」

 

達也にとって心配なことはそれだけだった。

初めて見た時は未知の存在であり、二度目に見た場では驚異的な力を示した。そして先程の殺気。

 

“コイツを敵に回してはいけない”

 

あまりにも突然にあらわれた強大過ぎる人物。それが自身の、深雪の敵になると言うならばどうにかしなければならない。

それこそ、己の命(・・・)をかけてでも。

 

「心配しなくても私、柊葵(・・)はあの娘を傷つけたりしないよ」

 

「では質問を変える。神威(・・)、お前は深雪に害をなすものか?」

 

〝神威〟

その名を口にした途端に達也の身を襲う威圧感。

この名を口にすれば何かあると構えてはいたが達也でもなかなか応えるものだ。

当の葵はと言うと、まるで別人のような雰囲気を纏っていた。

 

それは保証出来ないな(・・・・・・・・・・)

 

数刻前に聞いたあの低い声を空気中に振動させ達也の耳に届く。

 

────目的の為なら排除する

 

耳に届いた時に聞こえたのはそんな言葉だった。

葵の有無を言わさぬ覇気によって思わず冷や汗を流す。達也にとってこんな感覚は初めてだった。

 

(これが嘗て戦女神(・・・)と謳われた最強の魔法師、か)

 

「まあでも安心していいよ。私も深夜の子(・・・・)を傷つけたくはないからね」

 

「いつから気づいていたんだ?」

 

「初めてキミを見たときかな。雰囲気がね、そっくりなんだ。深夜に」

 

そう口にした葵からは威圧感など感じず、どこまでも慈愛に満ちた笑みを浮かべていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あの後達也は葵と少し談笑した後に妹が待っているからと帰っていった。

 

「深夜────」

 

達也と話した内容は四葉について。

葵からは幼少期の真夜や深夜のこと、達也は葵の知らない時期の彼女等のことを聞いたり話したりした。

深夜が既に亡き人になっているのは耳にしていたがやはり人の死とは悲しいものだ。それが親しい人ならば尚の事。

“生きる”なんて言葉が創られる程に“死”とは確実なもので、いずれかは必ず訪れる。誰しもが理解していることだ。

だけど葵が知っている深夜は三十年も前の姿で、共に過ごした期間は短い。実際には四十年余を生きた(・・・)人でも彼女にとっては十年余と短い生でこの世を旅立ったように思えてしまうのだ。

 

 

「どこの国だったかなぁ。潰して(・・・)いいかなぁ」

 

 

四葉深夜の“死”の大元を形作った国。神威(・・)にとってそれは憎悪や敵意、殺意を向ける以外にほかならない対象でしか無かった。

 

達也も口にした戦女神(・・・)

一人間でしかない者に()なんて名は大袈裟である。それも頭に()、戦争を意味する言葉をつけられて。

 

 

────では何故付けられたのか

 

 

答えは簡単だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

たった一人で大国を壊滅に陥ることが出来(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)うる力を有しているから(・・・・・・・・・・・)

 

 

 

 

神をも連想させるほどの力を持ち、それが戦いの場に身を置く。

神威(・・)が戦女神と呼ばれるようになるのも早い話だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな彼女が敵意を丸出しにする一国。

達也が語る幸せだったであろう深夜の生涯を聞き、再び湧き上がる怒り。

これが二度目、それも一度目が真夜から耳にしたもの出なかったら既にその国は世界地図から消えていたかもしれない。

今の葵に制止をかけているのは真夜や深夜の遺した子どもたちなのだから。

それ程までに四葉真夜、司馬達也、司波深雪は葵にとって大きな存在となっていた。

つい先刻、達也に深雪に害をなすものかと聞かれ保証は出来ないと答えたがあれは深雪自身(・・・・)には害をなさないと答えただけなのだ。

それどころか彼女や達也に何かあろうものならば葵が報復をするつもりでいる。

 

 

 

 

今の葵を満たしているのは真夜、達也、深雪と申し訳程度に上田である。

葵にとってはそれは十分なもので、でもそれは寂しいもので。

 

部屋は人を表す、なんて言葉を耳にすることがあるが今の葵がそうなのかも知れない。

物がなく、所々に広々としたスペースがあり人が見れば寂しく感じる空間。

 

だけど今の葵には以前には無かったものがある。それは学校だ。

学校といえば面倒くさいとか勉強したくない等といった負のイメージが湧いたりもするが物事を学ぶうえで右に出るものは無い(・・・・・・・・・・・・・・・・・)

学校その物が人生の教科書(・・・・・・・・・・・・)なのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

もしかしたら、ほんの僅かな可能性かもしれないが、学校という名の人生の教科書が彼女に普通の子ども(・・・・・・)としての生き方を教えてくれるかもしれない。

 

 

 

もしかしたら、それが彼女の気付かない寂しさを埋めてくれるかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────もしかしたら、彼女の部屋に明るさが溢れるかもしれない

 

 

 

 

 

 

 




タイトルのショウタイは葵の正体を達也にばらすのと葵の部屋に達也を招待するのをかけたつもりです。

学校云々のくだりは完全に自分の考えです。
色々と省いていますがとにかく学校って凄いとこだなって思ったので入れました。
自分は春から復学です。


あ、因みにこれで入学編は終わりで、次回から九校戦編に入るつもりです。
なんか中途半端な気がしなくも無いですが皆さんの強力なスルースキルを発動させて無視して下さい。
達也の小物感もきっと気のせいです。
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