ですが、それと同時に病気の重さによって自分の夢も閉ざされてしまいました。
日常生活ではまったくしょうがないのですが私が専門としている分野が肉体労働なために断念ですね。
今年19歳となるこの頃、夢が叶わなくなるというのは辛いものですね。
でも不思議と悔しいと思うことはありません。
昔から憧れていた料理人を目指すことになったからでしょうか。
今年は1年を使い療養に専念しつつ病室で軽い勉強をしようかと思います。
話はそれてしまいましたが、次回入院すると本格的な治療が始まるため更新がさらに遅くなると思います。
それでも暖かい目で見ていってくださるとありがたいです。
真夜を連れ出した日から三日ほどたった今日、私はとんでもないほどでかい屋敷ーー真夜の実家である四葉本家の屋敷にお邪魔していた。
この三日間で何もなかったわけではない。度々襲われることもあったが相手も優れた魔法師ではなかったため軽くあしらうことができた。
襲われる度に真夜を守っていたからか、なんとなくスキンシップが増えた気がするがあまり気にしないでおこう。
それよりもこの屋敷、とにかくでかい。
「うーん」
自分で言うのも、いや自分だから言えることなのかもしれないが私は久々に緊張していた。
たまたま見つけた女の子を連れて追いかけてくる奴らから逃げる。そうすると女の子に助けてくれてありがとうと言われ、その後も護衛するかのように守っているとお礼をしたいから家に来てくれと言うのだ。
何のことやらよく理解できていないままその子について行くとバカデカイ屋敷に連れていかれた。
しかも真夜がいいとこのお嬢さんであったのも全く知らなかったため、余計に気を張ることとなる。
「この人が例の人よ。話は聞いているでしょうから案内してさしあげて」
「かしこまりました」
そんな私を尻目に真夜は屋敷の手前の門のそばにいたまだ若そうな男性にそう言うと、後から行くから先に行っておいてと言葉を残し屋敷へと入っていった。
「こちらです」
それに続くようにこの男性も歩き出したので慌てて追いかけ小走りについていった。
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こちらの部屋でお待ちください、と通された部屋は客間だろうか物は多くなく部屋の中央付近にテーブルやソファがあり隅の方に棚がいくつかあるぐらいだった。
だがそれらは見るからに高そう。
誰が見てもいい物だと分かるであろうと思えるほど綺麗な物だった。
特にやることも無いためソファに座ろうかとも思ったがなんとなく気が引けるため私はドアのそばで目をつぶり壁に寄りかかっていた。
考えるのは真夜のこと。
最近のスキンシップの多さについてだ。
しかも過激になりつつある。
はじめは手を繋いでくれという可愛らしいものであったが今では常時腕に引っ付いている状態。
それでなくても場所や時間関係なく抱きついてくる。
私が着替えているのを見て息を荒くしどことなく顔を赤らめていた時もあった。
いくら女の子同士といえどもあんまり女の子らしくない私にとって女の子女の子している真夜の過激なスキンシップはヤバイ。
腕に当たる柔らかい感触やほのかに香る甘い匂いなんかは特にまずい。
真夜の様な可愛い女の子に好かれるのは嫌ではない。
が、何と言うか度が過ぎている気がするのだ。
いくら私が女の子であると言えども歳に不相応である豊満な胸や、大人びた顔立ちでとても美人である真夜にこのままスキンシップを続けられると、私の理性がもちそうにない。
なんとかしないと。
どうしたものかと考えているとドアが開いた。
「あれ?神威?」
どうやら真夜のようだ。
真夜はまだ私に気づいていない。
ならばとこんなにも私を悩ませている罰として脅かそうと思ったのが間違いだったのかもしれない。
この時の私がそんなこと知るよしもないが。
「神威?いるの?」
(後ろはとった!くらえ!)
私は真夜に飛びつき、定番である擽りを実行することにした。
突然後ろから飛びつかれた真夜は驚いた様子で、
「え?ちょ、神威?やめ…」
と言っているようだったが直ぐに
「あははははっ、ちょっと神威擽ったいよ」
擽っているのだから擽ったくなくては困るのだが、そんな真夜を無視して暫く続けていると、
「あ…ぁんっ…」
えっ、エ?、ゑ?
なんとも色っぽい声を出された。
当然そんな声を出されては擽りを中断する訳で。
「えっと、なんかごめん」
私は咄嗟に謝ったが、
バタンッ
と開いていたドアが閉まった。
…まさか見られてた?
「…もういいのよね?ゴールしちゃってもいいのよね?」
ゴール?ゴールって何!?
そんなことより誰かに見られてたんだけど!
****
なんとも嫌なものを見ていた気がする。
これは最悪の目覚めであろう。
あのあと私は何をされたのか覚えていない。
その日の記憶は穴があいたようにすっぽりと抜けていた。
おそらく無意識のうちに記憶にセーブがかかっているんだろう。
そんなものを思い出そうとは思わない。
むしろ思い出したくもないまでだ。
それはそうとして…
「ここはどこだ?」
目覚めた後の開口一番の言葉がそれであった。
明らかに普通ではない場所。
それは言うなれば人体実験に使われてそうなカプセルの中だ。
私の記憶が正しければ最後に見たのは泣き叫ぶ真夜とその姉の深夜の姿、そして消え去っていく自分自身の姿だ。
あの時確かに私は死んだ。
自分の不注意により真夜と深夜を危険にさらしそれを庇うために身を投げたはずだ。
だが確かに今の自分には生きているという実感がある。
背中に伝わる鉄の冷たい感触や自分の意思で動かせる手足。
「お目覚めですかな」
不意にかけられた声に神威は警戒をする。
そこに立っていたのはどこか懐かしい雰囲気の老人だった。
「まあまあ落ち着いてくだされ」
そう言うとその老人はカプセルを開け神威に出てくるように促した。
「久しぶりですな、神威殿」
「お前は…」
私はこいつに見覚えがある。
随分と歳はとったみたいだがその独特の雰囲気で確証を持てた。
こいつは私を異国へと連れて行ってくれた張本人であり、私を拾ってくれた男でもある。
「久しいな下田」
「まだ覚えとらんのか!上田じゃと何度言えば分かる!」
「ああ、すまん上田」
私にとって今こいつの名前なんてどうでも良かったが話を進めるために軽くあしらった。
「それよりも聞きたいことが山ほどある」
私の言葉を聞くとその言葉を待ってましたと言わんばかりの笑みを浮かべた上田はついて来いと言った。
「移動中にも話せることはあるだろ」
一刻も早く今の状況が知りたかった私は上田に問うた。
「そうじゃな、先ずはお前さんが死んだと思い込んどるときのことから話そうか」
その後上田は淡々と言葉を繋げた。
私の記憶ではあの時死んだように思えたが実際は気を失っていただけだそうだ。
もっとも、人は夢の中で殺されると脳死という形で実際に死ぬ人もいると聞く。
私の場合は現実で死んだと思い込んでいたため、死にはしなかったが中々目を覚まさなかったようだ。
本能が拒んでいたのだろうか。
どっちにしろ私の身体が何者にも干渉を許さない頑丈さ故、そう簡単には死ねないそうだが。
それにその場は誰が見ても神威は死んだと思わせるには十分な状況で、皆私は死んだと思い込んでいたそうだ。
斯く言うこの爺さんもその一人だったみたいだが。
この爺さんは昔から人の生体について研究をしていた。
それに加え私の保護者的存在だった爺さんに私の身体は引き渡された。
私の身を引き取った上田は私がまだ死んでいないと知り先程のカプセルに入れていたとのこと。
そのおかげでか私の身体は成長こそしていないものの傷んでいると見られる箇所は無かった。
ここまで話されて疑問に思ったことがあった。
それは真夜と深夜のこと。
私がこんな状態になった原因であるあの事件。
あれは間違いなく真夜と深夜を標的としたものだった。
私が居なくなってからの二人が心配である。
「それについては案ずるな」
二人は生きている。
上田のその言葉に私は一先ず安心した。
だが次に上田から発せられた言葉に強ばる。
「じゃが色々とピンチな状況でな。神威殿を少々無理やり起こさせてもらった」
本当は自然に目覚めるのが身体に一番いいのじゃが、と不穏な言葉と共に。
だがこの際それはスルーだ。
「ピンチな状況ってなんだ?お前が焦りを見せるなど相当のことなのだろう?」
まだ色々と聞きたいことはあったのだが上田が焦っているように見えた。
如何なる時も冷静に物事に対処してきたあの上田がだ。
かなり大変な事があるのは明白だ。
「お前さんに頼まれて欲しいことがある」
「私に頼みごとだと?」
「今回ばかりはお前さんの力をかりねばならん」
滅多に他人を頼ることをしない、特に私に対しては頼みごとを一切しなかった。
それ故に今この爺さんが私に頼みごとをしているということが私の不安を煽り出した。
その依頼は単純明快なもの。
だか今の私には全く理解出来なかった。
しかしこれは上田からの依頼。
それを断ることは絶対にしない。
それにこの件は例のクソジジイも願っているとのこと。
当の本人は私が死んだと思い込んでいるそうだが。
「仕方ない、一仕事するか」
この瞬間、私の国立魔法大学付属第一高校への入学が決まった。
誤字脱字があれば感想にて教えて下さい。
その他意見や感想があればバシバシ言っちゃってください。