とにかくチート主人公大好きです。
前夜の再開
あれから私が連れて行かれたのは入学予定である第一高校だった。
もっとも、連れ出された理由は街案内と言ったところだろう。
薄々感ずいてはいたが、と言うよりも当たり前なのだが今地に足をつけているのは私が睡る前の年から何十年もたっているらしい。
私を睡らせていたあのカプセルの影響で身体はもう成長しないらしいが、今の体型はそこそこ気に入っているので問題はないだろう。
だが年齢は…考えない事にする。
それはそれとして第一高校には一科と二科というものに別れているらしく合格者二百名の内、入試成績が良い上位百名が一科に所属する一科生となりその他の百名が二科生となるとのこと。
入試なんて受けていない私は上田のコネにより少々強引に入れてもらったらしく当然の如く二科生である。
本来合格するはずだった人には大変申し訳なく思う。
一科と二科に別れているということは当然差がうまれるわけで二科生は雑草と呼ばれ差別を受けているらしい。
個人の能力に差があればそういうことも当たり前のように起こる。
これは醜い人間が支配している世の常だろう。
私にとってはどうでもいい。
それに一科だろうが二科だろうが上田からの依頼をこなせればそれで良い。
もちろん邪魔をするのであれば一科だろうが二科だろうが関係無く排除する気だ。
上田が言うにはあのクソジジイの足元にも及ばない赤子に毛が生えたレベルの弱さらしいので何の障害にもならないと思うが。
「だが学校というのは楽しみだな」
私は学校というものに通ったことがない。
通う必要が無かったというのもあるのだが、私にとって学校というものは未知の領域であるため興味はある。
だが入学まで時間はある。
依頼開始まであと二年。
それが私に与えられた身体を暖める準備期間だ。
これからどんなことが起こるのか、どんなやつらと学校へ通うことになるのか考えるだけでも楽しい。
「これからが楽しみだ」
――――――――――
「はあ、なんで私がこんなことしなきゃいけないのかしら」
「仕方ないだろ、お前はこの学校の生徒会長なんだから」
入学式の前夜、国立魔法大学付属第一高校の門の前に影が二つ。
「でもでも、夜遅くに女の子を呼び出すなんて非常識だと思わない?」
「それに付き添わされている私はどうなんだ」
どちらも女性だろうか。
長い影と短い影。
片方は生徒会長と呼ばれていた。
ならばそちらの短い影が七草真由美か。
だがもう一人は誰だろう。
私が校長の名を借りて呼んだのは七草真由美のみだ。
「それにしても何のようなのかしら」
「何も聞いていないのか?」
二つの影は門を過ぎ敷地内への入って行く。
しだいに二人の顔が見えてきた。
ちっこいのが七草だから、あの如何にも女の子ってやつか。
もう一人は…!?
「摩利!摩利じゃないか!」
もう一人のほう、渡辺摩利は突然自分の名前を呼ばれ驚いていたが私の姿を確認すると、
「師匠…?師匠ですか!?」
「久しぶりだな!」
隣であたふたしている真由美をよそに摩利は私の下へと駆け寄ってきた。
「お久しぶりです師匠。でもこんなところでどうしたんですか?」
「実はちょっと確認したいことがあったんだが…お前はもう私の弟子では無いのだから師匠はやめてくれ」
「ですが師匠はいつまでたっても私の師匠です」
二年前、一ヶ月ほど道場で剣を教えていたことがある。
そこで出会ったのが目の前にいる渡辺摩利なのだが妙に懐かれていた。
「そうやって慕ってくれるのは嬉しいんだが恥ずかしいからやめて欲しい」
恥ずかしさから顔を赤らめて摩利にそういうと、
葵さんはやっぱりずるいです
とあちらも顔を赤らめて返してきた。
葵、それは私の今の名前だ。
神威と言う名は過去で少々有名になりすぎ行動しづらいだろうという上田の配慮によって仮の名を貰った。
いくら時が経ったとは言えまだ私の顔を覚えている者もおり、仮名はいるだろうとのこと。
それが柊葵。
柊と言うのは適当につけたのだが葵は上田が私の髪の色から取って付けた。
私の髪の色は薄い青色、水色のような色をしているのだがその"青い"から葵にしたそうだ。
私にとっての本当の名は神威であるため特に気にせず仮の名を貰った。
ちょっと気に入っているのは上田には秘密だ。
「それよりも後ろのやつは大丈夫なのかあれ」
****
私は今とても驚いています。
突然隣を歩く渡辺摩利の名を呼び、目の前に現れた人物。
月の光を浴び輝く水色の肩まで伸びた髪にエメラルドのような色をした綺麗な目、すらっと伸びた手に日本人ばなれした長い足や整った顔立ち。
肌も白く、胸も大きいわけでもなく小さいわけでもない身体のバランスにあったちょうどいいサイズ。
誰が見ても皆美人だと言うでしょう。
ですが驚く場所はそこではないのです。
彼女が着ているのは我が校の制服。
私は二年通ってきてこの様な容姿の生徒は見たことがありません。
つまりは今年の入学生なのでしょう。
要するに年下。
その年下に隣を歩いていた渡辺摩利が駆け寄り、敬語を使って話しています。
あの摩利が年下相手に敬語を使っている、それこそが私を驚かせているのです。
これは幻聴で何か悪いものでも食べてしまったのでしょうか。
それとも夢なのでしょうか。
出来れば後者であって欲しいと願うばかりです。
「…由美…!真由美!」
やはりこれは夢なのでしょう。
****
「起きろ真由美!」
真由美はその呼びかけとともに顔を軽く叩かれた。
「な、何摩利?」
「何ってボーッとしてるから心配してやってたんだぞ」
「…そう、ありがとう」
「それよりも紹介するよ、こちらは私の剣の師匠の柊葵さんだ」
「…え?」
摩利は校内でも三巨頭と呼ばれるうちの一人で第一高校切手の実力の保持者だ。
真由美も十二分に摩利の実力を認めており、その摩利の師匠と言われたのが年下の女の子。
しかも夢ではなかった。
これは真由美でなくても第一高校の生徒なら誰もが驚くであろう。
神威の存在を知る人間を除いで、の話だが。
「…由美!…おい真由美!」
真由美は再びフリーズしていた。
「そちらの方も体調が優れないようだしまた明日話そう摩利」
「え?明日?」
「ああ、明日から私もここの生徒だから宜しくな渡辺先輩」
後輩らしく万弁の笑みで言ってやると摩利もフリーズしてしまった。
このままにしておくのもどうかと思ったが、取り敢えず目的は果たせたためこれで良しとした。
「また明日な摩利」
―――それと七草真由美さんもまた、ね
次はいつになりますかな…