ハイスクールD×D――転生者は傍観を望んだ―― 作:赤山大和
嫌なものを見たというのがその時の俺の感想だ。
俺達の視線の先には兵藤一誠と天野夕麻が楽しげに談笑し、初々しくデートをしている。
正直、随分と楽しそうに見える。表面上は。
「………わかってはいたが、実際に見ると酷いものだこれは。」
陽菜が重たい息を吐く。天野夕麻をレイナーレを視る目をしかめている。
「これは、悪意……ですよね。………かなり明確な害意を感じます。」
チャクラを探知すると黒く淀んだものがイッセーへと向いている。むしろイッセーが気付いていない事が不思議な位だ。
「ああ。楽しそうにしているが、内心じゃあイッセーのことを嘲笑っているんだろう。」
これは見ていて気分が悪い。原作知識でこの後の展開を知っているから余計だな。
「………二人を監視している三奈から、強い怒りを感じます。」
怒り、というよりは殺意だろう。レイナーレがイッセーを殺すのを黙って見ていられるのか?最悪の場合、俺達で三奈のことを止める必要があるかもな。
「……兵藤さんははともかくあれは堕天使。何故、三奈の出している殺気に気付いていないのでしょうか?普通ならもっと反応があってもいいと思いますが?」
「よく見て視ろ。私達には見えているが三奈の奴は霧の幻術を放っている。あれで殺意と気配を消しているようだ。」
そうじゃなけりぁ街中を歩くことも出来んと思うぞあの状態じゃ。
「………しかし、あの一誠という人は本当に赤龍帝なのですか?リリス様達のことを疑うことをしたくは在りませんがとてもそうは見えないのですが?」
「同感です。私には神器持ちであればもう少し特別な気配のようなものがあってもいいと思います。」
………原作知らないとそう思うよな。葵達も神器を所持しているのは確認してあるし、それが強い力を持っているのは理解しているんだろうけど。
「それは間違いないよ。だからこそ兵藤一誠をリアス・グレモリーの眷属にすることをリリスは考えている。俺達はそれに賛成した。あの堕天使を放置しているのもそれが理由だ。まぁ、無駄に堕天使陣営を刺激したくないってのもあるけどね」
現状のリアス・グレモリーとその眷属達の実力はソーナ達に劣る。
原作のソーナ達とのゲームにイッセー、アーシア、ゼノヴィアがいない上に木場が禁手に至っていない状態で戦っていたらと考えると間違えようのない評価だ。
ソーナ達と戦える実力すら無いのではと思ってしまう。リアスとソーナは実力が互角だとしても眷属の実力に大きな差があると思う。少なくとも、数の差を覆せるほどの質はない。
若手悪魔の対決前に運営委員会が出したという『王』と眷属を含め平均で比べたランキングでソーナは5位。リアスは3位だったらしいが恐らく、今はリアスが6位だろう。
実質、朱乃、木場、子猫の3人だけだよな。ギャスパーは封印中な訳だし。この世界では『兵藤誠二』という転生者が眷属に加わっているから原作よりは戦力があるがリアス先輩はもう少し危機感を持つべきだったと思う。
それにゼノヴィアと誠二だと多分、ゼノヴィアのほうが実力が上の筈。あれはろくに鍛練をしていないからな。それなりに強いが特典で得た力だけが強いのであって本人の実力じゃない。将来的には原作より戦力が低下しているかもな。
「リアス先輩の管理している街中で堕天使が一般人を殺害することを防げなかったとなればこちらの失態ともなりかねないが大した問題じゃない。」
そんなことよりもリアス先輩の眷属の弱さが問題だ。それを改善する為にイッセーには原作通りに死んでもらう。ただ、
「………三奈の奴が暴走しないといいが。」
レイナーレをここで殺るのはまずい。アーシアのこともあるがカラワーナ、ドーナシーク、ミッテルト達、堕天使の行動が読みにくくなるしフリードがどう行動するか解らないからな。
「その時は私と千尋で三奈を抑えるしかないな。……もうすぐ町外れにある公園にたどり着く。彼処は人気が少ないし人払いの結界を使うのも容易だ。まず間違いなく動くぞ。」
しばらくして、公園へとたどり着いたイッセー達に陽菜の幻術で近づくと天野夕麻の声が聞こえた。
「死んでくれないかな」
天野夕麻のイッセーを見る目が冷たくなり、堕天使の証である黒い翼を広げて冷笑している。
「楽しかったわ。あなたと過ごしたわずかな日々。初々しい子供のままごとに付き合えた感じだった」
ドス
夕麻の『レイナーレ』の手に現れた光の槍がイッセーの腹を貫き帯たたしい量の血が吹き出す。あれは致命傷だな。これは原作通りではある。だけど、…………不愉快だ。
レイナーレが倒れ伏すイッセーに二、三言葉を掛けて離れて行く。もう、イッセーには興味がないんだろう。イッセーを見る目が路傍の石を見るような目に変わっている。
…………不快だ。そして不愉快だ。そう思っていたからこそ、俺は行動が少し遅れてしまった。
グシャ
静かな世界に肉を潰す音が思いの外大きく響きわたる。感情を抑え、遠ざかるレイナーレを見ていた俺達の前で、兵藤三奈の拳が顔面へと突き刺さり堕天使レイナーレは吹き飛んで行く。
数メートル空を舞ったレイナーレはゴロゴロと転がって公園の端へと向かい、壁に激突して止まる。
「「「「……………」」」」
「……………どおしよう。殺っちゃたかな?」
血を吹き出して死にかけているイッセーとピクピクと痙攣して動かないレイナーレ。俺達の間では気まずい沈黙が続いた。