ロード・オブ・白御前   作:あんだるしあ(活動終了)

30 / 67
オーバーロード編
第1話 ファーストコンタクト


 ベースキャンプからオフィスにいた凌馬に連絡が入った。

 

《被験者№2がインベスと異なる高エネルギー反応とコンタクトしました》

 

 耀子はいつも通り凌馬の近くにいたので、その報を共に聞くことができた。

 

「さて。待ち侘びた第一報だ。湊君、行ってくれるかい?」

「私でよろしいのですか?」

「もちろん。駆紋戒斗じゃ血気盛ん過ぎて戦闘データが取れるか怪しい。あ、何なら角居君も連れてっていいよ。慣らし運転にちょうどいい」

「畏まりましたわ。プロフェッサー凌馬」

 

 耀子はオフィスを出て行った。

 

 

 歩きながらスマートホンを操作し、電話をかける。

 

《はい、角居》

「湊よ。出かける用意をしてらっしゃい」

 

 着いた場所はロッカールーム。耀子はずらりと並ぶロッカーから自分のナンバープレートのものを開錠した。中にはゲネシスドライバーとピーチエナジーロックシード。もはや手になじんだそれらの武装を取り出す。

 

《了解。ヘルヘイムの森っすか》

「ええ。駆紋戒斗とオーバーロードが接触したらしいわ」

《分かりました。すぐラボ行きます》

 

 角居裕也は呑み込みが早くて助かる。

 

 耀子はスマートホンをポケットに戻し、ラボに向かうべくエレベーターを目指した。

 

 

 

 

 裕也がベースキャンプに着いてから、耀子は研究員に命じてチューリップホッパーを2機用意させた。裕也と、互いにドライバーとロックシード、それにチューリップホッパーを持って、彼女たちはベースキャンプを出発した。

 

 マリカとなった耀子、シャロームとなった裕也を乗せ、それぞれのチューリップホッパーが森を駆ける。

 

『レーダーの反応、この辺だったんすよね』

 

 小さな平地で停まり、シャロームは辺りを見回した。

 一見して仕事熱心な新社員だ。4月を過ぎたから特にそう錯覚してしまいそうになるほど、裕也はユグドラシルになじんでいる。

 

『――あなた、よく私たちの言うことを聞くわね。一度は実験体にされた身だっていうのに』

 

 シャロームが顔を上げた。表情はマスクのせいで見えないものの、いい顔はしていないだろう。

 

『恨んでない、って言ったら嘘ですよ。でもあんたたちが俺を人間に戻してくれたのも本当だから』

『恩返しってわけ』

『それもあるけど―― ! 耀子さんっ』

 

 シャロームに促され、マリカもレーダーを見た。

 アーマードライダーの反応一つ、インベスに似た高エネルギー体の反応一つ。戒斗とオーバーロードに違いない。

 

『急行する!』

『了解!』

 

 マリカとシャロームはそれぞれにチューリップホッパーのアクセルをかけた。

 

 

 

 

 マリカとシャロームが駆けつけたそこには、一方的に、弄ばれるように、紅いオーバーロードに嬲られるバロンがいた。

 

『耀子さん、援護射撃、頼む。あいつは俺が』

『お願い』

 

 マリカがソニックアローを番える。その軌道を避けてシャロームはバロンと紅いオーバーロードの戦いの場に走った。

 

 桃色のソニックアローが幾重にも異なる軌道で射られ、紅いオーバーロードをバロンから引き離す。

 その隙にシャロームはバロンに近づき、彼の腕を肩に回させた。

 

『もう充分だっ』

『まだだ!』

『こいつに勝つのは次でいいんだよ!』

 

 無理にバロンを引っ張って行った。それを追って紅いオーバーロードが来る――しかしそれを、桃色のソニックアローが形成した粒子の檻が阻んだ。

 

 シャロームはバロンを抱え、マリカと合流してからその場を離脱した。

 

 

 

 

 裕也が満身創痍の戒斗を適当な木の幹に凭れさせて座らせた。

 今は耀子も、裕也も戒斗も変身を解いている。戒斗の場合のみ、ダメージからの強制解除だが。

 

「まったく! あれだけの戦闘データが取れれば充分な成果だったのに。あなた、引き時ってものが分からないの?」

「奴らのことを調べて、っ、理解するのが目的だったんだろ――だったら」

 

 戒斗はおもむろに裕也に拳を振りかざした。裕也はそれを手の平で受け止め、顔をしかめた。

 

「俺には『こいつ』が一番分かりやすい!」

「お前な……」

 

 裕也は戒斗の拳を受け止めた手の平をぷらぷらと振った。それなりに効いたらしい。

 やる戒斗はもちろんだが、暴力を揮われて何も言わない裕也も裕也だ。

 

(今時の若い子って、みんなこうなのかしら。ほんっと疲れる)

 

 耀子は深く溜息をついた。凌馬の前では溜息を禁止されているので、その我慢分も含めて。

 

「……とにかく一度戻りましょう。あなた、投薬の時間もあるでしょ。そこの分からず屋を運んでちょうだい」

「はいよっと」

 

 裕也は再び、強引に戒斗の両腕を両肩に担ぎ、そこからおんぶの形に持って行った。戒斗は暴れたが、傷に響いたらしく、すぐ大人しくなった。

 

 ふと、裕也が顔を上げる。あらぬ方向を見つめている。

 

「どうかした?」

「いや、なんか……いえ、何でもないっす。行きましょう」

 

 耀子も密かに裕也の見ていた方向に視線を流したが、そこには何もいない。よって湊耀子は異常なしと判断し、戒斗を背負った裕也を先導して歩き出した。

 

 

 ――耀子は知らない。裕也が見つめた位置に、数瞬前まで翠のオーバーロードがいて、耀子たちを観察していたことなど。




 耀子さんは戒斗とは違う意味で裕也を気に入っていればいいと思う。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。