ロード・オブ・白御前   作:あんだるしあ(活動終了)

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第9話 男の戦い、女の戦い

 巴たちは赤いラボの大クラックを潜り、前に来た時のようにローズアタッカーに相乗りして城の遺跡まで一気に駆け抜けた。

 

 

 玉座の間の遺跡にいたのは、ロシュオと王妃だけ。貴虎はいなかった。

 

(碧沙の体を守るためにも離れないと言っていたのに。無理に追い出されたというとこかしら)

 

 巴は並ぶ白の一対へと足を踏み出した。

 見つめるのはただ一人。親友の体を使ってようやくヒトらしく振舞っている悲しい亡霊。

 

()()()()()()を返してください」

『ならぬ。これは我が妃。我が妻だ』

「! まさか、黄金の果実の侵食がそんなに進んで……!?」

「いいえ。まだ剥ぎ取ることができないほどではありません」

 

 王妃の答えに、巴は長く安堵の息を吐き、まっすぐ前を向き直した。

 

「――碧沙を返しなさい」

 

 最後通牒のつもりで、声を一オクターブ下げて発した。

 

『返してほしくば、力ずくで奪うがよい』

 

 ロシュオが斬鉄剣を持って玉座の壇を降りてくる。

 

「ロシュオ」

『確かに、()()()()()と決めた。だが私は最後まで抗おう。王としてではなく、そなたを愛した一人の男として』

 

 王妃は唇を噛んで顔を伏せた。しかしそれも刹那のこと。顔を上げた王妃は、夫に対して泣きそうな顔で微笑んだ。

 

「ご武運を。あなた」

 

 ロシュオは完全に臨戦態勢だ。

 

 巴もまた量産型ドライバーとアーモンドのロックシードを装着しようとした。

 その巴を、初瀬が手で制した。

 

「亮二さん?」

「あいつは俺が引き受ける。お前はヘキサに集中しろ」

「け、けれどっ。亮二さんはここに来るまでにインベスの群れと戦っているじゃありませんか」

 

 初瀬が取り出して見せた物に、巴は声を上げて驚いた。

 初瀬の手には、耀子たちが使うようなゲネシスドライバーと、マツボックリのエナジーロックシードがあった。

 

 呆然として続く言葉もない巴を置いて、初瀬は前に出てロシュオの正面に立った。

 

「ずっと思ってた。お前を守れるくらい強い男になりたいって。今、ようやく叶いそうなんだ」

 

 初瀬はゲネシスドライバーを装着し、マツボックリのエナジーロックシードを開錠した。

 

「変身」

《 リキッド  マツボックリエナジーアームズ 》

 

 

 ――そこに立ったのは、黒影であって黒影でなかった。

 

 手には三叉槍。甲冑はより重厚に。

 

 量産型の雑兵として使われていた黒影とは、決して同じはずがない。エナジーロックシードを用いたからでもない。

 初瀬亮二が変身したからこその、充溢した闘気。

 

 ――黒影・真。

 

 雑兵だろうが足軽だろうが、登り詰めれば真に迫った力を持つと、その姿は語っていた。

 

 

『お前が私の相手をすると?』

『そうだ。お互い惚れた女のためだ。1対1(サシ)で行こうぜ。王サマよ』

『悪くない趣向だ。――来い。ここでは我が妃を巻き込む』

 

 ロシュオが手を黒影・真に向けると、彼らは歪んだ白い亀裂に包まれ、玉座の間から消えた。

 

 

 

 

 

 

 巴は改めて王妃と対峙した。手には免疫血清が入ったキャリーケースを提げて。

 

「先に聞きます。素直にこれを注射されて消えてくれる気はありませんか?」

「結果的にそうなれば受け入れましょう。けれども、ロシュオも言ったように、わたくしも抗います。あの人を愛した一人の女として」

 

 王妃が掌を巴に向けた。

 直後、巴は背後の岩壁に叩きつけられていた。

 

 地面に落ちた巴は、這いつくばって咳き込んだ。

 

(何が起きたの)

 

「わたくしの心臓は、あの人が与えてくれた黄金の果実。この程度の異能は造作もありません」

「――、待ってよ。そんな力、碧沙の体で使ったら」

 

 碧沙の体のオーバーロード化は劇的に進んではしまわないか。

 

 王妃は答えない。それが答えだった。

 

「許さない」

 

 巴はぶつけた背中の痛みも忘れ、立ち上がって量産型ドライバーを装着し、アーモンドの錠前を開錠した。

 

「変身!!」

《 ソイヤッ  アーモンドアームズ  ロード・オブ・白鹿毛 》

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