ロード・オブ・白御前   作:あんだるしあ(活動終了)

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第6話 再臨

 

 

 コウガネに憑かれた時、巴は思った。これは自身の心の在り方への罰なのだと。

 

 だが、よくよく内省してみれば、まったくそのようなことはなかった。なかったのだと、巴は結論づけた。

 

 大事なのは碧沙と初瀬だけ。それのどこが悪い。

 碧沙と初瀬以外の者に対しては無関心。それのどこがいけない。

 

 別格と「それ以外」の区別。「愛しい」人たちを想い慕う心。「好き」という気持ち。――それ自体が罪のわけがない。

 

 それらを理由にしたいくつかの行動に反省すべき点、問題点は多々あると自覚している。

 

 なればこそ、このような安っぽくみみっちい三流悪役が、関口巴の「罪」に釣り合うわけがない――!

 

 

 

 

 “まったく同感だ。それに「罪」も何も。あの時、君は何も悪いことはしてなかったじゃないか”

 

 

 

 

 巴は顔を上げ――驚愕した。

 

「紘汰、さん?」

 

 知恵の実を得て神となり、異星に旅立ったはずの紘汰が、笑顔でそこにいた。

 

「葛葉、なのか?」

「嘘だろ……」

「やり残したことがあってな。でもそれも、要らない心配だったみたいだ」

 

 紘汰が宙に掌を向けた。

 掌から放たれる青い衝撃波が巴にぶつけられる。だが、痛みはない。それどころか、神経という神経の隙間に埋められた異物を除かれていくような爽快感さえあった。

 

 反射で身を庇った腕をどけて見回せば、青いイナゴの大群が。

 

 分散していた青いイナゴは、視えない磁石でもあるかのように一点に吸い寄せられ、群れ集ってコウガネの姿を象った。

 

 

『おのれおのれおのれェ!! 葛葉紘汰ァッ!!』

「これでお前はもう誰の意識も乗っ取れない。今のお前は実体だからな。――そいつをブッ倒せば全部解決だ。今度こそ安心して、ドライバー、貴虎に捨てさせていいぞ」

「いくら神様とはいえ……」

 

 ゆっくりと、巴は立ち上がっていく。

 

「“ヘルヘイムにまつわるもの”がまだ残ってたこの事態。これが終わったって、ハイどーぞ、って手放すなんてありえないでしょう」

「すっかり信用ガタ落ちか」

 

 紘汰が苦笑した。

 

「宇宙に一人くらいは神様反対派がいたほうが、バランスがいいのじゃありません?」

 

 仮にも相手が“神様”ならば、素の口調では不敬にも程があると思い、いつもの仮面を被り直した口調にしてみた。

 

「っと。のんびり話してる暇はなさそうだ」

 

 コウガネがマゼンタの大橙丸を手に、こちらへ憤怒の声を上げながら走ってきている。

 

 巴は焦った。後ろには初瀬が、城乃内がいる。しかも二人とも変身できない。そして巴も、戦極ドライバーがあってもロックシードがないため、状況は同じ。

 

 だが、新たな宇宙の神様は、その程度の重石は重石ですらないようで。

 

「ちょっと乱暴に行くぞ」

 

 紘汰が腕を一振りした。

 それだけで、巴も、初瀬も城乃内も、コウガネとイナゴ怪人も、全員が病院の外の開けた場所に投げ出された。

 

 

 しかし、巴にはむしろ紘汰の()()は悪手に思えた。

 院内ならば階段や廊下の角を利用して上手くコウガネを撒けたかもしれないのに、ここは見晴らしのいい広場。逃げ場は、ない。

 

 

『皆さん、伏せて!!』

 

 

 巴は、そして初瀬も城乃内も、ほぼ反射で地面に這いつくばった。

 

《 ブドウスパーキング 》

 

 その彼女たちの上を翔けた、紫の龍の息吹がごときエネルギーショット。それはコウガネに直撃し、コウガネに膝を突かせた。

 

 身を起こしてふり返った。

 

 ちょうどロックビークルがドリフトして停まった。

 運転手はアーマードライダー龍玄。後部座席には碧沙が龍玄にしがみついて乗っている。

 

「ミッチ、グッジョブ!」

「てかタイミング良すぎだろお前!」

『これでも遅刻だと思ったんですけど。出発前に色々あったんで。……って、紘汰さん!? どうしてここに!』

「「気づくの遅ぇ!」」

「よう、久しぶり、ミッチ。その分だと元気でやってたみたいだな。にしても、よくとっさに撃てたな。しかもチャージ付きで」

『いきなり出て来たんでビックリしましたけど、碧沙の件の恨みもあってつい撃っちゃいました。……いけなかったですか?』

「いけなくはなかったけど。ちょっと見ない間にちょくちょく素が出るようになったなあ、ミッチは」

『素?』

 

 きょとん、と龍玄は首を傾げた。

 どうやら恐ろしいことに、光実本人は彼の「素」に無自覚らしい。

 

「巴、これっ」

 

 碧沙は何かを投げた。

 巴はそれをキャッチし、見た。アーモンドのロックシードだった。

 

「裕也さんからよ。巴に渡してくれって」

「どこまでも気が利くわね。あの人」

 

 巴は苦笑し、アーモンドの錠前を片手にコウガネの前に立った。




 巴が出した結論は、ズバリ「開き直ること」でした。
 行いは裁かれるべきものだと自覚して、その上で、心の在り方は誰にも裁けやしないのだという結論に、彼女は達したのでした。
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