「人の体でよくもまあ好き勝手暴れてくれたわね。わたし、自分のことじゃ親以外の相手にはあまり怒らないのだけど、今回ばかりは頭に来たわ。お前は
雪女もかくやという凍てた目で、巴はコウガネを射抜いた。
巴はアーモンドの錠前を開錠し、バックルにセット、ロックし、カットした。
「変身」
《 ソイヤッ アーモンドアームズ ロード・オブ・白鹿毛 》
薄桜色のライドウェアが巴の四肢を覆い、さらに上から乳黄色の鎧が落ちて巴を装甲し、白鹿毛へと変えた。
白鹿毛はくるりと薙刀を回し、コウガネに正眼に突きつけた。
『アーマードライダー白鹿毛、参ります』
(ふしぎ。今までのどの戦いよりも、視界が、頭がクリアだ)
白鹿毛はコウガネがくり出すマゼンタの大橙丸を、半歩引き、薙刀で受け流しながらコウガネの右に移動し、薙刀でコウガネの胴を薙ぎ斬って、抜ける勢いで距離を取った。
コウガネの動きがスローモーションに視える。次にどう動けばいいか頭が瞬時に体に命令する。
『何故だ! 何故、黄金の果実である私が、貴様ごとき小娘にィ!!』
背を向けていた白鹿毛をコウガネが斬ろうとしていることも分かった。
薙刀を逆手かつ斜めに持って剣戟をまた逸らし、ふり返りざまにコウガネに足払いをかけた。
だが、黄金の果実を自称するだけあって、コウガネは白鹿毛の足払いで傾いた体をそのまま地面に転がしながら、しゃがむ態勢に持ち込み、無双セイバーのトリガーを引いた。
今度は白鹿毛のほうが、右へ左へ跳び回り避けた。弾丸は一発も白鹿毛に当たることはなかった。
カッティングブレードを1回切る。
《 アーモンドスカッシュ 》
次の瞬きの時には、白鹿毛はコウガネの懐に入り、ソニックブームをまとった薙刀の刃をコウガネにくり出していた。
コウガネはクロスカウンターに持ち込もうとしたようだが、無双セイバーより白鹿毛の薙刀のほうがリーチが長いため、叶わなかった。
鋭利、という表現でも生ぬるい一斬が、コウガネを斜めに裂いた。
刃が下を向いた薙刀を、無双セイバーが上から叩いて押さえつける。白鹿毛は脱しようとしたが、そのまま鍔迫り合いに持ち込まれた。
『貴様は何だ! 私に容易く支配されていながら、私に刃向う貴様は何なんだ!』
『何って、そんなの』
コウガネが押す力を逆に利用し、白鹿毛は後方へバク転して退いた。そして、カッティングブレードを2回切った。
《 アーモンドオーレ 》
『ただの女の子だけど。それがどうかして?』
『そのような答え――納得できるかァッ!!』
《 ダークネスオーレ 》
コウガネのほうもカッティングブレードを2回切った。
白鹿毛がジャンプすると同時、コウガネもまたリンゴの形をしたソニックブームを撃ち出した。
薙刀を投げて打ち消した上でライダーキックでとどめ――と考えていた白鹿毛の目の前で、リンゴ型のエネルギー塊が、横から飛来した矢の的中によって弾け、白鹿毛に道を空けた。
足にチャージしたソニックブームを一切損なわず、落下のパワーも加えて、白鹿毛は最大のライダーキックをコウガネに命中させた。
地面を滑って着地する。
後ろで爆発が起き、大きな炎を上げ――消えた。
…………
……
…
マリカはソニックアローを放ったばかりの創世弓を下ろし、変身を解いて湊耀子に戻った。
「これでよかったかしら?」
「はい。ばっちし。あーざっす。耀子さん」
裕也は、たったさっきまで白鹿毛とコウガネの戦いを見守っていた双眼鏡を外し、にっこり笑った。
――戦いが終わり、湊耀子は生き残ってしまった。
あの7ヶ月前の戦いで、見届けると約束した戒斗が死んでしまったのに。
それもこれも全て関口巴が悪い。
いざ人類とインベスの戦争を始めようという時に、単身乗り込んできた巴。彼女を排除すべく矢面に立って変身し戦った耀子は、戒斗の守りを疎かにしてしまった。
爆発の中、戒斗自身がヘルヘイムの植物を操って落下をまぬがれなかったら、耀子も戒斗の後を追っていたかもしれないと思うほどだ。
結局、“王”となったのは、見守ると定めた戒斗ではなく、葛葉紘汰だった。
全てをなくした耀子は、燃え尽き症候群よろしく虚脱した状態で沢芽の地を出た。永久に、二度と土を踏まないくらいの気持ちで。
本土の実家近くで一人暮らしを始めた耀子を、裕也が訪ねてきた。
裕也が耀子の住所を把握していることには驚かなかった。むしろ驚かされたのは、裕也からの頼み事と交換条件だ。
“まだ貴虎さんに返してないっすよね。ゲネシスドライバーとエナジーロックシード。それ使って、巴ちゃんのフォローしてやってほしいんです。引き受けてくれたら、耀子さんがドライバーとロックシード持ってること、貴虎さんには内緒にしときますから”
よりによって戒斗を差し置いて生き残った自分の手で、その原因となった少女を助けろと来た。
「あなたの笑顔って、プロフェッサーの『大丈夫』って言質と同じくらい信用できないのよね」
「ひでえっ」
「嘘よ。プロフェッサーより信用できない」
「もっと酷くなった!?」
とほほ、とわざとらしく凹んでみせる裕也に対し、耀子は隠れて微笑んだ。
――先の先まで見据える才を持つこの青年は、この先も変わらず、平凡なフリをしてこうして裏で立ち回りながら生きていくのだろう。誰にその偉業を気づかれることも、気づかせることもなく。
笑顔という仮面の下に、辛さも痛みも隠し通す。
それが角居裕也の“強さ”。
「じゃ、私は帰るわね。せいぜい元気でやりなさい。ああ、他の子たちにはよろしく伝えなくていいから」
「それ、意外と難しいっすよ~」
耀子はキーホルダーの穴に指を入れて車のキーをくるくる回しながら、車を置いてきたコインパーキングへと歩き出した。
実は生きてた耀子さん。
巴が単独で戒斗のもとに乗り込んだことでこんなバタフライエフェクトが起きていたのでした。
最後の白鹿毛vs邪武はOPかけながら読んでいただけると作者が号泣して喜びます。
裕也はアレです、某型月処女作の黒ずくめの平凡系眼鏡青年並みに物探しが上手いと、作者が勝手に決めちゃいました。