不良八幡の学校生活   作:雨雪 東吾

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遠足 3

「うっ・・・はあっ!」

 

 最難関の遊具に戸塚が挑むも、中々苦戦しているようだった。なぜならこれはここで唯一制限がかけられるほど高難度のものだからだ。まあ高難度とは謳っているものの、内容的にはただのアスレチックなのだが、体力、筋力が求められるため、年齢制限や「筋力に自信のある方」といった注意書きがあり、ケガをしても一切責任はとらないと記述してある。

 

 戸塚は今までのアスレチック全てに挑戦、撃破して疲れており、また、体力的にも筋力的にも高校生の平均からは下回っているように見える。

 

 他の班員は勿論やらない。俺から離れ、戸塚を応援している。

 

 時間がかかりそうだな・・・このまま見てるのもつまらないし、手伝ってやるか。観賞魚も久々にみたいしな。

 

 そう思い、カバンを下ろそうとすると、後ろから声が聞こえてくる。

 

「次はここ最難関の遊具っしょ? っべ~、まじっべ~わ~」

 

「戸部なら大丈夫だよ」

 

「隼人君ハードルあげないでよ~。隼人君は余裕だからいいかもだけど~」

 

 大きな声を発しながらトップカーストらしき奴らが現れる。一人は金髪で、もう一人は茶髪でチャラそうな印象を受ける。金髪を中心に二人は女子に囲まれ、そいつらの班員らしき男二人は女子の壁に阻まれ、二人で寂しく会話をしている模様。その二人の顔は悪くなく、髪を染め上げている様子から、トップカーストに属しているのだと見受けられるが、悲しきかなトップカースト内でも勿論格差はある。

 

「葉山君なら絶対大丈夫だよね!」

「うんうん!」

 

 女子からの声援を受ける金髪のやつの顔は、男の俺からしてもイケメンだと言わざるを得ない。いや~すごいね。俺が金髪に染めても怖がらせる要因にしかならなくても、イケメンがすれば魅力の一つだもんな。・・・あれ、でも俺もイケメンだよな? そういや俺もあいつも同じくキャーキャー黄色い声援受けてるな。やはり俺はイケメンだったのか。

 

 そんなことを考えていると、後ろのやつらもワイワイやってくる。女子は俺に気づくと、悲鳴を上げ、金髪の後ろに隠れる。茶髪のやつは、俺をまじまじと見てくる。止めろよ。ぼっちは他人の視線に慣れてないから。

 

「君もやるのかい?」

 

 金髪が話しかけてくる。俺みたいなやつにも話しかける俺KAKKEEEEEEEみたいな? それとも女子を前にかっこつけてるだけなのか。

 

「・・・やらん」

 

 これ以上話す気はないと、俺は背を向ける。後ろの方で、感じが悪いだとか、怖いだとか、女子が囁いているが、どうでもいい。

 

「それじゃあいっちょ挑戦しますか~!」

 

 お調子者らしい茶髪がわざとらしく伸びをすると、金髪と同じく最難関のアスレチックに手をかけ始める。

 

 戸塚は中間ポイントで休憩せざるを得ないみたく、肩で息をしているのが見て取れる。あっという間に二人に追いつかれ、先を譲っている。

 

「君、大丈夫かい? 大分息があがってるみたいだけど」

 

「少し、辛いかな。でもあと少しだから、頑張ってみるよ」

 

「そうか。じゃあ僕らは先に行っているよ」

 

 残された女子や班員も、当然のごとく俺からは離れ、遠巻きに葉山というやつを応援している。恐らく金髪のやつだろう。また、戸塚のことも知っているらしく、そちらにも若干応援の声がする。茶髪の応援は戸塚よりも少ないが、なくはない。・・・男からのものであるが。

 

 再び戸塚が先へ進んでいく。しかし、疲労が激しいのか、手を滑らせ、クライミングの部分から落ちそうになる。やばいと俺が思ううちに、後ろから悲鳴が上がり、瞬間、それが歓声に変わる。先に行ったはずの金髪が、戸塚の手を掴み、寸でのところで落下を阻止したのだ。

 

「大丈夫か?」

 

「うん、ありがとう」

 

 三人が下りてくるころには、葉山コールの嵐で、恐らくこの伝説は瞬く間に学年中に広まるだろう。

 

「比企谷君もありがとう」

 

 輪から離れた戸塚が俺の元へと寄ってくる。

 

「は? 俺は何もしてないだろ」

 

「でも僕がきつそうなとき助けに来ようとしてくれたし、落ちそうになったときも真っ先に動いてくれたでしょ?」

 

「・・・それは思い違いだ」

 

「いいよ、僕の自己満足だから。ありがとう」

 

 満面の笑みを咲かせる戸塚は、それだけ言うと他の班員の元へと駆け寄り、大丈夫だという旨のことを言っていた。

 

 ・・・戸塚彩加。こいつなら俺のことを本当に・・・なんて甘い考えはしない。一瞬やつの笑顔に心が揺れたが、それだけだ。顔が可愛いから、恐らく雄としての本能に過ぎないと結論付ける。いや、本当にそうだったら、俺の本能はぶっ壊れているが。ただ・・・彼のことはもっと知らなければならないと思った。知らないことは怖いから。何の対策も、できないから。

 

 俺を呼ぶ戸塚に、そちらに向かって歩くと言う動作で、俺は返事をした。




初めて投稿前日に書き終えたかも。
戸部の会話難しいんだが。少し原作読んで勉強してきます。
遅れましたが、千葉シーサイドパークとかいうやつは適当に作りました。

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